2019年7月21日日曜日

太宰治「ろまん燈籠」(昭和16年)

太宰治「ろまん燈籠」を読む。新潮文庫版で読む。角川文庫と迷ったのだが、すでに読んだものが多いので新潮を選んだ。新潮文庫版は全16篇を収録。

ろまん燈籠(昭和15年から16年にかけて婦人画報に連載)
この時期の太宰は明るくPOPな作風。作家のつきあいのあった家族が書いた連作ファンタジー小説(ラプンツェル)というてい。4人兄弟姉妹のバラバラ個性を対比させるような、小説の体を成していない小説。またまた太宰のヘンテコ小説を読んでしまって困惑。太宰、フリースタイルすぎ。

みみずく通信(昭和16年)新潟高校へ講演会に行ったときの話。生徒「太宰さんをもっと変わった人かと思っていました。案外、常識家ですね。」w
服装に就いて(昭和16年)着物ばかり着ていた太宰
令嬢アユ(昭和16年)佐野くんと伊豆でフライフィッシング
(昭和16年)或る学生から悪魔と呼ばれ気にする太宰。昔センパイに送った借金申し込みの手紙が酷いw オチもシュールでよい。
(昭和17年)ヘンな小説ばかり書いていた太宰は読者からもたくさんヘンな手紙をもらったんだろうなとw
新郎 とくに感想はない
十二月八日 日米開戦の日、主婦目線の生活

ここまで読んできて、「ろまん燈籠」以下、すべて太宰の日々の交友やらダメ人生活やらを書き綴ったエッセイであることにようやく気付いた。これはもうすべてについて感想を書くのは無理だと悟ったw

残りの「小さいアルバム」から「東京だより」まで、すべて東京三鷹での戦時下の暮らし、北京に渡った友人の結婚、創作ノート、友人の戦死、雑文などなど。

感想を求められても何も答えられないが、太宰治という人を知るためにはそれなりに重要かと思われる。
ああ、この文章を書いた人は戦後すぐに自殺するんだなあと思うと、自分は暗い気分になってやりきれなくなった。
「ろまん燈籠」以外は子どもや若者にまったくオススメできない。

2019年7月20日土曜日

「永遠のニㇱパ 」北海道と名付けた男 松浦武四郎(2019)

松浦武四郎(1818 - 1888)のドラマが7月15日にNHKで放送された。楽しみにして見た。
以前から蝦夷地探検家たちには関心があって、ドラマにしてほしいと思っていた。NHK札幌放送局制作の「北海道150年記念ドラマ」。主演は松本潤。なんと語りは中島みゆき。

4Kでの製作と放送らしいけど普通のテレビで見る。

「永遠のニㇱパ 北海道と名付けた男 松浦武四郎」というタイトルになっている。
「北海道と名付けた男」というサブタイトルが視聴者の知的好奇心をくすぐると思う。
だが、それだけ。幕末から明治という時代の変化はあまり感じない。ロシア船襲来や函館戦争はまったく描かれない。
深田恭子がアイヌ娘リセ役と聞いて、おそらくアイヌ人との交流がメインのドラマになろうだろうなと思った。たぶんほとんどが作者の大石静の創作。

松浦が従者兼現地ガイドに雇ったアイヌ人青年(リセの兄)が随行中にエゾヒグマに襲われて片腕を失ってる。それ、労務管理上重大すぎる事故。ごめんって言って済む問題じゃないw

このドラマを見ると松前藩のアイヌ人奴隷使役が過酷。村人のほとんどが死に絶えた。本当にこんなことやってたのか?江戸時代は無宿人というだけで佐渡に送られ金山掘りにさせられたり人権なんてものは存在しないからたぶん史実。酷い。たぶんインカを征服したスペインレベルの非人道。

だが、松浦が松前藩の非道ぶりを告発ルポルタージュし、暗殺部隊を送られたというのはちょっとでも史実があるのか?!調べてみたけど不明。白昼堂々路上で襲う?

