2020年6月30日火曜日

コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの回想」(1894)

「シャーロック・ホームズの回想」を読む。2010年駒月雅子訳角川文庫で読む。
一昨年秋に100円で見つけて確保しておいたものをようやく読む。冒険、回想、帰還、の中でこの「回想」が一番100円で見つけやすい。なぜ?
THE MEMOIRS OF SHERLOCK HOLMES by Sir Arthur Conan Doyle 1894
では、順番に読んでいく。

シルヴァー・ブレイズ ダートムアの厩舎からレース本命馬が失踪し、騎手が死体となって発見された事件。ホームズは現場を見てだいたいのことがわかってしまう真の名探偵。これもなかなか面白かった。

ボール箱 ロンドンの善良な老婦人宅に、塩漬けにされた切り取られた人間の耳が2つ、箱に入れられ送り届けられた猟奇事件。アパートを追い出された医学生によるいたずらかと思われたのだが、真相は意外なものだった。これも佳作。

黄色い顔 現代の欧米なら普通に日常よくある話。だが、日本なら今もこの状況が身近に起こったらちょっと驚くかもしれない。という人情噺。

株式仲買店員 赤毛連盟のような就職詐欺事件じゃないかと予想して読んでた。似たようなものでそれほど驚けなかった。

グロリア・スコット号 学生時代のシャーロック最初の事件。友人の父親が元船乗りの男から脅されてるらしい。短編だがまるで「四つの署名」みたいな、壮大な半生と動機。短編推理小説ではなく、前時代的で壮大な伝記ロマン。

マスグレイヴ家の儀式書 執事の不審な行動、そして宝探し。英国の歴史。

ライゲイトの大地主 神経を病んだホームズ。休暇先の田舎でも強盗殺人事件の捜査に巻き込まれる。

背中の曲がった男 軍人の夫が殺害された事件。その場で気絶していた妻は、夫と激しく口論していたのを聴かれて容疑者に。これもやっぱり「四つの署名」みたいなインド時代の因縁。予想外の動物が登場。このオチは日本人には馴染みがないもの。

入院患者 開業医からの相談。ロシア人患者がふっといなくなって、また現れた。資金を出してくれた男がすごく怯えている…。これもホームズのシリーズでよく見るような、過去の因縁に起因する事件。

ギリシャ語通訳 これはほぼ現代の日本でも三面記事や夕方のニュースで聞くような恐喝事件。スッキリしないラストだが恐ろしい。

海軍条約文書 外務省に勤めるワトソンの旧友からの依頼。イタリアとの条約の原本が盗まれてしまった!これは「帰還」にある「第二のしみ」とほぼほぼ同じような設定。

最後の事件 宿敵モリアーティとホームズの最期。ホームズとワトソンの逃避行と、ライヘンバッハの滝でホームズのストックが発見されるまでの展開がサスペンスドラマとして完璧。今読んでも十分通用する。

これまで「冒険」「帰還」「回想」と読んできたけど、シャーロック・ホームズ短編はどれもレベルが高い。すべて納得できるストーリーになってる。

2020年6月29日月曜日

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2005)

「ヒトラー 〜最期の12日間〜」(2005)は日本でもとても有名な映画なのだが、まだちゃんとすべて見ていなかった。ナチスを扱う映画はあまりに理不尽に人を殺す場面があるのであまり見たくなかった。

あの有名な「総統閣下はご立腹」動画のシーンだけは見たことあった。なのであのシーンが「だーいっ嫌いだ!」とか「ちきしょーめ!」「バーカ!」と聞こえる。

原題は「Der Untergang」(没落)。監督はオリヴァー・ヒルシュビーゲル。
配給会社は日本の観客のためにわかりやすいタイトルをつけないといけない。毎度のことながらぜんぜんイメージが違う邦題だ。

ドイツ敗戦の3年前、若い美人秘書が夜中にヒトラーの仕事場に招かれる。総統閣下は秘書を採用する。回想で「若くて愚かだった」と淡々と話す。原作は「私はヒトラーの秘書だった」という本。
ソ連軍がベルリンのすぐそこまで迫った状況でヒトラー総統の錯乱状態の最後の日々を描く。みんな逃げ出さなきゃいけないのにタンツムジーク。命令系統もマヒ。酒浸り。現実を見ない。

これがたぶんドイツ語圏の名優ぞろい。ブルーノ・ガンツのヒトラーがまさにヒトラーそのものにしか見えない。エヴァ・ブラウンも、ヒムラーもゲッベルスもほぼ本人に見える。

ナチスは最後の瞬間まで狂ってた。逃げ惑うベルリン市民、脱走兵だといってSSは老人を殺す。死ぬために集まったゲッベルスの妻と子どもたちとか、やっぱり見るも地獄な映画だった。
どうすれば生き延びられたのか?正解がまったくわからない。なんでこいつら降伏しないんだ?理不尽。グロシーンもある。

ひたすら滅びるベルリンを描く。哀れは感じる。だが、ドイツによって不幸にされた多くの人々のことを想うと特に同情はしない。同胞を殺す血も涙もないSSは全員死んでいい。できればスターリンもこのぐらいの地獄を体験してから死んでほしかった。

この時代を知ってるベルリン市民から見れば東京ははるかにマシだったかもしれない。ドイツ人にあの地獄を思い出させ忘れないようにするための映画だったかもしれない。
最悪な指導者を選ぶと国民も地獄を見るという教訓。

2020年6月28日日曜日

イミテーション・ゲーム(2015)

「イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密」(2015)を見る。これも英国現代史のお勉強。
「暗号解読」に関する本を読むと必ず出てくる英国の天才数学者アラン・チューリング(1912-1954)の悲劇を描く映画。

実は自分、ベネディクト・カンバーバッチという俳優の映画を見るのはこれが初めて。

チューリングこそが英国を対ドイツ戦の勝利に導いた最大の功労者。だが、ここに登場する軍人や同僚がことごとく無能。チューリングのやろうとしていることに無理解だし、チューリングマシンが回転して何をやってるのかもよくわかっていない。チューチングを邪魔してる。正直、こいつら邪魔だと思ったw 

結果が出ないとクビの危機。なのにどうして偉い人にわかるように説明しない?数学的にも技術的にも何も説明しない。
この映画、暗号やエニグマ暗号機のしくみについて事前に知識がないと、ひたすらちんぷんかんぷんだと思う。視聴者にも説明しない。

自分が事前に想像してたブレッチレー・パークのイメージと違う。チューリングにいたチームは英国の英知を結集したチームだと聞いてたけど、この映画だとそう見えない。小さな町工場みたいな場所に集められた数名の若者たちだけのチーム。これで難攻不落のエニグマを解読できたというのか?

暗号に関するどの本を読んでもチューリングが同性愛者だったことは書かれている。だがこの映画ではキーラ・ナイトレイ演じる美女とのロマンス的なものまで盛ってある。それ、本当?

中盤まで最初は総当たりでキーとなる言葉を探していたのだが、暗号って天気予報で始まって最後はハイル・ヒトラーじゃね?がブレイクスルー。すべての組み合わせを探す必要はないとひらめいた。

ここからUボートの位置や攻撃目標を解読できるようになった。だが、こちらが解読してることはぜったいに向こう側に悟られてはならない。暗号解読チームがそこまで考えないといけないの?英国政府高官に数学と戦略の意味がわかる人がいなかったからかもしれない。
綿密な計算で戦果と犠牲のバランスをとり、ドイツ側に暗号が解読されていることを悟られなかった。それどころか戦後もずっと知られてなかった。

この映画は1951年にチューリングの自宅に泥棒が入ったことを地元警察が調べるシーンから始まる。担当刑事が何か怪しいとにらむ。ソ連のスパイかも…。
ふざけるな。そのお方は英国を戦争勝利に導いた最大の功労者だぞ。頭が高い!
なにしろ極秘計画だったので、戦争終了と同時に資料を焼却処分して解散。ここで働いていた記録もすべて消去。

英国では戦後になっても同性愛は即逮捕される犯罪だった。結局、同性愛わいせつ行為で有罪判決。ホモセクシャルは薬物治療の対象。結果、チューリングは自殺。

チューリングの功績は政府上層部しか知らなかった。戦後50年経つまでブレッチレー・パークに集まった若者たちの奮闘は英国人すらも知らなかった。諜報活動に関わった者は何を仕事にしてるのかも他人に説明できない。

