2018年12月13日木曜日

新山詩織ラストライブ「LIVE OF PAUSE 20181212」@渋谷WWW

ついに新山詩織の活動休止前最後の渋谷WWWライブの日がやってきた。寒い夜だった。

新山詩織が活動休止を発表したのが10月20日。その第一報を聞いたとき、それはがっくりきた。だが、自分はなんだか受け止める準備もできていた気がする。

なにせ活動6年。ビーイングさんは親身になってがんばって色々な手を打ってくれた気がする。福山雅治との共演でドラマに出させたり、岩井俊二監督にMVを撮ってもらったり、話題づくりに勤しんだ。
だが、やっぱりCDは売れなかったし、音楽番組にも呼ばれない。結果が伴わない。たぶん本人も焦っていたかもしれない。自分も焦っていた。

ライブ会場には大学生ぐらいから60代ぐらいの男性まで幅広いファンがいた。だが9割以上が男性。あまり女性たちに新山の素朴な歌唱とギターとキャラは届いていなかった気がする。ブレイクできなかった要因はそこかな。

自分は2012年12月にステレオポニーというガールズバンドの最期を見届けた。YUIのソロでの活動の休止も見届けた。そこに入れ替わるように出現したのが新山詩織だった。

自分は2013年の夏フェスJOIN ALIVE(岩見沢)が初めての生での新山だったのだが、今生まれたの?ってぐらいに儚げ。元気いっぱいでない。明るくないというところが新しいw

このとき以来、今回のラストライブまで、ワンマン、フェスを含めて5年間でじつに14回新山詩織をライブで見てきた。
CDもシングルをほとんど買ったし、自分としてはがんばって応援してきたつもり。新山詩織の音楽が広く世間に届かなかったことに失望。そして自分ひとりの無力さに絶望。
この日のライブ、事前に前売りでSOLDOUT! 
これぐらい毎回ライブに人が来てくれれば、EXシアターが完売していれば、Zeppへと展望が開けたかもしれなかったな。などと思った。

300番台のチケットだったのだが、ぜんぜんステージが見えなかった。最上段最後列で音だけ聴いていた。この会場はギッチリ収容で番号がよくないとたちまち糞ライブハウス。ステージがよく見える場所を求めて移動できないし。

なんとか背伸びして頭と頭の間からチラ見した感じだと、新山は広瀬すずみたいなショートになっていた。衣装は白いドレスのようなワンピースだったようだ。

この日はすべて新山ひとりによるギター弾き語りスタイル。
「Looking to the sky」「絶対」と演奏して注目の最初のMC
「みなさん、こんばんは。とてもお久しぶりになってしまいました」(自分は2月の赤坂BLITZぶり)
「12月12日でデビューからちょうど6年」「10月に活動休止を発表しました」「最後までいつも通り1曲1曲を届けていく」とのこと。

6曲目「分かってるよ」が終わってMC2回目。
「この会場での弾き語りはオーディションぶり」「先月、両親と町田康さんのバンドを見に来て以来」「町田さんが、書くにも歌うにも本当のことを言わないといかんみたいなことを言っていた。ありまのままの自分を出せたらいいなと思って歌ってきた」「次はそんな思いで書いた初めての曲」「ギターなしの声だけで歌います」と語った後の「だからさ」。

「名前のない手紙」では演奏を途中で一旦止め、また再開。何が起こったのか?自分の場所からはわからない。

ここまで聴いてきて、新山詩織の楽曲はどれもとてつもなくしんみりした曲だったんだなと思った。
その一方、新山のMCはところどころ「うふふふ」と笑いを入れながら、どこか吹っ切ったような?清々しい爽やかなトークぶりだった。
「活動休止は自分で決めたこと」「今日こうして歌っていられるのはみなさんのおかげ」「感謝を歌に乗せて届いたらいい。届いたかな?」会場内から大きな拍手。

「来年から色々な景色を見たい」「もう一歩前へ行きたいという前向きな気持ち」「言葉足らずで申し訳ない」「デビューしたてのころは下を向いてばかり。MCもこんなふうに喋れなかった」「成長できたのはみなさんのおかげ」「新しい年からみなさんもいろんな日々がある。ぜひ悔いのないように過ごしてほしい」そして最後の曲「もう行かなくちゃ」を披露。

