2018年8月31日金曜日

岩井俊二 小説「ラブレター」(1995)

岩井俊二「ラブレター」(1995)を読んだ。友人の本棚にあった1999年角川文庫版で。読むのにおそらく2時間もかからない。初めて岩井俊二の小説を読む。

中山美穂主演、岩井俊二監督の映画と同名の小説。とても平易な日本語で書かれているので、小学生中学生でも難なく読める1冊だと思う。
映画と同じ内容をなぞっておさらいする本。映画を想い出しながら読んだ。

読んでいて「おや?」と思った箇所がある。神戸在住の渡辺博子は、かつての恋人だった藤井樹の友人だった秋葉という人(映画では豊川悦司)とつきあっているのだが、この人が「博子ちゃん、ふたりで小樽行ってみいへん?」と言っている。そう書かれている。

「行ってみいへん?」、ここちょっと違和感を感じたのだが読み飛ばすと、3ページ先にも2か所、小樽行きを誘って「行ってみいへん?」と言っている。「みいひん?」じゃなく?

岩井俊二は仙台出身で横国卒なので関西ネイティブではない。誤植か?とも思ったのだが、出版社が3か所も間違いを犯すはずはない。
本というものは最初の出版の段階でも校閲で間違いはチェックされる。ましてや文庫化でもチェックされるし、自分が読んだ文庫は第7刷だった。ということはやっぱり「みいへん」が正しい?物語よりもそっちばかり気になるようになってしまったw

気になってツイッターで調べてみたら、「行ってみいへん?」も「行ってみいひん?」も使っている人がいるらしいことがわかった。意味合いはどちらも提案と勧誘っぽい。ということはやはり「みいへん」も間違っていないらしい。
地域の違いなのか?世代の違いなのか?意味合いに違いがあるのか?結局よくわからなくてもやもやしてる。

2018年8月30日木曜日

FLOWER FLOWER ライブDVD「インコのhave a nice day ツアー 2018.05.09 Zepp Tokyo」

ついに8月29日にFLOWER FLOWERのライブDVD「インコのhave a nice day ツアー 2018.05.09 Zepp Tokyo」が発売。
ライブが終わってだいたい3か月がライブDVD発売の目安のようだ。

いつものように予約とかなしにTSUTAYA店頭にぷらっと立ち寄っての購入。
ブルーレイも出ているのに、ついうっかりDVDを買ってしまう。ケースがまるでVHSビデオテープみたいだ。

Amazonとかショップ通販で買えば割引でポスターなどの特典も付くというのに、もう自分はそういうことにまったくこだわらないくなっている。ベテランになりすぎたw
これ、とり急いで見た結論から言って、今までCD特典とかで見たどのライブ映像よりも素晴らしい。あたりまえかもしれないが。

バンドメンバーがまだ若いのにもうまるで巨匠。若手バンドの必死で練習してきて弾いてます感がない。これぞプロという余裕のたたずまい。
まだまだFLOWER FLOWERを知らない人に声を出して「この人たちを見て!」と言いたい。ずっとかっこいい。
あの日会場で聴いたよりも音が鮮明になるのがライブDVDのいいところ。
だが、「コーヒー」の「キチガイ」箇所はsonyとしては容認できなかったようで、ボーカルがオフのになるという、ちょっと信じがたい処理がされていてショック。yuiは清志郎に並んだなw

3か月前なんてつい最近でまだ記憶も鮮明。DVDで記憶の補完をする。MCも記憶がよみがえる。

映像収録ということでかしこまってかっこつけてたyuiはMCというおしゃべりタイムで爆発w 「はい、キタ!もう我慢できない。しゃべんないの性に合わないみたい」ww
グダグダMCもほぼフルで入れてくるとは予想できなかった。ロリスタも。
YUIの2ndツアー3rdツアーを知ってる人がこれを見たら、YUIの変化にショックを受けるかもしれない。YUIがステージでこんなに喋るんだ!こんなに楽しそうなんだ!と。

