2020年6月26日金曜日

ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男(2017)

2018年に日本でも公開された「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」という映画があるのでお勉強ついでに見てみる。監督はジョー・ライト。
原題は「DARKEST HOUR」。配給会社は日本人にわかりやすい邦題にしないといけない。

1940年、ドイツに対し妥協の宥和を重ねたチェンバレン首相が、いよいよオランダ・ベルギーにドイツ軍が侵攻するという時期に退陣。そして3党連立挙国一致内閣の首班にチャーチルが選出されるというシーンで始まる。
英国議会は紛糾する様子が芝居がかって見える。たぶん抗議の意思を示すときの伝統マナー?

チャーチル首相はゲイリー・オールドマン。「JFK」でのオズワルド役とはかなりの変貌。見た目がかなりヨボヨボ。もうそんなお爺さんなの?
新人タイピストも泣かす偏屈オヤジ。ぜったいに一緒に仕事をしたくない変わり者頑固じじい。
タイピストのミス・レイトン役のリリー・ジェームズが清楚で可憐で凛としてて意志が強そうで可愛くとても良い。とても目立ってる。

組閣ノ大命下ルというシーンで対面するジョージ6世とチャーチルのギクシャクぐあいが初めて見るシーンでよくわからなかった。国王は吃音でうまく喋れなかった人らしいけど、チャーチルは国王からこれほどまでに信頼されてなかったのか?

海軍大臣だったチャーチルは第一次大戦中のガリポリの戦いで2万人以上の戦死者を出した。ジョージ国王が冷たい。後任首相としては意外な人選。
アトリーやイーデンといった後の宰相たちも登場。ライバルたちもみんなイートン校からのエリートで貴族の子弟たち。

日本人にとってチャーチルは敵国の指導者。歴史の教科書の最後のほうに出てくる人。後にノーベル文学賞を受賞しているので、言葉を闘わせる政治家として適任だったのかもしれない。
だが、最初の演説では議会が冷たくしらけ切った感じ。チャーチルは最初から支持されてたわけではなかった。そして戦況は不利。

英国首相ほどの人物であればフランス語ができて普通かと思ってた。チャーチルのフランス語がまったくフランス首相に通じてない?!フランス首相があきれ顔で英語で話すシーンも意外。初めて見る。チャーチルは現状の認識すらもできてなくてフランス側閣僚たちを呆れさせる…。

チャーチルには悪い評判ばかり。言葉だけで内容が伴わない。酒飲んでばっかり。ラジオ演説をやっても「うそつくな!」と国王からお叱りの電話。これは落ち込む。かわいそうなお爺さん…。
孤立した部隊を救出もできない。英国軍の絶体絶命な窮地に絶句。陽気にふるまっていても焦燥。「勝利のみだ!」4000人の若者を死に追いやる無謀な作戦にこだわる。

もうヒトラーに降伏するしかない状況まで追い込まれる。閣僚たちも将軍たちも降伏やむなしという結論になりかける。絶望…。
ハリファックス卿、チェンバレンと3人だけで腹を割った話し合い。「日本の一番長い日」「ヒトラー最後の12日間」と同じような風景。
チェンバレンやハリファックス卿みたいな対独宥和外交は、中国とかなら漢奸と呼ばれ死刑にされる祖国の裏切り者。ペタンみたいな運命をたどるに違いない。事実戦後は政界引退。

窮地のチャーチルはトイレの電話でアメリカ大統領に「戦艦を譲って!」とお願いするも、「中立法があるからねえ」と軽~く断られるw 「動力を使わずに戦闘機を馬でカナダに運べば法律上問題ないんだが」とか舐め切った提案をするルーズベルトも冷たい。戦後英国の没落と米国の独り勝ちの構図はここから。

国王との会食で「よく昼間からそんなに酒飲めるね」と嫌味を言われ、君は怖く見えるよと説教。王室一家でカナダに亡命する計画までも明かされる。英国はそこまで追い詰められてたのか。独ソ戦が始まるまだ1年以上も前。ドイツ軍の勢いがすごい。

ダンケルクの敗残兵たちを、もうなりふり構わず小さな船を集めてでも撤退させたい。カレーに取り残された英国兵を救出する手段がまったくない。チャーチルも英国も風前の灯火。

イタリアを仲介してのドイツとの和平への道が開かれたそのときにチャーチルは英国王の支持を取り付ける。市民の支持もある。議員たちの支持もある。そして議会演説。絶望の雰囲気を一変させる。

英国史の1場面を描く愛国心の人間ドラマ。きっと英国人には胸アツ映画。あのままチャーチルが押し切られてたら、ヨーロッパも世界も日本もその後の姿が変わってただろうと思う。
そして今、世界は東アジアの狂った国家社会主義独裁国にじわじわと侵略されようとしている。

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