宇梶剛士さんがアイヌの長老役というのがザワザワした。アイヌ人が登場するドラマも映画もあまりない。おそらくアイヌ人役は初めて?それだけで意義深いが、ただ座ってるだけであまり活躍シーンはなかった。

アイヌの住居が自分が思い描いていたものよりキレイで清潔だと思った。あと、路が熊笹の獣道みたいなものしかないとイメージしていたわりにちゃんと道になっていた。史実に合ってるのかわからないけど。
アイヌ人たちがリトミック体操のような遊戯?ダンス?をやっている。こんなの初めて見たしメロディーも初めて聴いた。
北海道アイヌ協会や松浦武四郎記念館が協力してるらしいので間違いないとは思う。
自分、まだ一度もコタンのような場所を訪れたことがない。アイヌ人の音楽と言うと、あの印象的な口琴しか知らない。

東久世開拓長官も大久保もアイヌに無関心のダメ野郎。「ばからしい!」松浦は野に下る。

アイヌ人たちは和人を憎み恨む。リセも松浦と心を通わせたものの、家族を失うなど過酷な運命の末に、松浦をはねつける。出ていけ!
だが、命を狙われる松浦の代わりに矢を射られて死ぬという自己犠牲。悲しい結末。
番組最後に松浦の記した本が紹介された。このページに「ヲロッコ人」という文字が見える。自分、ヲロッコ人やギリヤーク人といった北方民族にも関心持ってるけど、適当な本がなくてウィキに書いてあるていどのことしかまだ知らない。

2019年7月19日金曜日

カポーティ短篇集

まだ一冊も読んだことのないトルーマン・カポーティ(1924-1984)を読んでみる。

「冷血」「ティファニーで朝食を」は読む気が起こらなかった。まずは短篇集からということで、河野一郎編訳ちくま文庫「カポーティ短篇集」(1997)で。この文庫本は今でも多くの人に読まれているようだ。

「楽園への小道」Among the Paths to Eden, 1948
1960年にエスクワイア誌に掲載されたのが初出。死んだ妻の墓参りに訪れた中年男性。それだけで切ないのだが、そこで出会った婦人がさらに切ない!生きるって哀しい!という短編。いや、これだけたくましければなんとか生き抜いていけるだろう。

「ヨーロッパへ」to Europe, 1948
戦後間もない地中海へ、青年カポーティの旅行記。ギリシャ、スペイン、シチリア、ローマの旅。
あたりまえだがアメリカ人も地中海沿岸の人々にとっては完全に外国人なんだな。

タオルミーナで借りた家を手伝いに来る19歳娘が、兄に顔を殴られボッコボコになってる件で「酷い!」と周囲に話しても「え、何言ってんの?」「いう事を聴かない妹が兄に殴られるの普通だけど?」って反応が可笑しかった。それがシチリアか?!
外国人が外国を旅する旅行記はどの時代のものであっても面白い。「ローラ」という作品も味わい深い。

「ジョーンズ氏」は東西冷戦と日常のひとコマ。
「もてなし」「窓辺の灯」「くららキララ」「銀の酒瓶」はアメリカの田舎の人々の風景。アメリカ人ならじんわり感じる何かがあるんだろうと思う。日本人は洋画を見てる感覚。どれも詩的。
くららきらら?「Dazzle」という原題に河野氏が勝手につけた邦題っぽい。

「無頭の鷹」はぜんぜん頭に入ってこない。NYの男女の風景。解説を読んだら「抽象絵画のようなストーリー」と書かれていた。じゃあ、わからなくて当然だわw

実は今回カポーティーを読んでみた理由のひとつが齋藤飛鳥。あすかちゃんはカポーティを読んだことがあるらしいから。申し訳ないが自分はもう読まないかもしれないw

2019年7月18日木曜日

北川景子「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」(2006)

「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」(UNIVERSAL 2006)は過去何度もBSやCSや地上波で放送されているのだが、日本でDVDが出たとき以来、12年ぶりぐらいに見返した。

久しぶりに見た理由?それは北川景子。当時の北川は19歳新進女優。いきなりハリウッド進出で話題を呼んだ。ハリウッドでフォトブックも撮ってきた。
ストーリーとはあまり関係のない脇役にしてはわりと出番がある。この映画で唯一の色白美少女。
ハリウッドのスタッフと俳優たちの中に単身飛び込んでの北川景子の雄姿!まだ女優として歩み始めたばかり。慣れない環境でよくがんばった。

これ、日本で広告を打ってたとき人気若手俳優妻夫木聡を登場させていたのだが、妻夫木は「GO!」の合図を出すワンシーンのみの出演。ティザー詐欺。途中でキャストが変わったらしい。

アメリカの高校が日本とは環境が違いすぎる。高校生が車を乗り回している。主人公は高校生とは思えないほど苦み走ってる。
ねっとり熱い視線を送ってくる女子生徒がまるでポルノ女優w 
スクールカーストの上位にいるガイが北欧系マッチョ野郎。あっちではアメフトがモテスポーツ代表。
こんな国の高校生と日本の高校生の間でコミュニケーションが成立するわけがないw

