2024年3月19日火曜日

横溝正史「金田一耕助の新冒険」

横溝正史「金田一耕助の新冒険」の2002年光文社文庫版がそこに110円で売られてたので連れ帰った。それなりに読み跡のある中程度のコンディション。昨年2月に購入し積読しておいたもの。

「冒険」を読んでないのに「新冒険」を先に読んでいいのか?ちょっと躊躇したけど、おそらくどちらを先に読もうと関係ない。昭和31年~38年に発表された短編を集めた一冊。
目次を見てみると、読んだことある作品がちらほら。

もう角川文庫版で読んでないのは残り数冊。「死神の矢」「魔女の暦」が読みたいけど角川文庫版は今日に至るまで程度の良いものを見つけられなかった。なのでこの光文社文庫版で読むことにする。読んだことがあるものも読む。
  1. 悪魔の降誕祭
  2. 死神の矢
  3. 霧の別荘
  4. 百唇譜
  5. 青蜥蜴
  6. 魔女の暦
  7. ハートのクイン
「悪魔の降誕祭」「霧の別荘」は久しぶりに読んだけど、こんなアッサリ突然の幕引きのような終わり方だったっけ?と多少驚いた。

「百唇譜」「青蜥蜴」「ハートのクイン」はすべて後に長編や中編に改題リライトされている。そちらは読んでいるのだが、内容がかなり違っている印象。

「死神の矢」は、結婚適齢期の娘の求婚者の中から、洋上に浮かべた的を弓矢で射る競技で決める。当たるわけないと思いきや、当てた求婚者がいる。だが、選に漏れた求婚者が殺されるという「ユリシーズ」のような展開。
「結局、片瀬における白箭殺人事件は、未解決のままに荏苒として時がすぎていった。」
という箇所で「荏苒(じんぜん)として」という言葉を学んだ。横溝先生はたまに難しい言葉を使う。

「魔女の暦」ストリッパー連続殺人。アプレゲールな若者たちは性が乱れすぎ。
「この女が一座のなかでもいちばん伝法な口のききかたをする。」
「伝法な口のききかた」という言葉を初めて知った。「伝法な」とは「粗暴で無法な」という意味だと、今回調べて知った。
さらに、犯人から不審な誘いの手紙でストリップ小屋におびき出され、殺人現場に遭遇し、等々力警部と出会って金田一さん
「なあに、ぼくだってたまにゃストリップ見物ぐらいしまさあね。浩然の気をやしなうってやつですかね。あっはっは」
「浩然の気をやしなう」という言葉を初めて知った。これは孟子からの言葉らしいのだが、調べてみてもわかるようなわからないような。

「ハートのクイン」で刺青の老彫師が交通事故死する現場が新宿御苑の四谷側(内藤町)にある多武峯神社というところなのだが、そこは一度も行ったことないな。
30年代の横溝作品は内容がゲスいものが多いな。

この文庫版は巻末に「金田一耕助の登場する全作品(少年ものを除く)リストが掲載してあって便利。まだ読んでない金田一ものがいくつかあるなと。探しても見つからないものは図書館をたよることになりそうだ。