「バイバイ」の前のめりアレンジが好き。今まで聴いたこの曲の音源でこれが一番好き。
「ひかり」への流れも最高。ここがインコツアー最大のクライマックスで祝祭。
4月1日の日比谷野音ライブ映像に「春」が入っていたことは嬉しかった。「色」収録曲で「春」が初めての映像化。
2017年初夏の初ワンマンで「冬」、オハラブレイク2017で「夏」、春ツアー野外で「春」、オハラブレイク2018で「秋」。おそらく本人たちは計画的に四季のすべてを公開で初演している。なんとか4曲まとめて演奏する機会がほしい。

Disc2がZepp東京の同一ライブ音源。テレビがなくとも音だけでも楽しめ!と。
YUI時代にはライブ盤はなかったので、これはこれで重宝するかも。

そして9月、おかわりツアーが高松、広島、金沢とあるのだが、自分はすべて欠席。金沢はまだ自分は一度も行ったことのない都市なので行きたかった。

2018年8月29日水曜日

佐木隆三「伊藤博文と安重根」(1993)

佐木隆三「伊藤博文と安重根」の1996年文春文庫版(第1刷)がそこにあったので読んでみた。この本はわりとよく見かける。100円でゲット。

佐木隆三(1937-2015)の本を読むのはこれが2冊目。初めて読んだ本は「ドキュメント狭山事件」。狭山事件に興味を持つとこれぐらいしか選択肢がなかったので読んだ。
で、伊藤博文暗殺事件と安重根について知ろうと思えば、これが一番手に入りやすい。

自分は知らなかったのだが佐木隆三は朝鮮咸鏡北道穏城郡の生まれの日本人。日本と韓国、両方からの視点を持っているに違いない。

伊藤博文が哈爾濱で暗殺されたことは、たぶん中学生以上ならだいたい知ってると思う。そして伊藤を狙撃した人物が韓国人・安重根なことも高校生以上ならまずほとんどが知っているかと。

だが、自分はこの本を読むまで、伊藤が哈爾濱に向かった理由を知らなかった。佐木隆三は公判の記録から人間性を掘り下げるノンフィクション作家なわけだが、「公判請求書」から多くを引用して、事件発生までの伊藤博文と安重根のそれまでの行動、移動経路を詳細に教えてくれる。

日露戦争後の朝鮮と満洲をめぐるロシアとの利権をめぐる駆け引き、国際情勢なんかをおさらいするので話が前後する。日露は戦後、これからは仲良くやっていこうと歩み始めたばかり。伊藤博文は哈爾濱でロシア蔵相ココーフツォフとの会談の予定だった。
何を話し合うのか?清国やアメリカは満洲のことで気が気でない。

亡国の徒・安はロシア領ポシエトからウラジオストク、ポグラニチヌイ、そして哈爾濱と流浪。途中で仲間を得て、哈爾濱駅で伊藤博文を狙撃する機会を偶然得る。

伊藤と一緒に哈爾濱駅でロシア兵士たちを儀仗するためにホームを歩いた川上ハルビン総領事、森宮内大臣秘書官、田中南満州鉄道理事までもが至近距離からの6発の狙撃によって重傷。(うち3発が伊藤博文に命中)

韓国の主権を次々と奪っていく日本。安はその首魁・伊藤博文を強く恨む。この本は安の直前の行動を追うのだが、人を殺すという行為に対して発言と行動が軽いように感じた。

世界を震撼させた重大事件を起こしたことで、哈爾濱のロシア警察が韓国人たちをつぎつぎに逮捕。多くの無関係な人も巻き込んでいるのが酷い。当時の警察の取り調べは想像以上に熾烈だったに違いない。大迷惑。