主人公は警察のお世話になってしまいハイスクールにいられなくなる。子どもがカワイ子ちゃんをめぐってカーチェイスをして車をぶっ壊し、建築中の住宅もぶっ壊す。親はいったいどれだけ損害賠償されるのか見当もつかない。たぶん治療費も。
未成年は引っ越せば少年院に入らなくていい?主人公がなぜか東京の高校へ。もう違和感しかない。
東京に住む父親の愛人(ワンシーンのみ)が真木よう子さんでびっくり。

アメリカが作る日本が舞台の映画は出演者とエキストラをアジア人ぽいかどうかを選考基準にしているので、日本人が見るとすごく居心地が悪いw どう見ても韓国系だったりする。「ヤクザだぞ!」ある意味正しく日本を理解してるのかも。

千葉真一の白いスーツ姿のマフィアのボスっぷりがすごい。

生徒たちがパソコンをカタカタさせながら教師の「源氏物語」朗読を聴いてる授業が謎。

基本バカ映画なのだが、渋谷交差点のシーンは当時も話題だった。すごくよくできてる。あんな撮影は日本ではできない。

2019年7月17日水曜日

今村昌弘「魔眼の匣の殺人」(2019)

今村昌弘「魔眼の匣の殺人」(東京創元社 2019)を読む。今年2月に書き下ろし作品として発表されたシリーズ第2作。

第1作「屍人荘の殺人」が本格推理 in ゾンビパニックという作風だった。今回は人里離れた場所に打ち捨てられた研究施設で霊能力者の予言通り人が死ぬというクローズドサークル本格ミステリーホラー。

前作と同様に大学ミステリー研の葉村くんと比留子のふたりが主人公。サークルの部長と5000人が死んだゾンビパンデミックの原因を作った秘密組織・斑目機関の謎を追って連続殺人に巻き込まれる。

ヒロイン比留子は超絶美人女子大生ですっとぼけていて恐ろしいほどに頭が良い。私(葉村)を手玉に取ってる感じがする。ちょいちょいコミカルなふたり。

今回も舞台設定がいい。どんどん引き込まれてページをめくれる。
すべての村人が姿を消した集落に主人公2人、高校生カップル、墓参りに訪れた元地元民女性、バイクがガス欠でさ迷い歩いていたハンサム男、大学教授とその息子、オカルト雑誌編集者が、朽ち果てたコンクリートの箱のような建物に集まってしまう。そこには予言者の老婆と付き人のような婦人が暮らしていた。

いきなりそこで「男2人女2人の4人が死ぬ」という予言をされる。たまったもんじゃないw
唯一の吊り橋も焼き落される。周囲は崖と滝。逃げ場がない。救助が来るまでここで過ごすしかない。

この作者の作風は半分ファンタジー、半分ガチロジック本格。
必ず当たる予言というものの存在を認めないといけない。ある意味デスノート。
「そんなバカな?!」という状況下で、生き残った者たちが相談し協力し、相互に疑心暗鬼になりつつ、自分たちが生き残るために必死で犯人をあばく。90年代以降の正しい本格。

殺害現場に弾痕がなかったことと破壊された時計の件は面白かった。伏線回収の具合もさすがだ。かなり丁寧に練り込んである。

だが、まるで数学の証明問題のごときややこしい思考実験と場合分けはしっかり読み込まないとついていけないと思う。
若干20歳でこんな思考ができる人は日本を支配できる階層だと思う。
オカルトを100%信じてしまうような犯人が、エラリーのようなガチロジック比留子さんに太刀打ちできないと思う。

屍人荘は今年東宝系で映画が公開される。主演は神木隆之介と浜辺美波。監督は木村ひさし、脚本は蒔田光治。きっとTRICKシリーズの上田と山田のようなふざけきったコメディベースに本格推理になることが眼に見えている。
この情報のせいでヒロイン比留子が完全に浜辺美波でぴったり脳内再生。

