2023年4月27日木曜日

小林泰三「大きな森の小さな密室」(2008)

小林泰三「大きな森の小さな密室」(2008)を創元推理文庫(2011)で読む。これが自分にとって小林泰三の2冊目。7本の短編から成る一冊。

「アリス殺し」を読む前にこちらのほうを先に手に入れていた。BOを物色してて110円でそこに売られていたので「面白そうかも」と期待して連れ帰った。表紙イラスト(丹地陽子)のセンスも良かったのもあって。

「大きな森の小さな密室」(犯人当て)
最寄りのバス停から徒歩1時間の山の中にある金貸しの別邸に集った6人の客。そこで起こった密室殺人。
適度に個性的な登場人物。過不足ない量の情報とテンポ。短編ミステリーとしてなにもかもが正しい一篇。

「氷橋」(倒叙ミステリ)
ホテルのバスタブで女性作家を自殺か事故に見せかけて殺害した編集者からの目線。完璧なアリバイを用意したのだが、飛び込みでやってきた変な弁護士がしつこく食らいついてくる。これは松本清張の短編にありそうな話。

「自らの伝言」(安楽椅子探偵)
コンビニでバイトしてる早苗は友だちの菜穂子と喋ってる。するとそこにバイト仲間礼都がこれみよがしに蔑むようにバカにしてくる。この礼都という30女が早苗を先輩とも思ってない。だが異常に頭が良い。
菜穂子の彼氏でニューサイエンスの研究所で働いてる猛士が殺されていた。第一発見者は菜穂子。そのまま現場を立ち去って早苗に相談に来た。その話を聴いていた礼都はさらに二人をバカにしたように、真犯人を指摘する。
これ、短編だけどすごく驚きのインパクトあった。作者の才能を感じた。礼都のキャラがとても良いし新鮮。

「更新世の殺人」(バカミス)
150万年前の地層から見つかった索状痕のある新鮮な女性の遺体。この難事件を私立探偵Σが解決…というストーリーだが荒唐無稽。バカ会話に終始。これは下北沢で演じられるようなシュール芝居。確信犯的バカミス。ここにも礼都さんが登場し探偵につっこむ。
正直この短編には自分は感心しなかった。人によっては読み飛ばしていい。

「正直者の逆説」(??ミステリ)
吹雪に閉ざされた山荘での殺人。メタ構造のドタバタ喜劇。登場人物のほとんどに常識がなくてイライラしかしない。なのに最後はガチガチ論理パズル。
芝居として上演すれば面白いかもしれないが自分はこういうの苦手。

「遺体の代弁者」(SFミステリ)
殺人事件の被害者の脳を移植して目撃証言を得て捜査の参考にする話。これもドタバタ劇。

「路上に放置されたパン屑の研究」(日常の謎)
これはもうタイトルの通り日常系ミステリ。こういうの自分は要らないと思ってる。暇老人と男の会話を読んで、「アリス殺し」のように噛み合ってなくて噛み合う感がこの作家の個性だと感じた。

最初の3作は面白かった。しかし、後ろの4作は自分としては要らないものだった。

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