関心のあった歴史のひとコマだったので興味深く見れた。暗号が解読されるブレイクスルーとその瞬間は興奮した。ガシャガシャ騒々しく回転するマシンは本で読んでもイメージできていなかったので、この映像はありがたい。

しかし、エニグマ解読のブレイクスルー初期段階でポーランドチームの功績があったのだがまったく触れられていない。暗号技術史に感心の高い人には物足りなかったかもしれない。

2020年6月27日土曜日

英国王のスピーチ(2011)

「英国王のスピーチ The King's Speech」を初めて見る。日本でもよく知られた映画で今も多くの人が配信などで見ている人気作。監督はトム・フーパー。

チャーチル首相を主人公にした映画「ウィンストン・チャーチル DARKEST HOUR」を見たついでにやっつける。「英国王のスピーチ」は「チャーチル」よりもちょっと前の英国を描いている。歴史のお勉強として見る。おそらく大英帝国歴史絵巻における人間ドラマ。

エリザベス女王の父ジョージ6世時代の英国は早々に日本と敵対してしまったため、日本ではあまり人となりが知られていなかった。この映画ではジョージ6世が吃音に悩んで苦しんでたことに注目。

ハーレー街の言語聴覚士でオーストラリア帰りのライオネル・ローグ博士(ジェフリー・ラッシュ)の元を治療に訪れた患者は国王次男夫婦だった!

今よりはるかに王族貴族と平民の間には高く厚い壁があった時代。ローグはヨーク公ジョージ(コリン・ファース)を「バーティ」と愛称で呼ぶ。ジョージ、マジギレ。このプリンスがとても怒りっぽい。
夫人のエリザベス妃はヘレナ・ボナム=カーター。ハリー・ポッターにも出てたので日本人にもおなじみの女優。
このヨーク公夫妻が身長と体型において残された写真とシルエットがとても似ている。
娘姉妹のエリザベスとマーガレットが天使!w

ジョージ5世が死去。兄エドワード8世が離婚歴のあるアメリカ人シンプソン夫人との恋をとって退位し、弟ジョージが即位する。時代はヨーロッパにとって最も暗い時代。
兄エドワードが意外に嫌なやつ。ジョージの吃音を茶化すようなことも。こういうの事実?
日本ではこういう映画はムリ。大正天皇と息子たちとかドラマでも見たことない。昭和天皇と秩父宮が口論するシーンみたいなことはありえない。

吃音矯正トレーニングってこんな感じなの?ドラマとしていろいろ楽しく盛ってるかと思う。

この映画でも第二次世界大戦前夜の英国を描いているので、いちおう世界史のお勉強にはなる。なにより時代の雰囲気を感じられる。自分がよく読むアガサ・クリスティーの時代。

テーマとしては困難を克服し奮い立つ国王と、支える妻、手助けをする男という二人三脚ヒューマンドラマ。テーマが普遍的で誰にとっても感動作。困難を克服した王の姿に胸アツ。

クライマックスの国民に向けた演説は開戦の詔勅だが、おそらく英国と英国連邦市民にとっては胸アツ。
結果、自分はまったく飽きずに楽しく見れた。冒頭から引き込まれた。

2020年6月26日金曜日

ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男(2017)

2018年に日本でも公開された「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」という映画があるのでお勉強ついでに見てみる。監督はジョー・ライト。
原題は「DARKEST HOUR」。配給会社は日本人にわかりやすい邦題にしないといけない。

1940年、ドイツに対し妥協の宥和を重ねたチェンバレン首相が、いよいよオランダ・ベルギーにドイツ軍が侵攻するという時期に退陣。そして3党連立挙国一致内閣の首班にチャーチルが選出されるというシーンで始まる。
英国議会は紛糾する様子が芝居がかって見える。たぶん抗議の意思を示すときの伝統マナー?

チャーチル首相はゲイリー・オールドマン。「JFK」でのオズワルド役とはかなりの変貌。見た目がかなりヨボヨボ。もうそんなお爺さんなの?
新人タイピストも泣かす偏屈オヤジ。ぜったいに一緒に仕事をしたくない変わり者頑固じじい。
タイピストのミス・レイトン役のリリー・ジェームズが清楚で可憐で凛としてて意志が強そうで可愛くとても良い。とても目立ってる。

組閣ノ大命下ルというシーンで対面するジョージ6世とチャーチルのギクシャクぐあいが初めて見るシーンでよくわからなかった。国王は吃音でうまく喋れなかった人らしいけど、チャーチルは国王からこれほどまでに信頼されてなかったのか?

海軍大臣だったチャーチルは第一次大戦中のガリポリの戦いで2万人以上の戦死者を出した。ジョージ国王が冷たい。後任首相としては意外な人選。
アトリーやイーデンといった後の宰相たちも登場。ライバルたちもみんなイートン校からのエリートで貴族の子弟たち。

日本人にとってチャーチルは敵国の指導者。歴史の教科書の最後のほうに出てくる人。後にノーベル文学賞を受賞しているので、言葉を闘わせる政治家として適任だったのかもしれない。
だが、最初の演説では議会が冷たくしらけ切った感じ。チャーチルは最初から支持されてたわけではなかった。そして戦況は不利。

英国首相ほどの人物であればフランス語ができて普通かと思ってた。チャーチルのフランス語がまったくフランス首相に通じてない?!フランス首相があきれ顔で英語で話すシーンも意外。初めて見る。チャーチルは現状の認識すらもできてなくてフランス側閣僚たちを呆れさせる…。

チャーチルには悪い評判ばかり。言葉だけで内容が伴わない。酒飲んでばっかり。ラジオ演説をやっても「うそつくな!」と国王からお叱りの電話。これは落ち込む。かわいそうなお爺さん…。
孤立した部隊を救出もできない。英国軍の絶体絶命な窮地に絶句。陽気にふるまっていても焦燥。「勝利のみだ!」4000人の若者を死に追いやる無謀な作戦にこだわる。

もうヒトラーに降伏するしかない状況まで追い込まれる。閣僚たちも将軍たちも降伏やむなしという結論になりかける。絶望…。
ハリファックス卿、チェンバレンと3人だけで腹を割った話し合い。「日本の一番長い日」「ヒトラー最後の12日間」と同じような風景。
チェンバレンやハリファックス卿みたいな対独宥和外交は、中国とかなら漢奸と呼ばれ死刑にされる祖国の裏切り者。ペタンみたいな運命をたどるに違いない。事実戦後は政界引退。

窮地のチャーチルはトイレの電話でアメリカ大統領に「戦艦を譲って!」とお願いするも、「中立法があるからねえ」と軽~く断られるw 「動力を使わずに戦闘機を馬でカナダに運べば法律上問題ないんだが」とか舐め切った提案をするルーズベルトも冷たい。戦後英国の没落と米国の独り勝ちの構図はここから。

国王との会食で「よく昼間からそんなに酒飲めるね」と嫌味を言われ、君は怖く見えるよと説教。王室一家でカナダに亡命する計画までも明かされる。英国はそこまで追い詰められてたのか。独ソ戦が始まるまだ1年以上も前。ドイツ軍の勢いがすごい。

ダンケルクの敗残兵たちを、もうなりふり構わず小さな船を集めてでも撤退させたい。カレーに取り残された英国兵を救出する手段がまったくない。チャーチルも英国も風前の灯火。

イタリアを仲介してのドイツとの和平への道が開かれたそのときにチャーチルは英国王の支持を取り付ける。市民の支持もある。議員たちの支持もある。そして議会演説。絶望の雰囲気を一変させる。

英国史の1場面を描く愛国心の人間ドラマ。きっと英国人には胸アツ映画。あのままチャーチルが押し切られてたら、ヨーロッパも世界も日本もその後の姿が変わってただろうと思う。
そして今、世界は東アジアの狂った国家社会主義独裁国にじわじわと侵略されようとしている。

2020年6月25日木曜日

仲間由紀恵「トリック新作SP2」(2010)

トリック新作SP2(2010)を見た。これをもって、2000年に放送を開始したトリックシリーズをレギュラー放送ドラマ、映画、スペシャルドラマ、そのすべてを見終わった。
この新作スペシャル2は今日までまったくその存在を知らなかった。まったく見た記憶もない。なので新鮮な状態で見ることができた。

