2023年4月30日日曜日

新垣結衣「ゴーストブック おばけずかん」(2022)

2022年の夏休み映画「ゴーストブック おばけずかん」(東宝)を見る。
原作は斉藤洋作、宮本えつよし画による「おばけずかん」シリーズ(講談社刊)。
監督、脚本、VFX、ストーリー原案、キャラクターデザインのすべてを山崎貴が担当した山崎映画。音楽は佐藤直紀。制作はROBOT。

新垣結衣を目当てで見た。祖母の家に住みながら産休先生の代理の6か月臨時教員という役。派遣切りに遭って小学校の先生?首の皮繋がった…という悲哀。小学校の教員免許持ってるとかレア。

主人公らしき一樹(城桧吏)は小学生らしくない髪型してる。母が鈴木杏で父が遠藤雄弥。この俳優の名前をなんとなく憶えていた。「のだめカンタービレ」に出てた人だ!チョイ役出演。

一樹たち3人組は「願いの叶う祠」に参拝。夜に寝ていると図鑑坊というお化けがやってくる。祠の傍の古本屋へ行け!
翌朝、仲間たちも同じお化けを目撃してた。祠のあった場所に行くと、そこにはハウルの動く城みたいな古本屋。店主が神木隆之介
この店が小学生男子には無縁そうな古本屋。やんちゃ男子たちを追いかけてガッキーも冒険に巻き込まれる。
慌てて店の外へ。どうやらそこはもう異世界…。街に誰もいないし文字がヘンテコ。時空が歪んだよう。スマホも通じてない。

だが、クラスメート女子の湊(吉村文香)も脱出経路を探してる。この子が突然しれっと登場するのだが、この映画の重要なヒロイン。

一緒に異世界に来てしまったガッキー先生の家を訪ねる。先生の家がドラえもんのホームメイロみたいになってる。これは子どもはすごいワクワクできるのでは?
漂流教室やコープスパーティーやミストみたいに怪物に襲われないと冒険と言えないのでは?と思ってたら、やっぱり怪物だらけ。

わけがわからないまま子どもたちと一緒にあたふたするガッキーせんせいがかわいい。まるで女子大生のよう。
ガッキーせんせいが面白い。状況を楽しんでチームTシャツとか作ってしまう。子どもたちとツッコミ漫才コントをしてしまう。こういう楽しいガッキーを待っていた。
なんだかガッキーもこどもたちも、妖怪も、みんな呑気で軽くて適度にバカでゆるくて面白い。
妖怪相手に戦ってるのにそれほど恐ろしいことは起こらない。これならむしろドラえもんのほうが怖い。
ラスボスこそおぞましい形態で恐ろしかったが、テーマパークの予定調和アトラクションのようなクライマックス。

山崎監督の映画にそれほど感心することはなかったのだが、この映画は予想を外れすぎない展開で、ストレスなく楽しく見れた。童心に帰れた。ファミリーで楽しく見れるコメディー謎解きゲーム冒険ファンタジー。

なによりガッキーが可愛らしく面白く理想的な友だちのようなお姉さん。ひさしぶりにリーガルハイのようなしっくりコメディエンヌぶり。これが正しいガッキーの使い方。
主題歌は星野源「異世界混合大舞踏会 (feat.おばけ)」(スピードスターレコーズ)。なんで夫婦で仕事してんだ。

2023年4月29日土曜日

立原正秋「花のいのち」(昭和42年)

立原正秋「花のいのち」(昭和42年)を新潮文庫(昭和53)で読む。昭和41年から42年にかけて「婦人生活」に連載されたもの。
これは読みたいから読んだというわけでなく、そこに「無償で持って行っていいよ」と置いてあった本なので連れ帰って読んだ。

立原正秋を読むのは今作が初めて。なんとなく斜め視界に入ってはいたけど読み方も知らなかった。「たちはらせいしゅう」かと思ってたら「たちはらまさあき」が正しかった。

立原正秋(1926-1980)は大正15年に朝鮮慶尚北道安東郡で生れた在日朝鮮人。本名は金胤奎(キムキュンキュ)。昭和10年に両親と横須賀へ移り住み、昭和15年に創氏改名により金井正秋を名乗る。昭和22年に日本人と結婚したことで日本人に帰化し米本正秋となる。
昭和26年より立原正秋というペンネームを使用。亡くなる2か月前に本名も立原正秋となった。そのへん、自分は今回はじめて知った。

鎌倉鵠沼海岸に邸宅を構える財閥系石油会社社長の息子柚木正宏と見合い結婚した窈子が主人公。結婚当時正宏34歳、窈子23歳。結婚した年の秋に長女久美子も生まれた。周囲がうらやむ暮らし。
だが結婚3年目にして正宏が家の近所に女を囲っていて子どもも3人いて、しかも一番下の子が久美子と同じ歳だと知る。
窈子は離婚を決意。一度鎌倉の実家に戻る。久美子を柚木家に渡し、沼津の柚木家別荘と当面の生活費をもらう。

窈子は生活していくために沼津の別荘で、東京の兄の勤める出版社の保養所兼民宿をしてみようと思いつく。料亭みたいな家に沼津荘と名前を付ける。
兄が美術史家の織部という長身でインテリの男を連れてくる。妻を亡くして5年。子どももいないという。窈子は恋の予感。織部も自分に好意を持っていそう…。

そしてトントン拍子で結婚の約束。織部はヨーロッパから窈子へ手紙。奈良から手紙。
窈子は織部を追いかけ奈良秋篠寺へ。以前にこの寺にある伎芸天像の絵を描いて、裏に漢詩を添えて沼津に送ってくれた想い出。
奈良のホテルがどこもいっぱいなので二人同じ部屋に泊まって男女の関係。だが、織部の義理の妹泰子が織部との結婚を狙ってる。窈子は気が気じゃない。

ささやかな二度目の結婚式。多くの関係者から祝福される。新婚生活。仕事で奈良へ出かける織部を窈子は見送ったのだが、数日後、織部が薬師寺で怪我をしたという知らせ…。

二十代後半の女が1年で体験したいろんなことドラマ。女性読者を対象とした女性のためのドラマ。
調べてみたら、立原正秋は新潮文庫では「冬の旅」一冊だけが現役らしい。

2023年4月28日金曜日

加藤小夏「アイゾウ 第二夜 ~奇跡の親子~」(2023)

加藤小夏がフジテレビ「アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班」「第二夜~奇跡の親子~」(3月28日放送)にゲスト出演するというのでチェック。脚本は諸橋隼人。演出監督は長江俊和。

