2023年6月12日月曜日

沢木耕太郎「深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海」(1992)

沢木耕太郎「深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海」(1992)を読む。前作の「第二便」から6年も経ってようやく発表された「第三便」前半部分にあたるのがこの1995年新潮文庫版の第5巻。

第13章「使者として トルコ」
イスファハンからテヘランへ戻る。トルコ・エルズルム行きのバスについて調べようかとバス会社へ行ってみると「急げ!」と言われる。いやいや、今日乗るわけじゃないと説明。だが、次のバスが出るのは1週間後と知り、慌ててバスに飛び乗る。ここでもバス代を値切って価格交渉。もうそういうのいいだろ。5巻に達してもずっとバス代、ホテル代、飯代で値段交渉。読んでてしんどい。

トルコに入ると地元の人々が日本人に好奇心。さらに、テヘランで磯崎新夫人の宮脇愛子(彫刻家)から預かった手紙をアンカラ在住の女性に届けるというミッション。
イスタンブールは怪しげな日本語で話しかけてくる物売りが昔から多かったことを知った。

第14章「客人志願 ギリシャ」
国境の橋を徒歩で渡ってギリシャ側の国境事務所に着いたものの夜中でバスがない。そこに白人グループ7人で満員の車。係官からの無理なお願いで8人乗りで、ギリシャ第2の都市テサロニキまで進む。テサロニキで朝の通勤に向かう人の群れを、旅に出て以来初めて見る。

すぐにアテネへ。だんだんと物価が高くなっていく。もう値切りゲームはやらない。
アクロポリスの丘に登る。この街に死臭のようなものを感じる。何かが足りない。
旅の変化を感じる。旅の終え方を考え始める。
ペロポネソス半島をめぐり、ミケーネの遺跡を見て、パトラスからイタリア半島ブリンディジを目指す。このルートは今もユーレイルパスと同じルートだ。

第15章「絹と酒 地中海からの手紙」
アドリア海を渡るフェリー甲板で、免税店で買ったバランタインを瓶のまま飲んで酒盛り。

2023年6月11日日曜日

沢木耕太郎「深夜特急4 シルクロード」(1986)

引続き沢木耕太郎「深夜特急4 シルクロード」(1986)を読む。1995年新潮文庫版で読む。

第10章「峠を越える シルクロードⅠ」
体調も回復。パキスタン国境の街アムリトサルへ。ポーランド人学生と同じバス。共産圏にもヒッピーがいるのかよ。この学生がずっとインドの悪口。不潔さと物乞いと貧困を罵倒。

ラホールがインドの重苦しい湿った暑さと違ってカラッとして街に露店が並び人通りも多く活気がある。バスに同乗した現地人英語教師から「お荷物東パキスタン(バングラデシュ)が独立してくれてすっきり」「飢餓や洪水で苦しんでるのは自業自得」と聴かされる。

パキスタンのバスの運転がすさまじく荒い。まるでチキンレースを楽しんでるかのよう。
ペシャワールの映画館で見た映画がつまらない。途中で帰ろうとしたら警察官につかまれる。どうやら爆弾を置いて立ち去ろうとしたテロリストと間違われた?パキスタンでは映画を最後まで観ずに帰るやつはいないらしい。

ペシャワールからアフガニスタン・カブール行きのバスに乗り込む。ジャララバードで昼食休憩。チャイの飲み方が特殊。コップの3分の1砂糖が入ってる。そしてポット。粗い砂糖は少しずつ溶けるので思ったほど甘くない。

第11章「柘榴と葡萄 シルクロードⅡ」
アフガニスタンは国家による法治でなく部族の掟が支配する国。ソ連侵攻以前のカブールにもこれほど西側諸国(日本人を含む)から多くのヒッピーが来てたことに驚き。
カブールが標高が高くて寒い。長旅をしてると曜日の感覚がなくなるけど、もうすでに初冬になってる?!

部屋代を安くするためになぜか宿泊所の客引きをやらされる。長旅をしてるヒッピーたちの目はみんな疲れと頽廃。沢木も心も体も弱って他人が鬱陶しくなってる危険な兆候。宿で寝るしかなくなる。それがヒッピーというものか。3,4日のつもりが退屈なカブールに1週間、2週間とズルズル滞在。

第12章「ペルシャの嵐 シルクロードⅢ」
東京を出る時壮行会をしてくれた磯崎新夫妻がテヘランに滞在してると知って(カブール日本大使館メールボックス)急いで出発。これもギリギリなオンボロバスの旅。客から金を集めてガソリンを買ったり修理したり、国境で警察官が乗り込んできたり、道に迷ったり…。それでも愉快な旅かもしれない。

テヘランが旅始まって以来の大都市。丘の向こうに夜のテヘランの広大な街の明かりが見えてきたときは感動。
どのホテルに磯崎氏がいるのか?早く探さないと御馳走にありつけない!w 沢木は推理力をフルに発揮w

革命前のイランは洗練された都会。プラタナスの並木道、近代的なビル。路上にガラス張りの電話ボックス。どれもがここまでの旅では目にしなかった要素。街は余裕のある人々。
(なのに革命とイイ戦争で国はどん底。80年代多くのイラン人が日本へ。そうしてダルビッシュは生まれた。サエコはダルの子を孕んだ。社会の変化と経済情勢は国民を変える。岸田が今やってることは30年後の日本人に大きな影響を与えるに違いない。)

