2023年1月31日火曜日

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021)

フランスのドキュメンタリー映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」(2021)を見る。原題は「The Savior For Sale」。監督はアントワーヌ・ヴィトキーヌ。

まずサルバトーレ・ムンディがクリスティーズで4億ドルで落札されたというニュースとその後のいろいろが駆け足で細かいカットで示される。そして美術商、「サルバトール・ムンディ」の発見者ロバート・サイモンのインタビュー。ルイジアナのネットオークションでその絵は落札された。これって再現映像?

ニューヨークの修復家ダイアン・モデスティーニの仕事場映像。
そしてロンドン・ナショナル・ギャラリーの学芸員と専門家マーティン・ケンプの心眼をパスしダ・ヴィンチ展にそれは展示される。

ジュネーヴのフリーポート王イヴ・ブーヴィエのインタビューがわりと長い。ロシア人新興財閥(オリガルヒ)ドミトリー・リボロフレフと頻繁にやり取りしてたのに、新聞報道から金額に大きな開きがあることが判明し訴訟沙汰。それは背信か?商慣行か?

ただ、一般視聴者から見れば、ASモナコを所有するロシア人新興財閥の成金金持ち生活にも嫌悪感だし、金持ちだけが利用するフリーポートで名画を塩漬けにするブーヴィエにはもっと嫌悪感。

この映画はブーヴィエ、オリガルヒ、クリスティーズ、広告代理店、ダヴィンチ作かダヴィンチ工房か?でルーブル展示をめぐってのフランス政府とサウジアラビアの外交問題化などがメイン。

自分、昨年夏に「最後のダ・ヴィンチの真実」ベン・ルイス著、上杉隼人訳(2019 集英社インターナショナル)を読んだ。異常に面白かった。この本とこの映画には直接の関係はない?その辺は調べたけどわからなかった。
本で読んで知った人物たちを動く映像で見ることができる。実際の声を聴くことができる。それがこのドキュメンタリー映画。

この映画では絵の来歴にはあまり触れていない。歴代所有者には一切触れていない。
映画は映画として面白かったが、自分としては映画の範囲もカバーして、ホラーのエッチング版画の前後とその後の絵画の移転も描いていて読みごたえがあったベン・ルイス「最後のダ・ヴィンチの真実」のほうが情報量が多く面白く感じた。そちらのほうがミステリー要素を感じた。

自分の見る限り、サルバトール・ムンディはダ・ヴィンチ作であろうとなかろうと完全に名画。初めて見た瞬間から、神を描いた稀有な傑作だと感じた。そう感じた人は多いはず。
ぜひ金庫に隠して塩漬けにするのでなく、多くの人が見れるように一般公開してほしい。もっと研究してその成果を知りたい。

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