これは関東ローカルでの放送だったらしいのだが、今はTVerという便利なものがあるので誰でも見れた。こんな刑事ドラマがあったことを、加藤小夏さまからの告知があるまで、まったく知らなかった。実際にあった事件をモデルにしたドラマらしい。
主要キャストは夏子、水石亜飛夢、津田寛治という刑事ドラマ。津田さん以外は存じ上げない俳優。加藤小夏、小沢真珠、芳本美代子の3人がゲスト俳優という扱い。

ヒロイン刑事の夏子という女優をまったく知らない。SEDA誌でモデルをしてたらしい。一目見てBOSSの平手友梨奈みたいだなと思った。
津田寛治さんを久しぶりに見たけど人相の悪い老刑事になってた。3人の刑事のやりとりがコメディタッチ。
自宅で障害を持つ娘の母がめった刺し殺害され、車椅子の娘翔子(加藤小夏)は拉致。容疑者アパートで発見…という事件。
話を聴きたいという刑事。そんな難しい堅苦しい用語で質問しても知的障害がある少女に話が通じるわけないだろ。
18歳でありながら幼児という翔子(加藤小夏)。ほぼインスタライブしてるときの普段着ふにゃふにゃ小夏。かわいい。
加藤小夏は色白陶器のような肌に切れ長目というクールビューティーなのにゆらゆらしてるギャップがある感じが魅力。

歪み毒親に起因した意外な展開の事件。さすが小夏さまという重要な役。準主役というかほぼ主演。見ていて「俺が小夏を護る!」という決意が湧くドラマ。

2023年4月27日木曜日

小林泰三「大きな森の小さな密室」(2008)

小林泰三「大きな森の小さな密室」(2008)を創元推理文庫(2011)で読む。これが自分にとって小林泰三の2冊目。7本の短編から成る一冊。

「アリス殺し」を読む前にこちらのほうを先に手に入れていた。BOを物色してて110円でそこに売られていたので「面白そうかも」と期待して連れ帰った。表紙イラスト(丹地陽子)のセンスも良かったのもあって。

「大きな森の小さな密室」(犯人当て)
最寄りのバス停から徒歩1時間の山の中にある金貸しの別邸に集った6人の客。そこで起こった密室殺人。
適度に個性的な登場人物。過不足ない量の情報とテンポ。短編ミステリーとしてなにもかもが正しい一篇。

「氷橋」(倒叙ミステリ)
ホテルのバスタブで女性作家を自殺か事故に見せかけて殺害した編集者からの目線。完璧なアリバイを用意したのだが、飛び込みでやってきた変な弁護士がしつこく食らいついてくる。これは松本清張の短編にありそうな話。

「自らの伝言」(安楽椅子探偵)
コンビニでバイトしてる早苗は友だちの菜穂子と喋ってる。するとそこにバイト仲間礼都がこれみよがしに蔑むようにバカにしてくる。この礼都という30女が早苗を先輩とも思ってない。だが異常に頭が良い。
菜穂子の彼氏でニューサイエンスの研究所で働いてる猛士が殺されていた。第一発見者は菜穂子。そのまま現場を立ち去って早苗に相談に来た。その話を聴いていた礼都はさらに二人をバカにしたように、真犯人を指摘する。
これ、短編だけどすごく驚きのインパクトあった。作者の才能を感じた。礼都のキャラがとても良いし新鮮。

「更新世の殺人」(バカミス)
150万年前の地層から見つかった索状痕のある新鮮な女性の遺体。この難事件を私立探偵Σが解決…というストーリーだが荒唐無稽。バカ会話に終始。これは下北沢で演じられるようなシュール芝居。確信犯的バカミス。ここにも礼都さんが登場し探偵につっこむ。
正直この短編には自分は感心しなかった。人によっては読み飛ばしていい。

「正直者の逆説」(??ミステリ)
吹雪に閉ざされた山荘での殺人。メタ構造のドタバタ喜劇。登場人物のほとんどに常識がなくてイライラしかしない。なのに最後はガチガチ論理パズル。
芝居として上演すれば面白いかもしれないが自分はこういうの苦手。

「遺体の代弁者」(SFミステリ)
殺人事件の被害者の脳を移植して目撃証言を得て捜査の参考にする話。これもドタバタ劇。

「路上に放置されたパン屑の研究」(日常の謎)
これはもうタイトルの通り日常系ミステリ。こういうの自分は要らないと思ってる。暇老人と男の会話を読んで、「アリス殺し」のように噛み合ってなくて噛み合う感がこの作家の個性だと感じた。

最初の3作は面白かった。しかし、後ろの4作は自分としては要らないものだった。

2023年4月26日水曜日

池間夏海「私の同期はAIロボット」(2023)

池間夏海をチェックするためにNHK沖縄製作のミニドラマ「私の同期はAIロボット」を見る。作は兼島拓也。3月17日に沖縄県域でのみ放送された13分ミニドラマ。今は配信という便利なもので見れる。

池間夏海は映画「かぐや様は告らせたい」や「ちむどんどん」にも出てた沖縄出身若手女優。いつの間にかもう20歳になっていた。

池間夏海の顔が陶器のような冷たい顔。まるで感情が無の佐々木琴子。くわっと目を見開いた顔がなんだかちょっと怖い。沖縄らしさが皆無の顔。

「またサボり?」「どうゆうこと?」の台詞の言い方が「ちむどんどん」暢子のイントネーションと同じだった。あれは暢子オリジナルでなく沖縄女子ネイティブだったのか。
てっきりヒロインがAIロボットなのかと思った。普通はそう思うはず。
だが、すごく沖縄っぽい濃い顔をした同僚ホテルマン男性ペンペン(津波竜斗)が人型AIアンドロイドという設定。
AIロボットぺんぺんがヒロインの腕時計を見ようと腕をつかむシーンがあるのだが、池間の手首が男の指3本ぐらいの細さで驚く。
 
宿泊客が「娘のマコです」とぬいぐるみを差し出してきたときは、「何言ってんの?怖い!」って思った。ヒイィッ!?
このぬいぐるみにはカメラとマイクが内蔵されていて病室にいるマコのタブレットとリアルタイムで交信?!ついにそんな時代になったのか。
ホテルマンヒロインとAIが「どうおもてなしするのが正解か?」という難病少女もの短編ヒューマンドラマ。
ヒロインがくわっと目を見開いてマコちゃんぬいぐるみを海に沈めたときは怖かったw
AIホテルマンが見た目の印象が強いのだが、AIロボットとしての存在感が薄かった。

