2023年1月31日火曜日

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021)

フランスのドキュメンタリー映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」(2021)を見る。原題は「The Savior For Sale」。監督はアントワーヌ・ヴィトキーヌ。

まずサルバトーレ・ムンディがクリスティーズで4億ドルで落札されたというニュースとその後のいろいろが駆け足で細かいカットで示される。そして美術商、「サルバトール・ムンディ」の発見者ロバート・サイモンのインタビュー。ルイジアナのネットオークションでその絵は落札された。これって再現映像?

ニューヨークの修復家ダイアン・モデスティーニの仕事場映像。
そしてロンドン・ナショナル・ギャラリーの学芸員と専門家マーティン・ケンプの心眼をパスしダ・ヴィンチ展にそれは展示される。

ジュネーヴのフリーポート王イヴ・ブーヴィエのインタビューがわりと長い。ロシア人新興財閥(オリガルヒ)ドミトリー・リボロフレフと頻繁にやり取りしてたのに、新聞報道から金額に大きな開きがあることが判明し訴訟沙汰。それは背信か?商慣行か?

ただ、一般視聴者から見れば、ASモナコを所有するロシア人新興財閥の成金金持ち生活にも嫌悪感だし、金持ちだけが利用するフリーポートで名画を塩漬けにするブーヴィエにはもっと嫌悪感。

この映画はブーヴィエ、オリガルヒ、クリスティーズ、広告代理店、ダヴィンチ作かダヴィンチ工房か?でルーブル展示をめぐってのフランス政府とサウジアラビアの外交問題化などがメイン。

自分、昨年夏に「最後のダ・ヴィンチの真実」ベン・ルイス著、上杉隼人訳(2019 集英社インターナショナル)を読んだ。異常に面白かった。この本とこの映画には直接の関係はない?その辺は調べたけどわからなかった。
本で読んで知った人物たちを動く映像で見ることができる。実際の声を聴くことができる。それがこのドキュメンタリー映画。

この映画では絵の来歴にはあまり触れていない。歴代所有者には一切触れていない。
映画は映画として面白かったが、自分としては映画の範囲もカバーして、ホラーのエッチング版画の前後とその後の絵画の移転も描いていて読みごたえがあったベン・ルイス「最後のダ・ヴィンチの真実」のほうが情報量が多く面白く感じた。そちらのほうがミステリー要素を感じた。

自分の見る限り、サルバトール・ムンディはダ・ヴィンチ作であろうとなかろうと完全に名画。初めて見た瞬間から、神を描いた稀有な傑作だと感じた。そう感じた人は多いはず。
ぜひ金庫に隠して塩漬けにするのでなく、多くの人が見れるように一般公開してほしい。もっと研究してその成果を知りたい。

2023年1月30日月曜日

W.L.シャイラー「第三帝国の興亡」第4巻 ヨーロッパの征服(1960)

W.L.シャイラー(1904-1993)による「第三帝国の興亡」全5巻(1960)第4巻「ヨーロッパの征服」を読む。昭和36年井上勇訳版の1976年第16刷で読む。第4巻はオランダ、ベルギー、フランス、そして英国。さらに独ソ戦。
The Rise and Fall of the Third Reich by William L. Shirer 1960
世界史教科書でオランダ、ベルギー侵攻もほんの数行だったのだが、この本で読んでもそれほど長くはない。水路の国オランダはドイツ空挺部隊によって5日で占領。空爆されたロッテルダムでは民間人800人が死亡。ウィルヘルミーナ女王と政府首脳は5月14日に英国へ脱出。15日に降伏。
英仏軍と戦っていたベルギーは国王レオポルト3世が英仏に何の相談も通告もなく5月28日の朝に降伏。(この国王はベルギー政府首脳からも国民からも英仏からも見放された。)

フランス軍はもっとあっけない。チャーチルも絶句。あれだけ巨大な陸軍はどこへいった?
6月14日にはキュッヒラー将軍の第18軍によってパリ占領。ボルドーに逃亡したレイノー首相は16日に辞任しペタン元帥に交代。6月22日にコンピエーニュで独仏軍は休戦条約に署名。

ヒトラーは英国を説得し協力させられると思ってた。(戦争しないといけなくなったのは英国のせい!それはポーランドにもフランスにもも同じ論理。今現在のロシアがウクライナに侵攻してるのも同じような自己中理論。)

だが独軍を上陸させる作戦は無理。よってバトル・オブ・ブリテンの航空戦力の抗戦。ここでドイツ空軍は苦戦。だがしかし英国側の損失も膨大。
自分、英国の爆撃機がベルリンを空爆してたって知らなかった。
ドイツはバハマ総督ウィンザー公(元国王エドワード8世)夫妻誘拐を計画してたって知らなかった。

ドイツが西部戦線に気を取られている間にソ連はバルト三国をさらっと勢力下。さらにルーマニアからベッサラビアと北ブコヴィナを奪ってた。ドイツとソ連の関係は冷え込んでた。
リッベントロップとモロトフが同じ防空壕で英国の爆撃をしのいでたの面白い。

独ソ戦開始。開戦を知らなかった人々は憐れ。モロトフはしたたかに生きのびたが、駐ソ連大使シューレンブルクは外交官を引退させられ1944年7月の反ヒトラーグループに連座しゲシュタポによって処刑…という末路。

ドイツ軍の将軍たちは有能だったのでヒトラーが口を挟まなければモスクワを陥落させることはできたはず。将軍たちにとって内部の敵がヒトラー。摩訶不思議戦略で疑念と対立を巻き起こす。退却を絶対に許さない方針に逆らった将軍たちはたちまち罷免。
陸軍総司令官ブラウヒッチュ、ルントシュテット、ボック両元帥、グデリアン将軍、レーブ将軍…。「36名の上級大将のうち18名は引退させられ、5名は1944年7月20日事件で命を落とすか懲戒免職。わずか3名だけの上級大将が地位を保って戦争を生きのびた。」
現場最前線からの要請に鷹揚に構えてたら対ソ連戦争に勝ってたかもしれないのに。そもそもユーゴスラビア侵攻なんてやってなければ1941年の内にモスクワを落とせた。

ドイツは第一次大戦のときもアメリカの軍事力をナメてた。そして今回の大戦もアメリカを過小評価。日本の真珠湾攻撃によってドイツもアメリカに宣戦布告。さらなる破滅。

ドイツは日本に早く対ソ戦に参戦してほしかった。ウラジオストクを攻撃してほしかったのに日本は慎重。近衛-ルーズベルト、野村-ハルの交渉の行方をドイツは心配して見守っていた。アメリカが太平洋の心配をなくしたら勢力を大西洋に割く。
せいぜいシンガポールぐらい攻撃してくれれば英国の戦力をそっちに回して欧州戦線が楽になるぐらいに考えてたら、まさかの真珠湾奇襲。これにはオット大使もリッベントロップ外相も泡を喰う。でもヒトラーは対米宣戦布告。ソ連、英国を倒してからアメリカをやっつけるつもりだったけど、いつか戦う敵だし。

ヒトラーはルーズベルトを嫌悪してた。我々は平和を望むのにルーズベルトがユダヤ人と一緒に世界で戦争起こしてる!
(夏になると日本では戦争特番とかやるけど、日米開戦前夜にドイツが日本の決断と行く末を心配してた様子はあんまりやってない気がする)

スターリングラードの戦いは1943年1月末でドイツ軍は寒さと餓えと衛生の補給が断たれほぼ戦闘不能になって終わる。OKW(国防軍最高司令部)にいるヒトラーから現場に届く電信がことごとく酷い。たまに海外でヒトラーとムッソリーニ、東條、もしくは昭和天皇を並べて揶揄したりすることがあるのだが、誰もがヒトラーには遠く及ばない。

ドイツ兵の命をできるだけ救おうとした第六軍パウルス元帥は自分としては好印象。チャーチルはダンケルクで撤退を成功させた。山本五十六はガダルカナルで失敗した。ヒトラーはスターリングラードの段階ですでに狂ってることを示した。ヒトラーに匹敵するやつは世界史上スターリンとプーチンしか見当たらない。

北アフリカでは連合国軍が優勢。いよいよイタリアが風前の灯火。
1942年5月から英国軍によるドイツ都市爆撃が始まってる。
ドイツの一般民衆は、スターリングラードやエル・アラメインでドイツの将校が経験したと同じく、彼らの軍隊が他国の民に味わわせた恐怖を、初めて自ら体験することになった。
これ、早くロシア人も追体験してほしい。モスクワやサンクトペテルブルク市民もウクライナ市民と同じ恐怖を味わってほしい。

そして最終第5巻へとつづく。

2023年1月29日日曜日

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015)

ドイツ映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」(2015)を見る。監督は「ヒトラー最期の12日間」(2004)でも知られるオリヴァー・ヒルシュビーゲル。脚本はフレート・ブライナースドーファーとレオニー=クレア・ブライナースドーファー。日本でも同年公開(GAGA)。

ヒトラー暗殺未遂事件というと大戦末期に総統大本営でヒトラー爆殺を狙ったシュタウフェンベルク大佐らによるクーデター未遂事件が有名だが、この映画はポーランド侵攻直後の1939年11月、ミュンヘン・ビュルガーブロイケラーでのヒトラー暗殺未遂事件と実行者ゲオルク・エルザーのその後を描いている。なので原題は「Elser」
このナチスエピソードも「第三帝国の興亡」第3巻に描かれていて知ったので見ることにした。

1939年、反ナチのゲオルク・エルザーはヒトラー暗殺計画を実行。夜中に演説会場の柱に時限爆弾を仕掛ける…というシーンから始まる。機械時計のタイマーがセット。11月8日のミュンヘン一揆記念演説を待つ。