新山の楽曲はすべて、新山が教室で部屋で膝を抱えて悩んでいた自分から一歩踏み出すような等身大の歌詞を持った楽曲だった。
それがこの日は、音楽を一旦そっと置いて、新しい道へ進む希望を歌っていた。

自分は事前に会場からすすり泣きが漏れるような、新山が号泣するようなライブだったら行きたくないなと思っていた。だが、アンコールでも新山は最後までずっと希望にあふれた笑顔MCだった。いつもと変わらない丁寧な言葉遣いの朴訥とした、うふふふという笑いを交えたひとりトークだった。

今後の新山の新たな夢が何であるのか?についてはまったく具体的な言及がなかった。ひょっとすると今後もその件については何も発言しないかもしれない。

本当に最後の曲「ゆれるユレル」が終わって舞台から一度消えた後再び舞台へ。このときの挨拶でようやく新山は初めての涙を見せた。

自分はライブのタイトルが「LIVE OF PAUSE 20181212」と聞いて、今回の新山の決断はPAUSEなんだと、音楽以外の道へ進むということではないんだとちょっとは希望を思ったのだが、やはり新山はもう帰ってこないかもしれないな…と思った。そんな気がした。本当に寂しく哀しい。

とにかく元気でいてくれ。いつか楽しそうに幸せにしている姿を見せてくれ。ただそれだけが希望。

新山詩織 LIVE OF PAUSE 20181212 セットリスト
01.Looking to the sky
02.絶対
03.「大丈夫」だって
04.たんぽぽ
05.シャボン玉みたいに
06.分かってるよ
07.だからさ
08.きらきら
09.Hello
10.I Feel The Earth Move(Carole King)
11.丸の内サディスティック(椎名林檎)
12.Don't Cry
13.恋の中
14.四丁目の交差点
15.名前のない手紙
16.もう、行かなくちゃ。
アンコール
01.ありがとう
02.ゆれるユレル
6年とは決して短くないし長いはずなのだが、自分にはあっという間だったように感じられた。無常を感じた。
今年は平成最後の年。多くの訃報も耳にしたし、身近でもいろんなものが変わった。よく行くお店もなくなった。

渋谷とはもう四半世紀の付き合いだが、ずいぶんといろいろなものが変わった。渋谷公会堂もSHIBUYA-AXもなくなった。
渋谷でよく行っていた書店もなくなった。ライブの時間調整の暇つぶしに使っていたブックオフが渋谷からなくなっていたのも失望した。

もう昔のようにとりあえず渋谷へ行くということもまったくなくなっていた。もう今後は渋谷のライブハウスに音楽を聴きにくるということもないかもしれない。そんな気がする。

もう渋谷を卒業していい。渋谷に行っても欲しいものもない。もう何もわくわくしない。渋谷は訪日外国人は増えた気がするけど、街は昔よりも暗くなった気がする。きらきらしていない。渋谷を断捨離していい。そんなことまでも想った新山詩織ラストライブだった。

自分も来年は何かまったく違う道へ進みたい気がする。何か新しい楽しいことを見つけないともう生きる希望もない。自分もどこか遠くへ行きたい。東京にいる必要も感じない。

2018年12月12日水曜日

長澤まさみ「散歩する侵略者」ロケ地巡礼「加瀬夫妻の家」編

黒澤清監督「散歩する侵略者」で松田龍平&長澤まさみ演じる加瀬夫妻の自宅シーンロケ地はどこなのか?映画公開から1年以上経ってようやくつきとめた。
なにげに散歩で通りかかったついでに写真を押さえて来た。
ググってみたけどここは誰も行っていないっぽい。情報がない。なので仕方なく独自に調査。映画エンドクレジット情報からロジックで絞り込んだ。「」が「」なのはおそらく所沢のあのエリアしかない。
このロケ地がわりと幹線道路を曲がってすぐの場所で驚いた。すぐ近くまで過去数回来たことのある場所だった。
だが、この場所が映画が撮影された当時とはすでにかなり風景が変わってしまっている。
おかしくなってしまった夫に振り回される妻まさみ。「もう、ヤんなっちゃうなあ」と悪態をつきながら夫を探したこの空き地
今はもう8軒の住宅が建っていた。ええぇぇ…。
角にゴミ置き場のあった空き地が
こういうことになっている。
高杉真宙と恒松祐里が中継車でつっこんだ場所が
ちなみに右側に道はない。右奥に自分が日常的によくいくチェーン店がある。この店に自分は過去2回か3回来ていたのに、映画で見たときはまったく気づけなかった。
近所を放浪するようになった夫…のシーン
この辻も車の通りがまったくないわけでもないので、写真を撮っていると「何やってんだコイツ」感で見られる。

