2023年5月14日日曜日

中公新書1781「マグダラのマリア」(2005)

中公新書1781「マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女」岡田温司(2005)を読んだ。

実は自分は2006年の映画「ダヴィンチ・コード」を最近になって見るまで、それほどマグダラのマリアという人物について気にしたこともなかった。
ダン・ブラウンによる創作物なのに、マグダラのマリアはキリストと結婚してて、その血筋はメロヴィング朝に受けつがれ、テンプル騎士団、シオン修道会、ダ・ヴィンチ、フリーメーソン、という映画の内容に唖然とした。

で、この本を手に取ったわけだが、この本はそちらの筋から興味を持った人にはまったく響かない。マグダラのマリアのイメージがどのように変遷し受容され、ルネサンス以降の画家たちに描かれたか?がテーマの本だった。宗教史の本ではなく美術史の本だった。

この本を読んだところでマグダラのマリアの正体がわかったりはしない。
だが、西洋絵画史にも多少の関心がある自分には、「改悛のマグダラ」とか「シモン家のキリスト」「我に触るな」、キリストの磔刑、十字架降下、埋葬、復活、昇天、香油、髑髏などのモチーフについての知識はなんとなく得た。

今後、ジョット、カラヴァッジョ、クリヴェッリ、レーニ、ティツィアーノ、ボッティチェッリ、ジェンティレスキの絵画を見るときはそれを意識して見ようか。

2023年5月13日土曜日

西野七瀬「パワハラ部長」(2018)

「ジコチューで行こう!」といっしょに「帰り道は遠回りしたくなる」の初回盤をHOでゲット。こちらも55円。
やはり特典映像Disc目当てで連れ帰る。前作「ジコチュー」とのインターバルは3か月なのだが、この間に特典DiscがDVDからBlu-rayへとメディアがグレードアップ。

ジャケットに生田、山下、与田、梅澤。調べてみたらこれはType-C盤というやつらしい。
他の盤と違うところはTrack3が「告白の順番」という楽曲なところ。
曲名を聞いてもまったくイメージできない。これは秋元真夏、桜井玲香、中田花奈、若月佑美の4名によるユニット「女子高カルテット」のための楽曲。
Disc2にはMVを収録。これは今までまったく見たことなかった。若月が記憶喪失になるくだりが、ほぼC級ゾンビ映画みたい。ビデオ撮影してて唐突な事故。呆然と撮影を続けながら戸惑う。

そして大園、優里、桜井、佐藤、新内、西野、堀の個人PVを収録。

個人的に「ブレードランナー」パロディの佐藤楓のものが面白かった。佐藤が人間社会に紛れ込むレプリカントを狩る刑事なのだが、なぜか広島弁。佐藤は愛知出身なのになぜ?しかもローテンション。(残念ながらこの企画では佐藤がブスに見える)
方言を喋らせることにより、佐藤の酷い演技を目立たなくさせる効果が期待できるからかもしれない。
佐藤は乃木坂加入から今日に至るまで、発声方法がおかしい。今も何か喋れば棒読みロボット。これは早く何とかしなければいけない。乃木坂メンは演技に道を見出せなければ卒業後に続く道がなくなる…。
今回これを手に入れてよかったと思える最大の収穫は西野七瀬個人PV。これは開始数分のみYOUTUBEの乃木坂公式で見たことがある。
フルサイズを初めて見た。こんなことになっていたのか?!と驚きを禁じ得なかった。

西野七瀬がブラック企業のパワハラ部長として、他の部署から移動してきた濱津隆之にパワハラしまくるという再現ドラマ企画。一見して酷いパワハラを西野が悪びれる様子もなく、困り顔の濱津に繰り返す。あらゆるパワハラパターンを繰り返す。

西野がずっと怒ってる。濱津が何か言うたびに「あ”ぁっ?」と凄む。こんなの誰だって泣く。人によってはトラウマから発作が起こるかもしれない。
だが、すべて「パワハラ、ダメ!ゼッタイ!」で締めれば大丈夫w
濱津の演技に感心する。濱津といえば「カメラを止めるな!」(2017)でブレイクなのだが、これはその1年後の仕事。このPVを見た人は誰もが「カメ止め」の人だ!と思ったに違いない。

見ていて濱津さんがとにかく気の毒になる。涙目になって小刻みに震える。それぐらいに酷いパワハラ。
こんなベタに酷いパワハラはもう社会に存在していないと信じたい。教育の現場、社会の現場でこんなことがいつまでも許されるべきではなかった。社会はすこしずつ良くなってる。そう信じたい。
そして、このPVを見た人は誰もが西野七瀬という女優がレベチに演技が上手い!と驚嘆する。不快なパワハラ上司をフルスロットルで演じてる。その表情、声音イントネーション、完璧すぎる。
しかも、細身で華奢な西野の体型に、白いスーツが神レベルでぴったりしっくり似合ってる。その美しさに震える。

もしかすると、1年後の「あなたの番です」(2019)プロデューサーはこのPVを見たかもしれない。秋元レコメンドがあったにせよ、この演技力がなければ制作サイドを納得させられなかったに違いない。
こんな素晴らしい映像作品が乃木坂CDを買った人しか見れないのはとても惜しい。
しかし、この若手女優プロモーション映像が映像制作現場の偉い人たちの目に届いていたとするなら、それはそれで成功だったのかもしれない。

