松本清張「アムステルダム運河殺人事件」(1970)を光文社文庫(2013)版で読む。松本清張で○○殺人事件というタイトルは珍しい。
1965年に実際に起こった日本人男性の胴体が入ったトランクがアムステルダムの運河に浮かんだ事件。清張が現地独自取材調査し、の推理と見解を述べた小説。
日本の商社ブリュッセル駐在員坂崎が被害者なのだが、同じ現地日本人商社員雨宮が金に困っての犯行?
だが雨宮は運転する車がカーブを曲がり切れずトンネルで交通事故死。
オランダ警察とベルギー警察の管轄の壁もあり迷宮入り。
その数年後、経済記者と悠々自適生活を送る医師というふたりの日本人を登場させ、現地を訪問し再調査。事件の真相を推理。そして、それぞれが犯人を指摘する…というスタイル。
推理小説は想像から創作されたものよりも、実際に起こった事件をモデルに書かれたもののほうがリアリティがあって、それでいて本格ぽくもある。帝銀事件を扱った清張の手法。自分は面白かった。
「セント・アンドリュースの事件」
もう1本収録の中編。こちらも欧州での邦人変死事件。「アムステルダム運河」と似たような構成。だがこれは完全な清張の創作フィクション。
精密機械製造企業の専務が憧れのセント・アンドリュースでゴルフを楽しんだ後にスコットランドの崖下で死体となって発見された。この専務の行く先々に髭の東洋人が尾行するようにつきまとっていた…。
こちらも清張がエディンバラとセント・アンドリュースを取材してのスコットランド鉄道ミステリー。トリックに対してのボリュームがちょうどいい。こちらも楽しく読めた。
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