それにしても映画ロケ地に自宅を貸した人も羨ましいが、長澤まさみと松田龍平が演技をした場所の上で暮らしてる人も羨ましいw

この映画のロケ地は土浦、ひたちなか、海浜幕張、相模原なんかでも撮影している。そのうちにそっち方面に行ったついでに見てくるかもしれないが、ぶっちゃけもうその情熱はないかもしれない。

2018年12月11日火曜日

新田次郎「火の島」(昭和41年)

新田次郎「火の島」の新潮文庫(昭和51年)版をずっと捜していた。平成3年第23刷をやっと見つけた。100円でゲット。

今回、「火の島」を10年ぶりぐらいに読み返した。前回読んだときは全集から1冊選んで読んだ。今回、文庫で読めて嬉しい。

火山島である鳥島の気象観測所に台風の夜、漁船が難破し死体があがる場面から始まる。明治35年に鳥島が噴火したときも島に死体が流れ着いた直後に噴火し島民125人全員が死亡した歴史を観測所員の房野は思い浮かべる。

所員たちがみんな思ってることを言わない。死の恐怖と相互不信の強いストレスでギリギリの精神状態。とにかくちょっとした物言いでイライラしまくってる。

総員退避か?所長は何も決断せず何も言わないことを決め込む。
東京気象庁本庁からの無神経な電報に現地スタッフ怒り心頭。さらに神津島から急きょ鳥島へ向かわされた下っ端役人の火山の専門家。みんな死の恐怖に怯え寝不足のまま淡々と仕事をこなす。組織って嫌だよ。

新田次郎の筆致に感心しかない。心理描写がスリリングだし読んでる側もそこにある火山から強い圧迫を感じる。
鳥島での地震発生と気象観測所の撤退は昭和40年11月13日から16日まで実際にあったことのようだ。
鳥島は今も無人島。グーグルで写真を見ると観測所が思いのほか高い場所にある。今も廃墟としてそこにある。

この本を読むと、東京電力と総理官邸と福島のことや、南スーダンPKOもこんな感じだったんじゃないか?と想像。
地震とか火山とか自然災害のときに人命以外の別論理を持ち出すな!無駄なストレスを溜めるな!という中編。オススメ。

「毛髪湿度計」(昭和31年)「ガラスと水銀」(昭和32年)もたぶん以前に読んだことがあったかと思うのだが、内容をまるで覚えていなかった。今読んでもあまりピンとこない短編。水銀中毒は怖い。

今回初めて「毛髪湿度計」と「転倒寒暖計」をググって調べてみた。ちょっとほしくなった。

2018年12月10日月曜日

志田愛佳さよなら巡礼

今泉佑唯と米谷奈々未につづいて志田愛佳までもが欅坂を去る。個人的に志田は欅坂で一番イケてる子だと思っていただけに悲しい。
「二人セゾン」個人PVのロケ地である茨城県神栖市にある波崎海水浴場の浜まで友人とふたりではるばる出かけて見て来た。
この場所が行ってみてもピンポイントで場所を押さえられないかな?と思っていたのだが、わりと精度高く押さえられた。この日は12月とは思えない陽気で、海岸で何か撮影していたようだ。
なんとなく叢の膨らみが一致
さらにこの写真の中央になにか白い物体が見える
放置されたごみだった
なにせ撮影から2年以上経っている。波風にさらされる海岸の風景がいつまでも全く同じというわけにはいかない。このぐらいで止しておく。
ちなみに自分はこのPVがぜんぜん気に入っていない。浜辺でドラムをたたくという謎な企画。志田のこの笑顔だけが素敵だ。そして…
実は今回の旅の目的地は千葉県旭市の飯岡だった。欅坂46の最初で最後の21人での写真集のツイッターアカウントがUPしたこの写真の場所。これが志田の欅坂としての最後の仕事。
写真集の発売から2日後に場所を特定した自分と友人ふたりのロケ地特定秘密結社。次の週の週末にやっと行ってきた。
ここはおそらく釣り人に食事を提供するお店。
昼過ぎなのに内部から内装工事の音が聴こえる。どうやら店はすでに閉店したらしい。
せっかく志田と同じものを食べるつもりで来たのに…。内部へは入れなかった。
運営がぼかしを入れていたので、自分が撮った写真にもいちおう看板の文字にぼかしを入れておいた。