イスファハンで安宿を探してると電気屋のショーウィンドーのテレビでアリVSフォアマン(ザイール・キンシャサ)での世紀の一戦の中継?!
生活がかかってる古物商老人相手に、欲しい懐中時計をゲームしてるかのようにそこまで値切るな。

2023年6月10日土曜日

黒島結菜「徹子の部屋」に登場

黒島結菜(26)が突然5月23日放送の「徹子の部屋」に登場。これ、事前に情報をつかんでなくて慌てた。
またまた今回も衣装がユニークな感じ。トークに入る前に結菜はなぜかパンダのミニチュアを徹子さんにプレゼント。
自己紹介では名前の由来を説明。結が「ゆいまーる(助け合い)」で、菜が「母が中森明菜さんのファンだった」と説明。やっぱり「~菜」という名前はたいてい中森。80年代以前はなかった名前。

徹子さんとは初対面なのだが、昨年の紅白で「ちむどんどん」チームがゲストとして結菜はステージにいたので、審査員席にいた徹子さんは結菜を見ていた。
「ちむどんどん」について回想トーク。当初は「わたしにできるかな」と思っていたが、3回目だったし、良いチームだったし。

人前に出るのが苦手だったけど、母のススメでオーディションへ。中学生のときの素朴結菜写真がかわいい。沖縄といえばブルーシールアイス。
当初2年ほど飛行機で東京に通う芸能生活だった。「飛行機が好きだった」「東京にあこがれてたので楽しかった」「人の多さに驚いた」「ビルが高くて驚いた」「車のナンバープレートの種類の多さに感動してずっとクルマばかり見ていたw」
さらに幼少時についてトーク。「子どもの頃はやんちゃだった」「まっくろに日焼けしてた」「木登りが大好きだった」
沖縄で好きな言葉は「まくとぅそーけーなんくるないさー」(正しいことをしていれば大丈夫)
糸満の家族について。三姉妹の長女が結菜。妹は3歳下と5歳下。この姉妹写真は父が北海道に出張に行ったときに雪だるまの入れ物(発泡スチロール)に雪を入れて持ち帰ったもの。沖縄の子はそんなものでも喜べる。そのエピソードにほっこり感動。「東京で降ってる雪を見たときは感動しました」

家族とは仲良しで、「一緒に公園にピクニックに行く。」結菜「お父さんは51歳」徹子「お若いのね」
父はすごく応援してくれている。出てる作品をすごく見てくれてる。母はあまり見ていない。「つらいことがあったら帰っておいでと言ってくれる」
東京でつらかったことは?という質問。「十代のとき、休みがなく仕事が続いたとき大学が両立できずつらかった」

石垣島の祖父母が「朝ドラ」スタジオ見学に来た時、エキストラで共演した。パイナップル農家で体が丈夫。「収穫をいっしょに手伝ったりした」

結菜がトーク中すごく目玉を上に向けて考える。これは映像を思い浮かべながら話しているときの人間のしぐさ。こういうところも結菜は誠実。祖父母は結菜によればたぶん74歳。
徹子さんが「パイナップル大好き」というので「贈ります」と返答。
黒島結菜の憧れの女優は「高峰秀子さん」とのこと。どうして結菜の年代で高峰秀子を知っているのか?映画とエッセイで知っていたっぽい。
高峰秀子が登場した1983年放送回をOA. 興味深くVTRを見つめる結菜。この女優を自分は「二十四の瞳」の一場面とエッセイ本の表紙とかでしか知らなかった。すごく喋りがちゃきちゃきして早口。「自分をしっかり持った人間になりたい」

嫌いな食べ物がない。「家ではパスタばかり作ってる。アラビアータとかカルボナーラとか、冷蔵庫にあるもので作れる」

料理を作るようになった理由は、「20歳の時に保護犬を飼い始めて。家にいる時間が長くなったから。」犬の名前はコハダとシャディ。「コハダは自分で名前をつけた。シャディも保護権でもともと名前がついていた。」「コハダは赤ちゃんのときに家に来た。シャディは大人になってから来たのでトラウマを持っていた。」「今は一緒に寝るぐらい慣れてる」
どうして保護犬を?という質問に、「犬を飼いたいなとは思っていたが、犬種にこだわりがなかった」「勢いで見に行った」「コハダは家に着いたときからお腹だして寝てたw」「犬を褒めるときは全力で褒める」「シャディは6歳ぐらいだと聞いてた。病院に連れて行ったら13歳ぐらいかもしれないと言われ驚いた。」

一匹だけだとお留守番が可哀想だと思った結菜。「もう一匹いれば楽しいかな」と2匹飼うようになった。「2匹にしたら落ち着くようになった」

そして6年ぶりの舞台出演の告知。徹子「あーたみたいに若くても6年ぶりなんてあるの?」「前回は二十歳だったので」「岩松了さんのオリジナル作」

結菜から徹子へ質問。旅に行くならどこ?徹子「イタリアが良かった」結菜「イタリアに行ってみたい」
なんでパンダが好きなんですか?徹子「ぬいぐるみを持っていたきっかけで調べた」
番組の最後に今日の感想を沖縄の言葉でとムチャブリ徹子。「でーじたのしかったさー」 
もう死ぬほど可愛い。自分の命に残された時間は結菜を護るために使いたい。

2023年6月9日金曜日

沢木耕太郎「深夜特急3 インド・ネパール」(1986)

引続き沢木耕太郎「深夜特急3 インド・ネパール」(1986)を1995年新潮文庫版で読む。いよいよインドに突入。

第7章「神の子らの家 インドⅠ」
この第7章が本の半分以上を占めてて長い。
もともと東京-香港-バンコク-デリーという変更不可な航空券を持ってたのだが、インド航空の事務所で強引にカルカッタ行に変更させる。女性窓口事務は絶対ダメ!だったのだが、温和な中年インド人を説得。なんでもダメモトでやってみるもんだなあ。

