2023年4月6日木曜日

アガサ・クリスティー「茶色の服の男」(1924)

アガサ・クリスティー「茶色の服の男」(1924)を読む。中村能三訳ハヤカワ・ミステリ文庫(1982)の1995年14刷で読む。
2018年夏ごろにBO100円棚で見つけて確保積読しておいたものをようやく取り出して読む。極私的クリスティーマラソン85冊目。確保してるクリスティーはこれを含めて残り2冊。
THE MAN IN THE BROWN SUIT by Agatha Christie 1924
主人公アン・ベディングフェルドは地下鉄ホームで男(ナフタレンの臭いがぷんぷんするオーバーコート)が何者かに怯え後ずさって転落死を目撃。その場へ野次馬をかけ分けて自称医者が遺体を見る。看護婦の経験があるアンはこの医者が偽物だと見抜く。何かをまさぐってた。この偽医者がメモ書きを落としていく。

死んだ男が女と待ち合わせするミル・ハウスで若い女の死体が見つかる。アンは警察に話をしに行くのだが担当刑事が気に入らない。すると今度は新聞社社主に強引に面会し、事件を調査したら新聞記者に雇ってもらう約束を取り付ける。アンは考古学者の父を肺炎で亡くし、身寄りも財産もなく働く必要。

アンが信じられないほど行動的。冒険おてんば娘。メモ書きにあったキルモーデン・キャッスルという名前が古城でなく、南アフリカ・ケープタウン行きの船便だとにらんだ。そして全財産で片道切符を買う。

船内にはミル・ハウスの所有者であるユースタス・ペドラー議員と人相の悪い秘書パジェット。さらにユースタスにローデシア行きを進めた人物が送り込んだ怪しい秘書。レイス大佐と呼ばれる謎の人物。社交界の花型ブレア夫人。偏屈な宣教師。
ブレア夫人のイングリッシュジョークのセンスに笑った。船酔いで苦しむアンに対して「元気になった?水葬が見れるんじゃないかと楽しみにしてたのにぃ~」

メモ書きにあったのは船便と部屋番号と時刻では?船酔いで舷側窓部屋に移ることを勧められたのだが、その17号室をめぐってアン、パジェット、宣教師の3者が激しく言い争いw
結局、事務船員は美人の見方。だが、何者かが部屋に変な臭いを撒いたりしてアンが使用するのを妨害しようとする。意地でも負けないアン。夜間にアンの部屋に背中を刺された男が逃げ込んできたので匿う。
アンは正体不明のこの男に一目で恋してしまうw なんというヒロインだ。

客船、そして南アフリカ。ケープタウン、ヨハネスブルグ、ローデシア。1920年代の南アフリカという日本人になじみのない土地を舞台に、犯罪組織のダイヤモンドをめぐる陰謀、そして恋。尾行されたり、敵の罠にハマったり。崖から転落したり。銃撃戦があったり。魅力的な英国娘の大冒険譚。

「茶色の服の男」はクリスティー女史のクライムサスペンス冒険小説として今も人気作。当時もウケたようで、クリスティーはこの本で最新型の車を購入したらしい。

1924年って日本では大正時代。南アフリカもローデシアも政情不安だったようだ。

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