驚いたことがある。この新作SP2が完全な「悪魔の手毬唄」のトリック世界観でのリメイクといっていいオマージュ作品になっていたことだ。
設定をそのまま流用。堤カントクは「悪魔の手毬唄」が大好きすぎ。

村の青年団、1人の青年をめぐる娘たちの三角関係、酒蔵の樽の中に逆さづり死体、つぎつぎと殺されていく村の娘たち、見立て殺人、なにもかも「悪魔の手毬唄」要素。ただ、手毬唄でなく「子守歌」だが。
もう一つ驚いたことが、トリック全シリーズにつきものだった悪ふざけウザ演出、ウザキャラ設定を封印した固く真面目なドラマになっていたこと。笑いの要素がとても少なく、あまりトリックらしさを感じさせない暗く重厚な2時間サスペンスミステリーになっていた。

だが、のど自慢大会の審査委員に秋元康が本人役で出演してて笑った。
高橋真唯、美波、逢沢りな、この時代よくドラマや映画で見た女優。懐かしい。最近あまりみかけないのですっかり忘れていた。

高橋真唯は「サイレン」(2006)という映画で阿部寛と共演してた。この女優は「シムソンズ」「クワイエットルームにようこそ」「フィッシュストーリー」にも出てた。自分には印象に残ってる女優。35歳になった現在は岩井堂聖子という芸名で活躍中。
浅野ゆう子手塚理美がこのドラマをがっちり格調高くしてる。この二大女優を相手にしては堤も蒔田も行き過ぎた悪フザケはできなかったのかもしれない。

上田が過去作のどの上田よりも清潔感がある。この新作スペシャルは従来と違う視聴者層をねらったものだったのかもしれない。

山田こと仲間由紀恵がさすがにこの時点でもうオバサン化してる。第1シーズンのときのようなトキメキをまったく感じなかったw

2020年6月24日水曜日

星泉「セーラー服と機関銃」(2006)

長澤まさみがTBSドラマ「セーラー服と機関銃」(2006)に主演したときに、主題歌のシングルCDをビクターエンタテインメントから、星泉名義でリリースしたことはまさみオタなら知ってるだろうと思う。

昨年末、半額セール中のBOの棚を物色していてこのCDを見つけた。100円の値札がついていたので半額の50円でゲット。

自分、このシングルをすでに持っているので2枚目を手に入れた。2006年の発売直後に同じくBOで中古で手に入れたものがある。だが、1回聴いただけで以後全く聴いてなかったw iTunesにも取り込んでなかった。
ただタイトル曲1曲の別Ver.が3Track収録。このシングルはDVDつきのこの盤しか存在しない。
今回初めて取り込んで聴いてみた。ほぼほぼ80年代アイドル歌謡のクオリティ。来生たかお氏によるこの楽曲も自分はそんなに好きじゃない。
まさみは近年ミュージカルで力強い歌唱を聴かせている。歌の上手さは十分に世間に知られている。だが、このCDの存在は忘れられている。この当時のまさみ歌唱と今現在のまさみ歌唱はレベルが違う。

このCDは2006年当時19歳で人気絶頂だったアイドル女優が出したにしては全然話題にならなかった。だがやっぱり一定の枚数は売れたらしい。なので今、中古で容易に見つけられる。おそらく相場は100~300円ぐらい?
これが出た当時何に失望したかというとそのMV。肝心の長澤まさみが最後にちょこっとしか出てこない。
しかも天気の悪い日に遠くから望遠で、なんとなく街角にたたずむまさみを撮影したもの。画角的にも何か意図があるのか?よくわからない適当に一発撮りしたようなクオリティ。ローコントラストの冴えないSD画質。
なんとなくその場にいたような一般素人っぽい女子高生たちが次から次へと映る。誰一人かわいい子がいないw
まさみ目当てでこのDVDを見た人は相当にイライラさせられただろうと思うw まるで90年代ブルセラビデオ。

肝心のまさみですらそれほど可愛く見えないという、とにかく失望クオリティのシングルCDだった。
まさみは以後一枚もCDを出さなかったし、歌う事にも興味を示さなかった。このCDのプロモーションもほとんどやらなかった。

それが2012年「分身」、2014年「若者たち」、2017年「SING」では劇中で歌ってしまう。2017年にはミュージカル「キャバレー」の主役に挑戦してしまう。本人は歌う事自体は好きだったんだな。

というわけで、この「セーラー服と機関銃」というCDは持っている必要を感じない。長澤まさみのことなら何でも知っていたいという重篤なファンにしか薦められない。

2020年6月23日火曜日

織田梨沙「STAR SAND -星砂物語-」(2017)

コンフィデンスマンJPのモナ子こと織田梨沙が主演した沖縄戦映画「STAR SAND -星砂物語-」が2017年夏に沖縄と東京で公開されていた。まったく知らなかった。原作脚本監督はロジャー・パルバース。

16歳沖縄少女が織田梨沙。この子はとてもエキゾチックな顔。昔の日本人っぽい。冒頭の日本語ナレーションがとてもたどたどしい。

たぶん脱走兵の話。満島真之介が戦場を離脱し洞窟に潜んでる日本兵。島に泳いでたどり着いたアメリカ兵の面倒も見てる。
少女と脱走兵の交流。織田は英語ができんの?脱走兵は重罪。兵士からすれば地元住民は警戒しなければならない相手。

少女側にしてもこの行動はとても危険。日本兵にしても足がつく可能性があって危険。ずっと不穏な感じ。中年女性から目撃され不審に思われる。
けど、すでに沖縄戦も終盤?軍人たちも消耗してなげやり。島民の監視もそれほどシビアじゃない。

外国人監督なので細やかな箇所まで沖縄らしさを描き切れない。言葉とか習慣とか。なので日本人視聴者がリアリティがないとか、日本人役者たちの演出面で批判するのはきっとよくない。

話はいきなり現代に飛ぶ。ショートパンツ大学生吉岡里帆がキャンパスを闊歩。白いふとももがエロい。とても気が強そうだ。服装もヘアスタイルもパンクだ。吉岡がとても美人。

卒論の相談で石橋蓮司を訪ねる。「沖縄行ったことある?」
吉岡はこの戦争秘話にそんな接点の持ち方をする役。「男たちのTAMATO」みたいな?
この先生から沖縄戦のとき洞窟で死んだ少女の日記を渡される。ああ、この少女はやはり死ぬのか。最悪バッドエンド映画であることが中盤で判明。

脱走兵イワブチの狂った軍人兄が三浦貴大。重傷を負っている。「裏切り者は銃殺だ!」
牛とヤギを隠し持っていた伯父も逮捕されるかもしれないと洞窟暮らしに合流。少女に連絡と物資の運搬をさせる。そんなの危険にさらす行為。
アメリカ兵が陽気。わりとのんきで楽観的。

織田が住んでる空き家の主寺島しのぶが大阪から戻っていた。大阪は火の海で連れて行った娘も死んだと語る。「アメリカ人はけだものだ!」とアメリカを呪う。
もう戦争が終わる状況で大阪と沖縄を民間人が行き来できてることは疑問。寺島の一人語り芝居が映画にしてはおおげさに過ぎたように感じた。

少女は真珠湾攻撃後に日本に戻った移民らしい。だから英語ができるのか。両親はすでにいない。流浪の民。

1958年に話がとぶ。アメリカ軍人が洞窟を調査。墓と日記を発見する。それが人から人に渡って学生吉岡が読むことになるらしい。
この吉岡が鋭い。日記がボールペンで書かれていることに疑問を持つ。「日本人がボールペンを使うようになるのは戦後のことでは?」え、サスペンス展開?