深夜に空港に着く。さて泊るところどうしようか?と思ってたら、同じ境遇の日本人青年(初めて海外に出た医大生)に話しかけられる。
さらに、日本人青年に話しかけられる。この人がボランティアで何度もカルカッタに来ているらしい。バングラデシュ(独立間もない)を支援してる。遅延したので航空会社がホテルを用意してくれたので一緒に泊まらないか?別に1部屋に何人で泊ろうがこっちの勝手だ。このホテルがビビるくらい一流ホテル。

この現地語を話せる青年は胡散臭いと思ったけど、まったく普通にいい人。それはラッキー。
この日本人がボランティア活動してるのだが、2人をビールでも飲まないかと連れ出す。リキシャで移動。やせ衰えた男に健康な長身日本人3人を引かせるのもちょっと良心が痛む。こいつは本当にボランティアなのか。

だが、ちょっと寄りたい見てもらいたい場所として娼婦宿へ。店の主人が出して来た女が12,3歳にしか見えなくて嫌悪感が込みあがってくる…。
帰り路では乞食の老人に足首をつかまれる。これがインドの現実。社会福祉という概念がない。

行動を共にしてた医大生は、これもたまたま出会った日本人に旨い話を持ち掛けられる。(70年代から日本人の若者はたくさんインドに行ってたんだなあ。)
大量に買い込んだ民族楽器を日本に運ぶのに1人だと「商売用」とみなされるので、人手が必要。航空券代を半分出すからカトマンズ行かない?乗り気になった医大生と別れる。

インドで牛は神聖な動物で食べることがない。ミルクを出さず使い道のない雄牛は路上でやせ細って野良牛?!青草を求めてさ迷う。路上で物を売ってる人々も棒でたたいて追い払う。それは知らなかった。なんと悲しい風景。
日本で見かけるインド人がみな美しく感じられるのは、日本に来ているというまさにそのことによってだけでも明らかなように、彼らが上流の階級に属するため、かなり洗練されているからだろう。
そんなことを考えながら、歩いている人を眺めているうちに、奇妙なことに気がついた。皮膚の色が濃くなれば濃くなるほど、身なりがみすぼらしいものになっていくのだ。それは残酷なくらいはっきりしていた。皮膚の色と服装のよしあしとの間にはかなり深い相関関係があるようだった。
という着眼点も初めて目にするものだった。

あとは闇レートのドル・ルピー両替商との駆け引き。高額のドル紙幣のほうがレートがいい? あと、あまりに古いルピー紙幣は受け取ってもらえなくなるらしいので、慎重に見極めてはじく。ボロボロ紙幣はまるでババ抜きのようになっていくらしい。
自分、両替はちゃんと看板出してる街の両替商でしかやったことない。インドではとにかく外人はルピーとの交換を持ち掛けられるそうだ。さらに、偽学生証も偽造。こいつがあるとバスや美術館の料金が安くなるのでヒッピーには必須。まじか。

今もインドの庶民はなんとも言えないギリギリの生活かもしれないが、70年代はたぶんもっとひどい。とても信じられないことばかり書かれてる。ほぼ終戦直後の日本の子どもたちの生活水準。
自分、インドに関する知識はたかのてるこ氏の「ガンジス河でバタフライ」しかない。それ以上の情報量。「深夜特急」と「バタフライ」の間には30年の開きがあるのだが、インドの人々のカーストに関する意識はそれほど変わっていないように思える。

カルカッタに見切りをつけてなんとなく列車でブッダガヤへ。
限られた予算でロンドンを目指すとは言え、自分の感覚からするとリキシャとか物乞いとか車掌と数ルピーで争うな!って思う。
日本寺に無償で宿泊。さらに、不可触民の子どもを育てる支援の共同体。いろいろな人たちとの出会い。
インドはこれほどまでに課題と歪を抱えたまま世界最大人口国になってしまった。日本も他国を心配してる場合でない格差と貧困が今もあるけど。

第8章「雨が私を眠らせる カトマンズからの手紙」
国境の街からカトマンズまで雨とぬかるみで11時間もかかった…というような手紙形式。雨ばかりで体がダルい。インド以上に物価の安い(ドミトリーで1日60円?!チャイは1杯2円?!)カトマンズは西側からのヒッピー青年だらけ。ハシンのやりすぎで死んだ者もいる…。

第9章「死の臭い インドⅡ」
そして聖地ベナレス。死体を焼く煙、川を流れていく何かをついばむカラス。これがガンジス。

お金をごまかしておいてお金を受け取ってないと騒ぐ車夫。最悪。今なら要注意車夫として人相書きがSNSで旅行者の間で拡散するに違いない。今現在の世界におけるロシア人のよう。

日本の若者がぜんぜん海外とか行かなくなった理由は、こういった輩がいるという情報を知ったからかもしれない。日本は値段がちゃんと表示してあって、イチイチ値段交渉しなくてほんとによかった。釣銭ごまかすやつとか人生で3回ぐらいしか出会ってなくてよかった。

ひとり旅貧乏旅行で高熱を出して激しい頭痛とか大ピンチ。そんな朦朧とした状態でデリーへ。

2023年6月8日木曜日

沢木耕太郎「深夜特急2 マレー半島・シンガポール」(1986)