2024年3月18日月曜日

遠藤さくら、黒部宇奈月キャニオンルートを行く

乃木坂46の遠藤さくら(22)が単身でNHK富山のローカル番組「トップアイドルとめぐる富山の絶景」という番組に出演。
昨年10月にロケ収録し、11月に「あさイチ」に遠藤が単身ゲスト出演したさいに番組内で一部紹介されていた。ちなみに遠藤は富山に過去2回来ている。TGC富山というイベントで。
1月放送の「ブラタモリ」とほぼ取材した場所が同じで、ほぼ内容がかぶってる。もしかして放送日をずらした?
「ブラさくら」は富山で2月23日に放送後、NHKプラスで全国にも配信。
この番組がブラタモリ同様、普通の旅行者が体験できないことまで紹介してる。
川原の大露天風呂に足湯で入ると「通常は足湯で入れません」とか、温泉が吹き上がるところを見せて置いて「見れません」とテロップが出る残念さ。
遠藤さくらはトップアイドルグループ乃木坂46の人気メンバーと言える存在だが、どちらかというと見た目が素朴。それほど美少女感とアイドル感がしない。
観光の情報番組も大切な仕事。乃木坂は日々たくさんのテレビ番組に出てるうえに配信でも各地に旅行レポ動画などもUPしてる。そのすべてをチェックできないのだが、今回は見てみようと思えた。遠藤が単身外仕事に乗り込んでいってるから。
自分は過去2回富山にいったことがある。いずれも富山市の中心部だけで、黒部峡谷も宇奈月温泉も未踏地。いつか行ってみたいけど、そんな機会があるかどうかはわからない。
食レポも反応も普通なのが遠藤。それほど陽な感じを出さない。微笑んではいるけどアイドルらしくはない。
宇奈月温泉では電気バスが走ってる。これはスイスのツェルマットをモデルにしたそうだが、実は自分はツェルマットに行ったことがある。信じられないかもしれないが本当だ。
電気バスって村内を流して走ってる。道路わきでただ単に休んで突っ立ってると、バスが音もなく近づいてきて「乗るのか?」って感じで止まってくれるのだが、慌てて「乗らない!」とアピールしないといけなかった想い出。
宇奈月温泉はオーストリア・ザルツブルクにも似てるということで、モーツァルトで町おこしをもくろんでる。

20数分間の番組で、遠藤が画面に映っていた時間はおそらく半分ほど。富山を紹介するのがメインの番組だし。
遠藤とずっと行動を共にしたNHK富山のアナウンサーが、おそらく遠藤からしたら握手会やミーグリでよく見るタイプの人物に見えたのではないか?と思った。
自分はそれほど遠藤を追ってないのだが、あまりネタもないので備忘録としてここに記録した。

2024年3月17日日曜日

山田詠美「ラビット病」(1991)

山田詠美「ラビット病」(1991)を新潮文庫で読む。これも無償でいただいてきた本。

身なりに気を遣わず、気分屋でだらしなく、働いてもいないが遺産を相続してお金はたくさんあるというゆりちゃん。
横田基地に勤務する、バカだけど真面目なロバちゃん(ロバート、黒人)のふたり。
うさぎのようにいつもぴったり一緒にいるバカップルの日常を描いた9本から成る短篇集。

これ、ギャル雑誌にでも連載されていたのか?って想ってしまうほど、読むのに学は必要ない。すごく平易。難しい言葉も表現もない。たぶん小学生でも読める。だが、内容はセッ○スなので、高校生以上でないとダメだろうと思う。

あと、ゆりちゃんの話す言葉が平成ギャル語口語体なのでさらにバカっぽい。ほぼ童話のようだし、ゆるキャラ漫画やアニメのよう。大人の読者が読むべき本ではないかもしれない。
この本を好きだという読者は主に若い女性だろうと思うのだが、ロバちゃんのような男性はおそらくこの世にほとんどいない。たぶん横田基地勤務の軍人・軍属には絶対いない。

なお、この本の「双子届」という章に、16号沿いの横田基地に面した場所にあるタンタンメンが名物だというラーメン屋が登場する。そのラーメン屋は同じ場所にたしかに存在する。「福実」という店だが、自分は過去に3回ほど立ち寄ったことがある。カウンターとお座敷席があるごくふつうのラーメン屋。タンタンメンがあったかは覚えていない。あそこはチャーハンが美味しい。

あと「すあまのこども」という章があるが、「すあま」という和菓子を関西出身の友人はまったく知らなかったという。

2024年3月16日土曜日

SFマガジン 2019年2月号「百合特集」

SFマガジン 2019年2月号「百合特集」を読む。
これ、処分するという雑誌の中から1冊抜いてもらってきた。ちなみに自分、こういったSF文芸誌を読んだこともめくったこともない。とある日のきまぐれ。