欅坂の写真集は発売日に買ってきて見たのだが、個人的には守屋、土生、原田、長濱が好きな感じだった。
そして志田のページ、どれもステキな笑顔の志田がいた。泣いた。

この記事を最後の志田記事にするつもりはない。これからも変わらず志田を応援するつもりだ。そのためにはテレビで活躍してほしい。

2018年12月9日日曜日

芦辺拓「グラン・ギニョール城」(2001)

芦辺拓「グラン・ギニョール城」(2001)という文庫本ががそこに100円で売られていたので買って帰った。今年の3月ごろのこと。

芦辺拓という作家は名前は知っていたのだが初めて読む。今回手に入れたのは創元推理文庫2006年版(第1刷)。カバー裏面の簡単な説明文を読んでもどんな本かまったくイメージできない。
THE CASTLE OF GRAND GUIGNOL by Taku Ashibe 2001
読んでみた。すごく面白かったのだが、他人にこの面白さをぜんぜん上手く説明できそうもない。

1930年代ヨーロッパの古城を買い取ったアメリカ人成金に招待された怪しい面々。アメリカ人富豪親子とその姪、建築技師、弁護士、美術評論家、古美術の専門家、謎の美女、退役軍人、女執事、そして名探偵ナイジェルソープとスコットランドヤードの刑事。
やがて怪しい中国人の出没。嵐の夜、鉄道も道路も電話も寸断。

やがて古城の塔から現所有者のアメリカ人富豪が転落死。
その10年前には前所有者の男爵の息子が11歳の誕生日に城内から行方不明になり死体となって発見されるという事件も発生していた。容疑をかけられた秘書の青年が逃亡、欠席裁判で死刑判決。
さらにその20年前、1900年の義和団事件当時、男爵と関係者が北京に滞在していたという因縁の過去。
これ、最初はディクスン・カー風の本格推理小説風作品なんだろうと思った。

だが、舞台は現代の大阪へ。森江春策という探偵が主人公らしい。
特急電車内で男が不審死。男はなぜか幻のエラリー・クイーン編集の稀覯本雑誌「ミステリー・リーグ」最終号を所持していた。

その最終号に匿名で発表された「グラン・ギニョール城」という未完の作品内世界と現代が交互に出てくる。現実と虚構がクロスオーバー。
やがて森江探偵は和歌山の資産家が山の中に建てた古城風ホテルへとたどりつく…。

この本のイメージを人に伝えようとするとディクスン・カー「火刑法廷」みたいな構造としか説明できない。3分の2までとにかく面白かったのだが、え?!というバカミス展開へ。そのへんのユーモアもカーっぽい。

けどやっぱりこの本はとても新鮮な驚きに満ちた面白い1冊だった。調べてみたら今もわりと人気の話題作だったようだ。
構成が練り上げられているし、劇中に出てくる「グラン・ギニョール城」というカー風推理小説自体も面白い。

高校世界史で習ったはずの義和団事件について初めて理解できた気がする。カスティリオーネ(郎世寧)という偉大な芸術家の存在を今日まで自分はすっかり忘れていた。

芦辺拓という作家、あなどれない。いろいろ知識の量が膨大。文庫版はあとがきも充実。今後この作者の本を探していこうと思う。

2018年12月8日土曜日

馬場ふみか「お前はまだグンマを知らない」ロケ地巡礼

昨年の3月日テレ深夜枠「お前はまだグンマを知らない」(全4回)は放送後の夏に劇場公開版もあったりしたのだが、ほとんど話題にならず世間にインパクトを残せなかった。
千葉県から転校してきた主人公(間宮祥太朗)が、からっ風の逆風が吹く通学路をたくましくペダルをこぐヒロイン馬場ふみかを目撃し恋に落ちる。何度も登場するこの道は…、
実は群馬県でもなんでもなく
ロケ地は埼玉県飯能市双柳。ゴルフ場の裏手にある田畑エリア。遠くの雪をかぶった山並みは合成w
別に行くまでもなかったのだが、ひと月ほど前、飯能で紅葉でも見ながらBBQでもしようかと出かけたついでに立ち寄った。
なんと予想外のコスモス畑だった。しかも他に誰もいなかった。