真相はそれほど意外でもない。だが、「息子です」には驚いたw 人はそうやって命をつなぐ。
戦争中にあったかもしれない悲劇のひとつ。格調高い。
だが、吉岡が星の砂を譲られたときの表情がすごく迷惑そうに見えたw そこまで嫌そうにしなくても。

ロケは沖縄伊江島で撮影。
坂本龍一「Star Sand」とクレジットされている。だが、映画音楽担当者は別の人らしい。

2020年6月22日月曜日

鍵泥棒のメソッド(2012)

「鍵泥棒のメソッド」(2012 クロックワークス)という映画があるので見る。堺雅人香川照之広末涼子が出演という話題作。監督脚本は内田けんじ

ざっくり説明すると、
仕事ひとすじ堅物OL広末涼子は余命短い父のために結婚を決意し職場でも結婚を宣言。だが、まだ誰ともおつきあいしていない。
売れない役者の堺雅人は死のうとして遺書を書く。
ゴルゴ13のようなカンペキ主義殺し屋香川照之は銭湯ですっ転んで後頭部をタイル床に打ち付けて昏倒。救急搬送される。

ここですかさず堺は騒ぎに便乗しロッカーの鍵を交換。堺は香川が記憶喪失なままに入れ替わる。
几帳面な性格の香川は記憶喪失になっても真面目で有能。ダメ人間堺に代わって堺の人生を生きる。自分は俳優だったんだと思い込み俳優業を頑張る。そこで結婚相手を探してる広末に見いだされる。

香川に殺しの依頼をしていたヤクザ荒川良々が堺の前に登場。いろいろややこしいことになっていく。堺はなりすましであることがなかなかバレない。
だが、やがて香川は自分を思い出して…という話。

これは近年になっても評判が良いらしい。だが、自分はあんまり登場人物たちに感情移入できないし、それほど脚本に妙味のようなものを感じなかった。もろ手を挙げて面白かった!とまでは言えない。
ライトなものを期待していたわりに長い。もっとテンポよく展開が速くわかりやすいものを希望してたけど裏切られた。爽快感もない。

ただし、ヤクザに戻った香川が堺の演技(銃で撃たれて死ぬ)にダメ出しするシーンはちょっと面白かった。自分が笑えたのはこの箇所だけ。

社長の女が億の金を隠してる方法がそんなバカなと思った。荒川が堺の狂言に気づく場面は「なるほど」と思った。

PS. ちなみにこの映画は乃木坂46生田絵梨花が大好きな映画。ソースはダ・ヴィンチ2017年10月号。以下一部のみ引用
「私、『鍵泥棒のメソッド』っていう映画が大好きで、休業中にも繰り返し観ていたんです。その作品の内田けんじ監督が、『何度目の青空か?』を撮ってくださることが決まって。運命を感じて、撮影時はとにかくはしゃいじゃいました(笑)」
この「何度目の青空か?」というMVも女子高にただひとり男子が入学するという唐突な作品。ぶっちゃけ、このMVも自分はあんまり好きじゃない。

2020年6月21日日曜日

広瀬すず「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(2018)

「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(2019)に広瀬すずが出ているので見てみる。
主演は篠原涼子と広瀬すず。90年代のコギャルたちが40になってあの時代を懐かしむドラマ。自分はあまり見たいと思えないテーマの映画。だが、広瀬すず見たさに負けたw

監督脚本は大根仁。期待して見る。市川南制作の東宝映画。韓国映画のリメイクらしい。リメイク作は国民センスの違いが強く出てしまうものが多い。

篠原涼子が安室奈美恵をBGMに「んふうぅ…」とベッドから起きる。なんだか大人のエロス。そして朝食。まるでCMやドラマのよう。
夫と娘、妻、それぞれがまるでホテルの朝食のようにパン食、和食と別々のものを食べている。こんな家庭あんの?夫が海外出張に行ったり金はかせぐがとてもおじさんくさい。
そして、「めざましテレビ」で安室奈美恵25周年のニュース。あのころはよかった…。

病院に母を見舞う篠原。病室に向かう途中で奇声を発して暴れる患者をみたりして憂鬱な気持ち。
病院で高校時代の友人板谷由夏と再会。板谷はがん告知され余命1か月であることを唐突に話す。

そしてコギャル仲間に会いにいく。なぜにまず朝の通学時間の高校へ?
また唐突に久保田利伸が流れる。ミュージカルが始まる。全員ギャルでダンスシーン。これは今見る若者たちに90年代を間違ったイメージで伝える。
そこに場違いな田舎少女広瀬すず登場。(広瀬は篠原のJK時代)
まるでアメリカの女性刑務所に紛れ込んだ日本のアイドル。淡路島から転校してきたのだが、これがステロタイプな田舎者として描かれている。お下げ髪で訛ってる。

広瀬の席の後ろが山本舞香(板谷のJK時代)。やっぱりギャルだが黒髪。この子は今でも通用するJK。ジュディマリが流れる。
池田エライザが孤高にクールで怖い。別格にエロい。広瀬を見て「ダサい」と冷たく言い放つ。
20年前とはいっても東京と地方の格差を強調しすぎ。東京、怖すぎ。

子どもをいきなりこんな環境に置くのは多大なストレス。買ってきた金魚をいきなり冷たい水道水のバケツにぶっこむのと同じ。子がグレたりするのはほぼ環境のせい。
少女はお金がなく、ルーズソックスもカーデガンも買えない。子どもが他の子と服装が違いすぎていることに無頓着な親はきっと子どもの何も見えていない。

やっぱりこの子の家庭も貧困。異常に老けてる両親。爺さんのような顔した婆さん。この食事風景がおそらく韓国のセンス。ちゃぶ台で鉄板で何か焼いてる。
広瀬が学校に持っていく弁当が白ご飯にお好み焼きを乗せただけのもの。
アニオタ兄のヘアスタイルと顔が日本人じゃない。
学校シーンがとつぜんアラフォー篠原シーンに戻る。篠原は広瀬のキャラに表情しぐさを寄せて行ってる。
高校の担任が老婆になってる。あんな年齢まで職場に?
自分も最近怖いなと思うことが、久しぶりに見た人がお爺さんお婆さんになっていることを知ったとき。

デブ渡辺直美とは学校経由ですぐ会えた。だがそれ以外の仲良しメンバーの所在が不明。ここで興信所を使うとかちょっと違和感発想。
軽薄な探偵がリリー・フランキー。自営業者は昼間から酒と競馬とかやはりステロタイプ表現。

hitomi「CANDY GIRL」が今聴くと異常に軽薄。そもそもコギャルがこの時代の東京発のあだ花。メディアがもてはやしすぎた。街にはデカデカと派手な色遣いでテレクラ看板があったりする異常な時代だった。ぜんぶ社会の責任。自分、この時代からスーツ姿のビジネスマンを外見だけで信用しない。

ブチギレ広瀬すずが吉本新喜劇のノリ。やっぱり違和感。まるで少年ギャグ漫画のノリ。
全盛期の小室哲哉みたいな三浦春馬がほぼ出オチ。一番笑ったシーン。

かつての仲間だった小池栄子が病院経営者と結婚しセレブになっているという設定。美容外科というのも韓国らしい。小池と渡辺のやりとりが普通にバラエティ見てるような感覚。

篠原が小池に「旦那と15年セッ〇スしてない」と言うシーンとかも韓国オリジナル?見ていて「なぜそれを?」という唐突な違和感シーン。こういうのがどんどん出てくる。
小池「今の子たちはスマホばっかり見ていて静か」大人たちはとうの昔から感じていること。
小池の旦那がわかりやすくJKと援助交際してるとか安いドラマっぽい。

すずはギャル仲間にどっぷりインしていくのだが、90年代のような醜悪さがない。恋するすずの可愛さ美しさ。さすが大根監督。女優がブスに映ることは許さない。

すずとDJ三浦春馬がクラブで出会うシーンは映画というよりまるでCMみたいだった。
すずとエライザが打ち解けるシーンがなぜかおでん屋台。JKに日本酒をグラスで出すな。
すずはコメディエンヌ。
結果、予想以上に笑い要素が多かった。ヘンテコファンタジー娯楽作映画だった。
そのわりに、ともさかりえの演技が他の共演者と雰囲気が違う。マジすぎでヘビー。
仲間の一人が事業で成功してて未婚のまま死んだことで、巨額の遺産で問題解決という結末はいかにも韓国らしい。

これまでに見た大根監督映画でこれが一番やっつけ仕事感がした。長く感じた。韓国映画リメイクはムリがあるので極力止めるべき。

ちょっと驚いたのが広瀬と山本の水着シーンがあったこと。そして、篠原、板谷、渡辺、小池のJKコスプレ。小池栄子は脇役であっても、毎回すごい存在感で輝く。
ちなみに、篠原涼子と渡辺直美は実年齢で一回り以上年が離れている。