で、百合SF小説というジャンルがあるらしい。ぜんぜんイメージできないのだが、女の子がふたり出てくるSF小説は「百合」らしい。

この号に収録されている読み切り短篇はすべて読んだ。あとは、ブックレビューや評論など。
読み切りは
  1. 宮澤伊織「キミノスケープ」
  2. 森田季節「四十九日恋文」
  3. 草野原々「幽世(かくりよ)知能」
  4. 伴名練「彼岸花」
  5. 今井哲也「ピロウトーク」
の5作を収録。すべて初めて読む作家。自分としては1番目と2番目は評価する。面白いというよりも、詩的な味わいと余韻。
3番目は「この孤独な宇宙にはどこまでも理由が満ちている。哲学的ハード百合SF」ということだが、このジャンルの素人の自分としては理解を超えた。
4番目は二人の少女の密やかな日記形式ということだが、こちらも自分には魅力がよくわからなかった。
5番目はマンガ。こちらも誌的で切なさの残る短編。

あと、夢枕獏、椎名誠、神林長平、冲方丁、西島伝法、藤井太洋といった作家人による連載。自分は一度も読んだことのない作家たち。連載の一部だけ読んで感想を書くつもりはないので今回もスルー。

だが、2018年度のヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞短編レベッカ・ローンホース「本物のインディアン体験へようこそ」、ヒューゴー賞受賞スザンヌ・パーマー「知られざるボットの世界」の2本は読んだ。どちらも特に感想はない。

今やってる菅井友香と中村ゆりかの百合ドラマ、第1話を見た。今後も見て行こうと思う。

2024年3月15日金曜日

西村京太郎「銚子電鉄 六・四キロの追跡」(2010)

西村京太郎「十津川警部 銚子電鉄 六・四キロの追跡」(2010 フタバノベルズ)を読む。「小説推理」2009年8月~2010年2月号に連載された物を単行本化したもの。

自分、この十年で西村京太郎を読むのはこれが2冊目。この作家の本を読もうという気にはならないのだが、こいつも無償でもらっておいてそこに積んであったので、重い大作を読んだ後に軽いものを読もうというときに読む。

それに、銚子電鉄のファンという人はこれを読んでるらしい。自分は過去3回ぐらい銚子に行っている。数年前、この小説の舞台になってる外川にも出かけて散歩した。なので多少は興味を持って読み始めた。

西村京太郎は読んでいてまったくストレスがない。さらさらとお茶漬けのように活字をかっこむ。
適切なテンポで犯罪が露見し、刑事たちが聴きこんできた情報が明かされる。
新本格とかだとそれらの情報が偽情報だったりしてややこしいロジック問題になったりするのだが、この作者の場合はそれがまったくない。ペダンチックなムダ情報を読まされることもない。十津川警部の捜査方針はとにかく順調。

旅行雑誌記者が犬吠駅で取材カメラを盗まれる…という事件から始まるのだが、わりと多くの犠牲者が出る。怪しい投資話に乗っかった青年、金を貸す消費者金融支店長、外川付近を聴きこみしてた刑事、外川マリーナの老管理人、死屍累々…。

最後は銃撃戦w 十津川警部も拳銃持って犯行グループの船を急襲。
反社グループによる粗暴な犯罪とその背景。ま、社会派推理小説という名の刑事ドラマ。
音楽聴きながらお茶しながらの2時間読書。そんな事件もあるかもしれないなという、とくに驚いた展開とか何もなかった。ごく普通の刑事ドラマの1話という感じ。

2024年3月14日木曜日

芳根京子「題名のない音楽会」でフルートを吹く

芳根京子が3月9日放送の「題名のない音楽会」でフルートを吹くと知って録画チェックした。

この番組、まだあったのかよ!って思った。物心つく以前からあった番組。
いつのまにかMCが石丸幹二さんになっていた。歌って踊れるミュージカルスターMC。
芳根が呼ばれた理由はドラえもん映画で声優を務め、宣伝に奔走してるから。

芳根が小学生から中学まで6年間、吹奏楽部でフルートを吹いていたって知らなかった。女優のフルート人口が多いように感じる。
白い衣装に白銀の横笛。お似合いすぎて美しい。
今回、自分が「えっ?!」って驚いたのが、オーケストラをバックに歌声を披露した平野莉亜菜。誰?!