ラストのスタッフロールでメイキング映像。西野七瀬がこんな圧の強い人でないことが示される。演出監督からの指示に「え~、できるかなぁ?うふふっ♥」悶絶するほどかわいい。

「シン・仮面ライダー」で西野七瀬という女優の魅力に気づいた人は、この特典映像ディスクが付いたCDを必ず入手するべき。西野七瀬に心を完全に支配される。忠誠を誓う以外に選択肢がなくなる。

2023年5月12日金曜日

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲(2002)

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲(2002)という本が角川文庫(2012)にあるので読む。横溝正史生誕100年を記念した、9人の作家による金田一耕助アンソロジー本。

自分はあまりこの手の本、いろんな作家による本というやつをあまり読んだことがない。これはBO110円選書に出かけてたまたま目についたので連れ帰った。わりとキレイな文庫初版。

赤川次郎、有栖川有栖、小川勝己、北森鴻、京極夏彦、栗本薫、柴田よしき、菅浩江、服部まゆみ、この9人による金田一短編。
栗本薫とかもうだいぶ昔に故人になったという印象。10年前の本だとそうなるか。
では収録順に読んでいく。

京極夏彦「無題」
夏の暑さと鬱病で出版社の帰りに道端でうずくまっていると、心配した初老の紳士から話しかけられて…という短編。
この紳士ってももしや…と思ってたら、その通りだった。京極夏彦作品に出てくる関口くんと、横溝正史せんせいがしそうな探偵小説をめぐる会話。

有栖川有栖「キンダイチ先生の推理」
推理小説大好き少年の金田耕一くんと、同じ町内の安アパートに住むあまり売れない30代半ばの推理作家錦田一せんせい。同じ町内で起こった男性歌手が自宅で撲殺された事件を話し合う。
金田少年が被害者を事前に電話ボックスで目撃。そのことと先生が岡山真備町の横溝正史疎開先を取材してきた耕助石との絡め方が面白い。

小川勝己「愛の遠近法的倒錯」
この作家を読むのは初めてなのだが驚いた。読んでる最中はほぼ横溝正史のまだ読んだことのない短編を読んでる感覚だった。たぶん近未来にAIに「横溝正史風な作品を」と依頼したらこんな短編ができてくるんじゃないかという短編。横溝正史短編集に混じっていても他の作家の作品だとはまるで気づかないかもしれない。
昭和初期、岡山の村で二大勢力の旧家同士の反目。そして戦争という悲劇。連続殺人。書簡による犯人からの告白。

北村鴻「ナマ猫邸事件」
東京上野にある「ナマ猫教」教祖宅兼教会で、教祖が首なし死体となって発見された事件。犯行当日の朝に新聞配達少年が教会前で「教祖様、おりんでございます。おりんが帰って参りました」と呟く老婆の姿を目撃していた!w
登場人物たちが横溝作品を愛するオタというメタ構造コメディータッチ。
首なし死体事件のひとつの新しいパターン。その動機に驚いた。

栗本薫「月光座 金田一耕助へのオマージュ」
これは「幽霊座」という作品を読んでない人は何がなんだかわからないかもしれない。読んだことのある自分もあまり細かいことは覚えておらず困惑した。あの事件から50年が経った現場に再び90歳近い金田一が現れて、しかも「鯉つかみ」が上演され、またしても失踪事件。そして栗本薫が創出した名探偵伊集院大介も登場。
これは正直、自分としてはあんまり評価できなかった。

柴田よしき「鳥辺野の午後」
新緑の京都、白いシャツにジーンズ姿の殺人専門の私立探偵だという50代の男性が石段に座ってる。「犯人を教えてもらいたい事件がある」と作家の女性が自身の過去を語り始める。
大学時代からいっしょの女ふたりの相克。決闘、そして死。金田一さんの人間観察と洞察力。なかなか味わいのある佳作短編。

菅浩江「雪花 散り花」
廃屋のような京町家で探偵事務所を開業した韓国からの留学生金さん、パソコンでつながってる田さん、そして一(にのまえ)に持ち込まれた最初の事件。祇園のクラブに勤める女からの相談。漬物屋の大店の会長がマンションを買ってくれると約束したのに頭金を持って来るはずが来ないまま自殺?
これもあんまり自分には合ってない作風だった。

服部まゆみ「松竹梅」
風邪を引いた金田一さんは住まいから徒歩5分の荏原病院へ。ここの入り婿院長(30代)が愛人作ってもめてる?
チケットをもらった金田一さんは等々力元警部と新橋演舞場へ。観劇中に起こった殺人。
これもほぼそのまま横溝正史作短編として掲載してもわからないほど横溝な短編。横溝正史は芝居とか歌舞伎とか好きだけど、自分はまったく慣れ親しんでない世界でイメージがつかめず多少は読みにくさを感じた。

赤川次郎「闇夜にカラスが散歩する」
夜汽車に乗ってた青年が巻き込まれたクライムサスペンス。「俺は金田一耕助の息子だ」という人物が2人も登場。登場人物全員が正体不明。白黒時代のヒッチコック映画のような展開。

自分が好きだったのは有栖川有栖と小川勝己の2作。次点は柴田よしき。

2023年5月11日木曜日

吉岡秀隆「犬神家の一族」(2023)

NHKによる野心的な金田一耕助リブートシリーズ最新作「犬神家の一族」が 4/22、29日(土)夜9時から、2週連続でBSP BS4Kで放送。注目度が高く、多くの人が視聴したものとみられる。(はやく地上波でやれ)