最後は明るく笑いながら出演キャスト全員が時空を超えて「強い気持ち・強い愛」ダンスシーン。誰もが笑顔になれるシーンかもしれない。

2020年6月20日土曜日

芳根京子「今日も嫌がらせ弁当」(2019)

芳根京子「今日も嫌がらせ弁当」という2019年6月公開の映画(ジャンゴフィルム/日活)に出ているので見る。配給はショウゲート。監督脚本は塚本連平。ブログ発単行本を映画にしたものらしい。

主演は篠原涼子。実は自分はまだ1回もこの女優の出演ドラマも映画も見たことがなかった。群馬出身で小室哲哉の歌を唄ってたということぐらいしか知らない。

この映画をざっくり説明すると、生意気で反抗的な高校生の娘芳根京子にシングルマザー篠原涼子が「嫌がらせ弁当」を持たせるファミリードラマ。
八丈島が舞台。八丈島の高校生ドラマって見たことない。みんなスマホを持っている。母娘の連絡はLINE。
高校入学と同時に娘に弁当を持たせるのだが、この弁当が超絶個性的。まるでネタ動画。
親を「ウザっ…」と避けるクールな娘双葉に前日気になったネタを弁当で表現する。双葉(芳根)の弁当にはクラスメート全員が注目するようになる。
このネタでいつまで持つ?と心配になる。映画らしくない。

幼稚園児のシングルファーザー佐藤隆太はある日「キャラ弁」で検索し篠原のブログを見つける。息子につくってみる。コメント欄でやりとりする。
これ、テレビドラマでよくないか?

ヒロインは好きな男子に告白もできず、部活も辞め、ポエムを書き、気づいたら卒業まで半年。卒業後の進路に悩む。
気になる男子が和太鼓の大会で東京へ。ヒロインは初めてキャラ弁をつくる。ほろ苦い結末。心がすさんで親子喧嘩。
松井玲奈が芳根の姉役。すでに家を出て一人暮らし。似てない母娘。似てない姉妹。芳根と松井、このふたりを見ると朝ドラ感がする。

芳根は東京での就職目指してフェリーで面接へ。ここでもキャラ弁。就職がかんたんに決まる。もうすぐ卒業。だが、母は倒れる。これが難病とかじゃなく疲労?なぜに車椅子?

母は病院を抜け出して娘のために最後のお弁当をつくる!という感動作?ちょっとドラマ脚本として無理があるように思える。ストーリーとして退屈。
だが、最後の弁当にはそれほどのサプライズはないものの、母の娘への愛情に泣いた。

一般庶民の生活にそれほど他と違うドラマチックな展開があるわけない。薄味ほのぼの家族ドラマ。
佐藤隆太が結局それほど接点を持たない他人だった…と思ってたら、ラストのラストで邂逅。この状況がよくわからないまま終了。
主題歌はフレンズ「楽しもう」(Pimalayas.Records)

2020年6月19日金曜日

太宰治「ヴィヨンの妻」(昭和22年)

新潮文庫の太宰治「ヴィヨンの妻」(昭和22年)を読む。戦後疎開先から三鷹へ戻った時期に書かれた8本の短編を収録した1冊。では順番に読んでいく。

親友交歓(昭和21年)故郷に疎開している太宰の元に「同窓会するから」と訪ねてきた小学校時代の旧友。だが、そいつにとくに記憶がないw こいつが無神経で無遠慮でとにかく太宰に心の声で罵られる。

トカトントン(昭和22年)「困ってます」という読者からの手紙。郵便局で働く青年の話。終戦後の混乱した雰囲気。

(昭和22年)身重で風邪気味の妻と娘を米の配給に並ばせ自分は女たちと美味しくも楽しくもない酒を飲む最低男。一人息子イサクを殺そうとしたアブラハムのことを考える。

(昭和22年)宿屋の青年に誘われ飲む。となりの部屋から聞こえてくる男女の会話。
軍隊で上官に散々殴られたせいで、軍服の森鴎外が嫌になって、全集を売り払ったという青年の話が面白い。

ヴィヨンの妻(昭和22年)お金の当てがないにもかかわらず無銭飲食して金まで盗んでくるダメ夫を持つ妻目線の話。生き抜くためにはその場しのぎの嘘とごまかし。
この妻がヤケクソで飲み屋で働きだしたらちょっと好転しかかる。終戦直後のギリギリ貧乏生活。
戦前は女を口説くのには華族の勘当息子と思わせるのが効果的だったと知った。

おさん(昭和22年)これも収入のないダメ夫を持つ妻目線だが、その結末は太宰自身の最期そのもの。気が滅入る。

家庭の幸福(昭和22年)長い間、三鷹の津島家にはラジオがなかったのだが、修治の留守中にいつのまにか家人がラジオを買っていた。お役人とのインタビュー録音がラジオに流れるという。
「官僚が悪いというけど民衆だってずるくて汚くて欲が深くて裏切ってろくでもないのが多いのだからアイコ」という太宰理論。

桜桃(昭和23年)子どもよりも親(自分)が大事という太宰。「生きるという事は、たいへんな事だ。あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。」
妻の妹は重態。4歳の長男の発育不良に悩み、作家は家庭から逃げるように執筆へ向かう。もう自殺しかない。家庭を持っても人は幸せにはなれない…という絶望。

PS. そして今日は太宰生誕111周年。

2020年6月18日木曜日

乃木坂46「サヨナラの意味」(2016)Type-B盤を手に入れた

乃木坂46「サヨナラの意味」(2016)Type-B盤を手に入れた。これも年始にHOでジャンク箱から回収。DVDつきで50円だったので迷いなく購入。

こいつを手に入れると「サヨナラの意味」「孤独な青空」「ブランコ」の3曲の音源が手に入る。「サヨナラの意味」と「ブランコ」のMVを収録したDVDが手に入る。

なんと、こんなことは自分としてはめずらしいのだが、このB盤を間違えて2枚同じものを買ってしまったw 自分はこういうムダが大嫌い。痛恨。ただでさえCDの置き場に困っているのに。
しかも、D盤もそこに50円であったので回収したのだが、家でDVDを見てみたら「あれ?見たことある」。調べてみたら、やっぱり同じものを持っていた。がっでむ!
久し振りに「サヨナラの意味」MVを見てみた。このシングルは橋本奈々未の卒業シングル。今回見てみたら橋本がやたら美しい。こんな美人がアイドルやってたのは奇跡。
だが、西野七瀬もやたらと美しい。悲しそうな苦しそうな顔の西野が美しい。見てるこちらも胸が苦しい。
カワウソみたいな顔でも美しく愛おしい。
「介錯いたす」という西野が美しい。
森鴎外、芥川龍之介の表紙に使ってほしいクオリティ。ミシマ、タニザキでもよい。
ダンスシーンでも西野は美しい。身長159cmでも細くて顔が小さくてとにかくスタイルがよく見える。西野七瀬が乃木坂にいたことも奇跡。
選抜発表を待つ西野もかわいい。結局つねにかわいい。

特典Disc後半はアンダーライブのドキュメンタリー。樋口と寺田をフィーチャーしてたように思う。自分、あんまりアンダーライブについて知らない。

この時期は井上と万理華もアンダーだった。純奈や山﨑、かりんに琴子。みんな1回たりとも選抜に呼ばれたことがない。選抜制はまったく間違った悪しきものだったと思ってる。

PS. 6月19日から4回目の乃木坂46時間TVの配信がある。とてもじゃないがもう46時間起きてすべてを見るわけにはいかない。

2020年6月17日水曜日

カエサル「ガリア戦記」(BC.52-51)

カエサル(シーザー)による「ガリア戦記」を読む。近山金次訳1942年岩波文庫の1998年版で読む。
COMMENTARII DE BELLO GALLICO
カエサル(BC.102?-BC.44)の7年におよんだ征服戦争の最前線報告。カエサルは自分の戦績をわりと客観的にローマ市民に向けて書いた。市民は凱旋司令官に熱狂した。
全8巻のうちカエサルが書いたものは前7巻。紀元前52年冬から翌年春までに書かれたものらしい。ヨーロッパでは後世まで名著として多くの偉人たちにも読まれた一冊。