2019年7月16日火曜日

武田玲奈「マジで航海してます2」(2018)全6話を見た

武田玲奈&飯豊まりえW主演の毎日放送製作ドラマ「マジで航海してます2」(2018)をやっと見た。昨年の夏に放送されていたもの。

シーズン1(2017)は商船大学の実習を描いたものだった。全5話でばっさり終わったのでいつかシーズン2があるとは思っていた。
シーズン2はプロ船乗りとして海運会社の大切な荷物を運ぶ。
飯豊まりえは見習い三等航海士として乗船勤務。マラッカ海峡、喜望峰を回ってハンブルクという外洋航路。
シーズン2は堅物上官平岡祐太一等航海士が登場。「責任と自覚を持て!」お調子者飯豊に冷たく厳しい。
武田は本来機関士なのだが営業職としてストレス溜め込む日々。ナッツの注文にナットを大量発注し顧客に送り付けて大目玉。だが、こういうの人事部が悪い。違う世界にいた人間を営業の現場に配置すればそんなミスも起ってあたりまえ。
上司からは「今やってる仕事もいつか船の上で役に立つ」と言われるも、そんなの信じられん。
機関士燕ちゃんは取引先のエレベーターのモーター音に敏感。故障が近いことを悟る有能。それにしても武田玲奈は高くて形のいい鼻だ。
そして、航行中に機関士に病人が発生したために急きょ現場へ。燕(武田)と真鈴(飯豊
)ペアの復活。
ふたりは平岡に反発しつつも影響を受けまくり。後輩をセンパイ風吹かせて説教する燕のシーンも面白い。「ああ、厳しく言うのって気持ちいい~♥」カワイイ女の子はみんなどSであるべき。

お調子者真鈴がシナリオを描いた海賊対策訓練がバカ回の予感がしたw だが、へえ!と感心。こんな訓練もやってるんだ。
でっかいコンテナ船に梯子かけて登ってくる武装グループなんて大砲一発で撃沈すればいいのにw
シーズン2のクライマックスはエンジンの原因不明の故障。燕が合コンで得た知識(心構え?)で故障個所を発見。ふたり手をとり合って喜ぶ。船長からも平岡からも感謝。

お約束の船内入浴シーンもある。ふたりはしみじみ語り合う。未来に希望の持てる仕事をしてる若者は輝いてる。
このドラマ、ぜんぜん話題になってないけど面白い。毎回1回は突き放したようなセンスのいい笑い要素もある。動画配信サービスで簡単に見られるので、ぜひ多くの人に見て欲しい。

武田玲奈と飯豊まりえはいまひとつ女性人気がないけど、ふたりとも愛嬌があってスタイルがとても良い。

自分はとくに武田玲奈の体型は美しいと思う。女性らしさというより、アニメや漫画のヒロインのような体型。痩せているんじゃなくて細い!それでいて手足が長い。
顔も個性的。鼻が高くて目が大きくつりあがってる。未来的というか宇宙人的。自分はちょっと仏像のように見えるし尊く見える。

男子の理想を具現化したような武田玲奈だったのだが、高1のときのギャルファッション誌インタビューで、これまで付き合った男性を「8人」と答えていたのが発覚したのは痛かったw 
ラブラブプリクラやイケメンモデルとふたりでいる写真も撮られたw 武田、見た目と違って肉食系。恋愛に貪欲。

福島郡山から上京して水着グラビア→non-noモデル→女優という道を歩んでいるのだが、自分の予想よりは人気上昇のペースが遅い。
出演しているドラマも映画もどれもB級。「電影少女」では主演の山下美月と同じかそれ以上に目立っていたのだが、まだアイドルオタにしか知られていない。

2019年7月15日月曜日

鮎川哲也「ペトロフ事件」

鮎川哲也「ペトロフ事件」という本があるので読む。講談社大衆文学館文庫コレクション(1996)で読む。

じつは自分、鮎川哲也(1919-2002)という推理作家をほんの最近までまったく知らなかった。
なんと大正8年生まれ。戦後すぐから作品を発表。日本ミステリーを長年牽引。
生まれは東京らしいのだが父の仕事で満洲に渡り少年時代から終戦まで満洲で過ごしたそうだ。

で、この「ペトロフ事件」は戦争中に書かれて戦後に発表されたもの。出版社を変えながら過去に何度も出版されている。

舞台が大連。巻頭に大連の市街地図、巻末に満鉄の時刻表。戦前の大連、旅順、哈爾濱の様子の記述が貴重。

白系ロシア人金満家イワン・ペトロフ老人が夏家河子の自宅で殺害された事件。大連市沙河口警察署鬼貫警部へ応援要請の電話。この警部はロシア語が堪能。中国語も多少できる。

殺害状況からして親しい人間の犯行。鬼貫警部が相続人である3人の甥、アントン、アレクサンドル、ニコライに話を聴きに行く。
ロシア人容疑者のアーリビ(アリバイ)を確かめる。この本には多くのロシア語が出てくる。日本人が満洲でロシア語を使ってロシア人のアリバイを調べるって新鮮。

満洲を舞台にした推理小説って初めて。この本を読んだことで大連、旅順、夏家河子、新京、哈爾濱などの位置関係を覚えた。だが、当時の満洲を知らない現代日本人としてはいろいろイメージしずらいものがある。当時の満洲の常識がわからない。

鬼貫警部は35歳独身の若々しい青年。ロシア人や支那人らと協力して難事件を解く。
証人の少ないアリバイから調査。身内同士がかばっている可能性もある。だがやがて一番強固なアリバイを持ったアントンが立ちはだかる!