だが正直、自分は「犬神家?!またぁ?」ってテンション下がった。市川崑による最初の映画(1976)でもう犬神家は完成形。最近も加藤シゲアキ版が作られたばかりじゃん。
期待できるとすれば小林靖子の脚本、吉田照幸の演出。何か新しい新機軸を見せてくれそう。今の時代に合ったものになりそう。2週に分けて計180分という試みも新しい。

だが、金田一さんがまた吉岡秀隆というのが自分としてはさらにテンション下げる。「悪魔が来りて笛を吹く」「八つ墓村」の2つを撮ったので、もう交代しては?と思った。

そもそも昭和20年代の金田一耕助は30代だったはず。吉岡のように白髪頭だと完全に初老。金田一さんもニューギニアからの復員兵。吉岡は三八式歩兵銃を構えながら密林の斜面を走れそうにない。
それに娯楽作品である以上、金田一さんは人懐っこい変な人なだけでなく、色気があってかっこよく感じさせてほしい。
横溝先生による原作イメージに近づけた結果かもしれないが、吉岡では子どもたちが金田一に憧れないのでは?
あと、今回のドラマキャストで一番賛否別れたのが野々宮珠世古川琴音(26)
古川琴音は売り出し中若手女優ではあるのだが、どちらかというと個性派女優の風貌。キャストが発表されたときは意外で驚いた。
「岸辺露伴」での押しかけファン役はとても素晴らしかった。もしかすると脚本家小林か演出家吉田の指名?
アラサー女優で絶世の美女役にふさわしい女優がいなかったのか?なぜガッキー、まさみ、北川景子あたりにお願いしなかったのか?堀田真由、西野七瀬じゃダメなのか。
一方で犬神小夜子菅野莉央(29)はすごくイメージぴったり。ヘアメークのせいもあるけど、雰囲気が頽廃とアプレゲールそのもの。100点。
「世界の中心で愛を叫ぶ」「仄暗い水野底から」では小学生だったのに今年は30歳になるのか。

そして、金田一さんが宿泊する旅館の女中が久間田琳加(22)。ニコラ、SEVENTEEN、non-noというメジャー誌のモデルから女優活動へ。最近ようやくテレビドラマで見かけるようになってきた。
戦後すぐの田舎女中にしてはあか抜けしすぎてる。スタイル良すぎる。イマドキのカワイ子ちゃんすぎる。
昭和20年代の田舎に薄手のニットがあったか?あんなに可愛らしくビビッドな色合いのちゃんちゃんこがあったのか?

あと、それ以外のキャストだが、もう誰も昭和20年代な感じがしない。子ども時代の栄養失調や厳しい環境を生き抜いた苦悩が現れたギスギスした表情をしていない。
その点で猿蔵の芹澤興人は良い。だが、こいつに珠世のボディーガードが務まるか?佐智や佐武に腕力で勝てるか?って思った。

犬神御殿のお座敷が清潔だがしょぼいと感じた。市川崑の煤で汚れた感じのする金色の襖は画的にすごかった。魔物が巣くってる感じがした。

「犬神家の一族」の実質主役は松子夫人(大竹しのぶ)と息子佐清(金子大地)。ドラマ化しようとすれば、まずこの二人からキャストを考えないといけない。
大竹の松子は、やけっぱち感とイライラした感じが良い。無表情で金田一さんと言葉で斬り合う感じは良い。事前に期待したものがそのまま出てくる感じ。
今回のドラマは後半に衝撃を受けた視聴者が多数。市川崑映画版しか見てなかった人には驚きの改変。小林靖子のオリジナル設定と事件その後が書き足されてる。
人によって賛否が分かれてる。自分としても「何してくれてんねん!」

市川崑におけるユーモアと笑い要素もほとんどない。視聴者はずっと緊張を強いられる。自分とすれば、役者たちが延々と独白セリフを続けるものは映画としては不要。ドラマにしても視聴者にそれほど集中力が続くものなのか?

これからは「コナン」や「ルパン」みたいな完全オリジナル脚本金田一もやってほしい。横溝オタ有識者たちが相談して、いくつかの短編を合わせて90分ドラマとか創作して、この伝統を守って行ってほしい。(地方の田舎を舞台にして、戦争の惨禍と、母と子の愛情をテーマにしたものにかぎる)

2023年5月10日水曜日

モーム「月と六ペンス」(1919)

モーム「月と六ペンス」(1919)を読む。昭和34年の中野好夫訳新潮文庫で読む。
自分、今までウィリアム・サマセット・モーム(William Somerset Maugham 1874-1965)がいつの時代の人でどこの国の人かも知らなかった。パリ生まれの英国人作家だった。

で、この「月と六ペンス」が有名作で代表作であろうと手に取った。たぶんこれよりも新しい訳もあるに違いないが、たまたま手に取ったのがこの版。
画家ポール・ゴーギャンの伝記に暗示を受けて、モームがチャールズ・ストリックランドという画家を創出、主人公にした小説。
これは発表されるや英米でベストセラーになったらしい。「月と六ペンス」の「月」とは人間を狂気へと導く芸術的創造の情熱、「六ペンス」はくだらない世俗的因習を意味してるらしい。