引続き沢木耕太郎「深夜特急2 マレー半島・シンガポール」(1986)を1995年新潮文庫版で読む。

第4章「メナムから マレー半島Ⅰ」
作者はガイドも地図も持たずにぷらぷらとバンコクの空港に到着。なんとなくバス停まで歩いてきてしまい両替もしてなくてタイ・バーツもない。いくら26歳のぼんやり青年にしても無計画すぎる。

親切な学生の好意でバンコクでなんとか安宿をみつけるのだが、入れ替わり立ち代わりボーイが「女買わないか?」と何度断ってもしつこく斡旋にくる。
なんとか他に安宿を見つけるのだが、バンコクには香港やマカオでの楽しさが見つけられず、結局ぜんぜん馴染めない。早々に滞在を切り上げ、国際列車でシンガポールを目指すことになる。

第5章「娼婦たちと野郎ども マレー半島Ⅱ」
混雑した列車で6時間とかつらい。座席に座ってたのに、後からやってきた強引なおばさんのせいで嫌な目にあう。座席も失う。(自分も昔ギリシャのローカル線、イタリア航路の港町パトラからアテネへの旅がこんな感じだったことを思い出した。余裕がない状況だと無神経でずうずうしいやつも現れる。)

深夜に到着した駅では寝泊まりする場所も見つからない。親切な地元の青年たちと日タイ親善。なんとか寝る場所を見つける。双方カタコトの英語でのコミュニケーション。ほぼ宇宙人とのやりとり。
なのに各地で色々な人からごはんを奢って貰えてる。よほど人から気に入られる風貌をしていたにちがいない。

親切な人とも出会うのだが、ケチな旅行をしてると金をかすめ取るずる賢い奴らとも出会う。たったの数バーツで日本人旅行者が現地人とやりあうな!とも思う。自分は遠い昔、暑い夏のイタリアで、500mlペットボトルの水を売りにきた黒人に何も考えず500円ぐらい払ってやったことがある。蚤の市で一切値切らず相手の言い値で買ったこともある。普段は50円とか節約するために一駅歩いたりするけど、人生で一度しか会わないやつと値段の交渉とかめんどくさいし。

ペナンでは主人がカタコト日本語を話す面白い安宿を見つける。滞在が伸びる。1階でビール飲みながら女と交渉して2階で寝るという娼婦宿。日本の学校はいつか海外に出る生徒のために、安い宿はそういう目的のためにあると教えるべき。この人はとにかく安い宿を探すので、そんな宿にばかり1人で泊ってる。

ペナンは当時から日本人が多い。で、現地人も日本の企業を批判する。かつての日本も今の中国のように、人件費が安いから東南アジアに工場を建てたけど現地に何も残さなかった。

複合民族都市クアラルンプールにも魅力を感じなかった沢木は、乗り合いタクシーでマラッカへ。子どもたちのサッカーを見たり、映画を見たり。もうすることがなくてシンガポールへ。
バス乗車券が売り切れなので、ちょっと高いけど乗り合いタクシーを利用。(日本も車持ってる失業者は乗り合いタクシーとかやればいいのに。各方面の行き先と値段を書いたマイクロバスとかロシアの駅周辺でよく見た。事故ったときは悲惨だけど。)

第6章「海の向こうに シンガポール」
ジョホールバルからヒッピーを嫌うシンガポールへ入国。沢木は髭剃りで髪も切っていた?
シンガポールにはそれほど安い宿がない。それでも1日8ドルの宿をみつける。日本の通信社特派員の家庭にお邪魔。近くの安いホテルを紹介されるけど15ドル。それでも食事を一緒にすれば安いというのでホテルを移動。しかし…、

香港はあれだけ刺激と興奮があったのに、シンガポールにはそれがまるでない。街にはどこにでもあるものばかりだし、しかもミニチュア。やっぱり早々に切り上げて、次はカルカッタに行こうと決意。
華僑って場所によって違うものらしい。現在の日本人も中国人を嫌うけど、台湾・香港の中国人とは仲良くやってる。改めて気づくものでもないけど。

沢木26歳は詩集を読むのが好き。唐代中期の李賀って、自分はまったく知らなかった。反戦詩で知られる金子光晴のこともほとんど知らなかった。
二葉亭四迷の墓がシンガポールにあることを知らなかった。

文庫版巻末には沢木耕太郎と高倉健との対談(平凡パンチ 1984年1月2・9日)を収録。
高倉健は東映時代にいちばん多い時で年に15本も映画を撮ってたってすごい。

あと、沢木耕太郎は大学を卒業して就職した丸の内に本社のある会社を1日で辞めてた。理由は雨だったからw それすごい。そういえば俳優の佐藤二朗もそんなこと言ってた。

2023年6月7日水曜日

沢木耕太郎「深夜特急1 香港・マカオ」(1986)

沢木耕太郎「深夜特急1 香港・マカオ」(1986)を読み始めた。たいへんに有名な本なのだが今回がついに初読。
以前から読もうと思ってた。おそらくこの本が日本の若者をインド放浪に駆り立て、猿岩石にロンドンヒッチハイクという地獄を体験させ、たかのてるこにガンジス川でバタフライさせたきっかけの本じゃないかと思ってた。

主人公は東京のアパートを整理。仕事すべてを投げ出して、1500ドルのトラベラーズチェックと400ドルの現金をつくり旅に出る。

第1章「朝の光」
プロローグ的にインド・ニューデリーの安宿の風景がまず衝撃的。英米仏独蘭といった外国人青年たちが1日1ドルの生活。もう観光するべきものは全て見てしまい、何もせず雑魚寝部屋で日がな一日ゴロゴロ。そんな若者たちの天井を見る目を見た沢木は「自分もいずれああなる」と気づいて、あわてて出発。

