2023年5月11日木曜日

吉岡秀隆「犬神家の一族」(2023)

NHKによる野心的な金田一耕助リブートシリーズ最新作「犬神家の一族」が 4/22、29日(土)夜9時から、2週連続でBSP BS4Kで放送。注目度が高く、多くの人が視聴したものとみられる。(はやく地上波でやれ)

だが正直、自分は「犬神家?!またぁ?」ってテンション下がった。市川崑による最初の映画(1976)でもう犬神家は完成形。最近も加藤シゲアキ版が作られたばかりじゃん。
期待できるとすれば小林靖子の脚本、吉田照幸の演出。何か新しい新機軸を見せてくれそう。今の時代に合ったものになりそう。2週に分けて計180分という試みも新しい。

だが、金田一さんがまた吉岡秀隆というのが自分としてはさらにテンション下げる。「悪魔が来りて笛を吹く」「八つ墓村」の2つを撮ったので、もう交代しては?と思った。

そもそも昭和20年代の金田一耕助は30代だったはず。吉岡のように白髪頭だと完全に初老。金田一さんもニューギニアからの復員兵。吉岡は三八式歩兵銃を構えながら密林の斜面を走れそうにない。
それに娯楽作品である以上、金田一さんは人懐っこい変な人なだけでなく、色気があってかっこよく感じさせてほしい。
横溝先生による原作イメージに近づけた結果かもしれないが、吉岡では子どもたちが金田一に憧れないのでは?
あと、今回のドラマキャストで一番賛否別れたのが野々宮珠世古川琴音(26)
古川琴音は売り出し中若手女優ではあるのだが、どちらかというと個性派女優の風貌。キャストが発表されたときは意外で驚いた。
「岸辺露伴」での押しかけファン役はとても素晴らしかった。もしかすると脚本家小林か演出家吉田の指名?
アラサー女優で絶世の美女役にふさわしい女優がいなかったのか?なぜガッキー、まさみ、北川景子あたりにお願いしなかったのか?堀田真由、西野七瀬じゃダメなのか。
一方で犬神小夜子菅野莉央(29)はすごくイメージぴったり。ヘアメークのせいもあるけど、雰囲気が頽廃とアプレゲールそのもの。100点。
「世界の中心で愛を叫ぶ」「仄暗い水野底から」では小学生だったのに今年は30歳になるのか。

そして、金田一さんが宿泊する旅館の女中が久間田琳加(22)。ニコラ、SEVENTEEN、non-noというメジャー誌のモデルから女優活動へ。最近ようやくテレビドラマで見かけるようになってきた。
戦後すぐの田舎女中にしてはあか抜けしすぎてる。スタイル良すぎる。イマドキのカワイ子ちゃんすぎる。
昭和20年代の田舎に薄手のニットがあったか?あんなに可愛らしくビビッドな色合いのちゃんちゃんこがあったのか?

あと、それ以外のキャストだが、もう誰も昭和20年代な感じがしない。子ども時代の栄養失調や厳しい環境を生き抜いた苦悩が現れたギスギスした表情をしていない。
その点で猿蔵の芹澤興人は良い。だが、こいつに珠世のボディーガードが務まるか?佐智や佐武に腕力で勝てるか?って思った。

犬神御殿のお座敷が清潔だがしょぼいと感じた。市川崑の煤で汚れた感じのする金色の襖は画的にすごかった。魔物が巣くってる感じがした。

「犬神家の一族」の実質主役は松子夫人(大竹しのぶ)と息子佐清(金子大地)。ドラマ化しようとすれば、まずこの二人からキャストを考えないといけない。
大竹の松子は、やけっぱち感とイライラした感じが良い。無表情で金田一さんと言葉で斬り合う感じは良い。事前に期待したものがそのまま出てくる感じ。
今回のドラマは後半に衝撃を受けた視聴者が多数。市川崑映画版しか見てなかった人には驚きの改変。小林靖子のオリジナル設定と事件その後が書き足されてる。
人によって賛否が分かれてる。自分としても「何してくれてんねん!」

市川崑におけるユーモアと笑い要素もほとんどない。視聴者はずっと緊張を強いられる。自分とすれば、役者たちが延々と独白セリフを続けるものは映画としては不要。ドラマにしても視聴者にそれほど集中力が続くものなのか?

これからは「コナン」や「ルパン」みたいな完全オリジナル脚本金田一もやってほしい。横溝オタ有識者たちが相談して、いくつかの短編を合わせて90分ドラマとか創作して、この伝統を守って行ってほしい。(地方の田舎を舞台にして、戦争の惨禍と、母と子の愛情をテーマにしたものにかぎる)

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