拳銃を構えて哈爾濱駅で待機していた安重根(30)、蔡家溝駅で待機していた禹徳淳(32)のふたりは伊藤が死んだと聞いて喜んだというから、この二人は主犯と言っていい。伊藤が蔡家溝駅で降りていたら禹が歴史に名前を刻んでいた。

だが、ロシア領内で平穏に暮らしていた曹道先(36)と劉東夏(17)のふたりはロシア語ができるということだけでダマして同行させられた。事後従犯の曹は有罪で仕方ないが、自分の感覚からすると幼い劉は無罪でよかった気がする。

安は日本人にとってはテロリストで韓国人にとって朝鮮独立の第一歩になるわけだが、今日まで続く日本側の見方を決定づけたのは溝淵孝雄検察官の論告求刑。以下一部引用
およそ政治犯であるからには、政治上の効果を生じる目的をもって、秩序を破壊すべきである。安重根は、伊藤公の殺害をもって、自国に対する義務を尽くしたというが、このことで韓国の国威をまっとうし、国権回復に一歩を進めたとはいえない。 
3年前に安は、鎮南浦を出た。妻子、兄弟を捨てて去る前には、石炭商を営んでいたが、これに失敗して、国元に居づらくなったのである。北韓またはロシア領にいるときは、住居不定で定職はなく、韓国人の教育をしようとしたが徒手空拳で同調者もなく、過激派と交際するにおよんだ。四方に漂流して、ついに義兵に投じたが、これとて烏合の衆である、一敗地にまみれて失敗に帰した。 
二人の弟に寄せた信書によれば、「ヨーロッパに遊び、ウラジオストクに戻ったけれども、またパリよりローマに至る志をもっている」と、いかにも境遇を改善したようなことを述べている。このヨーロッパ行きのことは、まったく事実無根であることを本人も認めた。二人の弟も、「兄が面目ないために法螺を吹いた」と言っている。 
今回、ハルビンへ来るにあたっても、「国家のため」と称してウラジオストクで、李錫山から百ルーブルを強奪したと述べる。これを信じても、放浪生活中に良民から、国家のためと称して強奪をなすごときは、日常茶飯事といわざるを得ない。このように兄弟妻子に対して、まことに面目ない境遇にある安重根が、その面目をほどこすために、突然の大事を企てたのである。そう言って、当たらずといえども遠からずだろう。 
禹徳淳も同様である。ウラジオストクの宿屋では、7ルーブルを踏み倒した。このような人物が、天下国家を一人で背負って立つようなことを言うのは、むしろ滑稽である。もし真面目であるとするなら、誇大妄想狂であろう。
ここを読んで、ほぼ今日の政府と多くの日本人の安重根のイメージはここにルーツがあると感じた。
一方、国選弁護人の水野吉太郎は刑の量定についての弁論で
「被告人の安重根は、知識が不足しているために、国家に忠誠を尽くす方法を誤解したのであるから、じつに同情すべき点がある。韓国の現状は、尊王攘夷を喧論していた維新前の日本に似ており、その排日党の主張は、日本の志士のようである。」 
「おそらく地下の伊藤公にしても、むしろ被告人が重い刑に処せられることを不愉快に思われるはずだ。伊藤公も少壮のころ、品川のイギリス公使館に放火して尊王攘夷を唱え、安と酷似した行為が数々あった。」
この水野弁護士の反論の視点が傑作で面白い。

安は最期まで大物のように振舞った。そのために今日まで英雄視する韓国人も多いんだろう。たぶん日韓両国民の意識の差は今後も埋まらない。
なお、安の通訳を務めた韓国統監府通訳生・園木末喜氏の資料を発掘したのは佐木氏による手柄らしい。

この本は事実と記録を積み重ねていくもので、読んでいてあまり面白いものでもない。死刑執行の場面は読んでいて気が滅入る。

2018年8月28日火曜日

長澤まさみは飾らなすぎる

FRaU 2018年2月号をやっと手に入れた。「嘘を愛する女」宣伝期の長澤まさみインタビューが8ページある。400円もしたのだが即レジへ。最近はあんまりまさみ雑誌の発見率がよくない…。

