2023年1月6日金曜日

二階堂黎人「地獄の奇術師」(1992)

二階堂黎人「地獄の奇術師」(1992)を1995年講談社文庫版(2001年14刷)で読む。
この作家を読むのはこれが2冊目。「聖アウスラ修道院の惨劇」がそこそこ面白かった記憶がある。

この「地獄の奇術師」が二階堂黎人(1959 - )のデビュー作。そして女子高生探偵二階堂蘭子の初登場作。「私」に相当する黎人(蘭子と同年の義理の兄)がストーリーテラー。

昭和42年11月、東京国立の住宅街にある実業家暮林家の邸宅「十字架屋敷」周辺にエジプトミイラのような顔を包帯でぐるぐる巻きにした怪人が出没。

そして暮林家を皆殺しにする犯行予告を残し、主人公仲良し高校3年生トリオの蘭子、黎人、暮林家の暮林英希に謎の小箱を渡して去っていく。
ミイラ男の跡をつけて行くと精神病院裏に防空壕。英希が止めるのに聴かず蘭子と黎人はよせばいいのに潜入。頭を殴られ気絶。
自分、まったく予想してなかったのだが、ほぼ江戸川乱歩の少年探偵団の延長戦といったテイスト。

2人は目を覚ますと防空壕の中に暮林家の当主暮林義彦氏の次女清美(高3)の逆さづり惨殺死体。ミイラ男に顔の革を剥がされる場面。英希が間一髪駆け付け二人は無事。

だが、長女広美が風呂場で怪人に襲撃。これも英希が駆けつけ軽傷で済んだ。だが、屋敷建て替えのために立川のホテルに仮住まいしていた義彦の妻と息子が毒殺。義彦も部屋で刺殺(密室殺人)されているのが発見。
やはりミイラ男が目撃されていた。さらに、暮林家の老執事も書斎で射殺(拳銃自殺?)。これで5人が殺害。

二階堂蘭子が英米日の名作古典ミステリーオタク。警視正である父のコネで事件現場に介入。こんな女子高生がいるとは思えない。(高校3年生の12月だというのに受験勉強をしてる形跡がまったくないw)

蘭子は父や地元紙記者から情報を得て推理。屋敷の地下にも防空壕があることを発見。
そして犯人を指摘するのだが、まだ本は3ぶんの1ページも残ってる。ここからがまだまだ長い。蘭子の指摘は完全な間違いで恥をかく。

そして真犯人と対峙。展開が映画やドラマのよう。
江戸川乱歩に90年代新本格の要素を加えた意欲作。戦争中のフィリピン・ルソン島での舞台全滅エピソードなんかは横溝正史っぽくもある。

事件後に黎人と蘭子はそろってすぐそこに見えている地元の一橋大学に進学。
黎人は法学部だが、蘭子は理工学部・数学科?!え、一橋って商科と法科の単科大だと思ってたけど…と調べてみたら、やはり理工学部なんてなかった。ファンタジーか。

最後にとってつけたような真の動機が、エラリー・クイーン「十日間の不思議」を読んだことがある人は新鮮味さを感じないかもしれない。自分は密室トリックとかあまり好きじゃないし興味もない。

あと、こういった美少女ミステリーは人気イラストレーターや漫画家に任せた方がもっと売れる可能性がある。90年代の文庫作品の表紙はダサイものが多い。この文庫表紙では売れないと思う。

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