自分、ローマ帝国の歴史に触れるのは中学高校世界史以来。たまにブルートゥスとかクラッススとかとか、聞いたことのある名前が出てくるとほっとする。

この本に出てくる異民族の名前がことごとくすべてまったく聞いたことがない。たぶん滅んだ部族はその後の歴史に登場しない。地名も多くが現在のどこか不明。
だが、ヘルウェティー人、ベルガエ人、ゲルマーニー人、ブリタンニー人はなんとなくわかる気がする。たぶんそれぞれが今のスイス、ベルギー、ドイツ、イギリスの人々の祖先。

なにせ現在のヨーロッパができる以前。文明国ローマ以外は獣皮を着た野蛮人がほとんど。
この時代のブリテン島はローマ人にとって未知。どのぐらいの大きさなのか?人々の風習は?なにもわかっていない。

敵の民族は籠城戦をするのだが、ローマ軍が移動式小屋で地面を平にし、塔のようなものを組み立てて横にすーっと移動させるのを見て「ダメだ…敵には神がいる」と思って降伏したらしい。それぐらいローマと異民族の文明には差があったっぽい。あと、テラという投石器も登場。
カエサルは殺戮し女子供は奴隷にしていった人だが、殺すか殺さないかには原理原則があったっぽい。ある基準を満たして降伏したものは許してる。

読んでいて日本の軍記物ほどには面白くない。戦争に伴う悲哀ドラマのようなものはほとんどない。ただただ殺したとしか書いてない。

だが、ガリア側にもカエサルの好敵手とでもいうべき将がいたことも知った。アンビオリクスという人名を初めて聴いた。
ウェルキンゲトリクスとのアレシアの戦いの終章はこの本のクライマックス。

あと、ゲルマーニー人の風習の説明。「農耕に感心がない」などの他に
その生活は狩猟と武事にはげむことである。幼い頃から労働と困苦を求める。いちばん長く童貞を守っていたものが絶賛される。その童貞を守ることによって身長ものび体力や神経が強くなるものと思っている。二十歳前に女を知るのは恥としている。
これは現代日本でも再評価し広めたい価値観。
それから、この当時のガリアにいる動物について説明している箇所
鹿の姿をした牛がいて、その両耳の間の額の中央から一本の角が、我等に知られている角などより高く真っ直ぐに生えている。
という記述にはびっくりした。これってユニコーン? 本当にいたの?

あと、「大きさが象より劣り牛のような姿と色と形」をしたウリーという動物がいる。これはbos primigeniusとして知られる牛らしい。調べてみたら、17世紀に最後の1頭が死んで絶滅した動物らしい。この牛がかっこいい。ほぼミノタウロス。冷凍保存ができていれば現代の技術で蘇らせることもできたかもしれないのに。

2020年6月16日火曜日

広瀬すず「学校のカイダン」(2015)

広瀬すずの初主演ドラマ「学校のカイダン」を見る。2015年1月から日本テレビで放送されていた連ドラ。

神木隆之介というブレーンによって広瀬すずが学園トップに上り詰める下克上ドラマ。と聞くとなにやら面白そうに感じるかもしれないが、まるでこどもダマシ。
権力のない生徒会長を押し付けられた広瀬すずが気弱のヘタレ生徒。構造的に「女王の教室」に似ているかもしれない。
親が多額の寄付金を収める生徒8人のみが裏生徒会実務委員を務めあらゆる特権を享受する。

この学校がまるで黒澤映画にでてくる治安崩壊した戦国の村。性悪クズ生徒たちが極悪盗賊。窃盗や器物損壊もやってる。教師たちが極悪無能代官。他の庶民生徒を支配下に置いて好き放題する荒唐無稽な舞台設定。
今の子供たちはみんなスマホ持ってるんだから理不尽な目に遭えば会話をちゃんと写真撮って録音し証拠を押さえて保護者、SNS世論に訴えると思う。(と思って見てたら中盤にそういう展開があったのだが、それは教師側だったw)
バスの故障修理代窃盗事件で高校に警察が介入してくるシナリオとかちゃんちゃら可笑しいと思う。

私立校にしては生徒の親たちの社会的地位がピンからキリまで広すぎる。ある意味今の日本社会。特権階級と上級国民に苦しめられる庶民。
一般ダメ生徒たちが実権のない生徒会には文句を言うけど党幹部役員プラチナ8には何も言わない。まったく今の日本。

金持ち生徒だけが容姿端麗で涼し気。ダメ生徒会メンバーがもれなくブサイクでリアルにダメそうな高校生で右往左往。見栄えに大きな差を持たせている。民衆を率いる自由の女神はすずだけでいいという絵面。
第1話から見ていて何ら爽快感がない。広瀬すず演じるヒロインにカリスマ性がまったくない。強い正義のヒーロー感がしない。
臨時生徒総会で拡声器取り出したときは「おおぉっ?!」と思ったけど、その後の展開がまったく失望。こんな民衆のツボをつかない演説では誰も心動かされない。

生徒会を味方につけるなら、血判状つくって盃を交わし合うぐらいやれ。赤いスカーフでも首に巻け。足並みを乱すなら仲間も粛清するぐらいの気概を見せろ。

そもそもたった8人の支配層だけで民衆(全校生徒)の冷たい恨めしそうな視線に耐えらるはずがない。不満を押さえられるはずがない。革命を防ぐにはゲシュタポのような組織が必要なはず。

毎回広瀬に心を打つ(と思わせる)演説をぶたせるのが嫌。リーガルハイの古御門みたいな乱暴な正論で聴くものを熱くさせてほしかった。神木のよどみない喋りは古御門がモデルだったかもしれない。
もっと広瀬すずがヒトラーかレーニンが憑依したごとく喋りひとつでスクールカーストを駆け上がる様子をテンポよく見せてほしかった。

神木が口だけで無能。ドラマを見続ける推進力がまったくない。ゲッベルスか椿三十郎のような策士っぷりをテンポよく見せてほしかった。孫子の兵法とかアメリカ大統領選挙の必勝法の知識とか織り込んでほしかった。
広瀬すずがもっとアクが強くて目が血走ったイッちゃったキャラにしてほしかった。冷酷な革命リーダーとなって、中ボス8人の生徒をひとりずつ「ぐげえ!」と血反吐はくまで追い詰めて、楳図かずおのホラーマンガのように、しょんべん漏らして命乞いさせて惨殺していくドラマにすれば面白くなってた。

伊藤健太郎、成田凌、石橋杏奈、間宮祥太朗、杉咲花、飯豊まりえ、白洲迅、吉倉あおいらをひとりずつ小物順からB'zの音楽にのせて抹殺していくべきだった。(石橋杏奈の女帝っぷりが圧倒的)
ひとりやられる度に「フフフ、やつは四天王のなかで最弱w」とか言ってほしかった。

第6話以降のつまらなさに鼻白む。両者が和解してどうする。すずと石橋のビンタの応酬とか見たかった。
スターリンや毛沢東のように薄ら笑いを浮かべさせ粛清銃殺していってほしかった。歴史に名を残した独裁者は政敵そのものよりもその仲間たちを残虐に殺した。
教師と女生徒のスキャンダルを利用し敵を切り崩す展開は面白いかと思った。だが、時勢に乗って増長してイジメに加担する庶民生徒たちも今の日本そっくり。ガヤ庶民は最後までガヤ庶民。

権力にヘコヘコする無能どころか害悪でしかない教師たちも全員一か所に集めて、キャリーのように学校ごと紅蓮の炎で焼き殺すぐらいの衝撃ラストがよかった。
教師たちの挫折エピソードとかほんとにいらない。生瀬と金山はムッソリーニとクララ・ペタッチのごとくロレート広場に逆さづりにしてほしかった。
いつかどこかで広瀬すずが神木と見た目と喋り方がまったく同じになる瞬間が来るのを期待して見ていたけど裏切られた。

そもそも神木は脚が動かなくなった原因をつくった同級生たち全員をひとりずつ殺していくべき。自分が読んでる推理小説だとたいていそう。
自分なら最終的に悪魔と契約しカリスマの化け物になったすずに神木をも殺害させる脚本にする。

広瀬すず目当てで見続けたにしても苦痛の極みだった。ただただ暑苦しかった。毎回全10話、金切り声で演説しないといけなかった広瀬すずはかなりのプレッシャーとストレスだったはず。消耗したはず。

2020年6月15日月曜日

FLOWER FLOWER「インコの気まぐれ」ライブ配信!