「発車時刻の正確さを誇っている満鉄」の、昭和17年7月ダイヤでしかできない犯行に驚いた。
連京線と旅順線。急行と普通列車。車内から打たれた電報。市松模様のトランク。どうやらクロフツの影響を受けた作品らしい。

鬼貫警部は捜査途中に結核の疑いで日本へ一時帰国。だが、日本から戻る警部を乗せた神戸大連間の日満連絡船が木浦沖で座礁沈没!

途中からアレクサンドルの婚約者ナタリヤがアントンの鉄道アリバイを調査。あじあ号で北上し哈爾濱へ。
車窓から見える朝日を浴びてピンクに染まる遼陽の白塔とか、読んでてナタリヤと一緒に満洲を旅してる気分。

やがて鉄壁に見えたアリバイは崩されるのだが、さらなる真実が!
どっひゃあ!この本には衝撃を受けた。

アリバイトリックは現代人が見ればどうってことないかもしれない。路線図を見ればだいたいそうじゃないかと思ってた。
だが、自分からすると松本清張の「点と線」よりも重要な鉄道時刻表ミステリーではないのか?
読後の満足感と充実感、余韻が心地よい。これは強くオススメできる。

どうしてこんなすごい作品があったことを知らなかったのか?読んでいなかったのか? 
満州を舞台にした文学作品としても貴重。満州へのノスタルジアを掻き立てる。

哈爾濱警察署のサヤーピン警部の協力を得る。このロシア人警部がコーヒー飲みながらナタリヤに哈爾濱の街で見かける日本人、ロシア人、中国人の違いを語る。
「あそこにくる日本婦人を見てご覧なさい。まだ二十歳になったばかりだろうに、まるで落ち着きのない歩き方をしている。そのくせ若さというものは全然ありません。あれはね、日本人の生活が、可からず可からずで縛られているので、あのように覇気がなくなったのだと、わたしは思っているのですよ。それに引き代えて、あのロシヤ人のお嬢さんをご覧なさい。エミグラントには生命のいぶきを圧迫するようなものはなにもない。それだからああして伸々と手を振って歩けるのです。わたしは、日本人が気の毒でたまらなくなりますよ。ほれ向こうから近づいて来る中国人の女性をみて下さい。なんと悠々とした歩き方でしょう。歩き方だけで、日本人と中国人はすぐに区別がつきます。日本人はだれでも大気の圧力を感じているような歩き方をします。」
文中に中国人とあるのはもちろん戦後にリライトされたから。この版がどこまで加筆されているのかわからないのだが、満洲で少年時代を過ごした鮎川先生が当時感じたことを吐露した箇所だと感じられた。

この本を読んで、今も満洲があったなら、日本人、ロシア人、中国人、満洲人、蒙古人、ユダヤ人が仲良く社会をつくる理想国家に発展してたのかも…という、なかった未来を想像した。
新京や大連、哈爾濱はNYやLAのような都市になって、日本人もインターナショナルになっていてロシア語や中国語がペラペラになってたかもしれないのに…と悔やんだ。

この作品の舞台となってる場所をグーグルで調べようとしたのだが、大連とかストビュー写真とかぜんぜんなかった。それどころかもう旅順線は残っていない?

この本が書かれた戦前の段階で旅順は寂れて大連が発展してたって知った。夏家河子は満洲の湘南と呼ばれていた?!
哈爾濱の旧キタイスカヤ街とかは今も満洲時代の名残が感じられる。松花江にある太陽島とか調べようとグーグルで見てもあんまり写真がない。

2019年7月14日日曜日

オリバー・ストーン「JFK」(1991)

先日放送のBSプレミアム「ダークサイドミステリー」ではJ.F.ケネディ大統領暗殺事件を扱っていた。自分はケネディ暗殺事件は基本的なことしか押さえていない。興味を持って見た。

人々はなぜ陰謀論にのめり込むのか?がテーマ。オズワルド単独犯行説と「陰謀論」の対立に焦点。
専門家によれば、陰謀論なんてものに振り回される奴はバカという扱い。オズワルドの経歴を見れば十分にひとりでできる犯行らしい。

だが、1992年になって公開された事件6週間前のCIA電報によれば、オズワルドはすでに監視対象。CIAはやっぱり資料のほとんどを隠ぺいしてる?!
トランプも機密文書はすべて公開するつもりだったのに、CIAとFBIの説得で公開を拒むようになった?