スイス国境のコンスタンツでエルザ―は夜中に不審者として拘束される。禁止された共産党組織のバッジを所持してるのがバレて独房。
その間に爆弾が破裂。屋根が崩壊。保安部が出動。ヴュルテンベルク・ケーニヒスブロンに部隊が急行。「エルザ―を逮捕せよ」エルザ―の関係者は有無を言わさずベルリンに連行。

ヒトラーが演説を予想より早く終えたため、時限爆弾はヒトラーが去った13分後に爆発。無関係の7名が死亡。臨時雇いの女給、妻子ある音楽家が死亡。
刑事警察局長アルトゥール・ネーベとゲシュタポ局長ハインリヒ・ミュラーがエルザ―を尋問。「ズボンを脱げ!」すると膝が血だらけ。ネーベはすでに確信してる。「自首しろ」

黙秘するエルザ―。タイピスト女性がささっと席を外すとゲシュタポは恐怖の拷問を始める。悲鳴を上げながらゲロを吐く。しかし口を割らない。
そこにエルザーの元恋人エルザが連れてこられる。「エルザがどうなるかは君次第」エルザ―はついに自白。
この映画はちょくちょく想い出イメージ映像。人妻エルザとの出会い。ケーニヒスブロンの酒場でナチ党員と社民党員のケンカ。

エルザーは単独犯を主張。ネーベもそう考えるのだが、親衛隊長がそれを認めようとしない。背後に大きな組織があるはずだ。
ネーベらはさらにエルザ―を問い詰めると、チャーチルから電話でやれと言ったと荒唐無稽な話。再びエルザーに拷問。

エルザ―は人妻エルザと不倫。エルザ―の父(実の親子じゃない?)は飲んだくれ。家は抵当。執行により住めなくなる。エルザの夫エーリヒの家に間借り。

そして小さな村もだんだんとナチ党が優勢になって雰囲気が変わっていく様子が描かれてる。友人ヨーゼフも逮捕。日曜なのに教会に行かずナチの宣伝イベントが盛況。みんなでハイル・ヒトラー!みんな異常だよ。
ユダヤ男と交際していたローレもナチ党員から暴力。ナチと文革紅衛兵はやることにおいて似ている。自由が失われていく。

エルザーは自分の知識だけで時限爆弾の設計図を書いたことを機械設計の専門家にすらすらと口頭説明。エルザーだけで時限爆弾の製造が可能。(どこが”平凡な家具職人”だ)
ネーベはエルザーの単独犯行であるとの結論。上官である親衛隊大将に報告。

ミュラーは自白剤を投与し「組織的犯行」を自白させようとさらにひどい拷問するのだがそれでも吐かない。やっぱり単独犯を認めざるを得ない。エルザ―はそのまま処刑かと思いきやダッハウに収容。

1945年、ダッハウに収監されていたエルザーは、ネーベがシュタウフェンベルク大佐らのヒトラー暗殺計画に関与した罪で処刑されたと聞かされる。この処刑シーンがリアルすぎる。絶命するまでの時間をそのまま後ろから撮影。

もう連合軍がそこまで迫ってるという状況。エルザ―は停電で真っ暗の中どさくさで処刑される。空襲で死んだことにして。こういう命令を粛々と実行できる官憲は人間ではない。
(なお、ハインリヒ・ミュラーはアメリカとイスラエルが必死で探したけど戦後の生死が不明。死体すらも見つかってない。)

今では欧州の進んだ国のドイツだが、80年前はこんなに狂ってた。ドイツにエルザ―のような正常な人がいたことは希望。親衛隊とゲシュタポだった人物は全員死刑にするべきだった。
ところで今のロシアには1人のエルザ―もいないのか。
エルザ―役の俳優の声質が平野紫耀とほぼ同じだった。

2023年1月28日土曜日

浜辺美波「おしゃれクリップ」に登場

女優の浜辺美波(22)山崎育三郎井桁弘恵がMCを務めるトークバラエティ番組「おしゃれクリップ」(1月22日放送回)に登場。前シーズンの「おしゃれイズム」(藤木直人、上田晋也)時代にも2回出演してるので常連。浜辺は2023年4月期のNHK連続テレビ小説「らんまん」のヒロインが決定してる。

MC山崎と浜辺は「私たちはどうかしている」での共演をはっきり覚えていた様子。コロナ下での撮影だったので一緒にPCR検査で病院へ行く機会もあったらしい。そのとき以来の再会を喜ぶ。ちなみに山崎は研音所属。
今回の浜辺の衣装は全身黒。プライベートでは目立たないように黒が多いらしい。それは東宝芸能の先輩まさみと同じ。

浜辺美波は番組ナレーターの佐倉綾音と「プライベートで大親友!」とのこと。ちくしょう、その情報知らなかった。佐倉は浜辺を「みーちゃん」と呼んでいるらしい。浜辺は佐倉を「あーちゃん」呼びらしい。
番組ではまず浜辺美波のヒストリーをおさらい。2011年の東宝シンデレラオーディションの映像をMCと一緒に鑑賞。当時10歳の浜辺を見て楽しそうに微笑む。「私たちはどうかしている」で浜辺を後ろから抱きしめる山崎のシーンを映像で振り返る。

最近明るくなったという浜辺を3人の証言から探るコーナー。
まず最初に浜辺母からの証言。「先日みーちゃんが帰省した際にクルマの運転練習に同乗した」「思っていた以上に慎重な運転で驚いた」とのこと。そういえば浜辺は運転免許を持っているんだった。浜辺「免許を取るとすごく大人になった気がする。なんか強くなった感じがする。」
浜辺母は娘美波を東京でのレッスンのために空港まで車で送り迎えしたり、中学生のときは娘が太らないようにタニタのおかずを学んで作ったりと陰で支えた功労者。

ちなみに浜辺は昨年の東宝シンデレラオーディションにプレゼンター登壇。グランプリ白山乃愛ちゃん10歳に「当時の自分を重ねた」「つらい思いをさせたくない」という。
浜辺は山崎紘菜、上白石萌音、萌歌の同期たちの中でいちばん年下。「何やってもビリで…」とつらい思い出。こういうの、できないことを責めたり反省させた大人たちが悪い。
2人目の証言者は柄本佑。なんと浜辺オフィシャルグッズのTシャツをファンクラブに入ってまでして購入して着てったのに、浜辺に気づかれなかったという…。
柄本「浜辺は話を聴くのが上手」「おじさんを掌で転がす」「女優さんというより等身大の女の子という気がする」「奥深さがある」。
ファンクラブをまだ退会していない柄本に「お誕生日にメール届く♥」と売り込みトーク。

女優然としてる自分より普段着の自分が好きだという浜辺。「今日は1人で焼き鳥を食べたいからごめんね」と言えるようになりました♥ それって、居酒屋カウンターひとり飲みしてるってことじゃん。
3人目の証言者は佐倉綾音。スタジオ裏から本人登場。昨日も連絡を取り合った仲。
ふたりの出会いのきっかけは神木隆之介の仲介。佐倉「私が元々浜辺美波の大ファンだった」「天気の子で神木くんと共演してたときに、屍人荘で浜辺と共演してた神木に、私がいかに浜辺美波が好きかを語って聞かせてた」「写真集もカレンダーも買った!今世界で一番好きだ!」

浜辺は7学年上の佐倉に対しての「距離の詰め方がスゴい!」
初めてごはん食べに行った後にはもう「私あなたのことあーちゃんって呼ぶって決めた」とLINEが来たらしい。その後はもうグイグイ来たという。最初は車でどこへでも連れて行ってくれる運転手のよう。
佐倉証言によれば「浜辺は8割ふざけてる」とのこと。「今の浜辺は一番まともなところ2割を抽出した浜辺美波」それは事務所の先輩まさみもかつてそうだった。一体なぜ?

佐倉「許せないのが、猫2匹の名前を決める時に名前を相談したら、刃牙(ばき)範馬(はんま)にしようって言い出して」「無視してたら、数100万人のツイッターフォロワーを味方に、友達ん家の猫に範馬と刃牙って付けようと思ったらスルーされて困ってる…って!」「自分の家の犬にはかわいい名前つけてる!」佐倉綾音、どんだけ暴露すんだよ。
佐倉イチオシの浜辺美波が映画「咲-saki-」のときに収録した「きみにワルツ」MV。佐倉が「透明感の権化」だと強引に紹介。VTRが流れるというときに浜辺「悪いわ…悪いですよ…悪いぞこれは…」と、紹介することに悪意があるかのように拒否反応を示す。

佐倉と浜辺のトークが予想以上に取れ高があって、番組がほぼ佐倉が暴露する浜辺の実態みたいになっていて面白かった。実質MVPが佐倉になってたw
自分、声優アイドルとかまったく知らなくて、佐倉綾音もほぼ初見だった。この女、エロいな…と思った。
声質の良い女優は大成する。佐倉綾音には自分も女優としての可能性を感じた。
「浜辺美波大好き♥」とかこれだけ熱く語って置いて、そのうちに男と熱愛発覚とかしたらファンは黙っていないに違いない。

この「おしゃれクリップ」という番組、最後に山崎が黄色いハッセルブラッドらしき中板カメラでゲストのポートレートを記念撮影する場面がある。もしかして、ハッセルってデジタルパックを取り付けできるの?