「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」で声優に抜擢され劇中で歌っているという。2022年第9回東宝シンデレラオーディションのファイナリストだという。
ということは「Dr.チョコレート」主演の白山乃愛と同期か。東宝芸能はシンデレラオーディションのファイナリストはみんな事務所所属にしてんの?
調べてみたら12歳なのに英検2級を持っている!?それはすごい。英検2級の語彙力って日本語でも小学生にとってはギリではないか?
(自分なんて大学時代にやっと取った。2級が人世初で最後の英検。後にも先にも1回しか受験してない。)

小学生で英検2級受験する度胸もすごいが、東宝シンデレラオーディションを受け、声優オーディションを受け、オーケストラ伴奏でホールで聴衆を前に歌うとか、自分の小学生時代からしたら考えられない。

2024年3月13日水曜日

トーマス・マン「魔の山」(1924)

トーマス・マン「魔の山 Der Zauberberg」(1924)を読む。高橋義孝(1913-1995)訳の昭和44年新潮文庫版(平成23年39刷)上下巻で読む。

Thomas Mann(1875-1955)を読むの、ほぼ初めて。この本を人に薦めるとたぶん迷惑w 正月に5日ぐらいかけて読もうかと思って読み始めたのだが、とても読み終わらなかった。読み終わるのに10日かかった。ひたすら長く感じた。

ハンス・カストルプくんは学生と見習い造船技師の間にいる。ハンブルクからスイスの山の中腹に建つ国際サナトリウム「ベルクホーフ」で治療滞在中のヨアヒムを訪ねた。

主人公ハンスくんはヨアヒムを見舞ったはずがほぼバカンス。だがやがてハンスくんも肺病病みであることが判明し、ずるずると滞在を伸ばす。技師として働くはずだったのに病気治療のために内定辞退?両親を幼いころに亡くしたけど祖父の遺産の利子と叔父のおかげで働く必要がない。

サナトリウムなので登場人物ほぼ全員が肺病。そのわりに元気で行動的だったりする。だがやっぱりサナトリウム内部の人々とハンスくんのやりとりが延々と続く。多くの上流階級の人々がいる。
その人々を細かく描く。会話を描く。ドイツ人以上に完璧なドイツ語を話す知的なイタリア人紳士との会話が多い。
主人公ハンスが24歳?らしい。ヨーロッパ各地から病人が集まるサロンのようになってる場所で、他にすることもないのでひたすら知的な会話。

ここを読んでもしや…と想った。ジブリアニメ「風立ちぬ」のサナトリウム風景が連想されたから。調べてみたら、やっぱり「風立ちぬ」は「魔の山」のこの箇所を参照したようだ。ということは宮崎駿は「魔の山」を読んでいたのか。

上巻は後半で当時の最新科学と医学と生命科学のような講釈が延々と続いて閉口。
ハンスくんはそこに滞在してるロシア人の夫人(なんとダゲスタンから来た)に恋。フランス語でのカタコト会話がカタカナで続いて閉口。

下巻はさらに閉口。ページをめくってもめくっても面白くはなってくれない。
夏目漱石の「吾輩は猫である」が明治の日本人が読めばいい小説だったように、「魔の山」も1920年代のドイツ青年が読めばそれでよい小説ではないのか?サナトリウムの人々のこまごまとした様子と会話がひたすらだらだらと、構成に統一感もなく、まとまりもなく、長々と続く。

人々の死の場面もあるのだが、大げさな愁嘆場は一切ない。淡々としてる。
終盤になってわりと大変な事件が起こる。ハンスくんが内心うざいなと感じてたセテムブリーニ氏とナフタ氏の決闘。
そして、ベルクホーフで惰眠をむさぼっていたハンス・カストルプくんはついに山を下りることになる。それは第一次世界大戦のために。
自分、この本を読みながらずっと時代背景のことを考えていたのだがずっと判断できなかった。第一次大戦前夜のことだとわかったのは下巻の後半。

あと、なんで?ってぐらいハンスくんのベルクホーフの最新型蓄音機で聴いてるレコードに関する細々とした記述が多い。ああ、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」がまだ現代曲だった時代だったんだなあ。

この本を読んでるときは「早く終わってくれ!」と考えていた。だが、読み終わった後はそれなりに満足感があった。ドイツ帝国が崩壊した後のドイツ青年のために書かれた小説であることはわかった。現代日本の若者にこの本はあまりオススメできない。
読んでる最中、これは村上春樹に影響を与えているのかも…などと考えていたのだが、熱心な村上春樹読者にとってそれは常識だったようだ。

2024年3月12日火曜日

第47回日本アカデミー賞 授賞式!