このインタビュー記事がここ1年でもっとも重要なインタビューだと感じた。

6月11日付マイナビニュースで「コンフィデンスマンJP」で長澤まさみと共演したイガラシこと小手伸也のインタビュー記事によれば、「長澤まさみは飾らな過ぎて怖い」んだそうだ。
「女優が地べたに座って弁当食べてるの初めて見た!」「本当に裏表がない!」と現場を驚かせていたらしい。

今回のグラビア撮影の現場に密着しインタビューした編集部の人によれば「女優にあるまじき自己顕示欲の低さ」に驚いていた様子。
「先輩の女優さんたちには、『まさみはすくすくよく育ったね』って言われます。10代の頃に、ミニスカートとか穿いていると、『いいね、健康的でスカッとする!』とかいわれたこともある(笑)。 
私自身はスカッと明るい性格ではないのに、なんでそう見えるんだと最初の頃は不思議でした。でもこればかりは、健康的な体に産んでくれた両親に感謝ですね。 
女優をやって最初に驚いたのが、演じた役の影響で、自分の知らない自分が認知されている感覚を初めて知ったときで、『へぇっ!』って驚きましたね」
「“好き”が一番大事とはいっても、俳優というのは必要とされなくなったら仕事はなくなってしまう。20代の頃は、それに対してわけのわからない不安はありました。だから、“好きだけじゃ続かないのかも”なんて思ったんでしょうね。 
でも、今になってわかるのは、私にできることは、目の前にあることをやること。だって先のことなんて、誰にもわからないんだから。未来のことをいくら想像したって、現実を掴めないまま終わってしまうことが多い。現実は今しかないんです。今目の前にあることをやることが生きるってことだと思っています」
まさみはローティーン時代から美人でスタイルがよく、20歳前後の一番大切な時期も真面目にNOスキャンダルで過ごした。それ以外に特別だった理由はここで行ってる愚直なまでの一生懸命さにあるようだ。たぶん、10代からまさみを見てるオタはみんなそのことを知っている。
オタにもわからないことがまさみの結婚観だ。女性向け月刊誌はまさみに「結婚」についても質問する…
「静岡にいたらまた違ったかもしれないですけど、東京にいると、周りがバタバタと結婚するわけでもないし、焦りみたいなものはまったくないです。年齢や、俳優であることが、恋愛や結婚の枷になると思ったことも、ないです。 
恋愛はともかく、結婚の場合は、一番大切なものはタイミングだと思う。『明日、江ノ島行こうぜ』みたいな、軽いノリじゃできないから(笑)。 
もっと、大切に考えなきゃならない事柄だし、相手がいることだから、焦ってもしょうがないじゃないですか」
まさみの磐田時代の幼なじみや東京中野の中学時代の同級生はどんどん結婚している。オタの誰もが、いつやってくるかもわからないその日のことを、考えないようにしている。
できることならこのまま天海祐希になってほしい。くれぐれも堀北真希、武井咲や桐谷美玲みたいにはならないでほしい。

このインタビューは、まさみのこれまでの女優として自分を振り返りつつ、仕事観や結婚観まで語っていて、なおかつグラビアも美しい。まさみが多くの名言を残している。とても紹介しきれないのでオタはぜひ持っていたい。

そして、「散歩する侵略者」宣伝期のまさみ2ページの記事を「OCEANS 2017年10月号」に見つけた。こいつは100円でゲット。
こちらはそれほど目新しい紹介したいような内容はない。一緒に仕事をした黒沢監督への感謝の言葉を述べているにとどまってる。

2018年8月27日月曜日

黒澤明「椿三十郎」(1962)

黒澤明「椿三十郎」(1962 東宝)はラストの決闘シーンが有名すぎて、その前に90分続くドラマ自体はあんまり関心なかったw それではいけないというわけでしっかり見た。