13分ミニドラマという特殊なドラマではいろいろ難しいものがある。池間夏海にはまだまだ期待している。顔はもうちょっとふっくらしたほうがいい。

2023年4月25日火曜日

江戸川乱歩「黒蜥蜴」(昭和9年)

江戸川乱歩「黒蜥蜴」を読む。乱歩作品の中でもかなりの有名作で、映画化もドラマ化も舞台化もされているのだがまだ読んだことなかった。
今回は2009年角川ホラー文庫の江戸川乱歩セレクション⑤がそこに110円で売られていたので連れ帰って読む。ちくしょう、「蜥蜴」って書けない。

1934年1月から11月まで「日の出」に連載され、同年12月には「妖虫」と合わせて新潮社より刊行。この年は3月に満洲国で溥儀が皇帝に即位。6月に東郷平八郎元帥の国葬。9月に室戸台風。10月にベーブ・ルースら大リーグ選抜来日。

冒頭、銀座の帝都一のKホテルで派手なパーティーというシーン。女族「黒蜥蜴」の正体は緑川夫人。それ、最初から読者に明かされてる。大阪の宝石商岩瀬商会の岩瀬庄兵衛の一人娘令嬢早苗の縁談のために上京中。
昭和の恐慌と東北の凶作だというのに東京の上流階級はなにやってやがると嫌悪感。

痴情のもつれで女と男を殺してしまって逃亡中の雨宮潤一が黒蜥蜴に助けを求める。潤一は死んだことにするというので、東大医学部に潜入し死体を調達。ここ、大江健三郎「死者の奢り」にも登場した死体貯蔵浴槽。いくらなんでも死体がひとつなくなったら警察に連絡がいかないか?と思ったのだが、そこは管理人も買収してて抜かりがない。

なんと黒蜥蜴が「僕っ子」。女であり男のようでもある。腕には蜥蜴のタトゥー。契約により手下奴隷となった雨宮の前で全裸になってトランクに入ってみせる。
女王は奴隷の前に、どのような姿をさらそうとも、少しも悪びれも、恥ずかしがりもしなかった。
黒蜥蜴は恥ずかしがらない。だってそこにいる男はもはや奴隷だから。そこ、ぞくぞくするw

黒蜥蜴にとって邪魔な存在が私立探偵明智小五郎。こいつの機転によって早苗誘拐は失敗。だが、明智の隙をついてブローニング拳銃を盗み、紳士に変装してホテルから逃走。このへんのやりとりは大人が読んでもワクワクできる。

去り際に早苗に向かって黒蜥蜴
「僕は宝石もご執心だけど、宝石よりも、あんたのからだがほしくなった。決して断念しないわ。ねえ、明智さん、僕は断念しないよ。お嬢さんは改めて頂戴に上がりますよ。じゃ、さよなら」
大阪の岩瀬邸は要塞のように改造。腕の立つ書生と警察官を住まわせ、賊から令嬢を護る。だが、「えっ?!」というトリックで部屋から連れ出され誘拐。外出してた明智探偵地団駄。
黒蜥蜴からの封書が届く。令嬢と交換条件は「エジプトの星」。国宝級の宝石。
なんと、指定の交換場所が通天閣の鉄塔の上。

ここでも明智探偵の意外な策略により黒蜥蜴を尾行。そして洋上へ。
ここから先はもういつもの乱歩。こういうの面白いっちゃ面白いかもしれないが、自分はややテンション下がりつつ後半を読んだ。やはり昭和初期の読者に向けた娯楽読み物だった。

黒蜥蜴が自分が予想してたキャラと違ってた。施設美術館アジトに人間のはく製人形があったりしてサイコだった。洋上で「明智」を閉じ込めた「函」を海に遺棄して水葬してるし…。それ、簡単に聞き流せるような結果じゃなかった。

2023年4月24日月曜日

ベルトラン「夜のガスパール」(1842)

ベルトラン「夜のガスパール レンブラント、カロー風の幻想曲」(1842)を及川茂訳1991年岩波文庫版で読む。

「夜のガスパール」と聞いたらほとんどの人がモーリス・ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール  Gaspard de la nuit」のほうを想う。自分も今まで一度もアロイジウス・ベルトラン(1807-1841)の遺作詩集「夜のガスパール」を読もうと思わなかった。

夭逝したルイ・ベルトランについて日本ではほとんど知られていない。ボードレールが賞賛し名前が知られるようになった。
日本語Wikiすらなくて驚いた。日本に最初にベルトランを紹介したのはラフカディオ・ハーン東京帝大教授?!

せっかく邦訳があるので読む。これを読めばピアノ曲「夜のガスパール」の「オンディーヌ」「絞首台」「スカルボ」がまた違って聴こえるかもしれない。(邦訳はこの岩波版が4冊目?)

ディジョンのアルクビューズ(火縄銃)公園のベンチで出会った「夜のガスパール氏」から手渡された原稿が「夜のガスパールの幻想曲」という原稿。(グーグル地図で確認したらアルクビューズ公園は現在は植物園らしい)

幻想曲第6まで、風景画のような詩が続く。中世の場面。ユダヤ人のいる風景。などなど。
どれも日本人にはまったくなじみがないものばかり。フランス史の図版なんかを見てる人じゃないとほとんどイメージできないかと思う。
最後まで読んだけど、とくに感想はない。ただ読んだと言いたいだけ。

2023年4月23日日曜日

加藤小夏「福岡恋愛白書18 春のおとなりさん」(2023)

加藤小夏主演の九州朝日放送制作のドラマ「福岡恋愛白書18 春のおとなりさん」が3月17日に放送された。加藤小夏×奥野壮 W主演という、投稿実話をベースにした単発恋愛ドラマ。脚本は灯敦生。監督は松浦健志。
九州ローカルドラマなのだが、今は配信という便利なものがある。しっかりチェックした。

春、福岡市の短大に入学し一人暮らしを始めた莉央(加藤小夏)は希望に胸をふくらませ楽しそうに朝食を作ってる。食後にお茶でほっこりまったり。だが、その直後に時間がヤバイ!遅刻する!と焦りまくって玄関を飛び出すベタ展開。隣に住む浩平(奥野壮)も同時に飛び出す。ドアの前でお互いにファーストコンタクト。
爽やかイケメンがお隣に住んでると知った女は一瞬でキュン死。勝手に運命的な恋の予感。この一連のシークエンスでの小夏の挙動がヘンテコ。夕方雨の予報と知って部屋に戻ろうとしたら傘を貸してくれる。

ヒロインには高校からの親友の同級生ちひろ(工藤遥)がいる。「お隣さんがめっちゃイケメンやったぁ~」という恋バナを開始。小夏がおもしろコメディエンヌ演技。
一目会ったその日から、これほどまでのぼせ上がるヒロインはまるでマンガのよう。
帰り路で一緒になったふたり。話の流れで「今度、わたしが朝食つくりましょうか?」
この女、グイグイ行くな。
だが、女が期待したようには行かず、ただのお隣さん同士として季節は夏。
だがある日、となりのイケメンがチャイムを鳴らす。実家からスイカが送られて来たので一緒に食べないか?そんなことって実際にある?

