神楽坂淳「帰蝶さまがヤバい」1(2021 講談社文庫)という本がそこにあったので読み始めた。
自分、あまり本をジャケ買いすることはないのだが、この本にかぎってはタイトル買いしてしまった。タイトルとジャケがヤバいと思ったから連れ帰った。110円だったし。
たぶん美濃から尾張織田信長に嫁いだ斎藤道三の娘・帰蝶を主人公にした歴史ラノベではないか?と推測。作者は1966年広島生まれの作家・マンガ原作者だと文庫カバーに書かれてる。文庫書き下ろし作らしい。
この本、「天下が欲しい」という帰蝶のつぶやきに対して、「でも、女なんですよ」というつっこみから始まる。
ここ読んで、あ!と思った。そういえば、司馬遼太郎は「国盗り物語」冒頭で一介の油売り主人公松波庄九郎(後の斎藤道三)に「国主になりたいものだ」と言わせているのを思い出した。
何とこの本は、帰蝶が天下を狙って織田に接近。織田家の内紛、兄である斎藤義龍との戦いの背後で、信長を背後で操るのが帰蝶という筋書き。確かにそれはヤバい。
そもそも信長の正室として嫁いだ美濃殿が、帰蝶という名前で呼ばれていた可能性は低い。ありえなくはないかも…という程度。そもそも帰蝶がいつまで生きていたのかすらも不明。要は歴史として語れる資料は極めて少ない。
しかし、だからこそ自由に改変し書くことができる。この本は帰蝶とその身の回り世話係の皐月の会話ですすむ。登場人物たちがずっと現代語会話。
頭が良くて軍略と謀略を画策するのが帰蝶。信長の参謀。まるで黒田官兵衛か本多正信。
帰蝶は銃なら女でも撃てるからと、女鉄砲隊も作らせている。なので中高生がこの本を読んだところで、歴史のお勉強になるかどうかはわからない。だいたいの歴史の流れは史実に従うが、その背後のドラマは創作ファンタジー。(軍記ものはたいていそう)
信長の邪魔な弟勘十郎を冷酷に毒殺し、反抗的な山口左馬助親子を今川に殺させ、いよいよ今川の大軍との決戦。なんと今川義元を罠にハメたのも帰蝶?w
きっと、帰蝶様の活躍は記録に残らない。誰かがうまく記録を書き換えて、信長様の知略ということにするに違いない。
自分は信長に関しては、司馬遼太郎「国盗り物語」と、遠藤周作「決戦の時」で得た知識がほとんど。それをベースにこのライトな読物を楽しく読んだ。
あまりに速く読み終わりそうになったため、途中で読むスピードを落とした。
タイトルと表紙イラストから、もっとフザケ倒した内容かと思った。わりとまとも。中学生ぐらいに最適。歴史に興味を持つきっかけはこういったものでかまわない。
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