この時間までここに行かないといけないというような目的がある旅行者にとって、現地インド人たちはなんとも頼りない。三輪タクシーの運転手がガソリン入れる金もなければ故障した車を修理する金もない。そんな状況でバスターミナルを目指すとか普通は絶望。

第2章「黄金宮殿」
80年代の香港の様子が貴重だなと思ってた。おや?主人公の沢木は26歳だという。沢木耕太郎は1947年生まれ。ということは深夜特急の香港・マカオは1973年ごろ?そんな時代から日本の若者は海外を行く当てのない旅を?それすごい。
沢木耕太郎は旅から戻ってこの本を書き上げる(1992年)までに15年もかかったらしい。

それほど貧乏旅行をする必要もないのだが、主人公は路線バスでデリーからロンドンへ行くというテーマを持っていたらしい。
この時代は香港とインドの間には文革中国があり戦乱のインドシナがある。鎖国政策のビルマがある。ということはロンドンまで路線バスの旅をしようと思っても、香港からは現実的でない。というわけで東京からニューデリーへ航空券で渡ることになる。旅行代理店の女性の親切心?から香港、バンコクでのストップオーバーができることを知らされる。

香港で探し当てた安宿が連れ込み宿。1人でやってきた日本人青年に麻雀やってる現地人たちは「なんだこいつ」という目を向けることになる。

普通の日本人観光客が行くような場所には一切行かない。お金は今後のために極力節約。寝る場所と食べ物に気を使わない。目的もなくフェリーやバスで出かけてその辺にいた人と交流。中国語も英語もできないのになんとなく意思疎通してるということは、よほどコミュニケーション能力がある。

第3章「賽の踊り」
マカオまで足を延ばす。香港よりもホテル代が安くて驚く。マカオは当時から賭博の街に成り下がってる。
予想よりいいホテルに泊まれて気持ちが大きくなり、「大小」というサイコロ賭博に熱中。今までの人生でいかなる賭博ギャンブルにも興味関心を示さなかった著者が、怖いぐらいにギャンブラー化。負けを取り返そうとしてどんどん深みにはまるギャンブル短編小説みたいになっていく。

カジノのディーラーはカモ客から金を巻き上げるプロ。そのやり方は汚い。そいつを「推理」で見抜いたと思っても、やつらにはかなわない。
だが、若い女ディーラーがサイコロを動かすカシャーンという音の違いを沢木は見抜く。これのおかげで大負けをかなり取り返して安堵。これがなければ旅は香港で終わってたw

第1巻を読み終わって、紀行エッセイみたいなものを想像してたら、意外に短編小説っぽいなと思った。味わい深い。第2巻へとつづく。

2023年6月6日火曜日

Perfume がスペインの音楽フェスに出演

チームPerfumeが1年越しのリベンジでスペインの音楽フェス Primavera Sound 6月1日のバルセロナ DAY1 の2番目に大きなステージに登場。
なんと当日リアルタイムでライブ配信。日本中のパフュオタが朝5時台に起きてライブ配信を見守った。実際にPefumeのステージが始まったのは30分押しの6時35分ごろだった。

Perfumeの3人とスタッフ、そして欧州現地のPTAたちにとって1年待ちわびた歓喜。

おそらく、過去の海外公演の経験からつかんだ欧州人の好みに合わせたセットリスト。こいつがアゲアゲで攻めたもの。MCは事前に暗記習得した英語での煽り定型文のみ。45分間のプログラム。あ~ちゃんものっちも汗だく。
ちなみにセットリストは

ポリリズム
FLASH
Spending all my time
エレクトロ・ワールド
ポリゴンウェイヴ
ねぇ
FUSION
edge
PTA
FAKE IT
チョコレイトディスコ
これはPerfumeも見る側も体力を奪われる。だがそれはきっと爽快な疲労。なお、1週間後の6月8日マドリードにもPerfumeは登場。

そして、9年ぶりのロンドン公演「Perfume LIVE 2023 “CODE OF PERFUME”」が6月3日に開催。日本では各地劇場ライブビューイングも行われた。Perfumeファンも忙しい。
公演の成功と無事の帰国を願ってる。

Perfumeの3人はステージ本番の前に地元FMブースのインタビューにゲストとして登場。女性DJのふたりがよくPerfumeについて調べてよく知っていたことが印象的。スペイン語(カタルーニャ語?)なので3人と通訳さんの話す日本語しかわからないのだが。
ちなみにPRIMAVERA SOUND 2023 Barcelona DAY1 で、かしゆかが聴きたかったアーティストがNew Order 。
のっちがPLASMAからオススメする曲はポリゴンウェイヴ。

2023年6月5日月曜日

神楽坂淳「帰蝶さまがヤバい」 2(2021)

神楽坂淳「帰蝶さまがヤバい 2」(2021 講談社文庫)を読む。第1巻をきまぐれで読んだ勢いでそのまま2巻へ。

今川義元を斃した帰蝶の次のターゲットは兄斉藤義龍。しかし、あっけなく死亡。皐月「もしかして帰蝶様が殺したの?」

この本、基本的に帰蝶と皐月のお喋り、そこにたまに信長が加わる。信長はべつにぜんぜん癇気の酷い人じゃない。帰蝶と仲睦まじく天下布武について話し合い会話。

猪鍋や蝮鍋で家臣をもてなす。帰蝶の人を見る目と人物評が的確。前田又左衛門、木下藤吉郎らを適切に人材起用。
帰蝶はちょっと先は的確に見抜く。「こうなる」と思えばその通りになる。斎藤龍興、浅井・朝倉、六角、武田、三好、松永、足利義昭、すべてを冷徹に見抜いてる。