男の部屋の台所が使われてる形跡がない。まともな食生活を送っていないと知った女は、スイカを食べる前にちゃんとした料理を作って振舞う。「美味か!」男に絶賛される。
以後、毎週土曜の夜は、莉央の手料理を一緒に食べる約束!?すっごくふたりとも気分が高揚してるように見える。
ただいっしょに食事するだけの関係。友人ちひろによる「隣人同士の恋はこう展開する!」という妄想イメージがおかしい。この再現映像を撮るためだけに余計な時間と手間と費用が掛かってる。
しかし、浩平の部屋を訪れる大人の女性の姿を目撃…というベタ展開2。柳ゆり菜はそういう大人の女のスペシャリストだな。ヒロインは勝手に傷つく。土曜の料理はできなくなったと断る。男「えっ…?」

ただのお隣さんやった…と諦めかけた莉央に、浩平から思いもよらぬ告白。あの女の人はお姉さん?!そして、二人は恋人同士。それは上手く行き過ぎスウィーツ展開。小夏の「チュッ♥」シーンとか見たくなかったわ…。
この二人、片や大学編入試験勉強、片や就職活動で忙しくても、部屋が隣同士なので会えないということはない。ほぼ半同棲。

そして3度目の春に男は下関、女は福岡の住宅メーカーに就職。初めて離れ離れという最初の試練。社会人1年目の女は忙しい。すれ違い始めるのだが、男は毎週2時間かけて女のもとへ通ってくる。男は交通費のためにバイト。さらにすれ違い。ときに口論。「花束みたいな恋をした」でも見られた仕事が男女を引き裂くというパターン。ふたりはおいおいと泣く。
だがしかし!次のシーンではヒロインの目が白黒するまさかの展開!w こういうの新しい。
でも、爽やかお似合い理想のカップルの小夏さまが幸せな家庭を築いていく8年を見せられて、ちょっと心が痛んだ。自分には到底手に入らない幸せ。

ちくしょう!小夏さまが可愛すぎる。顔も雰囲気も好きだが体型も好き。結果、何もかも好き。
「福岡恋愛白書」シリーズを初めて見たのだが、50分ほどのドラマなのに、まるで1本のソープオペラ恋愛映画を見たかのような大充実大満足ヘトヘト感。なかなか力の入った大作のように感じた。

なにより、女優加藤小夏がすっかり大人で売れてきてる感じがする。演技力が明らかに高い。女優として抽斗も増えて来た。遠くへ行ってしまったようで寂しい。
たぶんまだまだ小夏さまの女優力はこんなもんじゃない。さらなる活躍を期待できる。
このドラマは宅建資格の取得の難しさを強調してる。ちな、自分は遠い昔に仕事の帰りに本屋で問題集立ち読み1か月だけで一発合格した。何も不動産業と関わりないし、もうすっかり忘れてまったくのムダ知識ムダ資格。民法すらもほとんど忘れたw
あと、ええ若いもんの夢が公務員ってドラマは今どうなの。

2023年4月22日土曜日

吉村昭「雪の花」(昭和46年)

吉村昭「雪の花」を新潮文庫で読む。昭和46年に「めっちゃ医者伝」として新潮社より刊行されたものを、文庫化するときに大幅に補筆し「雪の花」へと改題。(めっちゃとはあばたの福井での呼び方)
当時の最先端医療技術である「種痘(天然痘の予防法)」を福井藩に伝えた町医・笠原良策(1809-1880)の生涯を描いた一冊。158ページなので吉村昭としては比較的ボリュームが薄い。

天保八年(1837)、冷害と長雨による凶作。そして天然痘の流行。京、大坂でも多くの死者。福井でも千人を超える。遺体の入った桶を乗せ焼き場へ向かう大八車をやるせなく見送る町医の笠原は、どうすれば人々を救えるのか?と考える。しかし、自分の知ってる漢方の医学では天然痘への対処の方法がわからない。

温泉地で同業者と遭遇し意見交換。蘭方の医学は進んでいるという相手に、漢方医の笠原は反発するも、ここは蘭方も学ぶべきだと考え直す。そして京都の日野鼎哉に入門。
どうやら、西洋と唐では牛痘にかかったものは一生天然痘にかからないことが知られていた。英国のジェンナーの種痘という方法が効果的らしい。

だが牛痘の苗をどうやって手に入れれば?そこは長崎に入港するオランダ船に頼るしかない。すでに佐賀鍋島藩では種痘で成果を出しているらしい。
しかし、その痘苗をどうやって手に入れれば?そこで藩主松平春嶽へ嘆願書を出すのだが、役人によって途中で止められてるらしい…。絶望。

それでも日本中の研究熱心な名医たちと交流。こうなったら自分が長崎に行ってみようか…と考えていたら、日野鼎哉がバタヴィアからの苗を長崎奉行所唐通司頴川四郎八から手に入れていた!

自分、今まで幕末日本でどうやって種痘が広まったのか?まったく知らなかった。牛痘苗を培養する設備がないのに。なんと、子どもの腕から腕へと、どんどん種を植え付けて繋いでいくという方法。
京都で数人の子どもで針で痘苗を植え付け、発痘(発疹)が出たら成功。また膿を取って他の子どもの腕に植え付けていく。なので7日ごとに誰か植え付ける子どもを連れてこないと苗が断たれる。

一刻も早く京から福井へ伝えたい。子どもとその両親をお金で雇い入れるのだが、種痘という全く未知なものを受け入れる説得をするのが毎回一苦労。親は子どもにそんなわけのわからないものを植え付けさせたくない。
それでも子どもから子どもへ種を繋いでいく。村人が止めるのも聴かず大雪の栃木峠を越える。
あわや遭難という事態。まるで新田次郎の山岳遭難小説。この本のクライマックス。(吹雪の中の移動の風景が新潮文庫版の表紙イラストだと思う。)

