坂東眞砂子(1958-2014)を読むのは初めて。高知県出身で奈良女子大卒。イタリア・ミラノでインテリアデザインを学んだ後にフリーライター。そして作家へ。1996年には直木賞も受賞。がんのため死去。享年55歳。
男性との関係を清算し巣鴨の古い安アパートに引っ越してきた小さな出版社勤務の29歳彩子が主人公。仕事で使いたい図版を探していて戦前の古い無名画家描いた絵画と出会う。
そしてもう一人のヒロインは巣鴨の老婆。
昭和初期の不況の時代に新潟長岡の実家から逃げるように、東京の美術専門学校で学ぶために上京した早夜。郷里の冷害もあり仕送りも断たれ授業料が払えず絵を諦め、そして50年経った。
早夜と美術専門学校の友人美紗江。売れない画家を続けたが絵を描くことを辞め年老いた。
過去(昭和初期)と現代(平成初期)を行ったり来たり。
昭和初期の巣鴨、大塚、池袋モンパルナス、桜が丘パルテノン。女にだらしのない日本画家男をめぐる女二人の相克。そして時代は太平洋戦争。
映画っぽい。朝ドラっぽい。構成がミステリーっぽくもある。最後の最後で叙述トリック?!
若い女性もいずれ老婆になる。青年も老人になる。そういう悲哀ドラマ。
戦時中を生きた二人の女の人生が読んでて辛かった。だが予想外に名作。この本はもっと多くの人に読まれていいと感じた。
0 件のコメント:
コメントを投稿