陰謀論派の代表がオリバー・ストーン監督による「JFK」(1991)だ。まだ一回も見たことなかったので見てみた。3時間25分の大作。

当時のニュース映像を多用し喰いぎみにテンポよく見るものを引き込んでいく。国際情勢と国内情勢をおさらいしてくれる。
ダラスで狙撃される大統領。オズワルドの逮捕。ジャック・ルビー。米国市民は短い間にテレビで恐ろしいものを連日目撃。

「キューバ人を見殺し、ユダヤ&カトリックと結託し、黒人を甘やかすダメな大統領」ケネディをこき下ろす下品そうな男たちが存在する。
米国民はぜんぜん一枚岩じゃない。みんないがみ合い。「アメリカ人の恥だよ」アメリカ人にとってすべてが悪夢。

ケビン・コスナー演じる地方検事ジム・ギャリソンは3年後にケネディ暗殺事件を捜査。この時代の人々は仕事中もタバコの煙の量がハンパない。
ウォーレン報告書は矛盾だらけの捏造だらけ。関係者の多くが証言を拒む。妨害と嫌がらせ。妻とも不和。
ジョー・ペシ(対キューバ右翼工作員)が「フ●ックイン!フ●ックイン!」連発でうるせえ。
出演者がどこかで見た名優だらけ。豪華。
ワシントンの芝のベンチでX氏が語る事件のからくり。これがすごく真実っぽい。

この映画のクライマックス「クレー・ショー裁判」でのラスト、ギャリソンの演説が長大。あの日起ったことは王殺しのクーデター。
とても熱いメッセージを持った映画。字幕を読むためにずっと画面に釘付け。疲れた。けど弛緩なく一気に見れた。

この映画をみたことで、なぜにオズワルド単独犯行説を強く唱えるジャーナリストが今も多いのかという理由も分かった気がする。この映画で陰謀論派がかなり盛り返した。守る側も必死でがんばらないとw

その一方で、陰謀論にしては範囲が大きすぎる。裏切り者は殺される鉄の結束にしても、ペンタゴン、FBI、CIA、マフィア、そしてホワイトハウス、誰一人情報を漏らさないのも不思議だ。

アメリカが闇すぎて見ていてとにかく怖い。アメリカ人でなくても怒りがわく。正義と公正なんてものは存在しない。ソ連とたいして差がない。

偽オズワルドを多くの人々に印象的に目撃させる手法とか、完全に松本清張も指摘するCIAのやり口。下山事件も松川事件も実行犯本人たちも何がなんだかわからないように仕組んである。CIAは世界中でそんな工作活動をやっている。

2019年7月13日土曜日

コナン・ドイル「失われた世界 ロスト・ワールド」(1912)

アーサー・コナン・ドイル「失われた世界 ロスト・ワールド」を読む。加島祥造訳ハヤカワ文庫(1996)版で読む。
THE LOST WORLD by Sir Arthur Conan Doyle 1912
シャーロック・ホームズの生みの親コナン・ドイルによる秘境探検SF小説。こいつが後に「キングコング」「ジュラシック・パーク」の元ネタとなった偉大な古典SF作品。

プロポーズした女性から「理想の男は勇敢で大胆な冒険家」と聴いた新聞記者マローン君。何か危険のある冒険的な仕事がしたい!
上司からチャレンジャー教授のところへ行って話を聴いて来るように指示される。

アマゾン奥地で死亡した画家のスケッチと写真で恐竜を見たもん!という異端の学者・チャレンジャー教授がとにかく口汚く短気で乱暴w

学者たちは今も昔もプライドの塊。双方が口汚くののしり合う。
チャレンジャー教授の説を確かめるためにマローン君、ロクストン卿、サマリー教授、がアマゾンを遡り謎のメイプルホワイトランドを目指す密林探検隊。

どうやって崖を登るのか?いい方法(現代なら許されない)を思いつくのだが、それって還ってこれなくなるんじゃ?と思っていたら、現地で雇ったインディオの裏切りで退路を断たれる。

そして肉食恐竜の恐怖!w そして現地では恐竜に怯えつつ、猿人とインディオの戦争までも!
探検隊の4人はまるで「猿の惑星」のような猿人殺戮部隊へ変貌。このへんは帝国主義英国ならではの発想。