だがやはり医者なので抜かりない計画。反対側の村へ知らせて置いて迎えに来てもらうなど用意周到。

やっとのことで福井藩内に伝えられた種痘だが、京、大坂、長崎と違って文明からほど遠い福井の町民たちは種痘という未知な物に不安と嫌悪感。
令和の今であっても反ワクチン派がいるのだから致し方ない。町で村で石を投げられたりするのも今のSNSを連想。

なにせ外国からのものが禁制の時代。笠原がどれだけ説得しても親たちは子どもを寄越してくれない。さらに藩の役人たちも冷たい。藩医も冷たい。種をどんどん繋いでかないと絶えてしまうという焦り。
笠原はやせ細っていく。怒りに任せて役人たちを糾弾する口上書を書いて仲間の医師たちから気が狂ったと思われる。

不思議だ。種痘に効果があったのなら口コミで伝わっていくはずなのに。苗を植えた子どもだけが天然痘にかかっていないという事実があるのなら、真実に気づくはずなのに。なぜか福井藩は沈黙。

だが、笠原の種痘は前田藩、鯖江藩、敦賀藩へと広がってゆく。松平春嶽が福井に帰ってくると事態が急変。なぜか役人たちが動き出す。
春嶽の側用人中江雪江、福井藩医の半井元冲、鍋島藩医の伊東玄朴、大坂に緒形洪庵といった志の高い名医たちがいたことで笠原の仕事は評価されていく。

今回読んだ吉村昭もひたすら淡々と出来事と経緯を並べて行く。そっけないかもだがむしろそこが良い。中高生にもオススメ。

2023年4月21日金曜日

生田絵梨花「松尾スズキと30分の女優2」(2022)

まさみの「松尾スズキと30分強の女優」を見たついでに、昨年に録画したまま未視聴だった「松尾スズキと30分の女優2 生田絵梨花の乱」を見ることにした。これは2022年3月13日が初回放送。1年以上の時を経て、ついに見た。

生田は乃木坂時代から数多くの映像作品でコントのようなものを演じてる。そして2019-2020シーズンに舞台「キレイ―神様と待ち合わせした女―」で松尾スズキと仕事してる。満を持しての生田フィーチャーSP番組。

生田は松尾の台本を読んでも意味が解らなかったという。現場で演出を受けて演じてみても意味が解らなかったというw だが、実際に出来上がったものを見たら、初めて松尾の意図が分かったらしい。さすが生田さんだ。自分はわからんかったけど。
かつての生真面目優等生生田さんだったら、演出意図がわかるまで監督に質問していたに違いない。長年乃木坂でバナナマンに揉まれ山下敦弘という意味不明演出映画に出演し、スレまくり、細かいことはわからなくていいという境地に達した。それはそれで見事。

アナーキーさとシュールさにおいてラスボスが松尾スズキ。ひとつの試練。いい年してあそこまでイカレたコントができるおじさんは貴重。

「WOWOWかがやけ!音楽祭」は昭和歌謡ショー番組でよく見る風景(ではぜったいない)。作り込まれたくだらなさの極み。生田さんのマジ歌唱がすごい。これを聴けたという点において見ごたえはあった。
「絵梨花は俺の妹」は生田推しに向けたサービス要素を感じた。
「親の前では、普通の子応援団」は勢いで画を見せるやつ。これを面白いと信じて演じられる勇気がすごい。恥じらいを捨てきった生田がすごい。学ラン応援団姿の生田さんが見れる点において貴重。

松尾さんを両親に紹介する生田。これと似たようなシチュエーションを「乃木どこ」で見たことあった気がする。否、松尾が魔法で猫になるとか無茶すぎズレすぎでハチャメチャ。
これを最後まで演じきれる生田がすごい。生田絵梨花はえらい。(まだフィンランド民謡やってんのかよ。)

もしも松尾スズキにオリンピック開会式演出を任せていたらさらなる事故になっていた。

2023年4月20日木曜日

シェイクスピア「オセロー」

シェイクスピア「オセロー」福田恆存訳の新潮文庫版(昭和48年)で読む。オセローの最も古い上演記録は1604年だが、それ以前から存在していたことが知られている。おそらく1602年ごろに書かれたものと推定されているらしい。

実はこの本を読むのは15歳のとき以来。高校1年のときに、何か一冊シェイクスピアを読んで読書感想文を書くという宿題があり、必要があったので「オセロー」を選んだ。そのときもこの新潮文庫版だった。
だが、当時の自分は全部を読んでなかった。長い年月を経て、ようやく読み通す。大人の常識として知っておきたい。

ジュゼッペ・ヴェルディオペラ「オテロ」を対訳読みながら聴き通したことはある。なのであらすじはだいたい知ってる。オテロ、デズデモーナ、イアーゴーの主要3人の登場人物ははっきりと認識している。

ムーア人の軍人で英雄のオセローが、イアーゴーの奸計によって妻デズデモーナの不貞を信じてしまい殺害するという、痴情のもつれ殺人。最悪な悲劇。

今回読んでみてわかったことがこの話の舞台がヴェニスとサイプラス(キプロス)島だってこと。
デズデモーナ父ブラバンショー議官が娘のオセロー将軍との結婚を認めてないし激怒。娘も勘当。
ヴェルディのオペラはシェイクスピア劇の第2幕の嵐シーンから始まるという事。

イアーゴーはオセローに面従腹背で最初から心の声が邪悪。デズデモーナに懸想するロダリーゴーの恋の悩み相談を聴くのだが、オセローの忠実な部下キャシオーとデズデモーナがデキてるかのように欺く。嫁のエミリアも使って。

イアーゴーがまるで昭和平成の冤罪刑事。偽の証拠を用意し、言ってもいないことを聴いたと告げ口。周到に邪魔な人間を排除するために憎悪の連鎖を仕向ける。

それにしても冷静沈着だった将軍オセローが嫉妬深く短気でバカ。ハンカチトリックで簡単に騙され信じてしまう。デズデモーナが何を言おうと聞く耳持たない。オセローはほぼ桶川事件の小松。四大悲劇と呼ばれるもののひとつだけど、そのわりに新聞三面記事のよう。

それに読んでて調子の狂う古い福田訳。デズデモーナの喋り口調がまるで大正昭和。
キャシオーに惚れたビアンカがやって来るのを見て、「やれやれ、白粉女郎の御入来か」

15歳のとき10ページほど読んで中断していた「オセロー」を、令和の今になってやっと読み通した。それにしてもこのセリフ量を暗記できる舞台俳優は人間業でない。

2023年4月19日水曜日

本田翼「劇場版 ラジエーションハウス」(2022)

