2020年6月17日水曜日

カエサル「ガリア戦記」(BC.52-51)

カエサル(シーザー)による「ガリア戦記」を読む。近山金次訳1942年岩波文庫の1998年版で読む。
COMMENTARII DE BELLO GALLICO
カエサル(BC.102?-BC.44)の7年におよんだ征服戦争の最前線報告。カエサルは自分の戦績をわりと客観的にローマ市民に向けて書いた。市民は凱旋司令官に熱狂した。
全8巻のうちカエサルが書いたものは前7巻。紀元前52年冬から翌年春までに書かれたものらしい。ヨーロッパでは後世まで名著として多くの偉人たちにも読まれた一冊。

自分、ローマ帝国の歴史に触れるのは中学高校世界史以来。たまにブルートゥスとかクラッススとかとか、聞いたことのある名前が出てくるとほっとする。

この本に出てくる異民族の名前がことごとくすべてまったく聞いたことがない。たぶん滅んだ部族はその後の歴史に登場しない。地名も多くが現在のどこか不明。
だが、ヘルウェティー人、ベルガエ人、ゲルマーニー人、ブリタンニー人はなんとなくわかる気がする。たぶんそれぞれが今のスイス、ベルギー、ドイツ、イギリスの人々の祖先。

なにせ現在のヨーロッパができる以前。文明国ローマ以外は獣皮を着た野蛮人がほとんど。
この時代のブリテン島はローマ人にとって未知。どのぐらいの大きさなのか?人々の風習は?なにもわかっていない。

敵の民族は籠城戦をするのだが、ローマ軍が移動式小屋で地面を平にし、塔のようなものを組み立てて横にすーっと移動させるのを見て「ダメだ…敵には神がいる」と思って降伏したらしい。それぐらいローマと異民族の文明には差があったっぽい。あと、テラという投石器も登場。
カエサルは殺戮し女子供は奴隷にしていった人だが、殺すか殺さないかには原理原則があったっぽい。ある基準を満たして降伏したものは許してる。

読んでいて日本の軍記物ほどには面白くない。戦争に伴う悲哀ドラマのようなものはほとんどない。ただただ殺したとしか書いてない。

だが、ガリア側にもカエサルの好敵手とでもいうべき将がいたことも知った。アンビオリクスという人名を初めて聴いた。
ウェルキンゲトリクスとのアレシアの戦いの終章はこの本のクライマックス。

あと、ゲルマーニー人の風習の説明。「農耕に感心がない」などの他に
その生活は狩猟と武事にはげむことである。幼い頃から労働と困苦を求める。いちばん長く童貞を守っていたものが絶賛される。その童貞を守ることによって身長ものび体力や神経が強くなるものと思っている。二十歳前に女を知るのは恥としている。
これは現代日本でも再評価し広めたい価値観。
それから、この当時のガリアにいる動物について説明している箇所
鹿の姿をした牛がいて、その両耳の間の額の中央から一本の角が、我等に知られている角などより高く真っ直ぐに生えている。
という記述にはびっくりした。これってユニコーン? 本当にいたの?

あと、「大きさが象より劣り牛のような姿と色と形」をしたウリーという動物がいる。これはbos primigeniusとして知られる牛らしい。調べてみたら、17世紀に最後の1頭が死んで絶滅した動物らしい。この牛がかっこいい。ほぼミノタウロス。冷凍保存ができていれば現代の技術で蘇らせることもできたかもしれないのに。

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