ちなみに自分、馬場ふみかをそれほど推してるわけでもない。美少女であっても胸が大きすぎる子はウエストが細くても太く見えてしまう。
実際グラビアアイドルからnon-noモデルになったとき、「下着要員だろうな」と思ってのだが、なんと2019年1月号ではとうとう表紙を飾るという快挙!
「グンマ」がそれほどヒットしなかったものの、馬場ふみかは本業のグラビア、モデル業の他に女優としても好調。「コードブルー」にもレギュラー出演したし「コンフィデンスマンJP」第3話で美大生役でも出演するなど活躍。その雄姿はたしかに自分の目にも届いていた。馬場ふみかの前途は明るい。

2018年12月7日金曜日

高山一実「トラペジウム」(2018)

乃木坂46の高山一実(24)が11月28日に角川書店から「トラペジウム」という長編小説本を出した。つまり小説家デビューだ。

発売からまもなく書店では初版が入手が出来ない状況になるほど売れたらしい。自分の乃木友は高山推しなので難なく発売直後に初版本で読めている。作家デビュー作を発売直後に初版本で読むということは自分はほとんど経験がない。

自分、ぜんぜんブログとか読んでいない。日々のちょっとした日常を短い文章で読んだところでその人を理解できると思えない。だがきっと、この長編小説を読めば高山一実という人の持つ哲学のようなものが垣間見える。
(自分の高山一実イメージは「乃木坂ってどこ?」での「高山一実ドケチ裁判」と「人生ゲームを語る」でほぼ完全に固まってしまっていた。)

高山は地元では進学校へ通っていた。乃木坂メンのなかではわりと常識と行動力があって独力でなんでもでき有能。それにロジックのある話し方をする。
だが、どこか人と違う方向へ情熱を燃やす三枚目ポジション。アイドルが好きな男子にとって、女の子に面白いという要素は不要。

「ダヴィンチ」で連載されていたのだが、自分はまったく目を通していなかった。どうせアイドルの書いた小説などたかが知れてると。
だが、それは完全に間違いだった。この本は最初からぐんぐんページをめくっていける面白さ!
友人によれば連載時よりも編集校閲とアドバイスが加わって表現が改まった箇所もあるとのこと。(自分は確認してないけど)

高山は人知れずずっとこの小説の構想を練っていた。日々妄想していた。こうなりたいという自分を。
この本の主人公も密かに心に秘めていたある計画を実行する。その地域で東にある高校に通っているヒロインはまず南のお嬢様高へ行き、強引にテニス部のお蝶婦人のようなカワイイ女の子と友達になる。

次に、西にある高専にいる可愛いことで有名な女の子とも強引に友だちになる。
自分、ここまで読んで、これは高山版「南総里見八犬伝」では?!と思ったw
実はこのヒロインは地元で可愛い子を集めてアイドルグループを作りたい!という野望を持っていた。そして実現しようと動き出した。(ある意味、里見八犬伝と言って間違ってないかもしれない)

このヒロインは高1なのだが、人を見る目は鋭い。ときどき毒をはらんだ表現が面白い。
高専で出会った男に対し
「なんだろう、この漂う童貞感は」
「しかし、この男、さっきから斜め下ばかり見ているのも謎である」
「角膜レベルでの変態は救いようがない」
とか、どう考えても握手会で培った見識だとしか思えない。高山の人間観察力に関心しかない。高山は鋭い。

そして北の美少女と出会う。ここで「鼻はシリコンプロテーゼ、おそらくL型のものを使用し、まぶたは埋没させている。目頭も切開済みだ。」と分析している箇所を読んで、自分はすごくゾワゾワしたw アイプチ、メザイク、アイテープの解説まで…。
アイドル好きの高山は乃木坂メンと楽屋でそんな踏み込んだ話までもしていたんだろうか?
昔「乃木どこ」で西野に逆ドッキリをされた回のこともちょっと思い出したが、「完全に作られた顔」というと自分はあるメンバーの目が頭に浮かんだ…。