今現在、音楽コンサートライブ興行ができずに日本中の(世界中の)音楽業界はとてつもない損害を被ってる。
FLOWER FLOWERも3rdアルバム「ターゲット」レコ発ツアー(夏フェスも)がすべて延期という先の見えない状況。

そんな中で初の試みである有料配信ライブ「インコの気まぐれ」ではyuiとバンドメンバーたちが変わらない元気な姿と素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

ライブレポは行けなかった人に伝えるという意義があったけど、今回はネット環境と課金があればファンなら誰でも見ることができた。それに、ツイッターでもハッシュタグで盛り上がったので、詳しいライブの様子や視聴者の反応は後から追うことができる。なので、それほど詳しくは書かない。

一応、備忘録としてこの日演奏されたセットリストは記録にとどめたい。
FLOWER FLOWER 第1回配信ライブ(2020年6月14日)
01.人魚
02.砂浜
03.ふたり
MC「自己紹介しましょう」
04.愛のうた
05.熱いアイツ
06.神様
MC「ショルキーいいねえ」
07.夢
08.ベン
09.旅の途中
10.素晴らしい世界
MCではタブレット端末などを使って視聴者の反応を見ながらのトーク。4人とも無言でコメントを読み続けるという…。

「熱いアイツ」で初めて見る楽器が登場。YAMAHAのショルキーw 予想してなさすぎてびっくり。

どの楽曲も初めて聴く新鮮アレンジ。神様がジャジー。「ふたり」がyuiソロ歌唱でやっぱり新鮮。「ベン」ではひさびさ「ピーヒョロ笛」。「旅の途中」が感動的。

ライブ終了後にはプレゼント告知。そして第2回の配信ライブ(7月25日)も告知。

2020年6月14日日曜日

ジェイムズ・P・ホーガン「火星の遺跡」(2001)

ジェイムズ・P・ホーガン「火星の遺跡」を読む。2018年になって内田昌之訳が創元SF文庫から出た。
MARTIAN KNIGHTLIFE by James P. Hogan 2001
ジェイムズ・P・ホーガン(1941-2010)のまだ読んだことのなかった2001年の作品が今読めることに多少驚きつつページをめくる。

タイトルに「遺跡」とある。自分はてっきり「星を継ぐもの」のようなファンタジー宇宙考古学的作風かと思ってた。原題にKNIGHTLIFEとあるので「創造主の掟」みたいなものもイメージ。

だが、ぜんぜん違ってた。火星が舞台なのだが、普通にシリコンバレーのベンチャー企業の幹部たちみたいな会議シーンばっかw
人類は太陽系内はほぼ征服。動物実験の末に人間も原子レベルで情報としてテレポートする技術をほぼ確立。あとはビジネス化かと思いきやトラブル発生…という話。

テレポートは人間の複製をあちら側で書き出し実体化する技術。人間は原子レベルで日々入れ替わってるので問題ない。だが、コピー元となったオリジナルは?
このオリジナルが勝手に銀行から大金を引き下ろすなど、あずかり知らない場所で問題を起こしていた。ヤバい。早急に調査して対策をたてないと。金をとり返さないと。

第2部は火星の土建屋VS発掘隊みたいになってダマシあい。まるでナニワ金融道。正直ぜんぜん期待するようなSFらしい展開になってくれない。
自分は後半をさっさと読み飛ばした。これは読まなくていい。今まで読んだホーガンの作品でこれが一番つまらないと断言できる。「火星の遺跡」という邦題は悪質。

2020年6月13日土曜日

吉岡里帆「見えない目撃者」(2019)

吉岡里帆主演「見えない目撃者」(2019)を見る。韓国映画「ブラインド」の日本版リメイク作らしい。監督は森淳一。ROBOT製作で配給は東映。R15+作品。

自分は何も予備知識がない。たぶん、女子高生連続猟奇殺人の犯人と、事件の目撃者となってしまった目の見えない元警察官ヒロインの息が詰まるようなサスペンススリラー。
このビジュアルの吉岡がとても魅力的。モデルみたいにスタイルがよくないことも逆にリアルで良い。

冒頭から暗い色合い。警察学校での射撃訓練とランニング。「羊たちの沈黙」のクラリスっぽい。吉岡が凛々しい。
いよいよ交番勤務という直前に、できの悪い弟が原因のちょっとした不注意で交通事故。弟を亡くし視力も失う。
3年後、盲導犬を連れテープ起しを仕事としてる。もう人生を棄て廃人のように生きている。
夜の街を歩いていて目が見えないながら異常な車を感覚で「目撃」。この感覚を脳内に視覚的に像を描く映像で見せてくれるのだが、これが「ああ、わかる」っていうぴったりな感じ。

ラジオの音声に交じって後部座席に救助を求める若い女性の声。スケボーの音。
吉岡は刑事に話す。「聴き間違いでは?」と突き放されるのだが、吉岡が頭脳明晰理路整然とテキパキハッキリ確信をもって話すので捜査せざるを得ないようだ。
てか逆に、ここまで強く主張しないと警察は動かないのか?これは一般人にはハードルが高い。

大倉孝二田口トモロヲ刑事は吉岡の証言通り現場で車と衝突しそうになったスケボー少年(高杉真宙)を探し出す。しかし、車に女性は乗っていなかったと断言。結果、刑事は吉岡が幻聴を聴いたと結論。捜査打ち切り。めんどくさいことはなるべくやらない公務員。

ヒロインは助けてあげられなかった弟のことで心に傷を持っている。たまたま通りがかった車の中から助けを求めた少女の救出に異常に執着する。

吉岡里帆はめちゃめちゃ正義感強く有能。感覚が鋭く物事を理解する能力が高く、論理的思考ができる探偵のよう。あきらかにくたびれた中年刑事たちより能力が高い。警察学校で相当に優秀だったはず。
高杉真宙くんは嫌々吉岡に協力し一緒に捜査。高杉も有能。吉岡が微かに聴いた「レイサ」という名前だけから性風俗店で働いていたレイという少女がいたことを突き止める。
監禁されている少女とぬいぐるみ。やっぱり「羊たちの沈黙」のバッファロービルっぽい。

高杉は命をねらわれる。車にはねられる。高杉はひき逃げ車のナンバーを覚えていた。車の持ち主をたどるとクスリの大量摂取で死んでいた。さらに土嚢の中から女子高生4人の腐乱死体。鼻や耳、口、手が斬り落とされている。ここがグロシーン。サイコパス犯人の設定がすごすぎ。

ただ、この真犯人は早い段階から感じることができた。ぶっちゃけ自分はこいつが登場するファーストショットから「犯人かも」って思ったw
なんでそいつが怪しいと感じたら仲間の応援を要請しない?少人数で行くなよ。

この映画、見ていて嫌だなっていうムダなふざけたやりとり演出とか一切ない硬派で真面目な脚本と本気演出。何も期待してなかったので驚いた。
従来の日本映画だったら、定年間際に殺されてしまう刑事をベタベタにしつこく抒情的に描いてしまったはず。そこが徹底的にドライでよい。韓国映画リメイクだから?

スマホ時代の新しいブラインドサイコスリラー。吉岡を補助する高杉のバディ感もとても良い。犯人が強敵過ぎ。ハラハラする見せ場たくさん。すごくよくできてる。音楽の使い方も正しい。映画としてすべて正しい手を打っている。感心しかない。

だが、悪魔同然の犯人へのウィニングショットは、悶絶して血を吐いて苦しんだ末に絶命させてほしかった。
暗闇で勝負がつくのも「羊たちの沈黙」のクラリス捜査官だった。座頭市だった。
大傑作で大拍手。初めて女優としての吉岡里帆を強く印象付ける魅力的なスーパーヒロインだった。高杉くんにとっても重要な1本になったはずだ。強くオススメする。

2020年6月12日金曜日

スタンド・バイ・ミー(1986)

スティーブン・キングの原作を1986年にコロンビアピクチャーズがロブ・ライナー監督で映画化した「スタンド・バイ・ミー」を初めて見た。有名な映画だけど今までちゃんと見たことなかった。
ベン・E・キング「スタンド・バイ・ミー」もこの映画以降、日本でもリバイバルヒット。かなり聴かれた。

ざっくりこの映画を説明すると、アメリカの戦後ブーマー世代(団塊の世代)が50年代を懐かしむ映画。
日本人にはなかなか理解できない表現が多い。字幕よりもたぶん実際はかなり汚い表現を使ってる。