ヴェルヌと大差ない都合のいい展開の、素朴でのどかなSFだった。
ラストが失恋ラブコメになってて切ない。
半分おとなの子供か
半分こどもの大人が
ひとときを楽しめれば、と
へたな趣向をこしらえた次第
という前書きがこの作品の性格を示している。

2019年7月12日金曜日

欅共和国2019

今年もまた欅坂46の野外コンサートライブ欅共和国2019が、7月5日6日7日と3日間、富士急ハイランドコニファーフォレストで開催された。
なんと3日間すべて雨っ!ある意味「持ってる」としか思えないw 
てか、例年こんな梅雨時だったっけ?

実は、今年も友人は行く気でいてDAY2のチケット2枚確保していた。だが、これがどうやら過去2年間で最悪にクソ席っぽいw 
それに3日間雨っぽい。行く日は朝から1日しとしと雨で夕方から本降りになることが見込まれた。屋外コンサートで1日本降りの雨はストレスがたまる。気力も体力も奪われる。
さらに、今年は志田もねるも、ひらがなもいない。モチベが湧かない。
そして、自分は昨年の共和国で欅坂ライブ卒業を宣言していた。「今年は見送ろう」ということになった。たぶん好天で暑かったら行ってたw

ここはひとつ若いもんにチケットを譲ろうということでリセールしたところ、あっという間に買い手がついた模様。よかった。
コンサート当日は家で刻々とSNSにUPされる現地の情報を追った。
久しぶりに良いニュース。それは原田葵(19)の復帰だった。なんとなくちょっと前からそんな予感はしていたのだが、最悪の事態も想定していた。それだけに本当にほっとしたし嬉しかった。
ネット情報だと原田は八王子の有名私立大に通っているらしい。もし夏休みまでに復帰しなかったら復帰はほぼ絶望だと感じていた。原田だけに「いや~毎日合コン楽しいわ」ということにはならないだろうとは信じていたが、ちゃんとステージに立っていてほっとした。
原田は学業から戻ってきたら欅坂が激変していることを見てどんなことを感じただろう?
欅坂発足当初は平手に次ぐ年少者で、中学生だった原田葵が大学生になっていて、ほんとうに驚く。
大人は子どもたちを見て自分が年をとったことを悟っていく。原田、ちゃんと美人になってる。ちょっと寂しいw
渡邊理佐ってこんなだっけ?以前は顎がもっとシュッとしていたように思う。もえりんと区別がつかない。

映像収録もされたようだ。MONの映像など見ると、会場が白く煙っている。
雨降ってるのにさらに放水とかやめれ!と思ったw 暑いときに放水はありがたく感じるかもしれないけど、梅雨寒時期にさらに濡れるとか意味わからん。
「太陽は見上げる人を選ばない」は何度聴いても感動の名曲。祝祭感が強い。
だがやはり、昨年の「ひらがなけやき」と一緒にずらっと一列に並んだ姿の印象が強い。あれは本当に壮観で感動的だった。
一体どうして日向坂として分離独立させてしまったのか?なぜ柿崎は卒業してしまったのか?本当に意味がわからない。

美少女たちは濡れるとさらに美しい。2016年の乃木坂神宮DAY2のような台風直撃土砂降りほどインパクトはないかもしれないが、雨の野外ライブはそれはそれで新鮮な映像。
雨だと本人たちが着替えるのが一苦労。衣装を管理し着替えを手伝う女性スタッフの手間も大変。映像収録スタッフも大変。
今回のこの衣装は海軍を意識したものか?ねるそん提督のいない海軍コスは認めない。
今回の平手は過去と比較して一番可愛くない。青白く太った秀才くんのような風貌になっていた。一体どうやったら平手さんからストレスを取り除くことができるのか?

ネット情報で仕入れた当日のセトリなどを記録としてとどめておく
「欅共和国2019」セットリスト
M00.Overture
M01.世界には愛しかない
M02.手を繋いで帰ろうか
M03.青空が違う
M04.太陽は見上げる人を選ばない
M05.アンビバレント
MC
M06.バレエと少年
M07.制服と太陽
M08.バスルームトラベル
M09.結局、じゃあねしか言えない
M10.Nobody
M11.危なっかしい計画
M12.僕たちの戦争
M13.Student Dance
M14.避雷針
M15.AM1:27
M16.I’m out
M17.キミガイナイ
M18.語るなら未来を…
M19.風に吹かれても
M20.サイレントマジョリティー
ねる小池尾関ユニット曲「バスルームトラベル」は全員でやったらしい。