2019年4月期と2021年10月期の2シーズン連続ドラマ(特別編が2回)としてフジテレビで放送された「ラジエーションハウス」の劇場版(2022年4月29日公開)をやっと見る。 公開から1年を経て見る。

監督はいつものようにフジテレビ演出家監督鈴木雅之。脚本は大北はるか。音楽は服部隆之。制作はフジとシネバザール。配給は東宝。

フジテレビの医療人間ドラマはぜんぜん見る気が起こらない。ドラマ2シーズンは本田翼目的だけで見た。今回も本田翼が出てるのでつきあう。
フジの医療ドラマから劇場版の流れは「コードブルー」という悪しき例がある。ドラマファンへ向けたアフターサービス以上のものでなかった。「ラジエーションハウス」も覚悟して見る。

「ここに壁がある」というナレーション。
放射線技師の面々が退屈な講習会。ここで広瀬アリスが講師からの質問にダメダメ回答な生徒役。
その一方で本田翼は放射線医師。唐突に離島で暮らす母からメール。
テレビの天気予報では台風接近中。浅野和之先生のライブ配信準備中。

窪田正孝のコミカルな演技を挟みつつテンポよく状況を説明。
そこで突然妊婦(若月佑美)を乗せた山崎育三郎の車が反対車線にはみ出して来た飲酒運転キチガイ車と正面衝突するという、いかにもな酷すぎ事故発生。
夫、妻、胎児、事故を起こした運転手、治療の優先度が問われる「命の選別」修羅場医療現場。それが甘春総合病院。

育三郎が現場の判断に納得いかなくて大声で暴れる厭なシーンを見せられる。医者は神じゃない。原則に従った判断をするしかない。
ICUでこれだけ大勢の医師と技師がつきっきり。治療費がどんだけかかるんだ?さらに危険運転加害者があまり反省していない酷い状況。
窪田が的確な判断で活躍してる一方で、本田翼は不安な表情で瀬戸内の島へ。島の診療所先生の父(佐戸井けん太)が危篤。
父臨終の言葉が心配な患者(キムラ緑子)。胸が痛いと倒れ込む。これが医師本田が診ても原因不明。
どうやら原因は島の井戸水?ということが視聴者に示される。

一方そのころ横浜の病院では妻の治療方針に不満の育三郎が浅野せんせいを人質に立てこもり。(ああ、若月のお腹の子の父親は犯罪者になってしまうw)
しかもライブ配信されてしまう。そのへんのオフビート感はいかにもフジテレビの盛り過ぎコメディと暑苦しいヒューマンドラマ。いろいろと対応がおかしい。突入してきたSATを相手に遠藤憲一のあんな茶番(事件の隠ぺい)は許されない。

大型台風襲来で島民避難。本田医師は胸を押さえ苦しむキムラ緑子に対応。胸の検査をするために島の旧型機材で技師たちのスマホによる指示に従って撮影。なのに痛みの原因がわからない?!
横浜の大病院ではさらに難病の少年の手術も始まる。視聴者はマルチタスク理解を要求される。

一息付けたと思いきや、多くの島民が診療所に担ぎ込まれてる。原因不明の感染症?!台風被害が広範に及んでいて救援はやって来ない。本田翼医師はさらなる窮地。(これは3.11並みの被害では?)
現場からの悲痛な応援要請に応えない甘春総合病院。窪田は病院を辞め現地へ。それを追いかける仲間たち…。

これ、本田翼医師とそのラジエーションハウス人脈による献身努力が島民300人を救ったという美談フィクション。全員が無私のやりがいを持った爽やかな人々。
初期段階で県レベルでの対応が見えないんですけど。

すごくフジテレビらしさが前面に出た映画。登場キャラ全員に見せ場。コロナ夏の島ロケ撮影には苦労があったかと思われる。
あと、本田翼(撮影当時29歳)がなんだかすごく色白でムチムチしてる。すごく胸がデカく見える。どうして?
主題歌はMAN WITH A MISSION「More Than Words」

2023年4月18日火曜日

松本清張「アムステルダム運河殺人事件」(1970)

松本清張「アムステルダム運河殺人事件」(1970)を光文社文庫(2013)版で読む。松本清張で○○殺人事件というタイトルは珍しい。

1965年に実際に起こった日本人男性の胴体が入ったトランクがアムステルダムの運河に浮かんだ事件。清張が現地独自取材調査し、の推理と見解を述べた小説。

日本の商社ブリュッセル駐在員坂崎が被害者なのだが、同じ現地日本人商社員雨宮が金に困っての犯行?
だが雨宮は運転する車がカーブを曲がり切れずトンネルで交通事故死。
オランダ警察とベルギー警察の管轄の壁もあり迷宮入り。

その数年後、経済記者と悠々自適生活を送る医師というふたりの日本人を登場させ、現地を訪問し再調査。事件の真相を推理。そして、それぞれが犯人を指摘する…というスタイル。

推理小説は想像から創作されたものよりも、実際に起こった事件をモデルに書かれたもののほうがリアリティがあって、それでいて本格ぽくもある。帝銀事件を扱った清張の手法。自分は面白かった。

「セント・アンドリュースの事件」
もう1本収録の中編。こちらも欧州での邦人変死事件。「アムステルダム運河」と似たような構成。だがこれは完全な清張の創作フィクション。

精密機械製造企業の専務が憧れのセント・アンドリュースでゴルフを楽しんだ後にスコットランドの崖下で死体となって発見された。この専務の行く先々に髭の東洋人が尾行するようにつきまとっていた…。

こちらも清張がエディンバラとセント・アンドリュースを取材してのスコットランド鉄道ミステリー。トリックに対してのボリュームがちょうどいい。こちらも楽しく読めた。

2023年4月17日月曜日

新垣結衣「ハナミズキ」(2010)

新垣結衣はかつて歌手だった。2010年9月に主演映画公開に合わせて一青窈の同曲「ハナミズキ」をカバー。これは配信シングルとしてリリースされ、アルバム「虹」(2010)にも収録。同時にMVも作られた。
昨年に「ハナミズキ」MVをスペシャで放送されたのをたまたま録画したものがあるので、見て感想などを書いてブログのネタにする。

東京はサクラが終わるとすぐハナミズキが咲く。ハナミズキの花を見たとき、ふと「ハナミズキ」を口ずさみたくなるのだが、歌詞がわからないw なのでなんとなく鼻歌を歌うしかない。
このシングルが歌手新垣結衣にとって最後となった。以後まったく歌うことに関心を持つことすらなくなった。(なにがあった?)