第47回日本アカデミー賞 授賞式をまた今年も日テレの中継(3月8日夜9時から)で見た。グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールから中継。
自分はなんだかんだで10年以上ほぼ毎年見てるのではないか。

日本映画の1年間の制作本数からいって、人気俳優女優たちが出演できる映画の本数は限られている。出演した映画でそれなりに目立って評価される役を選び出演を勝ち取り、なおかつ話題になりヒットにつながる作品は、俳優人生のうちに数本しかない。
となると、このイベントに呼ばれるチャンスは役者人生の中で数回しかない。チェックしないわけにはいかない。
新人賞はわりと名前の知られた若手俳優女優でもなかなか選ばれない。

今回、個人的に注目したのは福原遥原菜乃華。ともに子役時代からドラマに出ていた。ふたりはもう映画もドラマも出演作が多い。やっと呼ばれた。一世一代の晴れ姿。
ドレスと衣装にも注目度高い。スタイリストたちにとっても真剣勝負。
アイナ・ジ・エンドという人は自分はあんまり知らない。桜田ひよりはわりとドラマに映画によく見かける。
日本国民の朝のヒロイン福原遥の今回の主演映画は正直微妙だと思ってた。しかし、25歳の今「新人賞」で呼んでおかないと…という危機感を自分は感じていた。
永野芽衣は吉永小百合映画に登場。あんまり若い層には刺さらない映画だったのでそれほど期待はしてなかった。緑衣装は他になく印象に残る。
杉咲花は唯一人の着物姿で目立ってた。主演映画も賞レースでは評価されやすいタイプの映画だったので、かなりの有力候補だと思っていた。

浜辺美波は「ゴジラ・マイナス1」で優秀主演女優賞、「シン・仮面ライダー」で優秀助演女優賞に選ばれた。
そのどちらかで最優秀になんとか選ばれないものかと期待して見たのだが、結果は両方とも安藤サクラが持って行った。女優部門のメインの賞を二つ持っていくのは意外だった。これで来年のMCは安藤に決定。

昨年に最優秀主演女優賞を受賞したことでMCを務めることになった岸井ゆきのは最初から噛んでしまい「どあたまでスベる」というちょっとした事故映像。会場がシーンとなって笑った。すかさず助けを出した羽鳥アナと大泉に感心。
映画で共演したことある浜辺はニコニコしながら「がんばれ!」ポーズ。浜辺、なんかMIKIKO先生に似てる。
劇場公開映画の未来は日本でもアメリカでも世界でも先行きは明るくない。ヒット作を生み出すのもなかなか大変。どちらかというとこれからはストリーミング各社が多大の制作費をかけたドラマが話題の中心になっていく。

2024年3月11日月曜日

岡嶋二人「珊瑚色ラプソディー」(1987)

岡嶋二人「珊瑚色ラプソディー」(1987)を集英社文庫(1990)版で読む。

勤務先のシドニーから婚約者の彩子と結婚するために、二週間の休暇を得て成田に降り立った里見は出迎えているはずの彩子がいないことに気づく。弟によれば、彩子は沖縄の八重山諸島にあるという石富島というところで盲腸炎で病院に担ぎ込まれ手術したらしい。

急きょそのまま成田から沖縄に飛んで現地に急行した里見は彩子と再会。だが、彩子は前後の記憶がはっきりしない。女友達の蓮田乃梨子と一緒に旅をしていたと主張するのだが、乃梨子の母に電話すると乃梨子は青森を旅行中とのこと。え、そんなはずはない!