シティの株式仲買人ストリックランドは17年連れ添った妻子を突然棄ててパリへ出奔。若い作家の「僕」は夫人にお願いされパリのストリックランド氏を探し訪ねると、安ホテルでひとり暮らし。
話を聴きだすと、「妻はもう愛してない」「子どもはもう可愛くない」「画家になりたい」。

「妻子が乞食になってしまうのでは?」「今まで楽させた」、「それ、酷くね?」「まあそうだな」、「扶養する義務は?」「金はない。石を絞っても血はでない」、「恥ずかしくないの?」「恥ずかしくないねぇ」非難しても暖簾に腕押し。
開き直ってるのか?話にならない。こういうトラブルの間に入ってもいいことない。

いきなり画家になろうとしてもなれるものでもない。生活に困窮。病気で瀕死という状態を見かねた貧しく優しい三流オランダ人画家が、妻が猛反対するのに、自室アトリエで看病。

妻が看病して元気になった。だが、ストリックランドは住む場所を提供してくれたストルーヴを絵を描くのに邪魔だと追い出し、ストルーヴが愛する妻をも奪う。奪う?いや、この妻が勝手にストリックランドを好きになってしまい、勝手について出ていく。なにしてんの?

さらに、この妻が自殺。ストルーヴが憐れ。
で、ストリックランドは浮浪しタヒチへ。現地妻も持つ。子どももできる。
傲岸不遜、傍若無人、嫌われストリックランドだったのだが、タヒチの現地人と交じって生活すると、変わり者だけど「そういう人」として受け入れられ馴染む。
だが、ストリックランドに恐ろしい不治の病。

モームの文体がいかにも英米文学らしいのだが、意外に平易で読みやすい通俗的小説。自分は1日で読んでしまった。

この小説は有名なので読んでみたのだが、結論として、誰もが一度は読まないといけない名作だと感じた。
天才芸術家に社会の常識とか期待してもしょうがない。話し合おうにも話がかみあわない。人を人と思ってない。社会的に無能力で無責任。もしかしてゴーギャンもこんな感じの人?

死の間際に書き上げた壁画を目の当たりにした医者の感想
「それは人間として知ることを許されない、ある神聖な秘密を知ってしまった人間の作品であった。なにか原始的な、そして恐怖に充ちたものがあった。もはや人間のものではなかった。」
が、そのままゴーギャンの「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を見たときの感想のように感じた。

2023年5月9日火曜日

芳根京子、アナザースカイに登場

芳根京子(26)が4月7日放送の「アナザースカイ」に登場。母の故郷である北海道ニセコ小樽を旅した。たぶん日テレ新ドラマ「それってパクリじゃないですか?」番宣を兼ねて。

番組MCの中条あやみ(26)が注目の発言をした。一時期の芳根はオーディションで「すべてをもっていく」と言われていたらしい。芳根と中条は同じ年女優。きっと何度も同じオーディションで役を奪い合ったライバル。
すかさずそこで芳根「とと姉ちゃんは一次で落ちました」
しかし、翌年の「べっぴんさん」で大役をつかんだことを突っ込まれる。
芳根の母実家はニセコ(倶知安)にある。なのでニセコにはよく来ていた。祖父母が亡くなった後も墓参りに訪れているという。
ニセコの人は小樽まで出て買い物をするらしい?芳根も慣れた感じで小樽を散策。
ビールとザンギ。北海道は土地が広くて食べ物が安くて美味しくてうらやましい。
自分は北海道に何回か行ってるのだが小樽はまだない。ザンギとやらを食べたことがない。

芳根はスキーをほぼやったことがないという。母がスキーをそれほどしなかった。そういうのは親の影響がモロ反映するもの。
そして小樽市街を見下ろす展望台のある天狗山へ。なんと気温が氷点下16℃。中条が「フィンランドやん」とつっこむのを聞き逃さなかった。中条は真冬のフィンランドで映画撮影をしたことがある。よほど寒く過酷だったんだろう。
亡くなった祖父母の想い出の家は、現在は関西から移住した夫妻のものとなっている。そんな縁でその家族とは親しいつきあい。東京育ちの芳根京子にとってニセコは故郷のようなもの。
あとはトマト栽培農家のおばさんと交流。近所の知らなかったコーヒーショップを訪問。

祖父は「べっぴんさん」主演を報告した3日後に亡くなったそうだ。本放送を観れずに亡くなったとか、それは悲しい。涙ぐむ京子。
芳根が番組ロケに行った日は大寒波襲来中。そこに有るはずの羊蹄山の雄大な山容がまったく見えず。

あと、中条あやみを久しぶりに見た。もうすっかり美少女から美女になっていた。まるでセレブ妻のよう。IT企業経営者との熱愛はどうなった?
PS. 中条あやみは5月1日にかねてから噂されていたIT社長との結婚を発表した。このときの放送回で見てなんとなく感じてたことは、やっぱりその通りになった。

2023年5月8日月曜日

芳根京子「それってパクリじゃないですか?」(2023)

芳根京子の主演ドラマ「それってパクリじゃないですか?」が4月12日から日テレで始まってる。知的財産権に関するドラマってめずらしいな、タイトルがキャッチ―だな、と感じたので見てみる。原作文庫本があるようだ。
ドラマのヒロインは中堅飲料メーカー月夜野ドリンクの研究開発社員藤崎亜季(芳根京子)。新商品ボトルに関するデザインがライバル企業に盗まれた。漏らしたのはこいつでは?という社内冤罪をかけられる。
もうこのへんの困り顔、目が点顔ヒロインの表情は芳根京子の十八番顔。
月夜野ってもしや…と思った。やはり原作では群馬県月夜野町(現みなかみ市)の月夜野だった。(ドラマは千葉ロケがメインらしい)