あと、ヒロインは他校へ行く前に警備の状況を確認するためにヤフー画像サーチをしているとか、友だちになるために事前にAmazonで6万円もするロボット製作キットまで購入するとかw その下準備、まるで司馬遼太郎の歴史小説でも読んでいるかのようだ。

「新製品が安い」家電量販店とか、買い物に出かけるのは木更津か?メンバーがパソコンを買いに行くのに付き合っても他人を観察。
「全面鏡張りになっているエスカレーターでは各々の本性が見えて面白い」
「左右の鏡をチラっと覗いて自分の身なりを確認していたのを私は見逃さなかった」
「ここは人間の大半が隠し持つナルシシズムが解放される数少ないスポットだと思う」
という箇所も知られざる高山の内面を覗いたように感じた。いつもそんな観察眼で乃木坂メンバーを見守っていたのかもしれない。

自己啓発本の批評や、カタカナ英語が通じないというカナダで受けた屈辱、SNSは残り続けるのが怖いのでやらないとか、安房高校時代の高山の考えていたことも垣間見えた。

この本、開始数ページはヒロインを完全に高山で脳内再生していた。だが途中からもっと可愛らしい子でイメージw 西野に言わせると登場人物には乃木坂メンも垣間見えるという。自分はこの4人に誰も乃木坂メンを重ね合わせることはできなかったけど。

アイドルが好きでアイドルになりたいと夢見る策士のヒロイン、テレビに映るために城跡のボランティアやって情報番組に出たりする。やがてビターな現実。そして再スタート。乃木坂の高山の姿が重なる。

この本の著者に完全にしてやられた。自分にはこんな本はとても書けないという敗北感だった。尊敬しかない。広くオススメする。
江國香織、川上弘美を読むよりも面白い。たぶん、そのぐらいの才能。
たぶん、綿矢りさのデビュー作にも面白さで勝っている。綿矢が23歳のときに発表した「夢を与える」という美少女アイドル女優転落小説も想い出した。

この本、映画化することを提案したい。高山をプロデューサーにしてほしい。主演は…山下美月がいい!w

2018年12月6日木曜日

本田翼「鋼の錬金術師」(2017)

本田翼が出演しているので仕方なく「鋼の錬金術師」(2017 ワーナー)を見る。このマンガに自分はなんら思い入れがない。予備知識もない。

さすが大手メジャーなので開始冒頭部分から「さすが!」という美しい映像が撮れている。たぶんハリーポッターみたいな魔法と魔法が戦うCGファンタジー。

だが、南欧州の風景なのにそこに居る村人は顔がみんな金髪日本人w 見ていてとても違和感。「勇者ヨシヒコ」みたい。

石丸健次郎が黒い衣装の悪人として居るとそこはマカオみたいに見えなくもない。コンフィデンスマン見た後で小日向文世を見ると笑ってしまう。
セリフもとても子供っぽい。手脚が義手義足だからってそんな驚くこと?

BGMが巨大資本の作るファミリー向け映画のよう。周囲の人々の演技がミュージカル舞台のよう。だが内容は「魍魎の匣」みたいなおぞましさ。
本田はなにやらエンジニア的ポジションのおてんば娘。コスプレアトラクションとして楽しめた仕事だったかもしれない。海外ロケにも行けて美味しい仕事だったかもしれない。

おそらく大人の視聴者でこの映画を楽しめる人はこのマンガの世界観がよほど好きな人だけじゃないかと思う。
長く感じた。中盤のよく意味の分からない暑苦しい兄弟喧嘩シーンが試練だった。

これはファンタジーなんだ!子供向けなんだ!と自分を励ましながらなんとか最後まで完走。
朝倉あきがすごいチョイ役で一瞬だけ出演しててちょっと哀しくなった。もったいない。

この映画で松雪泰子がやったみたいな役をまさみにやってほしいと思っていた。今、メタルマクベスでやってる役がそんな感じ。

2018年12月5日水曜日

広瀬アリス「氷菓」(2017)