明智光秀と仲が良い。光秀が出てくると、急に帰蝶さまが脳内で川口春奈化。明智が長谷川博己化。

比叡山の焼き討ち虐殺も帰蝶の知略。「戦いで死んだら極楽に行くって教えてんだから殺されたって文句ないでしょ。極楽に送ってやってあげんだから功徳ってものよ」

お市、吉乃のことは嫌い。「あー、お市殺したいw」「吉乃に正室を譲って自分は鉄砲隊率いて戦場に出たい」
基本、伸長公記の通りに進行するけど、その中心には常に帰蝶さまのヤバい知略と策略。そこは新鮮だし面白い。
「京都の町では合戦したくない。京都の人間は根に持つから」帰蝶は何から何まですべて考えて実行。

2023年6月4日日曜日

神楽坂淳「帰蝶さまがヤバい」1(2021)

神楽坂淳「帰蝶さまがヤバい」1(2021 講談社文庫)という本がそこにあったので読み始めた。
自分、あまり本をジャケ買いすることはないのだが、この本にかぎってはタイトル買いしてしまった。タイトルとジャケがヤバいと思ったから連れ帰った。110円だったし。

たぶん美濃から尾張織田信長に嫁いだ斎藤道三の娘・帰蝶を主人公にした歴史ラノベではないか?と推測。作者は1966年広島生まれの作家・マンガ原作者だと文庫カバーに書かれてる。文庫書き下ろし作らしい。

この本、「天下が欲しい」という帰蝶のつぶやきに対して、「でも、女なんですよ」というつっこみから始まる。
ここ読んで、あ!と思った。そういえば、司馬遼太郎は「国盗り物語」冒頭で一介の油売り主人公松波庄九郎(後の斎藤道三)に「国主になりたいものだ」と言わせているのを思い出した。

何とこの本は、帰蝶が天下を狙って織田に接近。織田家の内紛、兄である斎藤義龍との戦いの背後で、信長を背後で操るのが帰蝶という筋書き。確かにそれはヤバい。

そもそも信長の正室として嫁いだ美濃殿が、帰蝶という名前で呼ばれていた可能性は低い。ありえなくはないかも…という程度。そもそも帰蝶がいつまで生きていたのかすらも不明。要は歴史として語れる資料は極めて少ない。

しかし、だからこそ自由に改変し書くことができる。この本は帰蝶とその身の回り世話係の皐月の会話ですすむ。登場人物たちがずっと現代語会話。
頭が良くて軍略と謀略を画策するのが帰蝶。信長の参謀。まるで黒田官兵衛か本多正信。

帰蝶は銃なら女でも撃てるからと、女鉄砲隊も作らせている。なので中高生がこの本を読んだところで、歴史のお勉強になるかどうかはわからない。だいたいの歴史の流れは史実に従うが、その背後のドラマは創作ファンタジー。(軍記ものはたいていそう)

信長の邪魔な弟勘十郎を冷酷に毒殺し、反抗的な山口左馬助親子を今川に殺させ、いよいよ今川の大軍との決戦。なんと今川義元を罠にハメたのも帰蝶?w
きっと、帰蝶様の活躍は記録に残らない。誰かがうまく記録を書き換えて、信長様の知略ということにするに違いない。
自分は信長に関しては、司馬遼太郎「国盗り物語」と、遠藤周作「決戦の時」で得た知識がほとんど。それをベースにこのライトな読物を楽しく読んだ。
あまりに速く読み終わりそうになったため、途中で読むスピードを落とした。

タイトルと表紙イラストから、もっとフザケ倒した内容かと思った。わりとまとも。中学生ぐらいに最適。歴史に興味を持つきっかけはこういったものでかまわない。

2023年6月3日土曜日

綾瀬はるか「レジェンド&バタフライ」(2023)

「THE LEGEND & BUTTERFLY レジェンド・アンド・バタフライ」(東映)を見る。2023年1月27日に公開された大作。監督は大友啓史、脚本は古沢良太。音楽は佐藤直紀
主演は木村拓哉綾瀬はるか。PG12指定。

東映70周年記念作品として近年にない破格の総製作費20億円で製作。レジェンドは織田信長、バタフライは帰蝶(濃姫)
古沢良太は大河ドラマ脚本のために戦国時代をいろいろ勉強したらしい。同時に映画脚本も書いたという感じ?どっちが先に持ち込まれた仕事?