それは同窓会で再会したライバル企業社員とふたりきりで会っていたという理由で疑いをかけられる。自分は絶対にそんな話を漏らしてないし、メモを盗まれるなどもない。なのに同僚からも上司からも取締役からも白い目で見られ、犯人だと決めつけ。それは酷い。
親会社から知的財産権の管理業務を担当する弁理士北脇雅美(重岡大毅)が乗り込んでくる。こいつが無表情堅物ビジネスマシン。
月夜野ドリンク社内が商品開発情報の管理においてゆるい。え、こんな意識でやってんの?
(警視庁は能年玲奈主演で先端技術が外国のスパイに盗まれる事件を啓発するドラマを作った。食品メーカーはたぶんもっとゆるゆる。)
ヒロインが冤罪無実とかもはや問題ではない。このままでは新商品が発売できない。アイデアを盗まれたと証言させ、冒認出願に切り替えよう。という流れに。

盗んだ会社の社長田辺誠一が誠意のかけらもないナメ切った対応。
上司常盤貴子さんもヒロインを疑ってイライラしてるようで頼りにならなそうにも見えたのだが、そこは経験豊富な上司。相手としっかりやり合う。常盤さんは現在50歳だがほぼ美魔女。かなりわかく見える。
自分から情報を盗み出したかつての同級生が醜い。ずるい企業で働く奴は顔も醜いという描き方。
北脇は情で動かない。ヒロインに嘘の証言をさせようとする。そんなことしたら、もう会社にも居られないし、同業で転職もできないじゃん!そんな親会社の偉そうで威張った堅物マシン重岡にガツンと厭味。「酷い仕事ですね?」

だが、北脇は情報漏洩犯人捜し会議である点に気づく。情報が漏れたタイミングを絞る。そして、意外な人物が漏洩の元だったと判明。

そこはスカッとしたのだが、自分からすれば、ぜんぜんスカッとしていない。まず謝ろっか?無実の女子社員に冤罪をかけたことを謝ろっか?
ヒロインも「よかった~」と笑ってすむ話か。自分ならあの態度の悪い同僚に腹を斬らせるか指を詰めさせる。上司たち取締役たちにこれから永遠に毎月5万振り込ませる。
社長は辞任レベル。てか、即取締役会で社長を解任しろ。ヒロインを取締役にしろ。
今のところ「へえ」と驚嘆したり唸るような知識と情報はこのドラマから得られていない。中堅どころの清涼飲料メーカーの開発部には、それほど知財を盗まれる危機感がないのかもしれない。
情報通信機器関連企業で知財を扱う友人の話だと、しょうもないネタで恐喝してくるメールがアメリカのゴロツキ会社からよく来るんだそうだ。
かつて日本のカメラ産業はアメリカ企業のオートフォーカス技術特許に多額の特許料を支払う羽目になった。
今後はもっとハードでシリアスなネタもあるかどうか期待。
日本において知財を盗まれるというと、東アジアの某国を思い浮かべる人が多い。今後、そういった国際的な訴訟とかも扱うかどうか見ていきたい。
それでいてドラマのタイトル。「パクリ」ってテレビ放送で使っていい表現なんだって知った。
あと、朝倉あきさんを久しぶりに見た。調べてみたらもう31歳になっていた。まだまだかわいい。

第2話もまるでのどかなファンタジーの国のような登場人物。悪気なくパクリ商品を販売する中小企業社長でんでんとその息子袴田吉彦がいい年して常識がなさすぎる。まるでこちらが言いがかりをつけてるみたい。まるで中国のような知財意識。
芳根京子は渡邉理佐系の顔。もっと人気になっていいはず。

2023年5月7日日曜日

アーサー・C・クラーク「楽園の泉」(1979)

アーサー・C・クラーク「楽園の泉」(1979)を1987年の山高昭訳ハヤカワSF文庫版で読む。表紙にヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞!の文字が書かれてる。
THE FOUNTAINS OF PARADISE by Arthur C. Clarke 1979
この本、ずっと読もうと思ってた。なかなか実物を見つけられなかった。実は以前この本を持っていたのに一度も読まずに処分してしまっていた。やっと読む。

この小説は「宇宙エレベーター」を扱った小説。静止衛星から地上へケーブルワイヤをたらせば、ロケットを使わなくとも宇宙へ行ける。位置エネルギーを蓄えることで上昇にかかるエネルギーに使えるという効率的な「宇宙エレベーター」を扱った小説は1979年ごろいくつか書かれて、今現在の日本SFにも影響を与えてるらしいのだが、自分は一度も見たことがないし、小説でも他に見かけたこともない。

タプロバニーのカーリダーサ王は父王を殺して王位についた。ヤッカガラの巨大な岩山の上の要塞のような宮廷、人口湖、灌漑用水、王国の富をそそいだ噴水、庭園、天井壁画、ライオンの爪。そして円錐形の霊山スリカンダがそこにある。調和のとれた世界。
だが、弟のマルガーラが外国勢力と結託して王位の機をうかがっている…。