米澤穂信「氷菓」が映画化されると聞いたとき、おそらくつまらないものになるだろうなと思った。もう読んだことも忘れていたけど。

原作自体がたいして面白くない。地味すぎるどうでもいい謎を追う。
角川映画40周年記念作らしいのだが、よりによって何でこれを実写映画化しようと思った?他に映像化すべき作品はいくらでもある。情熱はもっと有意義なことに費やせ。

主演は山崎賢人くんだ。もう何本この俳優の映画を見たかわからない。またしても高校入学シーンからスタート。一体何年間15歳役をやってるのか?それはそれですごい。何のやる気も起こらない生徒。「管制塔」とまったく同じ死んだような目。

これを見てしまった理由が広瀬アリス。妹すずの映画は必ず話題作になっているというのに、姉アリスの出演作がことごとく何の話題にもなっていなくて哀しい。義務感で見る。
この映画のキャストが15歳にしてはみんな実年齢が高い俳優たち。
一発目のジャブとして繰り出された謎が密室っぽい。これがこの話で一番ワクワクできる謎かもしれないのだが、その理由がショボい。ショボすぎる。「すごぉい♥」なんて言ってるアリスに自分は「マジか?どこが?」とつっこんだ。

時代を考証し、仮説を建てては壊し、新たな証拠を検証する映像がとてもわかりやすい。
だが、その真実って面白い? 驚きもない。ある意味もう一つの「コクリコ坂」。どうでもいいわ。つまらないにもほどがある。暗い。

山崎賢人がキャスティングできていなかったら、まったく話題にもならなかったであろう1本。

エンドクレジットにドラム佐治宣英とあってびっくりした。伊東歌詞太郎によるユニット「イトヲカシ」による映画主題歌に参加していたようだ。

2018年12月4日火曜日

アガサ・クリスティー「カリブ海の秘密」(1964)

アガサ・クリスティー「カリブ海の秘密」(1964)永井淳訳 昭和52年ハヤカワ・ミステリ文庫版(昭和60年第19刷)を手に入れた。ちょっと汚れていたけど100円で購入。
A CARIBBEAN MYSTERY by Agatha Christie 1964 
こいつが自分にとって長編ミス・マープル4冊目。この本も何も有名じゃないが、クリスティの本はなんでも読んでみる。

甥のはからいで西インド諸島へ転地療養に来たマープル。日がな一日ビーチにいるかホテルで編み物してるしかない。他の客も有閑中高年ばかり。

たいして面白くもない同じ懐古談を何度も人に聴かせるおしゃべり醜男老人パルグレイヴ少佐の、インドアフリカでの誇張された武勇伝などに付き合うミス・マープル。

やがて殺人事件の話題になり、犯人が写った写真をマープル婆さんに見せようとするも、何かを見て焦って写真を引っ込め話題を変えた。
そして翌朝、死んでいる。ま、血圧も高かったらしいし、たぶん自然死だろうと埋葬。

だが、血圧が高いって誰が言ってた?死体となって発見される以前に血圧降下剤なんて洗面所になかったとホテルの黒人メイドが証言。
さらに、黒人メイドも何かを目撃したらしく、犯人を強請ろうとして刺殺体で発見される。

警察も捜査開始。マープル婆さんも独自に控え目に噂話を聴いて回って謎に迫る。この人、名探偵なのに英国婦人らしく控え目。どうせこんな年寄りの女の話なんて誰も聴いてくれないし…というスタンス。他にないキャラクターだ。

やがて3人目の犠牲者が出て、4人目をギリギリでマープル婆さんの名推理で阻止。アリバイとか一切出てこない。ただ人間観察のみで真相にたどり着く。

地味なようでいてなかなかの佳作だったように感じた。読んでいて退屈しなかった。

2018年12月3日月曜日

吉高由里子「真夏の方程式」(2013)

「真夏の方程式」(2013 東宝)という映画があるので見てみる。この映画は2013年ナンバー1のヒット作だったようだ。
福山雅治主演のガリレオシリーズの第2弾らしいのだが、第1弾の「容疑者Xの献身」はまだ見ていない。フジテレビのドラマ「ガリレオ」はまさみがゲスト出演したスペシャルしか見ていない。