ガッキーは今も多くのファンのいる女優なのだが、何枚か出したCDシングル、アルバムに関心を示すファンは少ない。ガッキーの知名度と人気ぶりからするとそれはおかしい。もっと聴かれるべき。BOでも安価で売られているし手に入りやすい。
MVとはいってもガッキーがビルの屋上でこちら側にあるカメラを見つめながら、ゆらゆら歌う姿に、土井裕泰監督の映画「ハナミズキ」のハイライト映像を挿入したもの。「Movie Ver.」と銘打ってある。

この楽曲のMVにこれ以外のVer.があるのかどうか?もう自分は何年もガッキーを追いかけてないのでわからない。(YOUTUBEには誰かがUPしたMVならある。ワーナー公式チャンネルのものはないようだ)
この映画が高校時代に出会った男女の10年にわたる出会いとすれちがいと別れと再会を描く壮大なラブストーリー。

もう10年以上見てなくて内容はすっかり忘れた。日々いろいろと読むべき本、見るべき映画やドラマ、聴くべき音楽などがどんどん溜まっていき、なかなか一度見た映画を見返すこともない。そろそろ見返してもよいころ。
そもそもガッキーで恋愛ドラマとか見たくない。「恋するマドリ」「ドラゴン桜」「リーガルハイ」は見ていて幸せを感じられる良いガッキーだった。
結果、2010年代前半でもうあまりガッキーを追いかけてなかった。

「逃げ恥」に至っては最低なドラマだったし見てない。共演ミュージシャン俳優と結婚するに至った悪夢のドラマ。TBSは許せない。
もうかつての輝いてたガッキーを思い出せない。「十六茶」CMなんかで見るガッキーはあまり可愛く見えない。
今回このハナミズキMVを見て、13年のガッキーとの想い出を回想したりして、寂しさと哀しみで遠い目をしてしまった。ちょっと泣いた。あのころの元気イッパイのガッキーはもういない。

実は自分はガッキー「ハナミズキ」音源を手に入れるまで、一青窈「ハナミズキ」をなんとなく知ってはいても、ほぼ聴いたことなかった。カラオケに行く習慣がないからかもしれない。
ハナミズキは名曲。この楽曲には魔力のようなものがある。編曲は武部さんだったのか。
これからはこの曲はガッキー版でなく、一青窈版が自分にとってスタンダード化していくかもしれない。

新垣結衣は今もって謎の女優。たまにテレビドラマしかやらない。主演映画と言えるものも数えるほどしかない。舞台には何も関心を示さない。

自分にとって人生MAXで新垣結衣にわくわくした瞬間はあの武道館映像が公開されたとき。以後はもうあれほど興奮したことは一度もなかった。

2023年4月16日日曜日

サガン「ボルジア家の黄金の血」(1977)

フランソワーズ・サガン「ボルジア家の黄金の血 Le Sang doré des Borgia」(1977)を読む。鷲見洋一訳1986年新潮文庫で読む。

15世紀末イタリア、王になる野心を抱いたチェーザレ・ボルジアの愛欲、権謀術数、妹ルクレツィアとの背徳の愛と死を描いた小説。フランス国営チャンネル2のテレビドラマ用脚本として書かれたものを小説化したもの。

塩野七生の「優雅なる冷酷」とはかぶらない違うシーンが描かれてる。あたりまえだが塩野が選択して注目したチェーザレとサガンのチェーザレはかなり違う。どちらかというと父アレッサンドロを中心とする家族の会話シーンが多い。
サガンのチェーザレは残虐で腐敗したボルジア家の人々のドラマを描いてる。だまし討ち暗殺、政治。
チェーザレとルクレツィアは実の兄と妹なのに恋人だったの?!

チェーザレ・ボルジアという人を知るには塩野七生のほうが歴史のお勉強としては理解しやすいが、サガンのこの作品も読んでおいて損はない。
ただやはりフランス人がフランス人のために書いた本なので、塩野版よりはわかりずらいと感じた。フランスとイタリア、スペイン、ローマ教皇についての世界史知識がないとちんぷんかんぷんだと思う。

2023年4月15日土曜日

サガン「悲しみよ こんにちは」(1954)

サガン「悲しみよ こんにちは Bonjour Tristesse」(1954)を新潮文庫で読む。2009年河野万里子訳で読む。サガン18歳のデビュー作。

フランソワーズ・サガン(Françoise Sagan 1935-2004)を読むのは初めて。新潮文庫の邦訳サガンは朝吹登水子訳と決まってるのだが、この河野訳は半世紀ぶりの新訳とのこと。

17歳セシルは母を亡くして15年。2年前に寮を出てプレイボーイの40男父レイモンとふたりで暮してる。夏なので南仏の海岸別荘で過ごしてる。別荘で何ひとつ不自由のない暮らし。父にはエルザ(29)という女優の愛人(ふつうに恋人)がいる。3人仲良くバカンス。

そこに母の旧友で有名人で憧れのおとなの女性アンヌ(42)もやってくる。え、エルザという愛人がいながらさらに別の女も?
セシルは父とふたりの生活をアンヌが破壊してしまわないか心配。それにエルザとアンヌでは知性にも差があって会話にならない。

カンヌのカジノに4人で出かけ、そこ場で父はエルザからアンヌに乗り換え。セシルは怒り心頭。
セシルはバカロレア受験勉強中なのに勉強なんてまるでしてない。近所の別荘に来てる法学部大学生シリル(26)と恋仲。アンヌは大人としてセシルに口うるさい。男女交際と勉強の件でいろいろ言ってくる。
フランスJKは17歳で酒もタバコもセッ〇スもしてる。大人が傍にいるのに自由すぎ。
(フランスは高校生で哲学という科目があるのか。それは日本とだいぶ違う。日仏の十代同士で会話が成り立つわけがない。てか、日本の生活が今も貧しすぎ。)

父はアンヌと再婚を決意?!そこでセシルは策略。エルザとシリルが一緒にいるところを父に目撃させ嫉妬させる作戦。これにより父は再びエルザに夢中。
まんまと策がハマったはずが、セシルは不機嫌。別荘を去るアンヌに泣きながら「行かないで」と訴える。アンヌ「かわいそうな子…」