2019年7月11日木曜日

シャルル・ミュンシュ「指揮者という仕事」(1954)

シャルル・ミュンシュ「指揮者という仕事」の2008年新装版があるので読んでみた。
春秋社から福田達夫訳で1994年に出たものが本邦初出?
Charles Munch, Je suis chef d'ochestre 1954
実は自分は以前、かなりクラシック音楽に関する本を読んでいたのだが、その後まったく読まなくなった。得た知識をどこでも活かすことができないからw やがてCDも聴かなくなった。もう世界的にクラシック音楽を熱心に聴いてる人はおじさん以外にあまりいないw

「30年以上ものあいだ、私はこの小さな本を書くことを夢みてきた。」という書き出しで始まる。
邦題だと指揮者を目指す人に向けて書かれた専門書のように思えるかもしれないが、原書タイトルだと「私はオーケストラ指揮者」。わりと世間一般に向けて指揮者って何をしているの?というような疑問に答える一冊かもしれない。

1891年、当時ドイツ領だったシュトラスブルク(現ストラスブール)に生まれたミュンシュは、音楽院教授でオルガン奏者の父が創設したサン・ギョーム合唱団でバッハを歌い、ヴァイオリンを学ぶ少年時代を過ごす。
第一次大戦ではドイツ軍で軍務につく。当初は医学部に籍を置くもフルトヴェングラー時代のライプチヒ・ゲヴァントハウスで第1ヴァイオリンでコンサートマスター。

戦後はアメリカに渡ってボストン交響楽団を黄金時代に導く。小澤征爾の師でもある。
晩年はパリ管弦楽団設立に関わる。1968年77歳で死去。
というのが自分の知ってたミュンシュ像。この本の解説でミュンシュは完全なコンサート指揮者でオペラは振ったことがないことを知った。

指揮者のこころがまえのようなものも書かれてるし、聴衆に向けて語りかけるようでもある。自身の半生も語られる。
「指揮者とは職業でなく病」というような、引用したくなるような名言だらけ。

巻末には訳者の「指揮者とは何か」という章がある。指揮者が登場した歴史的経緯などの解説文になっている。

自分はこれまであまりミュンシュを聴いてなかった。この本を読んだ後に、ボストンSO.との演奏をいろいろと聴いてみた。中でもブラームスの第4番には感銘を受けた。

2019年7月10日水曜日

羊と鋼の森(2018)

「羊と鋼の森」(2018)を見る。昨年6月に公開された東宝市川南製作映画。監督は橋本光二郎、脚本は金子ありさ。これは最近原作本を読んだので楽しみにして見る。

主演は山﨑賢人だが、この俳優はもうかれこれ10年は悩める10代の役をやっている。

冒頭の高校体育館での調律師三浦友和との出会い。雪国の午後の空気と色合いが自分のイメージにぴったり。
撮影カメラマンは山田康介。自分、この人の映画をわりとよくみてる。「ホットロード」「アオハライド」、なんと「シン・ゴジラ」もこの人。

羊の毛で作られたフェルトのハンマーが鋼の弦をたたく。本からは音は出ない。こういう話は映像があるほうがよい。
就職する社員5人の楽器店も自分のイメージに近い。
ピアノ調律に行く家が原作のイメージよりも雪深い田舎だった。映画では旭川周辺でロケしてるっぽい。

上白石萌音・萌歌姉妹登場。最初に弾くピアノ曲がラヴェル「水の戯れ」。これはおそらく実際は辻井伸行が弾いている。
この姉妹が弾く曲でわからない曲がいくつかあった。姉の弾く曲がショパンの第3番ソナタの第3楽章ばかりだ。

職場の鈴木亮平、三浦友和がいい人。光石研みたいな人と一緒は嫌だ。城田優のフカシっぷりと嫌な客っぷりも想像以上。

鈴木亮平のやってるバンドがエルレっぽいなと思ってたら細美武士「The Autumn Song」という曲だった。

ドイツ人ピアニストの要望にピアノの支柱部分をよっこらしょと変えただけで「Gut」と満足させるシーンを見て、調律師ってそんなことも?一流の世界ってそんななの?!って驚いた。

予告編トレーラーを見ると暑苦しい映画かも…と心配していたけどそれほどでもなかった。でも基本、調律師見習い青年周辺の人間ドラマ。大した事件も起こらないしドラマとしての推進力もない静かな映画。理想の音を求めることは森の中の1本の巨木を探し歩くよう。