2023年1月27日金曜日

中公新書2696「物語 スコットランドの歴史」(2022)

中公新書2696 中村隆文「物語 スコットランドの歴史」イギリスのなかにある誇り高き国(2022)を読む。
中世イングランドやフランスの歴史本を読んでるとちょくちょく顔を出してくるのがスコットランド。スコットランドの歴史は単独では高校世界史の記述はほとんどない。こういう本は助かる。

スコットランドといったらスチュアート朝なのだが、それ以前のアルピン家のケネス1世とか、ダンケルド家とか、ベイリャル家、ブルース家とか高校世界史ではまったく習っておらず、読んでいて現在地を見失った。

だがやっぱり内容は英国史とだいたいかぶる。スコットランドが世界史で存在感を増すのがメアリ・スチュアートとジェイムズ6世(イングランド王ジェイムズ1世)。ここからずっとほぼ宗教対立。
王と有力貴族、市民とで信仰が違う状態は強いストレス。清教徒革命、名誉革命の記述が多い。このへん、高校世界史とかなりイメージが違った。
1回読んだだけでは理解できない。今後何度もページをめくらないといけない。

ウィリアム3世って自分的に名君だと思っていた。ジャコバイトの乱ではハイランドの人々に見せしめのような残虐な仕打ち。(グレンコーの虐殺1692)

イングランド王家がスコットランドへと接近していくのがジョージ4世やヴィクトリアの時代から。アバディーンシャーのバイモラル城を購入したのもビクトリアとアルバート公の時代。

スコットランドの宗教の変遷についてのページが多い。ドルイドの古代、ケルト系キリスト教、ローマ・カトリック、そして長老派と呼ばれるプロテスタント。このへんは日常生活では得られない知識。
あとはスコットランド出身の偉人たち。デイヴィド・ヒューム、ロバート・バーンズ、ウォルター・スコットといった人々を紹介。アダム・スミスもジェームズ・ワットもスコットランド人。アメリカ合衆国にも多くの人材を供出。

ジェイムズ・クレイグがつくったエディンバラ新市街。今ではすぐにストビューで見れて便利。
インヴァネス-フォートウィリアムを結ぶカレドニアン運河って、ネス湖のことか!
アイルランドからキリスト教を中部北部ピクト人たちに伝道した聖コロンバ(521-597)にはネス湖の怪物を鎮めたという伝説が?!

グレートブリテン連合王国の時代を経て、だんだんと自治権を得ていくスコットランド。1934年にSNP(スコットランド国民党)が結成。1970年ごろまでやっと1議席だったのが2022年には47議席で第三の勢力。(20世紀後半は労働党と接近し保守と距離)

自分、トニー・ブレア首相がエディンバラ出身、ゴードン・ブラウン首相がグラスゴー出身だったって知らなかった。ブレア政権のときにスコットランド議会(1999-)が復活。
現在のニコラ・スタージョン(2014-)でスコットランド首相5代目。
2014年のスコットランド独立住民投票で票がイギリス残留派に流れた理由のひとつが北海油田!?
おそらく次の独立投票では独立派が過半数になるかもしれない。スコットランドよりも人口が少ないアイルランドのように、独立国としてEUやアメリカと輸出でやっていく手がある。

ゲール語復興運動の存在も知らなかった。
スコッチウィスキーは飲みたい。あと、ハギスという謎料理を食すならイングランドかスコットランドに行かないといけない。

2023年1月26日木曜日

Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”をWOWOWさんが放送

昨年のPerfume 9th Tour 2022 “PLASMA”を今年1月8日にWOWOWさんが放送。今回も欠かさずチェック。
2022年10月30日さいたまスーパーアリーナ公演を収録したもの。
Perfume LIVE 2022 [polygon wave]はアマプラ配信だったのだが、今回の“PLASMA”は、いつも通りのWOWOWさんの収録と編集と放送。

長年Perfumeを見続けてるけど、もうライブ参戦は引退。こうやって放送されるものを眺める程度に落ち着いた。
なんと9度目のツアーということに驚いてる。ライブ画映像が増えたために、どれがどれなのかとうにわからなくなってる。音楽グループやバンドのファンやってると、いずれ脳内キャパを超えてしまい、あの場面はどのツアーだったか?もう区別がつかなくなる。
02.Flowの3人の完璧にシンクロしたダンスを見るだけで感動の涙。もうこれだけ長い期間ずっとこのメンバーで踊ってると、それはもはや大学教授レベルのスキルだと思う。

ハイブロウな03.ポリゴンウェイヴから04.再生へと移ると自分が慣れ親しんだPerfumeに戻った安心感と懐かしさ。

最初のMC。3年近く経ってもやっぱり声出しもないマスク着用公演だったことに気づかされる。これが新時代のコンサートスタイルなのかもしれないけど、日本がまだ元に戻れてないもどかしさを感じる。拍手でしかレスポンスを伝えられないなんてつらい。あ~ちゃんの楽しいお喋りにもっとどっかんどっかん笑い声があっていい。

30日のグループ分けは「マイ」「メン」「ダイ」。なんのこっちゃわからない。
このグダグダやたら長いMCを久しぶりに思い出した。3人の声質が以前よりも高く可愛らしくなってるように感じた。
07.ナチュラルに恋してとか久しぶりに聴いた。こんなベース音だったっけ。
08.Time Warpのちょいダサ感が好き。09.∞ループになんかYMOを感じた。

11.アンドロイド&、12.マワルカガミには変わらないPerfumeの核心を感じた。新しくて懐かしい。
P.T.A.のコーナーがちゃんと今もある。小中学校が統廃合されてもちゃんと盆踊りはやっているという安心感に似たものを感じる。Perfumeで「ととのう」という感じ。
そしていきなり13.Party Makerという「緩急」。

14.エレクトロ・ワールドは自分がPerfumeに狂うようにハマっていったきっかけの曲。
15.Puppy loveは何度も何度も夏フェスでやってた印象。強烈に懐かしい感情。
ラストMCであ~ちゃんが10年前のさいたまスーパーアリーナ公演を思い出させてくれた。ああ、もう10年経ったのか。

当日のセットリストを備忘録
01.Plasma
02.Flow
03.ポリゴンウェイヴ
04.再生
MC1
05.Drive'n The Rain
06.ハテナビト
07.ナチュラルに恋して
08.Time Warp
09.∞ループ
10.Spinning World
11.アンドロイド&
12.マワルカガミ
P.T.A.のコーナー
13.Party Maker
14.エレクトロ・ワールド
15.Puppy love
16.STAR TRAIN
MC2
17.さよならプラスティックワールド
18.Plasma

2023年1月25日水曜日

黒岩重吾「北風に起つ」(1988)

黒岩重吾「北風に起つ 継体戦争と蘇我稲目」(1988)を読む。1991年中公文庫初版で読む。3月にBOで110円ゲット。
黒岩重吾(1924-2003)の古代史小説を読むのはたぶんこれで3冊目。なんと継体天皇(450?-531?)のヤマト入りと蘇我稲目(506-570)を描いた古代史小説。こんな本があったことを今までまったく知らなかった。

てか、継体天皇みたいな古墳時代の情報が少ない大王で620ページ大長編を書けるものなのか?
自分の継体天皇知識は、雄略朝が断絶したとき大伴金村らによって越の国から応神の子孫ヲホド王が擁立されたということ。九州筑紫で磐井の乱が起こったこと。現在の皇室を確実に遡れるのは継体天皇までということ。大山古墳は仁徳陵というより継体陵かもしれない?ということ。それだけ。
では気合を入れて読んでいく。なにせ分厚い。

ほぼ蘇我稲目が主人公。父蘇我駒(高麗)は文字を学び百済から将軍を招き大和で勢力を伸ばす野心。ヤマトは政権空白期。越から男大迹王を迎え入れることに熱心な大伴金村物部麁鹿火とは距離を置いて中立。
稲目は石川姫に夢中だが父駒は橘王女との政略結婚を強要。
男大迹王は河内国樟葉宮で大王に即位するも大和に入ることに慎重。有力豪族の平群真鳥が男大迹王を大王と認めないし、北の蕃夷と蔑む。

稲目、男大迹王、平群、三者それぞれの思惑、婚姻、そして朝鮮半島の国際情勢。
黒岩氏が「きっとこんな会話したはず」というやりとりが延々と続く。会話と心の声のわりに事態の進展具合が遅い。一族の消長がかかってるのでみんな慎重。

平群は男大迹王のヤマト入りを阻止すべく筒城宮を襲撃。ここ、ずっと平群真鳥の血気盛ん息子鮪(しび)が主人公。わりと軍略と戦記の記述が多い。
そして平群は破れ一族は自決。
平群が滅びると蘇我も物部も危機感。このままでは男大迹王擁立の最大の功労者大伴が増長してしまう。

稲目は父駒を説得し、まだ9歳の韓子姫を物部尾輿に与えることで姻戚関係と同盟。尾輿は物部本宗家の麁鹿火にも蘇我から「贈り物」が必要だと稲目に告げる。駒は石川姫を与えるしかないと言うことで稲目は涙目。蘇我と物部が組んだことで男大迹王は弟国宮へ戦略的一時撤退。
稲目は男大迹王暗殺部隊を送るもほぼ全滅。この本で戦闘シーンはここまで。

そうこうしてる間に男大迹王は山背の秦氏、安倍氏も倭国大王即位を支持。蘇我氏の傑物稲目は考える。時代の流れに乗っかって大王をヤマトに迎え入れよう。大友や物部に比べて武力で劣るけど、知略で蘇我を興隆させよう。
百済が高句麗との戦いで劣勢。その感に新羅は加羅諸国を併呑しようと狙う。新羅は筑紫の磐井と結束を強める。蘇我は百済聖明王から物部・大伴、男大迹王らが結束してヤマト政権を安定化させてほしいと伝えさせる。

ヤマト豪族たちの駆け引き、男大迹王側の政略。稲目は不仲妻の橘王女を男大迹王の弟王子檜隈高田皇子(後の宣化)の妻に差し出す。惜しくはないけど最後まで気位が高い橘王女に嫉妬もする。だが、こいつは大王にしたくない。それに尾張連の子たちが大王になることにはヤマトの豪族たちは認めない。手白香皇女(仁賢天皇の皇女)が生んだ天国排開広庭天皇(後の欽明)を大王にする!(稲目の策略で安閑・宣化は大王に即位してないっぽい)

そして男大迹王は磐余に迎え入れられる。長い長い思慮の末の決断。武力によってヤマトに入ることもできたけど、「ヤマトの総意によって迎え入れ要請を聞き入れてやるという態度で大王にならなければすぐ潰される。」という男大迹王の長期的視野。