要領を得ないまま里見は方々に話を聴いて回る。病院に手術費入院費を払った40歳ぐらいの男がいた?彩子はその男と旅館に宿泊していた?里見は婚約者に疑惑の眼差し。だが、彩子は「信じて!」

週に二度、片道3時間の定期便が出る宇留間という島に彩子は乃梨子と一緒に行ったはず!
この小さな離島の診療所に乃梨子の兄が医師として勤務していた。
里見はこの医師を訪ねて話を聴きにいく。「え、ふたりは来てないけど!?」

いったい何がどうなってる?里見を尾行する若い男。宇留間出身の歌手、追っかけ少女、人相の悪い男、様々な謎。

何かを隠ぺいしようとする勢力と、真相を探ろうとするカップルの戦い。そして冒険。そしてラブ。
まるでスパイ小説のような面白さ。一晩でイッキ読み。ああ、この岡嶋二人もまるで展開の読めないやつ。ずんずんページをめくれる面白さ。

2024年3月10日日曜日

津本陽「鎮西八郎為朝」(1987)

津本陽「鎮西八郎為朝」(1987)を講談社文庫(1992)で読む。
自分が津本陽(1929-2018)を読むのは初めて。

鎮西八郎為朝は八幡太郎義家の孫で、源氏の棟領源為義の八男。身長はなんと七尺二寸(218cm)という目立ちすぎる大男。5人張の強弓を引く強者。為朝が放った矢は敵3人を串刺し…とか、どう見ても盛ってるだろ。

16歳の為朝は崇徳上皇の白河殿で、弱輩の分際で武辺を誇り信西と争い無礼を働いた。父為義は為朝を九州豊後へ追放(逃がす)。
為朝は村人を困らせていた大蛇を自慢の弓で退治し、妖術を使う修験者たちを退治し、その評判は九州一円へと広まる。

やがて京では崇徳上皇と後白河天皇の対立。父為義に呼び戻される。「保元の乱」開戦。為義、為朝は崇徳上皇側につくのだが、兄の源義朝は後白河天皇の側についた。
侍大将として思う存分暴れようと思いきや、速戦即決の方針を左大臣藤原頼長に否決される。やれやれ。宮廷儀典だけやってればよい公家が軍事の専門家に意見するとか、そもそもの間違い。

で、平清盛、源義朝に急襲され、崇徳上皇側が敗走。父為義は法体となって逃走を図るも、長男義朝にダマされる形で斬られる。為義の子たちも清盛と義朝によって次々と斬られる。
為朝も逃走を図るのだが体調を崩してしまい捕縛される。だがなぜか為朝は命は助けられ伊豆大島へ配流。

腕の筋を切り抜かれてもまだまだ腕力の強い為朝。伊豆大島全体をほぼ自分のものにしてしまう。そして保元の乱で逃散した生き残りの家来たちも合流。伊豆から渡ってくる工藤茂光の家人たちも退ける。
為朝の矢が敵の船を沈めるほどの威力と命中精度。まるでスナイパー。そのへんの描き方はファンタジー。
てか、軍記物をそのまま口語訳したようなものなので、登場人物たちがみな単純バカに感じる。司馬遼太郎のような合理的な説明解説とかまったくない。

そして工藤を討つべく伊豆を襲撃するのだが初めての敗北。為朝と一行は御蔵島のさらに南にあるという葦島を目指す。それってもしかして八丈島?
しかしこの時代の渡海は命がけ。運を天任せるようなもの。

ここから先はもう伝説。かなり無茶苦茶なファンタジー。為朝がスーパーマンすぎる。

途中で出会った琉球船を斬り従え、有能な水主を得た後に九州を目指すはずが徳之島へたどり着き、宋船の海賊との戦闘で妻を流れ矢で失い、怒りのあまり敵を全員斬首皆殺し。
さらに琉球へたどり着き、戦国琉球を平らげ征服。そして再び新たに妻子を得る。

だが為朝は九州でまた再び武士として戦乱へ身を投じたいと願う。京にいる憎き信西を討ちとりたい。周囲が止めるのも聴かずに再び海へ…という内容。
大人が読むには内容がファンタジーすぎた。はちゃめちゃすぎ。軍国主義時代の少年たち向け読み物みたいだった。

2024年3月9日土曜日

筒井康隆「時をかける少女」(1967)

筒井康隆「時をかける少女」を平成28年新装版角川文庫(表紙イラストは貞本義行)で読む。あまりに有名なジュブナイルSFの古典的名作。映画やドラマで見たことはあっても、原作は今まで一度も手に取ったことがなかった。