たぶん2時間ミステリードラマ。自分、東野圭吾という国民的人気作家の本は十代のころ1冊しか読んだことない。ドラマや映画もあまり意識して見てないのでよく知らない。
この映画、吉高由里子が出てるのでかろうじて見てみようと思った。前作とドラマで柴咲コウ演じた刑事キャストがなぜか急に吉高に代わった。吉高もやりづらかったに違いない。吉高は脇役にすぎない。

冒頭で何か悲劇的事件が起こったことが短くまとめて見せられる。悲劇を耐え忍ぶ少女が成長すると、この年のNHK朝ドラ「ごちそうさん」でヒロインを演じていた。すっごく痩せてて浅黒い民宿の娘。
ダイビングシーンの後にウェットスーツを脱ぐと鮮烈スレンダービキニシーン。杏の水着姿に男性の需要があるのかよくわからないけど。

海岸線を走る電車。ケータイ通話してる少年と老人がモメだすという最悪に見たくないシーン。年寄りはそんなことでカッとなるな。少年も素直に謝れ。
その間に入るのがユニークな変人で天才の福山ガリレオ。この人がなぜかクロスワードパズルをやっている。そんな紳士は映画の中の英米人しか見たことがない。キャリーケース引きずってどこへいく?

海底資源の調査だけで地元民と業者が揉めている?住民との話し合い?もう人と人が揉めてるシーンとか見たくないw
何やら昔のことを知る元刑事(塩見三省)が説明会の後に民宿に来て女将(風吹ジュン)がはげしく動揺。そして堤防の下で元刑事の死体。
映像に映画らしい目新しさと新機軸出してもやっぱり2時間ミステリードラマっぽくなっていく。
吉高由里子刑事登場。とてもアイラインの濃いメイク。かわいらしい刑事だが自分の知ってるふにゃふにゃ吉高と違う。ずっと聴き込み捜査。

その一方、ガリレオ先生はこどもと夏休み自由研究。ペットボトルロケットとケータイ電話の動画でサンゴを調査。そして殺人事件の調査。これは楽しそうだ。子どもの知的探求心はこうして育め。それにしても福山、すね毛がない!

これ、福山雅治というスターを鑑賞する映画としてバランスよく楽しく見れる娯楽作だった。十分に意外性があったし。

だが後半の人が人を殺すに至った悲劇の真実開示人間ドラマ部分がやっぱり重厚でしめっぽく長くしつこく嫌。日本人はドライな謎解きよりも人間ドラマを好む?

2018年12月2日日曜日

横溝正史「幽霊座」(昭和27年)

横溝正史「幽霊座」角川文庫の昭和54年第20刷を手に入れた。100円。
3本の中編から成る1冊。すべて金田一耕助探偵が登場。

「幽霊座」(昭和27年)
浅草駒形橋の芝居小屋が舞台の作品。昭和11年、金田一さんと親交のあった歌舞伎役者が「鯉つかみ」という芝居を上演中に失踪。それから17年、同じ芝居の追善興行で失踪した役者の弟が毒殺。

検死の結果、毒入りチョコレートで殺されたと見せかけて、実はニコチン毒針で刺されていた。金田一さんは有名海外ミステリ作品を思い浮かべる。あ、これエラリー・クイーンの「Xの悲劇」だ。

これ、期待しないで読んだのだがわりと佳作。横溝正史っぽい作風。それにしてもこんなアホ犯人はどんなダメ探偵でもしっぽつかまれるに決まってる。

「鴉」(昭和26年)
磯川警部と骨休めにきたつもりが3年前の失踪事件の捜査に引き込まれる金田一さん。
夫が蔵の中から失踪。3年後に帰ってくると言い残してその3年目がやってくる。意外な事件と意外な真相。これもなかなか面白かった。田舎の温泉宿は「悪魔の手毬唄」も想わせる。

「トランプ台上の首」(昭和32年)
浅草ストリップ嬢が自宅アパートでトランプテーブル上で生首だけが発見されるという、絵面的にも最悪な事件。

「首なし死体」でなく、首のみ発見されるというテーマは「夜歩く」にもあった。なんとなく予想しながら読む。ところでへその周りが蜘蛛に見える…という、そんな病気が本当にあるの?
この時代の男女の性欲がすごい。捜査する刑事たちの会話も下世話で長い。面白さは…72点ぐらいかな。