2年ぐらい前にTBSの世界遺産番組で、スリランカのシーギリヤを放送してたのを見たことを思い出した。あそこは行ってみたい。このSF小説を「宇宙エレベーター」小説だと思って読み始めて、「あれだ!」と気づいた。

庭園の屋敷にいるラジャシンハ大使を地球建設公社技術部長ヴァニーヴァー・モーガンが訪問。古代から現代(未来だが)に舞台が飛んだ。
この人が宇宙エレベーター建設に関する技術的問題と用地取得(寺院との話し合い)などすべて担当?
正直、自分のイメージできる限度を超えたw スターホルム人?アルファ・ケンタウリの彼方から観測船のようなものが太陽系に飛んでくる箇所は、「宇宙のランデブー」を連想。

そして予期せぬ事故。どうにか救援しないといけない!という状況は「渇きの海」や「アポロ13」を連想。
想像しうるありとあらゆる事故に備えて、あらゆる設備や備品を用意しないといけない。惜しんではいけないと思った。

自分の想像力ではそれほどの高度がイメージできなかった。スパイダーがどんな形状をしてるのかもイメージできなかった。

高校時代から気になっていた本をようやく読み通すことができたという満足感。

2023年5月6日土曜日

乃木坂46「空扉」(2018)

4月の初めに友人とクルマで花見に出かけた先にハードオフを見つけて、よせばいいのに、ついふらふらと立ち寄って、ジャンクCDの入ってる青箱を物色してしまった。55~110円なら買ってもいいかと思えるものを5枚連れ帰った。

その中に乃木坂46の2018年8月8日リリース21枚目シングル「ジコチューで行こう!」のDVDつき初回盤があった。ジャケットには生田、大園、与田の3人。
たぶんもうよほどの猛者オタしか全シングルを把握してないものと思われる。2018年のシングルなんてつい最近に出たという感覚。聴きこんでもいないので何が何だかわからない。
DISC2のラインナップを見て、たぶん自分のもってないやつだと感じて連れ帰った。55円だし。これを友人と酒飲みながら一緒に見よう。

DISC1には表題シングルの他にTrack2「空扉」、Track3「自分じゃない感じ」も収録。
どちらもまったく記憶にない楽曲なので、たぶん音源を持ってないと思ったのだが、家で調べてみたら「空扉」はすでに持っていた。たぶん全然聴いてない曲。

そして「自分じゃない感じ」は西野卒業コンサートライブビューイングで1回聴いただけの曲。山下センター三期生楽曲。知らなくて当然。
もう乃木坂楽曲は数が多すぎてぜんぜん把握してない。把握するためにこうして忘備録に記しておく。こうすれば間違ってダブって買わないで済む。
歌詞ブックレット内ポートレートは与田祐希がいちばん良いなと感じた。大人と少女が混在する天真爛漫美少女アイドルの王道を感じた。
与田さんは昨年末にジムトレーナーと密会してる様子が文春砲に遭い心配していたのだが、その後はほぼノーダメージの無風なようだ。人気に影響はないようだ。

そして「空扉」のMV。これがつくば市にある筑波宇宙センターで撮影された、わりとしっかりストーリーのあるMV。これは当時なんとなく一部だけ見た記憶はあるが、フルで見たのは今回が初めて。(2018年末にBSとCSの番組を録画してたHDDが逝ったのは影響と失ったものがデカかった)
梅澤美波が主演。この曲が梅澤センター曲だったとは知らなかった。

宇宙飛行士を目指す乃木坂メンバー…というていのMV。梅澤の姉が白石麻衣という設定。宇宙飛行士を目指し常に採点されるグループ。その中に飛び級で入ってきた天才が岩本蓮加。なんでも瞬時に暗算。
あとは講師秋元、実際に宇宙に行った生田、バカ特訓シーンの松村などなど、各メンバーにわりと均等に見せ場。
自分としてはいつも西野に目が行く。
これが1本の映画を見たような満足感。この線で1本ドラマをつくってほしかった。

このDVDには各メンバーのそれぞれの現場に密着した映像も収録。梅澤美波は少年チャンピオングラビア撮影現場に密着。
今では怖いイメージのつきつつある梅澤も、5年前はこんなにも可憐な美少女。肌の質感が今とは違うなと感じた。梅澤は指が長くて形が良いなとも感じた。
あと、白石麻衣&西野七瀬楽曲「心のモノローグ」MV撮影現場にも密着。これはアメリカ刑務所制服を着た白石と西野が殴り合いをするという設定のMV。監督はなんと英勉監督だ。
白石と西野が今までのMV撮影の想い出を語る。「気づいたらもう21枚目」「初めのころはいっぱい学校に行った」「制服着て廃校とか行ったことが多かった」「最近はぜんぜん学校行かなくなった」
その辺を笑いながら説明する西野がかわいい。このDVDを手に入れられてラッキーだった。

PS. なお、自分が手に入れたこの盤には佐々木琴子ナマ写真が入ったままだった。この盤を二束三文でHOに売った人は、琴子の写真は要らないってことか。

2023年5月5日金曜日

ヴェルヌ「十五少年漂流記」(1888)

まだ読んだことなかったジュール・ヴェルヌ「十五少年漂流記」(1888)波多野完治訳昭和26年新潮文庫で読む。
ほとんど読まれた跡のないわりとキレイな平成26年第99刷がそこに110円で売られていたので連れ帰った。

ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ(Jules Gabriel Verne、1828-1905)「Deux Ans de Vacances(二年間の休暇)」を発表したのが1888年。日本では明治21年。黒田清隆が第2代総理大臣に就任。イギリスでは切り裂きジャック事件が起こってたころ。

暗い海を漂う帆船…というシーンからスタート。
1860年2月の英国植民地ニュージーランドオークランドにあるチェアマン寄宿学校の児童たちが主人公。自分、今までこの小説がいつごろでどこが舞台なのかもしらなかった。
イギリス人、フランス人、ドイツ人、アメリカ人などすべて白人の子弟の100名あまりの学校は夏休み。14名の生徒が帆船スルギ号に乗って、2か月間のニュージーランド沿岸一周の旅に出発…の予定。

出港を待ちきれない子どもたち。夜のうちに乗船し寝てしまう。すると艫綱がほどけて気づいたら沖合3マイル。14名の子供(全員14歳以下)と水夫見習い黒人ボーイ1人、そして犬一匹を乗せて、船長や船員不在のまま出帆。

嵐の数日。そして陸地を発見。固い砂の上に座礁。
幸いなことにスルギ号には2か月分の食料、帆布、ロープ、大工道具、針や糸、マッチ、火打石、猟銃とピストル、弾薬、信号弾、衣服、布団と枕、温度計、気圧計、望遠鏡、英国国旗、筆記用具、図書などなど豊富。それなら数年はサバイバル生活が可能だろう。(吉村昭「漂流」の絶望さは最初からない)

植物が熱帯のものではない。ということは冬は寒くなりそうだ。
貝を拾って食べる。銃で野鳥を撃って食料にする。あざらしがいる。ペンギンもいる。ということは南極に近いのかも。
冬になれば海が荒れ船がもたない。最年長ドノバン少年は少年たちばかりでどうやって冬を越せばいいのか?ブリアンみたいに反抗的な子もいるなかで、どうやってみんなで仲良くやっていけるのか?

陸地が島なのか?大陸なのか?探検しないとわからない。探検で仲間同士の言い争い。しかし、湖水があることが判明。これで水には困らない。
そして人間が生活した跡を発見。そして、人骨も発見。

冬が来る前に船を解体し運ぶ。筏をつくって川を下る。洞窟で快適に暮らす。
少年たちは話し合いをするし規律がある。これが西洋の教育のおかげ。仕事を分担する。年下の子たちに教育も行う。

冬は雪が降り氷点下30度まで冷え込む。だがこの島は七面鳥のような鳥がいるしダチョウのような鳥もいる。ラマのような家畜になる動物もいる。
人間に脅威を与えるような大型の害獣もいないし、危険な毒虫もいない。人間が暮らすのにすごく理想的な島。

自分が今まで読んできた本とか映画だと、1人1人死んでいくような最悪な事態も頭をよぎるのだが、その点、この本は子どもが読むのに適した安心安全設計。せいぜいドノバンとブリアンのけんかぐらい。

しかし、終盤になって突然風雲急。島に殺人犯の悪党が上陸。少年たちと戦争さながらの展開。駆け引きと心理戦。大ピンチ。

今回初めて読んでみて、さすが読み継がれる名作だと感じた。戦争展開になって殺人を犯すようなやつはこちら側から殺してかまわないというところは19世紀らしいなと感じた。あと、大統領(リーダー)を選ぶ選挙において黒人少年には選挙権があたりまえのようにないのも19世紀らしい。

あとがきによれば、明治29年に森田思軒により英訳原本から日本語に訳されたものが日本で広く読まれていた。英米であまり評判にならなかった作品を、思軒がかなり自由に文章を書き直し、緊張感のある漢語調に改めた。最初から日本では「十五少年漂流記」というタイトルに訳された。これが日本の少年たちの心をとらえた。以後に国内で出た本はこの思軒訳をもとにしたもの。

戦中にはもう原本の見つからない翻訳だった。それは仏原本と英訳とでタイトルが違うことによる。
この波多野訳は戦後最初の新訳。波多野訳は1950年に渡米しワシントン議会図書館で英訳本と仏原本を見つけ出して両者を比較しながら翻訳された初の邦訳。ヴェルヌ文体という欠点を、話の筋を生かすことを第一に考えた訳。

2023年5月4日木曜日

宮崎あおい「眩(くらら)~北斎の娘~」(2017)

宮崎あおい葛飾北斎の娘・お栄を演じた「眩(くらら)~北斎の娘~」(2017年9月18日にNHK総合で放送)が4月7日にBSで再放送されたので録画しておいて見た。
原作は朝井まかて、脚本は大森美香。演出は加藤拓。

これは宮崎あおいの出産後初のドラマ出演作らしい。大英博物館で開催された北斎展を宮崎が訪れる場面からスタート。

北斎が長塚京三さんだ。「ひさしぶりに見たな」と思ってたら、これはもう6年前のもの。調べてみたら現在77歳。

江戸の天才絵師・葛飾北斎の娘・お栄(宮崎あおい)は出戻り娘。母(余貴美子)からガンガン小言を言われながら、父で師でもある北斎(長塚京三)の元で絵の手伝い、内弟子修行を始める。

この娘が半鐘が鳴るといち早く見物に出かける江戸っ子娘。火事は江戸の華。燃える街を見て火の色を観察。どうすればあんな色が?
お栄は北斎の元弟子善次郎・渓斎英泉(松田龍平)と心置きなく話す仲。(宮崎あおいと松田龍平はゼロ年代から日本映画界を支えたふたり)
北斎が蘭画に挑むのを機に、遊女の絵を描く。「色」と「影」の表現に悩み執着。
だが、その仕事にぜんぜん納得いかない。そして父北斎は脳卒中で倒れる。