そして、突然に目の前がサッと暗くなるような事故。

読む前は何か悲劇的なことが降りかかる話かと思っていた。ちょっと違っていた。「悲しみよこんにちは」というタイトルはポール・エリュアールの詩から採られたもの。

映画に向いてる作品だと感じた。実際過去に映画化されている。けど、心の独白が多い。そこはどう映像化していいのかわからない。
あと、痩せたヒロインの朝食。オレンジをかじりながらブラックコーヒーに驚いた。オレンジフレーバーのコーヒーということか。

2023年4月14日金曜日

乃木坂46「今が思い出になるまで」(2019)

2月最後の日曜日、そこにBOがあったので、何か退屈を紛らわしてくれるものはないか?と立ち寄ってこいつを見つけた。乃木坂46「今が思い出になるまで」というアルバム。

500円の値札が貼られていた。そして500円以下CD半額セールなので250円。
うーん安すぎる。ということは買い入れ価格はいくらなんだろう?250円で売って利益がどれだけあるのだろう?と心配しつつ、買って帰った。
自分はもう2019年にはあまり乃木坂楽曲に注意を払わなくなっていて、このアルバムの存在をほぼ何も知らなかった。(坂道グループはシングルCDの発売がいちばんの重大事)

家に帰ってしっかり知れベてみて、このアルバムが乃木坂46の4枚目のオリジナル・アルバムであることを知った。2019年4月17日に発売。前作「生まれてから初めて見た夢」から約2年ぶりのアルバム。

さらに、自分の手に入れた盤が初回仕様限定(CD+ Blu-ray)盤Type-Aであることを知った。メンバー全員の肖像を集めたフォトブックレットが豪華。
このアルバムが出たときはもうすでに生駒と西野が卒業して不在。自分の見たところ、松村沙友里がいちばん美しく仕上がってるなと感じた。4期生では遠藤、賀喜が美しいと感じた。

このアルバムを手に入れると「逃げ水」「いつかできるから今日できる」「シンクロニシティ」「ジコチューで行こう!」「帰り道は遠回りしたくなる」といったシングル表題曲の音源が手に入る。(自分はこの4枚はシングルを持っているのでありがたくはない)

1.「ありがちな恋愛」9.「新しい世界」10.「三角の空き地」11.「日常」12.「頬杖をついては眠れない」13.「ぼっち党」といった未視聴で音源を持っていない楽曲が手に入った。
「ありがちな恋愛」はCMで流れていたのでサビだけは知っていた。
もう自分はライブコンサートとか卒業したので、これ以上乃木坂楽曲を知っても仕方ないのだが。

実はこのアルバムを買い求めた理由はDisc2「真夏の全国ツアー2018"ジコチュープロデュース"福岡編・大阪編」Blu-ray見たさ。

こいつがとんでもなかった。レアな組み合わせユニットによる、メンバーが自由に自己チューセルフプロデュースした歌謡ショー。
250円で1時間以上の高画質映像を見てしまって申し訳ない。5年の時を経て、やっと自分の眼と耳に届いた。実は自分はぜんぜん乃木坂のコンサートライブ映像とか見てない。把握してない。なので新鮮な気持ちで見れた。
与田祐希プロデュースは「せっかちなかたつむり」。秋元、樋口、西野、中田、高山、井上との6人での歌唱。
たぶんこのころの与田は3期生で一番人気と言っていい歓声をあびている。可愛らしさの極致。
しかし、自分からすると西野七瀬の可愛らしさが異常。卒業を発表する約2か月前の福岡。顔もスタイルも表情も雰囲気も声も何から何まで美少女ガーリー。このときの衣装がとても似合ってる。
ちなみに、与田と西野によるふたり形態をオタは「よだせまる」と呼ぶ。それ、数百年後の言語学者は理解できるだろうか。
あと、秋元真夏プロデュース「無表情」でも西野は秋元とふたりでセーラー服デュエット。気が進まない感じで嫌そうに歌うという演出で秋元につきあった。最後にはほっぺにキスされて照れ笑いの西野が可愛らしい。
ちなみに西野七瀬はチーム西瓜による西瓜衣装で「白米様」をプロデュース。(大阪・長居)
西野はこれほどまでに全力でアイドルを演じていたのかと驚いた。あと、スイカに白米は合わないと思う。
山下美月「行くあてのない僕たち」をプロデュース。ずっとバキバキに目を見開いてる。向井葉月とデュエット。
今の山下を知ってる状態で5年前の山下を見ると幼く見える。立派に成長したと感じる。

齋藤飛鳥プロデュースは「僕が行かなきゃ誰が行くんだ?」
齋藤飛鳥はひざ下丈Aライン乃木坂ワンピースの女神だと感じる。乃木坂イズムを具現化した存在。
もしも飛鳥がAKBや、ショートパンツ姿でヒップホップを踊る韓国アイドルみたいなグループに入っていたら?きっと注目もされず埋没していた可能性が強い。それぐらい飛鳥は乃木坂ワンピース姿が絶対の完成形。これ以外ありえない乃木坂らしさの権化。
ちょっと胴長で脚が短い感じがむしろ良い。それは西野も同じ。男子が憧れる文系女子。
しかし、この飛鳥プロデュースが困惑の問題作w 会場フロアを歩きながらオタと交流したりしてるのだが、一体なにがやりたいんだ?
そしてメンバーたちに同じアイマスクをさせている。本人も「どうすんだこれ」感を出して笑ってしまってる。ジコチュープロデュースというのなら最後までやりきれ!と言いたい。なんならコンセプトを述べるセルフライナーノーツもとじ込みで付けろ。
ちなみに齋藤飛鳥は大園桃子プロデュース「やさしさとは」にも登場。桃子とデュエット。
もう飛鳥の後ろ姿を見ただけでファム・ファタール(運命の美少女)だと分かる。

飛鳥と桃子の腕の太さがまるで違う。たしかこのふたりは仲良しで、飛鳥は桃子の鹿児島・曽於の実家にも行ってるんじゃなかったか。今も交流はあるんだろうか。
(桃子が早々に乃木坂から脱退したのは痛恨だった。乃木坂在籍時よりもYOUTUBE配信の桃子のほうがあか抜けてて可愛くなってる。)
PS. 乃木坂最後の1期メンバー齋藤飛鳥の卒業コンサートが迫ってる。東京ドームで5月17日と18日の平日開催。なのにチケット難民大量発生。それはすごい。そんなの時代を代表するアイドルでないとできない。おそらく最終日当日はクリィミーマミ最終回のようになる。そこに駆け付ける全員にドラマがある。

そして写真集も発売決定。乃木坂は写真集発売日にMAXで売るための長年の経験とノウハウがある。相当に売れることがすでに確約されている。齋藤飛鳥は日本経済を動かしてる。