そして蘇我稲目は大友、物部を立ててやるけど、いずれは大臣として蘇我を大きくすることに野心。尾輿と組んで金村を失脚させ、祭祀権と石上の武器庫を押さえる物部に対抗するには仏教をこの国に広め大王家に浸透させよう…というところで長いドラマが終わる。

自分、古墳時代の大王については古代史本を何冊か読んできた。それでも今もぼんやりとしかイメージできない。いろんな説があるし。

こういう小説でドラマとして見るといろいろ活き活きとイメージできる。巻末に黒岩重吾氏による創作上の学説の取捨についての解説がある。記紀に少ない記述しかない継体についてここまでの長編小説に仕上げた苦労。そして想像力に感心。
男大迹王(継体天皇)の出自は不明。年齢については日本書紀よりも古事記の記述によって死亡時が43歳という説をとっている。蘇我稲目の妻の氏族も不明。

2023年1月24日火曜日

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015 ワーナー)をやっと見る。オーストラリアとアメリカの合作。前作「マッドマックス/サンダードーム」以来27年ぶりに製作されたシリーズの第4作なのだが、自分は今作で初めて見る。
昨年12月にBSプレミアムで放送されたので録画しておいたものを見る。

監督脚本はジョージ・ミラー。長い期間温めてた企画。主演はトム・ハーディとシャーリーズ・セロン。日本でも大きな話題作。同年のアカデミー賞10部門ノミネート。最多6部門受賞作。

核戦争により文明社会が滅んだ後の世界が舞台。人々も荒廃。生き残った者は物資と資源、そして女を武力で奪い合う。たぶん北斗の拳と同じ世界観。

荒廃したウェイストランド(ナミビア砂漠でロケ)で、元警官マックス(トム・ハーディ)は、命を守れなかった人々の幻覚がフラッシュバック。
ウォーボーイズ(盗賊のようなやつら)の襲撃によりマックスはインターセプターを奪われ身体を拘束され、核汚染後の疾病治療供血利用の検体。なにこの地獄。

イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)というリーダー(デス声)が独自の教義と地下水(アクア・コーラ)と食料生産を支配することで独裁社会を築いてる。
ガスタウンへガソリンを奪うために出陣。ジョー部隊を統率するのがフュリオサ大隊長(シャーリーズ・セロン)。

近未来SFというジャンルかもしれないが、たぶん弥生時代の村と村の戦争ってこんなかんじじゃなかったか。
クルマとガソリン、輸血医療のある荒野の古代社会。古代エジプトやメソポタミアの戦争はこんな感じか。人間の尊厳というものが失われた世界。

美しい女は子を産むための家畜扱い。実はフュリオサ大隊長は5人の妻(まるでスーパーモデル)を「緑の地」に逃亡させる計画。
フュリオサの裏切りと、妻たちとお腹の子を奪われたジョーはウォーボーイズ(みんな狂ったテンション)を引き連れ進軍。この自動車部隊が何なん?これがマッドマックスの世界観。

マックスはウォーボーイのニュークス(ニコラス・ホルト)の「血液袋」として追尾車両先頭に鎖で拘束固定。追走戦に否応なく巻き込まれるのだが、この状況でどうしてマックスは生きてる?

すると進行方向から大砂嵐。これがまるで火砕流のよう。追走車両は大破。拘束が外れたマックスは鎖とチューブを外そうとするのだが外せない。

5人の妻たちを銃で脅して鎖を切断しようとするが上手くいかない。フュリオサとの壮絶死闘アクションの末にウォー・リグ(どんだけでかいガソリントレーラーなんだよ)を制圧するのだがエンスト?これはフュリオサにしか扱えない。フュリオサと5人の妻と行動を共にするしかない。
何かが引っかかってる。それを取り除くことすらも危険すぎるミッション。だがやっとマックスの顔を覆ていたマスクが外れた。

人食い男爵と武器将軍の部隊も一緒にフュリオサを追走。ガソリン取引も無効。
バイク部隊の敵の造形も化け物。みんな命知らず。どんだけ砂漠を爆走するんだよ。

いいとこ見せて英雄になるはずが、ジョーの花嫁スプレンディド奪還に失敗(死亡)しジョーの元に戻れなくなったニュークスもマックスとフュリオサの仲間に加わる。
ひたすらトレーラーチェイスの砂塵と銃撃と爆破とアクション。

ロングドライブの末にフュリオサはかつての仲間(みんな老婆)と会えたのだが、土壌汚染により目的の地はすでにない。みんな失われた。フュリオサは絶望の慟哭。憐れな地球人類。絶望SF。

こうなったらかの邪知暴虐の王ジョーを必ず除くしか生きる道はない。マックスとフュリオサ一行は砦に戻ってジョーとの決戦へ。さらに多くの犠牲と血みどろ大殺戮。よくこんな状況で車が走れる。EV車じゃむりだな。

マックスとフュリオサが生きてるのは体力もあるけど奇跡的な運の良さ。そして奇跡のような仲間の連携で渓谷拱門を突破。
マックスの必死の延命治療で瀕死のフュリオサは蘇生。生き延びる。僭主は滅び、民衆は歓喜。

とんでもない壮大な映画だった。これを作った人々はすごすぎる。どんだけ制作費がかかってるのか?調べてみたら、1億5000万ドル?!
日本の民衆も早く自民党と財務省をこんなふうに倒したい。
ちなみに自分はこの映画を長年避けていた。今回見ようと思えた理由、それは黒島結菜。ちむどんどん宣伝期に「あさイチ」プレミアムトークで「大好きな映画」だと語ってた。

黒島はこの映画を劇場で5回ぐらい見たそうだw なんで? 5回見るって、どんだけ好きなんだよ。
「行って戻ってくるシンプルな話」「女性がかっこよく描かれてるところが好き」なんだそうだ。

2023年1月23日月曜日

集英社新書「物語 ウェールズ抗戦史」(2017)

集英社新書0904D「物語 ウェールズ抗戦史 ケルトの民とアーサー王伝説」桜井俊彰(2017)を読む。同じ著者の「消えたイングランド王国」という本が面白かったので。

ウェールズって日本人にはほとんどなじみがない。ウェールズ人は人口311万人で全UK人口6565万人のうち4.7%しかいない。(スコットランド人540万人は8.2%、北アイルランド人186万人は2.8%)。
ウェールズ人はリトアニア285万人、スロベニア207万人よりも多い。

ウェールズの語源は大陸からやってきたゲルマン系アングロサクソン人がケルト系ブリトン人を呼んだ「よそ者」の古英語「Wealas」による。ウェールズでは自らを「カムリ Cymru」と呼称。それ、まったく知らなかった。

ブリテン島の歴史はカエサルの遠征から始まる。クラウディウス帝の時代にローマ属州ブリタンニアが成立。以後400年ローマ治世下でローマ化。
ブリトン人のイケニ族プラスタグスの王妃ボウディッカの反乱って今までまったく聞いたこともなかった。この時代は部族同士で殺し殺されという殺戮が普通。スエトニウスのローマ軍によって8万人のブリトン人が殺されたらしい。

ベイドンの丘でアンブロシウス・アウレリアヌス率いるブリトン人がアングロサクソン人との戦いに勝利した記憶が後のアーサー王伝説?!

ウェールズ側から見た英国史という視点が新しくて新鮮。だが、知らないことだらけで自分の現在地を失う。
英国の教会といったらカンタベリー大司教。英国史の重要なプレーヤー。だが、ウェールズにはセント・デイヴィッズというさらに古い教会があったこともまったく知らなかった。
ウェールズの人々は「セント・デイヴィッズはカンタベリーの下部組織じゃない!」とローマ法王に働きかけもしたのだが時代情勢によって夢を野望は打ち砕かれる。

驚いた箇所がエドワード1世についての著者の評価。「英国中世史において、いや全英国史において最強の、機略に富んだ、かつ最も聡明だった国王に思えてなりません。」
自分、ジョン王からエドワード2世までみんな無能だと思ってた。
エドワード1世の時代、1282年にウェールズは征服される。以後、一度も政治的独立を達成したことはない。このとき息子エドワード2世にプリンス・オブ・ウェールズという称号が与えられる伝統ができた。

1348-1349年のイングランドにおける黒死病大流行は人口300万が200万まで減少。農民たちの数が減ったことでかえって農民の存在感が増した。
リチャード2世の時代、1381年にワット・タイラーの乱。フランスでも1358年にジャックリーの乱が起こってる。
そしてヘンリー4世時代の1400年にウェールズでも横暴なイングランド人領主に対してオワイン・グリンドールの乱が起こる。これがウェールズ独立戦争といっていい規模だった。この貴族の名前もまったく世界史教科書に出てこなかった。

ヘンリー7世も日本の世界史教科書だと突然出てきた人にすぎないのだが、この本ではとても詳しく登場するまでを解説。ヘンリー・テューダーはランカスター家の最後の王位継承権を持った男児として幼い日々から英才教育。ウェールズの人々にとっては「アヴァロンで眠っていたアーサー王が甦えり、再び全ブリテンの王となる!」という意味合い。

2023年1月22日日曜日

シムソンズ(2006)

「シムソンズ」(2006)を見る。冬季五輪競技カーリングを題材にした、もう17年も昔の青春映画。主演は当時人気若手女優だった加藤ローサ
監督は佐藤祐市。脚本は大野敏哉。音楽は佐藤直紀。配給はドリームステージピクチャーズ。

これはDVDが出たときに2回ぐらい見た。それ以来15年ぶりに見返した。驚くほど何も覚えてなかったw
加藤ローサ、藤井美菜高橋真唯星井七瀬の4人は公開当時は期待の若手女優だったのだが、その後あまり人気が出なかった。
加藤は早々にサッカー選手と結婚。その後はもうぜんぜんテレビでも映画でも見かけなくなった。

藤井美菜は慶応進学後はパッとせず、後に韓国へ渡り人気女優。今も女優として映画にドラマに活躍中。
高橋真唯は現在では岩井堂聖子という名前で女優として活動中。星野についてはほとんど知らない。
この映画、やる気のないコーチ役で大泉洋が出演してることで有名かもしれない。あと、田中圭も出演してる。

オホーツク海とサロマ湖に接した北海道常呂郡常呂町(現北海道北見市)の女子高校生がカーリングチームを結成する話。
ヒロイン和子は前向きでニタニタ笑ってるバカ。なんだか落ち着きがなくうるさい。
家は母(森下愛子)が経営する小さな田舎ブティック。高校卒業後の進路をどうする?一生この町で過ごさないといけないのか?何かキラキラするものはないのか?

