2023年1月29日日曜日

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015)

ドイツ映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」(2015)を見る。監督は「ヒトラー最期の12日間」(2004)でも知られるオリヴァー・ヒルシュビーゲル。脚本はフレート・ブライナースドーファーとレオニー=クレア・ブライナースドーファー。日本でも同年公開(GAGA)。

ヒトラー暗殺未遂事件というと大戦末期に総統大本営でヒトラー爆殺を狙ったシュタウフェンベルク大佐らによるクーデター未遂事件が有名だが、この映画はポーランド侵攻直後の1939年11月、ミュンヘン・ビュルガーブロイケラーでのヒトラー暗殺未遂事件と実行者ゲオルク・エルザーのその後を描いている。なので原題は「Elser」
このナチスエピソードも「第三帝国の興亡」第3巻に描かれていて知ったので見ることにした。

1939年、反ナチのゲオルク・エルザーはヒトラー暗殺計画を実行。夜中に演説会場の柱に時限爆弾を仕掛ける…というシーンから始まる。機械時計のタイマーがセット。11月8日のミュンヘン一揆記念演説を待つ。

スイス国境のコンスタンツでエルザ―は夜中に不審者として拘束される。禁止された共産党組織のバッジを所持してるのがバレて独房。
その間に爆弾が破裂。屋根が崩壊。保安部が出動。ヴュルテンベルク・ケーニヒスブロンに部隊が急行。「エルザ―を逮捕せよ」エルザ―の関係者は有無を言わさずベルリンに連行。

ヒトラーが演説を予想より早く終えたため、時限爆弾はヒトラーが去った13分後に爆発。無関係の7名が死亡。臨時雇いの女給、妻子ある音楽家が死亡。
刑事警察局長アルトゥール・ネーベとゲシュタポ局長ハインリヒ・ミュラーがエルザ―を尋問。「ズボンを脱げ!」すると膝が血だらけ。ネーベはすでに確信してる。「自首しろ」

黙秘するエルザ―。タイピスト女性がささっと席を外すとゲシュタポは恐怖の拷問を始める。悲鳴を上げながらゲロを吐く。しかし口を割らない。
そこにエルザーの元恋人エルザが連れてこられる。「エルザがどうなるかは君次第」エルザ―はついに自白。
この映画はちょくちょく想い出イメージ映像。人妻エルザとの出会い。ケーニヒスブロンの酒場でナチ党員と社民党員のケンカ。

エルザーは単独犯を主張。ネーベもそう考えるのだが、親衛隊長がそれを認めようとしない。背後に大きな組織があるはずだ。
ネーベらはさらにエルザ―を問い詰めると、チャーチルから電話でやれと言ったと荒唐無稽な話。再びエルザーに拷問。

エルザ―は人妻エルザと不倫。エルザ―の父(実の親子じゃない?)は飲んだくれ。家は抵当。執行により住めなくなる。エルザの夫エーリヒの家に間借り。

そして小さな村もだんだんとナチ党が優勢になって雰囲気が変わっていく様子が描かれてる。友人ヨーゼフも逮捕。日曜なのに教会に行かずナチの宣伝イベントが盛況。みんなでハイル・ヒトラー!みんな異常だよ。
ユダヤ男と交際していたローレもナチ党員から暴力。ナチと文革紅衛兵はやることにおいて似ている。自由が失われていく。

エルザーは自分の知識だけで時限爆弾の設計図を書いたことを機械設計の専門家にすらすらと口頭説明。エルザーだけで時限爆弾の製造が可能。(どこが”平凡な家具職人”だ)
ネーベはエルザーの単独犯行であるとの結論。上官である親衛隊大将に報告。

ミュラーは自白剤を投与し「組織的犯行」を自白させようとさらにひどい拷問するのだがそれでも吐かない。やっぱり単独犯を認めざるを得ない。エルザ―はそのまま処刑かと思いきやダッハウに収容。

1945年、ダッハウに収監されていたエルザーは、ネーベがシュタウフェンベルク大佐らのヒトラー暗殺計画に関与した罪で処刑されたと聞かされる。この処刑シーンがリアルすぎる。絶命するまでの時間をそのまま後ろから撮影。

もう連合軍がそこまで迫ってるという状況。エルザ―は停電で真っ暗の中どさくさで処刑される。空襲で死んだことにして。こういう命令を粛々と実行できる官憲は人間ではない。
(なお、ハインリヒ・ミュラーはアメリカとイスラエルが必死で探したけど戦後の生死が不明。死体すらも見つかってない。)

今では欧州の進んだ国のドイツだが、80年前はこんなに狂ってた。ドイツにエルザ―のような正常な人がいたことは希望。親衛隊とゲシュタポだった人物は全員死刑にするべきだった。
ところで今のロシアには1人のエルザ―もいないのか。
エルザ―役の俳優の声質が平野紫耀とほぼ同じだった。

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