てか、こんな大作映画よりも大河ドラマのほうが話題になる。香取慎吾とか滝沢秀明とか岡田准一とかとっくの昔に主演やってんのに、なんで木村拓哉は未だにNHK大河主役を出し惜しみして渋ってんの?
脇役じゃダメなの?主演は絶対に失敗できないからって慎重になりすぎ?50代でできる大河の主役ってもうそれほど残ってないのでは?
あと、尾美としのり、伊藤英明は「麒麟が来る」にも出てた。信長と帰蝶を描くといろいろキャストもかぶるわなあ。

で、自分は綾瀬はるかの最新作だからチェックした感じ。たぶん史実では美濃の方を帰蝶と呼んでいた人はいたかもしれないがごく少数じゃないか。もしかすると帰蝶は20歳ぐらいで亡くなってるかもしれない。記録がないから。
だからこそ自由に創作できる余地がある。どう描いてもかまわない。そんな帰蝶が見たい。
(側室生駒吉乃も登場。この人もたぶんそんな名前じゃない。)
  • 信長と帰蝶の婚礼。十代に見える若作りメイクがすごい。
  • 信長イメージが子どものころから抱いてたイメージに近い。
  • 帰蝶が美濃の運命を一身に背負って嫁いできた存在。感情が無。
  • 婚礼の夜から信長と帰蝶はお互いに家門を掛けた口喧嘩。反社と反社、組長と組長の縁組みたいなものか。やたら気位が高い。
  • 障子の外で見守る家臣たち。そんなバカな。これでは子はできん。帰蝶がICHIみたい。
  • 織田信秀(本田博太郎)は次男よりもうつけ信長を買ってたのか。
  • 犬千代 (和田正人)はバカという描き方。映画前半は笑い重視。信長にいいところがない面白脚本。笑えないけど。
  • 前半クライマックスが桶狭間へ出撃する信長なのだが、今川も合戦もまったく描かない。
  • 次の瞬間にはもう稲葉山も信長のもの。
  • 京に上った信長。帰蝶が公家メイクで…という出オチシーン。やっぱり笑えない。
  • お忍びで信長と京の街。本能寺ホテル。南蛮人の舞?!
  • スリ一味を一刀両断するシーンはスカッとしたw さすがマムシの娘。魔王の妻。
  • 血まみれのまま情事?!
  • 浅井の裏切りで気が立ってるのに帰蝶が流産。自分、昔から突然大声を出すキムタクの演技が好きじゃない。
  • 比叡山の僧兵との戦いってこんなだったの?比叡山の件で信長は邪知暴虐の王。帰蝶の手に負えなくなる。浅井朝倉のしゃれこうべで酒を飲む信長に嫌悪と哀しみの眼差し。
  • 天下人の正室濃姫の記録がある時点からぱったりなくなった理由はそういうことだったのか。
  • 前半は陽気だったのに後半は死屍累々でタナトス信長。あれだけ人を殺したんだからこれぐらい辛そうにしてもらわないと。
  • 福富平太郎を演じた伊藤英明はキムタクより3歳年下なのか。
  • 安土城に登る家康(斎藤工)が暑そうだしきつそう。家康が美味じゃと喜んでるのに粗相をしたと光秀(宮沢氷魚)を折檻する信長。ふたりの間にそんなやりとりが。
  • 安土に移った帰蝶はずっと寝たきり?京へ立つ信長と「必ず帰って」と別れの挨拶。
  • 光秀はもはや信長を凡人と見限る。
  • 帰蝶は楽器の天才かよ。
  • 天下人であっても人生は儚い…と思いきや、そんな楽しいラストが?!w これは今までありそうでなかった…と、ひと時の楽しい想像。
  • 今さら信長かよと思ったけど、こんな信長映画もあっていいと感じた。

2023年6月2日金曜日

遠藤周作「決戦の時」(1991)

遠藤周作「決戦の時」(1991)を講談社文庫(1994)版上下巻で読む。織田信長を描いた歴史小説。
自分、ぜんぜん織田信長に詳しくない。だいたい司馬遼太郎「国盗り物語」とNHK大河ドラマで得た知識しかない。

これ、1990年ごろには鮮度があった「武功夜話」という「ほぼ偽書」に全振りして魔王織田信長や藤吉郎、蜂須賀小六、そして信長が愛した女性として帰蝶(濃姫)、さらに生駒吉乃を登場させている。
自分、今まで信長には内田有紀や川口春奈や綾瀬はるかみたいな妻がいるんだとばかり思ってた。「麒麟がくる」では濃姫には帰蝶という別名があったんだ…と初めて知った。と思ってた。
だが、歴史書では「斎藤道三の娘と結婚した」という以上のことはなにもわかっていないらしい。

末森城織田信秀(享年42)が亡くなるというところから語られる。跡目は正室土田御前が生んだ長男三郎信長が順当。
だが、この長男が品がなく粗暴でうつけ。信秀の死は3年秘匿したい。
家老の林通勝も柴田権六も母土田御前も心は信長の弟である信行を織田家の統領にしたい。
織田一門は岩倉城の織田と、清洲城の織田に別れている。織田同士が尾張の土地を争ってる。

もう序盤からネズミのような顔をした薬売りとして藤吉郎が登場。信長と今川の最初の小競り合いを見物した段階で、信長の力量を見抜く。

信長は15歳で斎藤道三の娘濃姫(14)と結婚しているのだが、生駒屋敷の吉乃という9つ年上女性のもとへ通ってる。それは濃姫と斎藤道三には秘密。
吉乃という女性について自分は今までまったく知らなかった。遠藤周作せんせいは武功夜話という前野家から最近見つかった古文書資料から、この女性像を創出してる。この女性が嫡男信忠を産んだことにしてる。(濃姫には子がなかった)

那古野城の信長は斯波義統とその守護代織田信友、坂井大膳の清洲城を攻める。このとき林通勝は信行の助力で信長が勝ったことにするために出陣を遅らせる。そのことは信長も気づく。このころこからもう信長と林通勝には心の隙間。
織田信友を攻めて自刃させた功労者の叔父織田孫三郎信光を信長は謀殺。