常呂町ではカーリングが名物で身近なメジャースポーツ。ヒロインが憧れる地元の英雄アイドルカーリング選手「真人さま」が田中圭。田中圭がまるでこどものような顔してる。
なぜか田中から「カーリングチームを作ってみないか?」と誘われる。和子は経験者だと偽る。
常呂町にテレビディレクター松重豊がカーリング取材に来てる。松重さんもギリ青年といっていいほど若く見える。ADが山本浩司さんだ。やっぱり若い。

ヒロイン加藤ローサの友だちはカーリングに熱意はない。家でカーリング教則ビデオを見る。伝説の選手が夏八木薫さんだ。
ヒロインはチーム名をシムソンズと名付ける。
真人の代理で来たコーチ大宮(大泉洋)は漁船の船員で元カーリング選手。こいつは合コンにしか関心と興味がない。すぐにチーム全員が素人だとわかってしまう。
大宮からよく話を聴くと尾中のためにつくられたチーム。
尾中(藤井美菜)がチームメートと口論しブチギレてその場を去るような俺様ワンマン選手。クールどころか冷めまくってる。めちゃくちゃ感じ悪い。いつも怒ってる。でもそこが美しい。鼻がつんと高い。

で、北見の競合チームホワイトエンジェルズとの練習試合。相手チームに派谷恵美さんがいる。コーチが丸山智己さんだ。
ド素人丸出しシムソンズはストーンを投げるたびに必ず転ぶ。あっさり大差で負ける。尾中さんはさらに激怒。
和子は落ち込むのだが、「まあひまつぶしだし」

しかし、和子は1点取りたい!と燃え上がる。大学進学を目指す史江(星井七瀬)、畜産農家の小野(高橋真唯)も1点を取るために、ホタテ漁船の大宮にコーチを必死にお願い。
コーチ料のお金を貯めないといけない。玉ねぎを剥き、ホタテスープを無許可で売る。尾中さんもなぜか合流。

拾い物のカーリング用具と大宮の軽トラがあればもう練習できる。貸しリンクで働きながら練習の日々。バックにジュディマリ「小さな頃から」が流れる。

だがそうは甘くない。子どもチームとの練習試合にもゼロ封で負けそう…というのも尾中の天才ショットで1点取って引き分けに持ち込む。尾中さんはますますイライラ。その1点は反則による1点だった。その件でケンカ。チームはバラバラ。

コーチ大宮には反則ショット申告により北海道大会決勝で負けた過去があった。それでチームの仲間とギクシャク。その話を石神さんから聴いて和子は再び情熱を燃やす。
和子は勝利至上主義の尾中に熱く訴える。小野も受験勉強の史江に涙の訴え。

みんな行く場所が海辺の同じ場所。史江の5円玉の表が出たらまたカーリングをやることにする。裏が出てしまったのだが、尾中は表が出た!と嘘をつく。4人はふたたびカーリングに情熱を燃やす。北海道大会で本当の1点を取るために。

大会で初得点を取ると、後はなぜか連戦連勝。そして決勝の相手は因縁のエンジェルス。だが、大宮に正式なコーチの資格がないことが仕合前日に判明。試合はコーチ抜きで戦うことに。そしてラスト一投の意外な結果。

なんか、すごくテンポがいい。過不足のないベタでわかりやすい脚本。普通に面白い良い青春映画。見ててまったく飽きなかった。
カーリング青春映画ってこれ以外にないだろうと思う。これは冬季五輪のたびに地上波で放送するべき名作。

主題歌はJUDY AND MARY「BLUE TEARS」。調べてみたらジュディマリは2001年に解散してる。2006年2月に発売されたCOMPLETE BEST ALBUM「FRESH」のタイアップだったようだ。

2023年1月21日土曜日

北杜夫「マンボウ周遊券」(昭和51年)

北杜夫「マンボウ周遊券」(昭和51年)を読む。新潮文庫(昭和63年18刷)で読む。これも読みたくて読んだ本というわけでなく、友人の本棚にあったので読む。

北杜夫(1927-2011)は歌人で医師の斎藤茂吉の次男。兄はエッセイストで精神科医の斎藤茂太。祖父の代から医者の家。
医局勤務時代から外洋航路船に乗り込んだりして世界を見て回ってる。この本もそんなエッセイ。

遠藤周作と一緒にパリへ講演旅行。ネアカの遠藤に対して北は内向的で人見知り。鬱病でもある。小心者で心配性。締め切りに追われ塗炭の苦しみを味わってからは締め切りに余裕がないと気が気でない。だが、躁期になると怖いもの知らずになるらしい。

自分は知らなかった。北杜夫が阪神ファンだったことを。昭和50年は長嶋巨人が初めて最下位になった年。巨人が弱すぎてみんな心配してた。この年は広島、中日、阪神が優勝を争ってた。試合の様子を気にしてる北。自分もなんとなく知ってる選手たちの名前を出して実況。

この本は何といってもパリ旅行、小笠原旅行、マダガスカル旅行、そしてソ連旅行の箇所が貴重。
昭和50年2月、遠藤周作、阿川弘之とヨーロッパへ講演(在留邦人たちの招待?)に出かけたのだが、日本赤軍のテロが心配?!そこは時代を感じた。遠藤「阿川、おまえがおれたちのなかでいちばん右翼的だ。狙われるとすれば、おまえだ。おれはおまえと一緒に歩かんことにする。北君、阿川のそばに寄らんほうがいいぞ。」酷いw

フランクフルトの地下にある食堂で楽士に曲をリクエスト。だが、ナチス時代の歌は大っぴらには演奏できないという時代。

北杜夫の母親が大病院の娘で上流階級。フォアグラの缶詰では満足せず文句を言う箇所には嫌悪感w
北も遠藤周作も軽井沢に別荘を持っていた。別荘がキツツキのせいで穴だらけになってるという箇所はせいせいするw

昭和50年7月には阿川弘之とナイロビ、そしてマダガスカルへ。現地日本大使(元海軍)と行動。さすが上流階級たち。あんまりマダガスカル旅行には今と違いを感じない。

昭和51年2月に星新一、大庭みな子と横浜からナホトカ、汽車でハバロフスク、飛行機でモスクワへと、ソ連作家同盟の招待でソ連旅行。当時のソ連の旅行記になっていて興味深い。北は現地の言葉をソ連語、ソ連文字と呼んでいる。
レニングラードやバクー(当時は石油関連施設に日本人もいた?当地ホテルに日本人も宿泊してたらしい)にも行ってる。

ロシア人通訳エレナの話によると「ソ連では頭のてっぺんから禿げだすと浮気をし、額から禿げだすと賢人になるといわれています。レーニンは十九歳から額のところから禿げだしました」

バクーでの作家人大会では偉い人の演説が長くてウンザリ。
ソ連にきてよかったと思うが、私はソ連をあまりにも知らない。なにせ、バクウの演説会でうんざりしていたとき、後方の垂幕に人を睨みつけるような人物のでっかい写真が貼ってあり、気になってしかたがなかった。
北「あれがブレジネフかい?」
星「冗談じゃない。あれがレーニンさ。そのくらい知らなくちゃ困るな」

北杜夫、医者で作家で世界を旅していても常識はあまりない。

2023年1月20日金曜日

長澤まさみ「SING / シング ネクストステージ」(2022)

「SING / シング ネクストステージ」(2022 ユニバーサル)を見る。原作脚本監督はガース・ジェニングス。
日本語吹き替え版は前作とほぼ同じ。ヤマアラシのアッシュは前作に引き続き長澤まさみ。今回も歌にも挑戦。まさみ目当てで見る。なので吹替え版しか見てない。

インドゾウ少女ミーナ(MISIA)が不穏なジャングルをさ迷ってるとアリスインワンダーランドのように穴に落ちると最初の楽しい歌と踊りのミュージカルタイム。
これがニュー・ムーン劇場。支配人バスター・ムーン(内村光良)はコアラ男。客席にスカウトがいるということがわかってる。
途中で帰ろうとする犬女スカウトに話を聴くと「メジャーリーグでは通用しない」と言い残して去る。ムーンは最初から挫折感。
登場人物たちの会話リズムがやはりハリウッド。多様すぎる社会。

開始11分で長澤まさみ歌唱のヤマアラシロックショー。声がまさみだが顔と表情の動きがまったく日本人じゃない。アメリカの子どもたちはこんな表情のアニメキャラと両親を見て育ってる。

アメリカのショウビズ界は厳しい。スカウトから不評だったので新しいショーを考えないといけない。みんなを乗せたバスは夢のレッドショアへ。まるでお菓子の街。
アポなしでは上に繋がないというクリスタル社の受付を清掃員に扮して突破。完全に不法侵入。そこまで必死?

メディア界の大物ホッキョクオオカミ男のクリスタル社長(大塚明夫)のオーディションを受ける。こいつがただ引き下がれブザーを押すだけ。数秒でダメ出し。態度が悪い。こんなやつの審査を受けるとか最悪。
なんでこんな社長の興味と関心を引き付けた?その歌が好きというだけ?

