2020年6月5日金曜日

エラリー・クイーン「十日間の不思議」(1948)

エラリー・クイーン「十日間の不思議」(1948)を青田勝訳1976年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。
自分が読んだ版は1994年のちょっと古いもの。すごく活字が小さい。もうEQを読んでもどうせ面白くないだろうと何も期待せず、暇つぶしのために読む。
TEN DAY'S WONDER by Ellery Queen 1948
相変わらずEQの文体が超絶分かりづらいw 開始数ページ読んだだけで憂鬱。「十日間の不思議」には、2020年の今になってもまだ新訳がないようだ。

エラリーは旧友ハワードくんと再会する。この友人がときどき記憶を失う。気がつくと顔がボコボコで血だらけのシャツを着ていたりする。その間に何をしたのかわからないという記憶障害?

旧友の自宅に招待される。なんとこの友人の家がライツヴィル。「タイプライターを用意するから締め切り原稿はうちの離れで書きなよ」
エラリーくんは懐かしいライツヴィルを再訪。駅には美人のハワードの義理の母サリーが迎えにきていた。エラリー、ちょっと恋してしまう。

「災厄の町」「フォックス家の殺人」の後、「九尾の猫」の間に位置するのがこの「十日間の不思議」。何も変わらないライツヴィルの街だが、美術館建設の話が持ち上がっていたりする。ハワードくんは彫刻家。お父さんディードリッチが美術館のパトロン。

エラリーはハワードとサリーと3人でピクニック。そこで打ち明け話。ハワードはディードリッチの実子でなく捨て子。サリーも孤児。ふたりともディードリッチを尊敬しているのだが、ハワードとサリーは愛し合うようになってしまった。一夜の過ちも。

家に泥棒が入って宝石箱を盗まれたのだが、二重底にハワードからの恋文を隠していた。そして何ものから金銭を要求する恐喝。
金庫から25,000ドル盗まれるのだが、ディードリッチは犯人がサリーかハワードしかいないことを知っている。そのことをエラリーくんに相談。仕事をしにきたのに家族トラブルに巻き込まれ困惑。

エラリーくんはハワードのサリーへの愛情が、ハワード自身にとっての英雄であるディードリッチを奪われた憎悪からくる、偽の感情であることを深層心理を分析して解釈。え、エラリーくんってそんな人だったっけ?

恐喝者に払わないといけない金を金庫から盗み、ダイヤのネックレスもエラリーに頼んで質入れしたあと盗難にあったことにするハワードとサリー。
警察が介入。質屋を連れてきてエラリーを「こいつだ!」と指さす事態になってもダンマリ。ウンザリエラリーが喋るとハワードは逆ギレw もうこんな家は去るしかない。

だが、エラリーは途中で何かに気づく。ディードリッチの命が危ない!

全体の4分の3を読んだところで第1部「九日間の不思議」におけるエラリーくんの真相開陳披露。これが「ええぇぇぇ…」という犯罪の正体と動機。これは画期的新機軸!「九尾の猫」並みに驚くことができた。エラリーすごい!w

第2部「十日目の不思議」。ライツヴィルの事件を解決したエラリーは全米どころか世界に名をとどろかす。だが、ハワードの両親の調査をディードリッチの依頼で調査したという探偵に問い合わせたところ「え、そんな調査してないけど?」「ディードリッチに会ったこともないけど」?!

さらに裏の真実があるに違いない。まだ残り4分の1あるのでこの展開は予想がついた。
エラリーくんの説明がくどくど長い。読むのに時間がかかった。もっとテンポよく簡潔に爽快さがあったらもっと好き。

エラリーくんはこの事件で深い心の傷を負う。もう事件と関わらないことを誓う。

これは従来のイメージの探偵推理小説じゃなかった。心理サスペンス劇。EQにはこんな作風もあったのか。これは十分にオススメできる。新訳が待たれる。
ちなみにこの版の巻末解説は鮎川哲也氏。この作品におけるEQのアンフェアな1箇所を指摘している。

調べてみたら、この作品はミシェル・ピッコリ、アンソニー・パーキンス、オーソン・ウェルズというキャストで1971年に映画化もされたということを知った。

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