末森城の柴田勝家と林通勝と信行と、清洲城の信長は戦ったことがあるって知らなかった。あの短気で粗暴な信長がよく柴田と林を許したなと思ったけど、織田はまだまだ内憂外患で国内で敵をつくりたくなかったようだ。
さらに、信長は仮病をつかってお見舞いに来た弟信行も謀殺。酷い。これには13歳年下の幼い妹お市(美少女)も兄(美少年)を殺した怖い兄信長に恐怖とショック。

次の敵は岩倉城の織田信賢か。となると背後に斎藤義竜がいる。道三は死んだし、子のない濃姫はもはや利用価値がないから美濃に返そうか。というときに濃姫が自害?!(麒麟がくるとはまるで違う展開)
あっけなく岩倉城は落ち、尾張は信長のもの。だが、今川義元がいよいよ京を目指す。

今川軍が駿府から三河、尾張へ進むルートはどこか?もっとも山が迫り隘路となっている場所を藤吉郎は蜂須賀小六に調べさせていた。え、桶狭間の合戦のアドバイスをしたのは藤吉郎?

そして下巻。信長は家臣たちにも考えを明かさずに、桶狭間で今川義元を討ち取る。これには家臣たちも信長を見直す。
以後、今川は急速に力を失う。三河の松平元康は今川から離れ織田と同盟。織田は斎藤義竜に備えるのだが義竜は急死。
犬山城を攻めるいくつかの件、遠藤周作も「武功夜話」に書いてあることが「本当かどうか疑わしい」としてる。疑いつつ多く引用。だって他に記録がないから。

信長が生駒屋敷に住まわせた最愛の妻吉乃は体調がすぐれず小牧城に移したが間もなく死亡したらしい。そのへんも「武功夜話」。
遠藤周作は小折町の久昌寺を訪問。「武功夜話を編纂した吉田龍雲氏に御教示いただいて、吉乃の墓をやっと発見した時の悦びは今でも忘れられない。」と書いている。(それ信じていいのか)
小折町の久昌寺は一昨年2021年に取り壊し。まじか。生駒家の菩提寺で檀家もいなくて、建物を維持できずどうしようもなかったらしい。

そして木下藤吉郎の墨俣城築城の話。これは遠藤先生も創作説があることを断りつつ、必ずしもすべてが創作とはいえないかも…という立場。

下巻は美濃征服。後半は浅井・朝倉との戦い。浅井長政とお市の男児を捜し出して殺させた信長の極悪非道。それに加担した藤吉郎。たぶんみんな地獄に落ちてる。
次の敵は武田勝頼。秀吉はどう戦うかを信長に進言。
あと、ずっと蜂須賀小六とコンビを組んでた川筋衆の前野将右衛門親子のその後を簡単に語ってこの小説は終わる。

この小説、武功夜話が偽書ということになって、今では読む人があまりいない。

2023年6月1日木曜日

吉岡里帆「神の手」(2023)

5月15日にテレ東で放送された単発のスペシャルドラマ「神の手」を見る。吉岡里帆が主演なので。吉岡は「見えない目撃者」で真実を追うヒロインをやると輝く。
望月諒子による同名小説(2004)のドラマ化。脚本は山本むつみ。演出は塚本連平。テレビ東京とBSテレ東の制作。

主人公木部美智子(吉岡里帆)は元新聞記者でフリージャーナリスト。
文学賞受賞パーティーで人気作家本郷素子(山本未來)のゴーストライター疑惑を追いかけてみないかと尾美としのり編集長から声を掛けられる。純文学に興味ないけど、「新文芸」編集長三村(安田顕)も紹介される。

三村編集長のデスクに静岡の心療内科医広瀬(大谷亮平)から電話。高岡真紀(市川由衣)という作家を知らないか?どうやら「緑色の猿」という小説を三村に持ち込んだことのある自称小説家?
この高岡が足を引きずってる。その姿を見て三村は何かを思い出す。
市川由衣って戸次重幸と結婚した後も女優業を続けてるのか。

木部は静岡で起こった連続児童誘拐事件を追いかけている。犯人は逮捕され、3人は無事戻ってきたが1人は今も行方不明。その一人が失踪する直前にキレイな女の人が話しかけてたという目撃証言女性を訪ねるのだがケンモホロロの対応。
そこに高岡から電話。こいつは木部の元同僚フリーライターだったのか。本郷素子のゴーストライター疑惑の件で協力しない?純文学ゴシップに感心のない木部は断ろうとするのだが、「私はすごいネタをつかんでる」「ゴーストライター来生恭子(入山法子)が既に死んでるとしたら?」一方的に会う約束を取り付けて電話を切る。
待ち合わせの場所に来ない。代わりに静岡県警の刑事が二人。「高岡さんは昨夜亡くなりました」

広瀬医師は三村と面会。「あなたは来生を知ってるはずだ。」
高岡は来生恭子の口寄せのように書いている?みんな何かを抱えてるように見える。

木部は本郷素子「花の人」の作者は来生恭子なのでは?と疑惑を深める。
来生恭子妹役で佐藤めぐみ。この人は市川由衣と同じごろに若手アイドル女優としてたくさんドラマに出てた。まだ女優を続けてるのか。

「愛していた…」そして断崖。普通によくある悲劇の2時間サスペンスドラマ。いやもうこの手のドラマは画的にどれも変わりがない。
わりと驚ける真相だったかもしれない。でもやっぱり脚本演出は2時間サスペンスの文法。暗い話。登場人物全員が暗い。

しかし吉岡里帆の声質が語り部として説得力があって適切。なんか老けたな…と思って見てたけど、もう30歳なのか。ならば道理。
今後はこういった社会派ミステリーにも活路を見出さないといけない。