ロックスターのクレイ・キャロウェイ(稲葉浩志)と伝手があると誤解した社長から楽曲使用許可を得てくれば契約という段階へこぎつける。期限は3週間。
だが、クレイは奥さんを亡くしてからずっと引きこもってるらしい。連絡先もわからないし会える算段もない。ショーの制作を進めながらのクレイ・キャロウェイとの伝手探し。

アメリカのショウビズ世界ってこんなふうに作られてるのか。こんな人々ばかりなのか。
キャロウェイの自宅を訪問するも失敗するイグアナのミス・クローリー(田中真弓)のシーンはアニメでなければできない。
社長の娘ポーシャ(アイナ・ジ・エンド)は怖いものなしで無敵。親子で何でも無理を通せる。これがアメリカか。

ムーンとアッシュはキャロウェイに接触はできたのだが、これはかなり偏屈で失意が重傷。
もうロックスターじゃない。15年歌ってもいないし自分の曲を聴いてもいない。
あとは、アッシュがどうやってキャロウェイの心に入り込むか?という接待テク次第か。
アッシュはなんとなくギター弾きながら控え目に歌ってたらキャロウェイが心を開いた!w
だが、社長娘ポーシャがクビにされたと誤解。クリスタル社長激怒。逃げるムーン。

そして一か八かの一発逆転大勝負。劇場乗っ取りゲリラ公演。え、1回もゲネプロとかしてないのに?クレイ・キャロウェイは15年歌ってないのにいきなり本番?
しかし、そこでまさみ。まさかの長澤まさみと稲葉浩志のデュエット歌唱w

日本の子どもにこれがウケるとはとても思えない。すべてアメリカセンスなのだが、子ども向けであってもこのクオリティはさすがだ。ショーとして楽しめた。

声優と歌唱の仕事を引き受けるまさみがすごい。まさみはすごく前向きで野心を持っている。どんな仕事も受ける。引き出しにない役でも引き受ける。

2023年1月19日木曜日

中公新書1544「漢奸裁判」(2000)

中公新書1544「漢奸裁判 対日協力者を襲った運命」劉傑(2000)を読む。

自分、日本が無条件降伏した後に汪兆銘南京国民政府の首脳たちがどうなったのか?今日までまったく考えたことがなかった。
満洲国は「ラストエンペラー」でなんとなくイメージしてた。上海や南京は川島芳子や李香蘭の物語によって「漢奸裁判」という、対日協力者を売国奴として裁く法廷を開設。
主に日本の侵略に怒り狂ってた国民向けの、まるで裁判と呼べないようなパフォーマンスをイメージしてた。それはたぶんおよそ間違ってはいない。

後の中共は大躍進や文革でデタラメやってたことは知ってる。だが、国民党もおよそデタラメ。蒋介石も独裁者で権力欲が強い。自身は国民にウケの良い抗日の英雄ポジションにいたくて軍の指揮に専念。対日外交と和平をヨーロッパから呼び戻した汪兆銘(中国では汪精衛と呼ぶのが普通)に任せた。

中国では漢奸といったら南宋の秦檜。金が攻め入ったとき主戦派の岳飛を裏切ったため、中国人にとっては売国奴の中の売国奴。岳飛の墓の前に唾を吐くための像が設置されているとか、日本人からすると中国人のすることは俗悪。

日本との和平に乗り出した人々は誰もが皆「漢奸」にならないように細心の注意をしていた。対華21か条のようなものは絶対に認められないし、満洲国も求められない。日本軍は撤兵させる!と息巻いても、交渉の現場では双方に何らかの妥協が必要。だが、中国人にとって妥協は投降。投降は売国。それって、死ぬまで戦えってこと?!

この本の前半は秘密の和平交渉の結果、日本占領下で汪兆銘の南京国民政府ができるまでも、関係者の著作や記録から詳細に教えてくれる。日本側は汪兆銘の実力を評価してなかったし、南京政府には兵力もない。このへんは世界史の教科書ではぜんぜん教えてくれない。
汪兆銘は日本の敗戦が現実を帯びてきた1944年11月に名古屋帝国大学病院で亡くなってる。以前に襲撃されたときの体内の弾丸が炎症を起こしてずっと苦しめていた。体内の弾丸摘出って昔は難しかったのか。
中国ではしばらく汪兆銘は蒋介石に暗殺されたという説が強かったそうだ。自分は知らなかった。

汪兆銘の墓は戦後すぐに蒋介石の命令で爆破。棺から遺体を取り出し火葬して棄てられた。かつて孫文と共に辛亥革命を実現させた功労者だったのに、これは酷い。
無条件降伏した日本は南京政府首脳たちに寛大な措置を蒋介石にお願いしたのだが返事はない。
戴笠将軍(軍統)は政治的解決で寛大に取り扱う様子だったのが、将軍の飛行機事故による急死で雲行きが変わる。

日本占領下の北京で臨時政府の首班だった王克敏(獄死)、上海で維新政府のトップだった梁鴻志(銃殺刑)も漢奸として捕らえられた。

南京政府の首脳たち、汪兆銘の妻陳璧君も逮捕され無期懲役。
汪の死後政権トップだった陳公博は死刑。外交部長で駐日大使だった褚民誼も死刑。そもそも南京政府は重慶政府と戦ってもいない。反論しても証拠を調べようともしてない?
周仏海は早くから蒋介石とパイプ役で上手く立ち回り重慶国民政府に貢献。裁判で死刑が確定した後に蒋介石の命令で無期に減刑。(48年2月に獄死)
蒋介石も怖いよ。

日本の支配下で要職につくことは中国ではすべて漢奸。魯迅の弟周作人も文化漢奸。(中国では清の李鴻章も漢奸。じゃあどうすれば?)
南京政府に関わって逮捕された漢奸容疑者は4692人。1947年までの2年間、漢奸として起訴された人間は中国全土で30828人。死刑を含む刑罰を受けた人は15391人。

処刑された人に繆斌工作で知られる繆斌(みょうひん)がいる。この人が一番早く漢奸として逮捕、スピード裁判で処刑されている。
結局、日中の和平実現に向けて早くから動いた人は罰せられ、主戦ぶって隠れていた人のみが無事。市民と兵士が死んでいくのを座視できなかっただけなのに哀れ。
(それは文革も同じ。大躍進の失敗をなんとかしようと頑張った人は殺され、毛沢東語録を手に上手く演じていた人は生き抜けた)

普通の人が政治に関わってはいけない。何かあったら殺されるかもしれないことを念頭に置いておかないといけない。
たぶんウクライナの親ロシア派地域のリーダーたちは、仮にウクライナが大反撃で奪還されてもロシアという亡命先がある。なので命は助かる。日本軍に占領された地域の中国人は抵抗しても死。おもねっても死だった。つまり逃げるが勝。そうしたのが蒋介石。

2023年1月18日水曜日

西野七瀬「ホリック xxxHOLiC」(2022)

ホリック xxxHOLiC(2022)を見る。原作はCLAMP「XXXHOLiC」ですでにアニメ化もされてるらしい。監督は蜷川実花。脚本は吉田恵里香。制作と配給は松竹、アスミック・エース。

主演は神木隆之介くんのようだ。冒頭から何か邪悪そうな魔物に追いかけられている。都心の街を全速力で逃げている。どすんと人とぶつかる。それは迷惑。
もう死のう…と思ってると異界のような店に迷い込む。

柴咲コウが何か女王様のよう。煙管からピンクの煙を吐く。「あなたの願いは?」「何かを得るには対価が必要。いちばん大切なものを差し出さないとだめ」
神木はおとなしい家政婦のようなもの。

するとお客様2号趣里が登場。妬まれやすいモデルとのこと。柴咲から与えられた指輪を小指にはめると邪悪な煙が消えた。

四月一日と書いてわたぬきと読ませる神木は学校の廊下の角で他生徒百目鬼(松村北斗)と衝突。ツインテール玉城ティナ登場。
放課後、渋谷の街で趣里を発見し観察。約束を破って指輪を外すと気が狂ったようになる。なにこれ怖い。
するとそこに金髪でスケスケ衣装の女郎蜘蛛(吉岡里帆)が登場。なんだか舞台の芝居を見てるよう。どうやらこの映画は妖怪変化もの?ひたすら妖しい幻想。
猫娘西野七瀬の登場は開始38分過ぎごろ。金魚鉢持って微笑みながら金魚を飲み込むシーンのみの出演。柴咲とセリフを交わすのはひとことだけ。

橋本愛もワンシーン。西野から続くコミカルなシークエンスのワンシーン。橋本と神木というと「桐島部活」を思い出す。神木くんはあまり変わってないけど橋本はだいぶ変わった。

いやまったく映画らしくない。たぶんアニメや漫画を見る層に向けた映像。ストーリーというものが大してない。これは大人が見るのはキツいかもしれない。

ひまわりちゃん(玉城ティナ)が何か邪悪なものを抱えてる。助けてやりたい!柴咲の力を頼らずに神木はひまわりのために身代わり。
吉岡が登場し「死んじゃうんなら目をもらう」なんだこれ。吉岡里帆にこういう役は合ってないんじゃないか。おっ〇いと谷間を見せつける衣装は似合ってると思うが。吉岡が戦隊ヒーローもの敵ボスキャラを演じたらこうなるというショウケース。

途中から「時をかける少女」のような展開。自己犠牲もテーマか?見ていてもう何がなんだか。ビジュアル重視の映画なのでどうこう言うつもりはないけど。
主題歌はSEKAI NO OWARI「Habit」(ユニバーサル ミュージック)

2023年1月17日火曜日

ディクスン・カー「絞首台の謎」(1931)

