2023年6月7日水曜日

沢木耕太郎「深夜特急1 香港・マカオ」(1986)

沢木耕太郎「深夜特急1 香港・マカオ」(1986)を読み始めた。たいへんに有名な本なのだが今回がついに初読。
以前から読もうと思ってた。おそらくこの本が日本の若者をインド放浪に駆り立て、猿岩石にロンドンヒッチハイクという地獄を体験させ、たかのてるこにガンジス川でバタフライさせたきっかけの本じゃないかと思ってた。

主人公は東京のアパートを整理。仕事すべてを投げ出して、1500ドルのトラベラーズチェックと400ドルの現金をつくり旅に出る。

第1章「朝の光」
プロローグ的にインド・ニューデリーの安宿の風景がまず衝撃的。英米仏独蘭といった外国人青年たちが1日1ドルの生活。もう観光するべきものは全て見てしまい、何もせず雑魚寝部屋で日がな一日ゴロゴロ。そんな若者たちの天井を見る目を見た沢木は「自分もいずれああなる」と気づいて、あわてて出発。

この時間までここに行かないといけないというような目的がある旅行者にとって、現地インド人たちはなんとも頼りない。三輪タクシーの運転手がガソリン入れる金もなければ故障した車を修理する金もない。そんな状況でバスターミナルを目指すとか普通は絶望。

第2章「黄金宮殿」
80年代の香港の様子が貴重だなと思ってた。おや?主人公の沢木は26歳だという。沢木耕太郎は1947年生まれ。ということは深夜特急の香港・マカオは1973年ごろ?そんな時代から日本の若者は海外を行く当てのない旅を?それすごい。
沢木耕太郎は旅から戻ってこの本を書き上げる(1992年)までに15年もかかったらしい。

それほど貧乏旅行をする必要もないのだが、主人公は路線バスでデリーからロンドンへ行くというテーマを持っていたらしい。
この時代は香港とインドの間には文革中国があり戦乱のインドシナがある。鎖国政策のビルマがある。ということはロンドンまで路線バスの旅をしようと思っても、香港からは現実的でない。というわけで東京からニューデリーへ航空券で渡ることになる。旅行代理店の女性の親切心?から香港、バンコクでのストップオーバーができることを知らされる。

香港で探し当てた安宿が連れ込み宿。1人でやってきた日本人青年に麻雀やってる現地人たちは「なんだこいつ」という目を向けることになる。

普通の日本人観光客が行くような場所には一切行かない。お金は今後のために極力節約。寝る場所と食べ物に気を使わない。目的もなくフェリーやバスで出かけてその辺にいた人と交流。中国語も英語もできないのになんとなく意思疎通してるということは、よほどコミュニケーション能力がある。

第3章「賽の踊り」
マカオまで足を延ばす。香港よりもホテル代が安くて驚く。マカオは当時から賭博の街に成り下がってる。
予想よりいいホテルに泊まれて気持ちが大きくなり、「大小」というサイコロ賭博に熱中。今までの人生でいかなる賭博ギャンブルにも興味関心を示さなかった著者が、怖いぐらいにギャンブラー化。負けを取り返そうとしてどんどん深みにはまるギャンブル短編小説みたいになっていく。

カジノのディーラーはカモ客から金を巻き上げるプロ。そのやり方は汚い。そいつを「推理」で見抜いたと思っても、やつらにはかなわない。
だが、若い女ディーラーがサイコロを動かすカシャーンという音の違いを沢木は見抜く。これのおかげで大負けをかなり取り返して安堵。これがなければ旅は香港で終わってたw

第1巻を読み終わって、紀行エッセイみたいなものを想像してたら、意外に短編小説っぽいなと思った。味わい深い。第2巻へとつづく。

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