2020年6月13日土曜日

吉岡里帆「見えない目撃者」(2019)

吉岡里帆主演「見えない目撃者」(2019)を見る。韓国映画「ブラインド」の日本版リメイク作らしい。監督は森淳一。ROBOT製作で配給は東映。R15+作品。

自分は何も予備知識がない。たぶん、女子高生連続猟奇殺人の犯人と、事件の目撃者となってしまった目の見えない元警察官ヒロインの息が詰まるようなサスペンススリラー。
このビジュアルの吉岡がとても魅力的。モデルみたいにスタイルがよくないことも逆にリアルで良い。

冒頭から暗い色合い。警察学校での射撃訓練とランニング。「羊たちの沈黙」のクラリスっぽい。吉岡が凛々しい。
いよいよ交番勤務という直前に、できの悪い弟が原因のちょっとした不注意で交通事故。弟を亡くし視力も失う。
3年後、盲導犬を連れテープ起しを仕事としてる。もう人生を棄て廃人のように生きている。
夜の街を歩いていて目が見えないながら異常な車を感覚で「目撃」。この感覚を脳内に視覚的に像を描く映像で見せてくれるのだが、これが「ああ、わかる」っていうぴったりな感じ。

ラジオの音声に交じって後部座席に救助を求める若い女性の声。スケボーの音。
吉岡は刑事に話す。「聴き間違いでは?」と突き放されるのだが、吉岡が頭脳明晰理路整然とテキパキハッキリ確信をもって話すので捜査せざるを得ないようだ。
てか逆に、ここまで強く主張しないと警察は動かないのか?これは一般人にはハードルが高い。

大倉孝二田口トモロヲ刑事は吉岡の証言通り現場で車と衝突しそうになったスケボー少年(高杉真宙)を探し出す。しかし、車に女性は乗っていなかったと断言。結果、刑事は吉岡が幻聴を聴いたと結論。捜査打ち切り。めんどくさいことはなるべくやらない公務員。

ヒロインは助けてあげられなかった弟のことで心に傷を持っている。たまたま通りがかった車の中から助けを求めた少女の救出に異常に執着する。

吉岡里帆はめちゃめちゃ正義感強く有能。感覚が鋭く物事を理解する能力が高く、論理的思考ができる探偵のよう。あきらかにくたびれた中年刑事たちより能力が高い。警察学校で相当に優秀だったはず。
高杉真宙くんは嫌々吉岡に協力し一緒に捜査。高杉も有能。吉岡が微かに聴いた「レイサ」という名前だけから性風俗店で働いていたレイという少女がいたことを突き止める。
監禁されている少女とぬいぐるみ。やっぱり「羊たちの沈黙」のバッファロービルっぽい。

高杉は命をねらわれる。車にはねられる。高杉はひき逃げ車のナンバーを覚えていた。車の持ち主をたどるとクスリの大量摂取で死んでいた。さらに土嚢の中から女子高生4人の腐乱死体。鼻や耳、口、手が斬り落とされている。ここがグロシーン。サイコパス犯人の設定がすごすぎ。

ただ、この真犯人は早い段階から感じることができた。ぶっちゃけ自分はこいつが登場するファーストショットから「犯人かも」って思ったw
なんでそいつが怪しいと感じたら仲間の応援を要請しない?少人数で行くなよ。

この映画、見ていて嫌だなっていうムダなふざけたやりとり演出とか一切ない硬派で真面目な脚本と本気演出。何も期待してなかったので驚いた。
従来の日本映画だったら、定年間際に殺されてしまう刑事をベタベタにしつこく抒情的に描いてしまったはず。そこが徹底的にドライでよい。韓国映画リメイクだから?

スマホ時代の新しいブラインドサイコスリラー。吉岡を補助する高杉のバディ感もとても良い。犯人が強敵過ぎ。ハラハラする見せ場たくさん。すごくよくできてる。音楽の使い方も正しい。映画としてすべて正しい手を打っている。感心しかない。

だが、悪魔同然の犯人へのウィニングショットは、悶絶して血を吐いて苦しんだ末に絶命させてほしかった。
暗闇で勝負がつくのも「羊たちの沈黙」のクラリス捜査官だった。座頭市だった。
大傑作で大拍手。初めて女優としての吉岡里帆を強く印象付ける魅力的なスーパーヒロインだった。高杉くんにとっても重要な1本になったはずだ。強くオススメする。

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