ジョン・ディクスン・カー「絞首台の謎」(1931)を和爾桃子新訳の2017年創元推理文庫版で読む。
東京創元社さんは近年どんどんカー新訳を出している。原題を直訳すると「最後の絞首台」だが、伝統的に「絞首台の謎」と呼ばれる。「パリ警視庁の魔王」アンリ・バンコランの活躍を描く長編第2作。
THE LAST GALLOWS by John Dickson Carr 1931
もうディクスン・カーは読まなくていいかな?と思っていた。最初に読んだ長編「皇帝のかぎ煙草入れ」短編「妖魔の森の家」こそ新鮮で面白かったけど、「火刑法廷」「ユダの窓」はそこそこ。もうそれ以外はどれもつまらない。現代日本人には理解しずらい。

しかし、新訳版が出るということは創元社さんが読んでもらいたい作家なんだろうし、横溝もカーを高く評価してるし、日本の新本格以降の作家たちもみんなカー作品をリスペクトしてるらしいしで、しかたなくつきあう。もう読み始める段階でそれほど期待していない。

様々な古い小説や映画、ドキュメンタリー映像なんかを見ることで、ようやくこの時代のロンドンやパリの街並みがイメージできるようになってきた。だが、現代の我々には欧州の1920年代30年代の上流階級のことはよくわからない。それに1m先もよく見えないような濃い霧というものは経験したことがない。夜の闇に霧が加わると、もうそこは幻想怪奇の世界。

もう最初からザ・ケレン味。霧のロンドンを走る首を斬られ死んでいる黒人運転手の車。エジプト人富豪の失踪、地図上に存在しない街、決闘による殺人への復讐?絞首台模型を送りつけるジャック・ケッチ(死刑執行人)。意外に狭い人間関係。前半は雰囲気に惑わされつつも、もしかして面白いかも?と期待はさせてくれた。

でもやっぱりいつものディクスン・カーだった。文体がわかりにくい。表現の仕方が独特。イメージしずらい。何やってんの?と突っ込みたい箇所多数。

暗闇で手探りで犯人を罠にはめる。そこはサスペンス要素。だがグダグダ長い。
語り手マールくんのラブコメ要素はユーモアにおいてクリスティーに遠く及ばない。
そもそもバンコラン探偵がたいして調査していない。なのに偉そう。(パリ警察の偉い人なんだから仕方ないが)

外階段出入り口とか秘密の部屋とか、そんなものは読者にとって謎でもない。どうでもいい。
犯人が意外であればそれでいいってわけじゃない。
でも、違和感箇所の伏線回収は上手く行ってる。
それにしても悪党へのバンコランの対応と措置は司法警察官としては異常で残忍。

2023年1月16日月曜日

南沙良「この子は邪悪」(2022)

「この子は邪悪」(2022)を見る。監督・脚本は片岡翔、主演は南沙良
オリジナル作品の企画コンテスト「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2017」の準グランプリ作品の映画化。制作はC&Iエンタテインメント。配給はハピネットファントム・スタジオ。PG12指定。

何か異常な事態が起こってる街。ニグレクトの現場。どうやら精神の病?市の担当者によって保護。これで5人目?
四井純(大西流星)の家庭でも母親が同じような症状。パソコンでいろいろと調査。街でもデジカメで撮影しながら何かを調査。
街の精神科の窓から白い仮面をつけた子どもの患者を目撃。この家がすごく古風。まるで大正時代の建物。

5年前に一家で交通事故に遭い、心に深い傷を抱えるヒロイン窪花(南沙良)。精神科医師父司朗は玉木宏。別の患者の治療の仮定でこの一家にあったできごとを説明。花の妹が仮面の少女?!

事故で植物状態だった母繭子(桜井ユキ)が奇跡的に目を覚ました。父は家に連れて帰ってくる。ところが花はその女性に違和感。次第に疑惑の眼差し。記憶にある母となんか違う。父曰く「整形したんだから」と気に留めない。白仮面妹ルナも「そんなわけない」。

四井純と窪花は幼いときに一緒に遊んだことのある関係?逃げたうさぎを追いかけていて花は純と出会う。純は自分の家庭も母親が話せなくなってて…と身内の打ち明け話。
純くんの見つけた記事によれば、窪一家が遭った交通事故では5歳の女の子が亡くなってる。ということは、白い仮面をつけたルナは一体誰?!父は何かを隠してる?

純くんはルナの誕生会に呼ばれたときに窪家の家族写真を撮影。そしてその場で母から3人目の子どもがお腹の中にいるという報告。
お母さんが帰ってきたのは5月すぐ。純くんは4月にこのお母さんをこの病院の前で見かけたことがある。あの人、お母さんのふりをしてるんじゃ?!

眠ってる母を起こすシーンがあるのだが、このシーンが最初のぞぞ~ポイント。背筋が凍るw それに幼児虐待を防ぐ運動をしてる父の言うことがなんだか気持ち悪い。ここの演出は良い。

花は決意して病院へ。病院にはやはり植物状態の母がいた。これは一体…。
そして純くんは書類を取り出す。やはりルナは記録上では死亡してる。純くんは窪医師を決定的に疑う。同じ市で行方不明になっている5歳児がいることも判明。
もしも父親が家族第一主義のマッドサイエンティストだったら…というB級サスペンスホラー。正直その真相にそんなに驚けもしなかった。催眠ってそんなに万能なの?
「この子は邪悪」って、どの子が邪悪なんだ?と思って見てた。え、そういうオチ?!

主題歌はゲスの極み乙女「悪夢のおまけ」

2023年1月15日日曜日

オースティン「自負と偏見」(1813)

オースティン「自負と偏見」(1813)小山太一訳2014年新潮文庫版で読む。いつのまにか新潮文庫が新訳になっていた。
Pride and Prejudice by Jane Austen 1813
ジェイン・オースティン(1775-1817)はイングランド・ハンプシャー州スティーブントンの牧師家庭に生まれた女流作家。生きた時代がまるまるジョージ3世時代のイギリス。
そんな時代の恋愛と風俗を描いた小説として興味深い。

独身ハンサム資産家男(金利が毎月どんどん入ってくるブルジョア)が田舎町ロングボーンの屋敷に引っ越してきたことで、ベネット家の娘たちに起こるドラマ。

主人公ヒロインはたぶんベネット家の次女エリザベス。たぶんこの子が一番頭がよくていろんなことが見えている。長女ジェインが一番の美人。この二人が結婚適齢期。
この小説をざっくり説明すると、ジェインとエリザベス、結婚への道。

田舎町の地主階級たちの退屈な日々。することと言ったら本を読むか教会に行くか。そんな地域に若くてハンサムでお金も持ってる独身男ビングリーがやってくれば、年頃の娘を持つ親たちはおだやかでいられない。噂話をすることと娘を片付けることが親の関心事。なんとか娘を金持ちと結婚させたい。

読む前になんとなく予想していたほどは面白くなかった。それほどラブコメ要素がない。
「自負と偏見」という、物語の内容を想像しがたい、なにか哲学的で高尚なタイトルがついているけど、そこは田舎町の上流階級たちの退屈な毎日。家族間の会話、近所の会話、パーティー会話が延々と続く。

たしかに、登場する人々は田舎の上流階級なので、プライド高く虚栄心もあってめんどくさい。他人を偏見に満ちた噂話ばかりしてる。
しかし、エリザベスもビングリーの友人ダーシーを毛嫌いするなど気が強いことは確かだが、現代の我々が見れば十分に淑女。ぜんぜんじゃじゃ馬じゃないし、おてんば娘でもない。

ダーシーが気難しく気位が高くいつもむっつりしてるというだけで、人々から嫌われるとか、意味が解らない。第一印象が最悪だとしても、影で悪口言われまくり。毛嫌いされまくりとか可哀想。
エリザベスはコリンズ氏(ベネット家が住む屋敷の継嗣相続人)からの求婚を断って母を不機嫌にさせるし、ダーシーの悩んだ末の愛の告白にも冷淡な対応。

妹リディアとウィカム(エリザベスがダーシーに偏見を抱く噂話を広めた元凶)の駆け落ち騒動以降、やっと物語が動き出した感がして面白くなってきた。エリザベスのダーシーへの見方が変わる。

面白かったか?自分としては微妙。結婚適齢期女性から男たちを値踏み批評してるので、女性読者のほうが楽しめるかもしれない。

ジェイン・オースティンの生きた時代はアメリカ独立戦争、フランス革命、ナポレオン戦争という激動の時代だったのだが、そういった歴史的事件にふれるような会話は一切小説中に登場しない。

2023年1月14日土曜日

クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!

福原遥が主演の朝ドラ「舞いあがれ!」の放送開始を記念して、かつてEテレで放送(2009〜2013)されていた「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」が昨年アンコール放送された。チェックした。
自分、まいんちゃんはなんとなく知ってたのだが、番組タイトルがこんなだったとは今回見るまで知らなかった。
おそらく子どもたちに料理の楽しさを伝えるための教育番組。自分、たまにテレビでやってた料理を実際に作ってみたりもする。今回、録画してしっかり料理パートを見た。
驚いた。まずアニメドラマから始まるのか。そしてクッキング。出来上がるまでに歌と踊りの歌謡ショーがあるのか。
で、今回見て作ってみようと思ったのが「ちゃんちゃん焼き風たきこみごはんプレート」。アニメパートが函館が舞台だった。

鮭切り身、じゃがいも、玉ねぎ、キャベツ、コーン、しょう油みそ酒ベースのたれと一緒に炊き込むという料理。足りない食材をわざわざ買ってきて作った。
にんじんをクッキー型のようなものでくりぬいたりしてたけど、うちにはなかった。乗せる葉っぱのようなものも買い忘れた。色味的に緑がほしいと思った。

男メシだと思った。にんじん、じゃがいもは米に乗せて炊けばそのままおかずになると気づいた。

2023年1月13日金曜日

松岡圭祐「JK」(2022)

松岡圭祐「JK」(2022)をきまぐれで読む。角川文庫の書き下ろし作品。裏に「青春バイオレンス文学!」と書いてある。

逗子山中で一家3人の惨殺焼死体が発見されるという最悪な事件。被害者は川崎懸野高1年生有坂紗奈とその両親。
紗奈はレイプされ両親はエグイ殺され方。しかもガソリンで焼かれる。