お見舞いに来た滝沢馬琴(野田秀樹)がわりと嫌な奴。寝たきり北斎を叱咤罵倒。お栄「野郎…」だが、お見舞い品に柚子をくれる。卒中にはゆずが効く?
北斎は筆を握れるほど回復するのだが、唐突に母が亡くなる。看病疲れか。
意気消沈のお栄に善次郎はベロ(ベルリン藍)を使って初めて描いた絵を見せる。その色の深さに驚く。だが、善次郎の住んでるあたりで大火。英泉は行方不明。
版木を失った版元西村屋(西村まさ彦)との新たな仕事で生まれたのが富嶽三十六景神奈川沖浪裏。70過ぎて卒中で倒れて復帰してからの作品だったのか。

生死不明だった善次郎がふらっと数年ぶりにやってくる。根津で女郎屋始めてもう絵は描かない?!
そして善次郎の訃報。
親子二人共作で富士の絵を描く。北斎親子のアトリエ工房はこんなものだったのかもしれない。
北斎もこの世を去る。江戸時代にしては異常に長生き。もうちょっと生きれば肖像写真とかも残せたのに。

60歳を過ぎたお栄も「もっと絵が上手くなりたい」と泣く。
高精細画像でリアルに老いた宮崎あおいの表情のアップを映されると怖い。

世界を意識して作られたドラマなのだが、海外の人にはたぶんよく意味のわからない表現が多かった気がする。倒れた北斎の布団をまくって脛を見せるシーンとか。

2023年5月3日水曜日

泡坂妻夫「迷蝶の島」(1980)

泡坂妻夫「迷蝶の島」を読む。1980年に文藝春秋社から刊行、1987年に文春文庫化されていらい長く絶版で、2018年に河出文庫から復刻された。
自分が今回手に入れたものは2018年河出文庫版。110円でキレイな状態のものを見つけたので連れ帰った。

八丈島に向かう漁船が救難信号をキャッチ。波間を漂う救命ボートから30前後の女性を救助。衰弱しているものの命に別状はない。収容し海上保安庁のヘリに引き渡しほっと一安心。だが女性は出血していた…。

山菅達夫は東京の大学に通う経済学部2年生。家業の食品販売チェーンが成長し兄が家業を継いで不自由のない裕福な家庭。文学部志望だったのだが家族の反対で経済学部を選択。その代わりに自分のクルーザーヨットを買ってもらった。で、マリーナから出航。
だが洋上であわや衝突事故。目の前をかすめていったヨットには二人の女性。指のキレイさが忘れられない。

マリーナの街の書店で本を取ろうとしたら同じ本に伸びた手が洋上で見た手だった。二人の女性と再会。達夫は恋。
本にメッセージを挟んで渡したのだが、ここで名前の読みで些細な誤解と行き違い。指がキレイで可憐な大学生モモコ(大病院の令嬢)に伝えたつもりが、逞しい年増女の桃季子に渡ってしまった。

モモコ所有のクルーザーに呼び出されたひ弱文学青年は間違いだったと伝えられず、強引な桃季子に押し倒されて関係を持ってしまう。好きなのはモモコなのに。
で、この桃季子(離婚歴のある32歳)がストーカー化。実家に電話してきた。関係の継続を迫る。

だが男はモモコとイイ感じ。もともと初対面から相思相愛。すぐに結ばれ家族ぐるみの付き合い。一緒にハワイにも行った。
だが、桃季子はそんな男を許せない。妊娠したことで男を脅す。男はもう桃季子を周到な計画で殺す決意。モモコが服用してる睡眠薬をもらい受け、桃季子を八丈島へのクルージングへと誘う。

男が自分を殺害する気でいることを悟った女は、強く男を恨む。そして逆に殺してやると強く決意。洋上で男と女が対決。双方で心理バトル。

無人島にたどりついた男は生死をさ迷う。正気を保つためにノートに日記を書く。
その後、気象観測のために無人島に立ち寄った船が、島の松の木に逆さづりになって激しく腐乱し頭部が落ちた男性の遺体を発見する。歯並びや所持品から遺体の身元は大学生山菅達夫だと判明。

遺品ノートにそうなる直前までの告白が書き込まれていた。だが、ノート終盤になると事実関係と異なる矛盾する記述が出てくる。島に桃季子が現れ、体を交え、殺し殺されという展開。これは幻覚?
だがそのころ桃季子は遭難漂流し病院に収容されていた。生霊となって男を呪い殺したとでもいうのか?

男のノートと女の証言の矛盾。そして、桃季子も自室で睡眠薬を大量に摂取し死亡してるのを発見される…。

これ、読んでる途中も面白い。ラストの女の告白手記で真相が明かされると、「ぐげぇ…」とため息が出た。えぐい。
男と女の相克。大学2年生の20歳が女と出逢ってしまったことで起こった恐ろしい顛末。
トリック自体は「え、そんなこと?」って感じるかもだが、「太陽がいっぱい」のようなヨットクルーズサスペンス。
なぜこれがもっと有名になっていない?もっと広く読まれていい傑作。40年前の作品なのに色あせていない。強くオススメする。