中年作家が少年時代の友人の訃報を新聞で見て、車の車窓から外を眺めながら回想する。
1959年の夏、オレゴン州の人口1000人ちょっとの小さな街キャッスルロックで暮らす12歳の少年たち4人が、行方不明になった少年の死体を探しに、線路を歩いて旅に出る…という話。

少しデブなバーンが軒下で埋めたまま所在不明になったヘソクリを掘り返していると、不良の兄たちが「死体」について話しているのを聴く。秘密基地の仲間たちに話す。死体を発見すればヒーローになれる!と信じる。

12歳の少年たちが秘密基地でタバコすぱすぱ吸ってる。父親の机の引き出しから拳銃持ち出すとか、アメリカならでは。
「父はノルマンディーの英雄」だとか、「弟は朝鮮戦争で死んだ」とかいう会話は50年代らしい。この時代の子供たちの話題と遊びも戦争。

さらに上の世代の不良が極悪。アメリカの不良がハンパない。住宅街の郵便受けをバットで破壊しながら車を走らせる。不良のリーダーがどこかで見たことある気がする…。調べてみたら「24」のジャック・バウアーことキーファー・サザーランドだ!
こんなやつらが終戦直後の日本を占領し牛耳った。そりゃ当時の日本人は酷い目に遭ったわけだ。ヤンキーが嫌いになって当然。

この映画、川にかかった鉄橋を歩いて渡ってるところに蒸気機関車がやってくるシーンは見覚えていた。線路を歩いて旅する光景は日本人にとっても懐かしい郷愁。

小学生男子たちの脱線話が酷い。パイ大食い大会でのデブがゲロを吐くエピソードが酷い。まったく笑えない。
森の中の川を渡るシーンで「全身に蛭が!」というシーンが恐怖。「ち●こにでっかいヒルが!」というシーンは身の毛がよだつw

少年たちは将来についても話す。家庭環境が悪いクリス(故リヴァー・フェニックス 享年23歳)は不良であっても正義感が強い。大人しく弱気なゴーディをものを書く才能があると褒め励ます。

旅から帰った後の4人がどうなったか?それぞれが疎遠になっていく。子どもの頃の交友なんてそんなもの。しんみり。
勉強して大学を出て弁護士になったクリスはケンカの仲裁に入ってナイフで首を切られ死亡。切ない。
あの時代が懐かしく恋しく寂しい。とワープロで書き終わった作家は子どもたちと車で出かける…というラスト。
もう、今の子どもたちは家の裏山であっても探検に出かけたりはしない。線路を歩いたりしない。この映画は大人たちの、あの時代のノスタルジア。

2020年6月11日木曜日

新垣結衣「フレフレ少女」(2008)

日本一の清純派人気女優新垣結衣のそれほど多くない主演映画に「フレフレ少女」(2008 テレビ朝日、松竹)がある。

だが、この映画は公開時も地上波放送時もそれほど盛り上がった記憶がない。今回、約10年ぶりに再視聴。
自分はたぶん映画ナビゲート的なDVDを買ってしまったはず。なぜかこの10年ほとんど見返さなかった。今ではあまり話題になることもない映画。アマプラで見れるというのに世間はなにしてる?

ダサメガネ女子高生新垣結衣が硬派な応援団長になるという意外性で勝負した青春映画。高校の応援団もマイナー部活動と言えるかも知れない。日本だけの伝統芸。

オリジナルに企画された映画だったらしい。この当時から新垣結衣は大人気若手モデル女優だった。ガッキーはこれ以前に三ツ矢サイダーCMで応援団をやったことがある。そこから企画が発展したのかもしれない。
読書しながら校舎を出て帰宅しようとした矢先に野球部が練習するグラウンドから硬球が水平に飛んできて側頭部を直撃したガッキー。昏倒。
保健室で寝ている。この処置はどうなんだ?

野球部の下っ端生徒が体育会系らしく頭を下げて謝罪すればいいというものではない。先輩から「早くしろ!」と催促されたからといって足早に謝罪を切り上げていいというものではない。野球部全員で謝罪に行け。

以後、地味ガッキーは野球部エースに恋心。こいつが女子たちから黄色い声援を浴びるムリ筋。キッチリカッチリした恋文を書いて下駄箱に入れるなどのよくみるシーンと演出。
野球部がエース目当てのマネージャー女子たちで飽和状態。

ヒロイン桃子にはチアリーディング部の友だちがいたのだが、なぜかオカマ加藤諒。この部活は野球部を応援するためにあるのではなく、大会を目指すチア部。野球部に接近するためには使えない。
で、そこにいたのが応援団長永山絢斗。入団希望者もいなくて廃部の危機。ここに入れば野球部の応援に行ける。不純な動機。
だが、人数が足りない。
で、ガッキーと永山は各部からあぶれ者(ウェイトリフティング部、吹奏楽部の不良ドラマー、合唱部のひ弱メガネ音痴)を無邪気にスカウト。
この辺の風景は矢口映画でよく見るような感じ。ガッキーと永山が敢えてなのか棒演技。ガッキーの声が小さく可愛らしい。
この映画、染谷将太が出てる。自分が染谷を最初に認識したのがたぶんこの映画。

永山はなんの指導もしないでガッキーを応援団長に指名。急ごしらえの応援団は練習試合で最低なやっつけ仕事ダメダメ応援でむしろ士気を下げまくり「もう応援に来ないで」と言われてしまう。相手高校応援団からエール交換も拒否される。有望だった野球部新エースはライバル校へ転校。

そんな様子を見ていた中年OB内藤剛志が伝統の応援団を立て直すべくGW合宿に団員たちを誘う。費用はOBがもつという。
で、合宿所の寺へ行ってみたら、指導するおっさんOBたちが怖い。10キロ走などスパルタ指導。
風呂の帰りにライバル校に転校したエース大島くんをこっそり一人で見に行くガッキー。夜間特訓をしている大島を目撃し気持ちを入れ替える。応援団も夜間練習を開始。倒れ込むように眠る。

だが、その間にスカウトした3人は練習についていけず逃亡。OBたちも諦めムード。おじさんたちにも事情がある。ガッキー「私たちはまだ誰も応援していない」
なぜか海辺で一夜を明かしたら答えが出た。やっと応援の練習に本気を出す。

だが、ライバル校の練習を見に行って大島くんと話す機会を得たガッキーは失恋。彼女づらしたやつに嘲笑までされる。
傷心して駆け出すガッキーの胸がなぜか揺れている。このときのガッキーは胸が大きい?
桃子と団員達は合宿最終日の団旗行進をそれほどの苦労もなくやり遂げる。努力、勝利。爽やかな青春シーン。
野球部は応援団を初めは拒否するのだが、応援された部活は結果を出してしまう。都合の良いマンガ表現だが。

各校応援団長の集いが異常。こんな前時代的なものが本当に存在するのか?この映画は栃木県が舞台となっている。
どんどん硬派になっていくガッキー。野球部はどんどん勝ち上がってついに決勝へ。相手はさんざんバカにしたライバル校。エースは大島。
決勝戦にだけ顔を出すチアと吹奏楽部はなんなんだ。今の子はおじさんに「気合いだ!」って言われるの嫌なんじゃないか?
運命の一球を目で追う演出はベタ。勝利して初めて団長をキャプテンは認める。わかりやすい演出。2000年代のわかりやすい青春映画。作り手が求められるものをビシッと高い精度で出した映画。

GW合宿だけで応援団として成長し、初めての活動で野球部が甲子園にまで行ってしまうというのはドラマならではの夢のストーリー。

114分を短く感じた。今も多くの人に見てもらいたい映画だ。なにせ新垣結衣が出てるのだから。
ラストのセーラー服ガッキーを出したのは大正解で神。見ていて胸がキュンキュン痛い。
だが、自分がガッキーにガチ恋していたのはこの時期までだったかもしれない。その後のドラマも映画もそれほど好きといえる作品はない。

主題歌Aqua Timez「夏のかけら」。Aqua Timez懐かしい。

ちなみにこの映画の2年前のガッキーは高校サッカー応援マネージャー。
そして本日、6月11日は新垣結衣32回目の誕生日。ひょっとすると21世紀日本最大の国民的人気女優かもしれない。