一番最初の映像化はNHK少年ドラマシリーズ「タイム・トラベラー」(1971)で主演は島田淳子。自分はこれは写真資料でしか見たことがない。

初映画化は1983年の原田知世主演、大林宜彦監督の角川映画「時をかける少女」。これはある年代以上の人はほぼすべてが知ってる有名作。
1997年には角川春樹が監督で中本奈々版も作られたそうだが自分は未視聴。2010年の仲里依紗版もある。細田守監督によるアニメ映画(2006)もある。
テレビ版として1985年には南野陽子、1994年には内田有紀、2002年に安倍なつみ版、2016年には黒島結菜版も作られた。それだけ愛された古典SF。

1960年代に中学生向け学習誌に連載されたものなので、とにかく文体が平易で分かりやすい。今の子が読むと平易すぎて物足りないかもしれない。
それに高校生たちの会話が、今の高校生たちからすると、やはり古めかしい。でも子供なりに時代が違うということは理解できるだろうかと。

筒井康隆せんせい本人が出演した、内田有紀版「時をかける少女」)のブルーレイはまだか?配信とか再放送でもいいから誰か偉い人が実現させてほしい。ヒロインの友人役が菅野美穂、妹役が安室奈美恵という豪華なキャスト。

この文庫本の後半ページには2本の短編を収録。

「悪夢の真相」
中学生のための心理学入門とでも呼ぶべき短編。なぜ自分はこれがこんなにも怖いんだろう?それには理由がある…ということを子どもにもわかりやすく教えてくれる。学習誌にふさわしいジュブナイル短編。これは「世にも奇妙な物語」とかで面白い短編ドラマにできそう。

「果てしなき多元宇宙」
これも小中学生でも読める平易な文体なのだが、いかにも筒井康隆らしいはちゃめちゃカオス展開。正直、この文庫本でこれがいちばん面白かった。

2024年3月8日金曜日

高野和明「13階段」(2001)

高野和明「13階段」(2001)を2004年講談社文庫版で読む。
第47回江戸川乱歩賞受賞作とある。たぶん多くの読者に読まれたであろう1冊。自分はこの作家の本を読むのは初めて。たぶんこの作家で一番有名な本。
この人は映画製作の現場で脚本執筆などの経歴を積んだ後に作家となったらしい。

不良に絡まれて相手を死なせてしまった三上は、高校時代に女子生徒と一緒に家出して補導された過去から心証を悪くしてしまい、2年の実刑をくらってしまう。だが模範的にふるまって仮出所。しかし社会の目は冷たい。ただ両親は優しく自分を迎え入れてくれた。被害者遺族への損害賠償金7000万円の支払いで両親は工場を失い家を失いつつましい生活。

中年刑務官の南郷に見込まれて、とある冤罪事件で死刑が確定している樹原(事件直後に現場近くで転倒事故により記憶喪失)に死刑執行のタイムリミットが迫る状況で、南郷に雇われた三上は一緒にペアを組んで再調査開始。
ここから先は探偵小説のような展開。ドラマ「エルピス」が好きな人には刺さる内容かもしれない。

刑務官南郷が語る日本の死刑制度の問題や刑務官のメンタルの過酷さ、そして死刑執行の細かい手順と描写が読んでてつらい。

だがそれでもこの日本製ウィリアム・アイリッシュとでもいうべき古典的ベタさは荒唐無稽な感じもしなくはないが、予想のつかない真相とハラハラドキドキ展開はとても魅力的だし読んでいて面白く楽しい娯楽作だった。
これはゼロ年代を代表する名作サスペンスの1冊と呼んで差し支えない。ページをずんずんめくれる。

死刑制度のある日本。あなたの産む子どもは将来、冤罪を掛けられ司直によって罠にはめられるように死刑にされるかもしれない。反対に、誰かを死刑に落とし込む側になるかもしれない。死刑囚を奈落に落とすスイッチを押す刑務官や検察官になるかもしれない。

労働者不足の日本に進んでやってくる外国人にも言いたい。日本には性格の悪い警察官と検察官がいて死刑制度があるということを周知させる必要もある。