犯人は同じ高校の不良グループ。こいつらが高校生(ヤクザのこどもたち)がカツアゲ、恐喝、暴力。それどころか殺人すらためらわない。ヤクザなので死体を始末してくれる役回りの老人もいる。
警察は無能。何も証拠をつかめない。現代の川崎がまるで戦国時代の治安崩壊村。不良高校生たちが好き放題でほぼ山賊。

そして謎の美少女高校1年江崎瑛里華が現れる。こいつがブルースリーどころかほぼロボット兵の暗殺マシーン。ほぼウォーズマンだし座頭市。ほぼバオー来訪者。キルビルだしミスミソウ。さらにエグい方法で不良たちを容赦なく瞬殺し惨殺していく。バイクの運転技術もすごい。たぶん頭脳明晰。

復讐の修羅となった少女がなぜか最初から強い。中指と人差し指で対手の眼球も喉も気道も破壊。骨もへし折る。
猟銃も拳銃もK-POPダンスで身に着けたステップで軽やかにかわす。ヤクザ男たちを下等動物のように斬り刻んで殺していく。
島民全員を証拠も残さずスカッと惨殺する、そんなバカな?というハードバイオレンス娯楽作。

タイトルのJKとは女子高生のことでなく、「ジョアキム・カランブーの心得」だというのだが、それ誰?そんな無敵な護身術と活殺術があるなら習得したい。ウクライナ人にひどいことをしたロシア人とロシア国家も同じ目に遭ってほしい。

2023年1月12日木曜日

松岡圭祐「万能鑑定士Qの事件簿 Ⅳ」(2010)

松岡圭祐「万能鑑定士Qの事件簿 Ⅳ」(2010)を角川文庫(平成24年13刷)で読む。これも友人の本棚にあったもの。1巻から順番に、たまに取り出して読んでいる。

都内で連続で発生している映画グッズ&ポスターの貴重なコレクションを狙った放火事件。

万能鑑定士凜田莉子と角川書店の記者小笠原、そして臨床心理士の嵯峨敏也の3人が事件を調べて行く。
どうやら犯人の目的は1974年公開の日本映画「ノストラダムスの大予言」のポスターを1枚1枚焼却抹消していくことにある?!

小笠原記者の活躍により、新宿ゴールデン街の飲み屋(元映画関係者が経営)から「ノストラダムス」ポスターが盗み出される現場で犯人と遭遇。逃走する犯人を追いかけるも、やはりポスターは路上で灰になる。しかし、タクシー車載カメラによって犯人の姿が抑えられた。

なぜか一部警察関係者しか知らない情報が外部に筒抜け。これは情報を公開して全国のコレクターが保持してる「ノストラダムス」ポスターを警察に郵送させ厳重に管理しなくては。
だが、それでもやはり意外な保管場所へ犯人がやってくる?!

これ、読んでる最中はとても面白かった。ページをめくる推進力があった。映画を抹殺しようとする闇の勢力が?!それにはどんな真相が隠されている?
だが、「ノストラダムスの大予言」が燃やされる理由とその真相は……、やや失望だったw
今作はホームズ譚「踊る人形」と「6つのナポレオン」を合わせたような一冊。

しかし、このシリーズは凛田莉子が話の節々で繰り出してくる「へえ」トリビアにある。莉子は日本映画トリビアにも詳しいのか!?
犯人が共犯者と暗号(換字式暗号?)でやりとりしてるのだが3枚のメモ書きだけでは解読不能。そこで莉子が仕掛ける罠に感心。
あと、莉子の前では上手くその職業を演じたとしても必ず違和感から見抜かれる。そこも感心。

あと、記者クラブ制度があるのは日本の他にはガボンとジンバブエにしかないだと?!もしそれが本当なら日本の大手メディアは何してる?ジャーナリストの矜持があるなら即刻退会するべき。

2023年1月11日水曜日

小坂菜緒「ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜」(2021)

映画「ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜」(2021)を見る。監督は飯塚健。脚本は杉原憲明と鈴木謙一。制作はTBS、ダブ。配給は東宝。

長野五輪スキージャンプ・ラージヒル団体は1回目を終えた段階で悪天候吹雪で中断。もし2回目のジャンプができないと日本は悲願の団体メダルを逃してしまう…という窮地を救ったテストジャンパーたちの物語。主演はまたまた田中圭

これもコロナパンデミック中に公開された映画。公開予定が1年押してしまった映画。日向坂46小坂菜緒が出演してるので見る。

実は自分は1998年の長野オリンピックを見に長野に行ってる。信じられないかもしれないが本当だ。もう今の若者は長野オリンピックを知らない。
日本がメダルを期待できる競技はスケート、スキージャンプ、ノルディック複合しかない時代。

とくにスキージャンプ団体での金メダルは列島大歓喜の偉業。その裏にあったドラマは当時から知られていてドキュメンタリーとして放送されていたのを覚えている。
葛西、船木、岡部、斉藤の日の丸飛行隊の大ジャンプは胸アツ。だが、競技成立の立役者であるテストジャンパーたちの記憶はもう薄れかかってる。これは映画として描くべき人間ドラマかもしれない。日本の金メダルはチーム日本の金メダル。

映画がいきなりアナウンサー茂木淳一による臨場感のない説明ナレーションで始まるのがちょっと萎える。
長野の4年前のリレハンメルで原田(濱津隆之)の失敗のせいで団体金メダルを逃した場面から始まる。(自分、そもそもオリンピックに団体って必要?と思う)

西方(田中圭)が失敗した原田に対して冷たい。顔が怖い。金メダルでないというだけでどうして責められないといけないのか。質問する記者たちも無神経。銀で十分すごいだろ。はやく国民の意識を改革しないと。
西方「次はぜったい金メダルを取ろう」

西方の身重の妻幸枝が土屋太鳳。田中圭と土屋太鳳って「哀愁しんでれら」のふたりじゃん。
地元歓迎会に顔を出しずらい西方は「もう少しで金メダルだったのに」おいおいと泣く。いや、だったら個人で金メダルを取れ。
そして長野五輪に向けてトレーニング。船木和喜(狩野健斗)という19歳の期待の新星も現れて焦る。スキージャンプのW杯で優勝したぐらいでスポーツ紙一面なの?!

代表争いが熾烈。誰が選ばれるのか?記者たちが立ち話で状況説明。そのへんの描き方がベタ。

西方は腰痛により空中で体勢を崩して転倒大怪我。必死のリハビリ。
そして代表アピールに重要な大会で葛西を抑えて優勝。なのになのに、長野オリンピックジャンプ競技代表から外れるという、もうなんともいいようがないトホホな不運な役回り。
代表発表がテレビ生中継?!それほど注目されていたのか。

代表コーチ古田新太が西方に長野五輪でテストジャンパーの話を持って来る。引退後のために協会に恩を売っておく?そんな聴きたくない話。
地元開催のオリンピックに出られない。酔っ払いたちに傷口に塩を塗られる。西方が落ちて原田が選ばれたことには誰もが納得いかない様子。

西方はテストジャンパーをナメている。「テキトーにやればいいさ」
難聴の選手もいる。テストジャンパーってこんなに人数いるの?本番に向けて合宿もするの?
若手選手の中にひとりメダリスト選手西方。西方はみんなの憧れ。
若手有力選手だけど脚の怪我で選ばれなかった眞栄田郷敦がわりと無神経で嫌なやつ。
テストジャンパーがいる場所で代表選手たちのインタビュー風景とか、それはイライラする。
開始40分ごろになって小樽からの女子選手小林賀子(小坂菜緒)が登場。小坂さんが最初のカットから美少女。
女子選手は珍しい。この子はテストジャンプ練習中に転倒。休めといわれても頑なに頑張る。いかにも気の強い体育会系。いつも怒ってる熱血娘。すごくスキーウェアとヘルメットとゴーグルが似合う。

テストジャンパーたちは自分たちのジャンプに意味を見出せずイライラ。こんなにもギスギスしてたの?
けど小坂菜緒だけはテストジャンプに選手生命をかけてる。親の許しがないのにテストジャンプに参加してる。
小坂さんの役はわりと重要。かなり目立ってた。この子が西方にやる気を起こさせる。
こんなドラマみたいな修羅場だらけだったの?4人のメンバーから外された葛西はあんなに荒れてたの?

最大のクライマックスの1回目と2回目のジャンプの間が逆巻くほどの吹雪。この悪天候で飛べるわけない。ふみきりの場所がホワイトアウトで見えない。で、またまた原田は1回目に失敗ジャンプ。記録が伸びない。その状況で競技中断。このまま中止?!

日本ジャンプの運命は25人のテストジャンパーの試技にかかってる?!ジュリーに競技継続が可能であることを納得させないといけない。
こういうの、美談にしちゃいけない。テストジャンパーが危険。強引に2回目を実施したせいでメダルを逃した国からすると腹が立つだろうと思う。

競技シーンの描き方と演出がどうなんだ?日本選手ですらほとんどジャンプのシーンがない。日本以外の国の選手のジャンプシーンがまったくない。
でもこの映画が描いたのはそこじゃない。テストジャンパーたちが手繰り寄せた奇跡に焦点。わかりやすく感動作に整えた映画。舞台裏の英雄たちを讃えたい。

当時の観衆はテストジャンパーたちが何と戦ってるのか?まったく見えていなかった。状況が何も知らされず吹雪の中でテストジャンプが延々と続いてる。ガヤたちのヤジが酷い。(当時はSNSがなくてよかった)
小坂さんの美少女ぶりがすごい。だがこの映画撮影は大きなプレッシャーだったらしい。この映画プロモーション活動後に長い休養に入ってしまった。

主題歌MISIA「想いはらはらと」