黒澤明の三船敏郎映画は誰しもが褒めたたえる映画史上の名作ばかりで、とくに何か言おうと思わない。

冒頭の若く義憤にかられ血気盛んな若者たちの演技がやはり一時代も二時代も昔を感じさせる。どういう状況なのかの説明シーンがしっかり聴かないとよくわからないのに聴きとりづらい。
田中邦衛の顔の存在感が強いw「てめえは目暗か!」って三船から怒られる。加山雄三はハンサムお侍。小林桂樹はおっとり笑い担当キャラ。

策士VS策士。まるで「コンフィデンスマンJP」のようなダマシあい。悪人側の悪事があんまり描かれていないので、敗者の側が哀れに思えてくる。悪人側も焦ってやきもきして困惑してる。
三船敏郎は頭脳も剣もめちゃめちゃ強い。アホな若者たちと城代家老の奥方にペースを狂わされたり、襖の開け閉めの音のデカさに悩まされるなどの面白シーンも盛っている。

悪者がやっつけられるのは爽快かもしれないが、黒澤はラストで囚われの城代家老の口から「もっと穏当な他のやりようもあった」と語らせる。そこ、さすがだ。

敵方の仲代達也の眼力と雰囲気が今の阿部寛そっくり。

ラストの決闘シーンがこの映画のすべて。世界を絶句させた衝撃シーン。まだ見ていない人もいるかもしれないので、詳しくは語れない。
居合という技術は時と場合によっては最強。

2018年8月26日日曜日

アガサ・クリスティー「バートラム・ホテルにて」(1965)

アガサ・クリスティー「バートラム・ホテルにて」(乾信一郎訳 1976 ハヤカワ・ミステリ文庫)を手に入れた。こいつも100円でゲット。
AT BERTRAM'S HOTEL by Agatha Christie 1965
こいつが自分にとって2冊目のミス・マープルもの。
エドワード朝時代の格調高いホテルに宿泊するミス・マープル。
紅茶に本物のマフィンを愛する英国老人ばかりが集まっておしゃべり
「例の髪を長くしたビートルズとか何とかいった連中に夢中になるよりかはましだろう」
というような会話をする老人たちw 60年代英国はそんな時代。クリスティ女史74歳のときの作品。

父親の残した莫大な財産があるのに21歳になるまでどうにもできない17歳の自由奔放娘、その後見人、冒険家の母、オートレーサー、ホテルの面々たち、それぞれの視点で断章的につづられるドラマ。読んでるほうは何がなんだかわからない。列車強盗事件まで発生。

やがて宿泊客のぼんやり老牧師が失踪。やっと事件らしいことが起こったと思いきや、殴られて倒れているのを見ず知らずの人が助けて寝かされてただけ?!どこがどう繋がるのかわからずに見る映画のような展開。どれもが伏線のようでさらさらと流して読めない。

最後の方になってようやくドアボーイが射殺される事件が発生。地下通路入口付近に潜んで撃った真犯人は誰?

この作品、今まで読んできたクリスティー作品とちょっと違う。事件の中心にあるバートラム・ホテルを調査して事実を解明するのがデイビー主任警部。

マープル婆さんは事件にそれほど関与してこない脇役。舞台装置のひとつとしてそこに配置されている。
だが、最後の最後で鋭い観察眼からひと言コメント。急転直下、全体像が見えたとき、おおぉ!と驚いた。こいつもやっぱり面白かった。

結末は後味悪いが、多くを語らないのがおしゃれ。わりと好きな1冊になった。

ネタバレになるので多くは書き留めないが、最後に長澤まさみが出てきて「コンフィデンスマンの世界へようこそ」とドヤ顔で言う画が見えたw それらしく見えているものは実はすべてが嘘!

2018年8月25日土曜日

新垣結衣 ポッキーCM 原宿篇 2006

今年の夏は暑すぎて出かける機会がめっきり減ってしまい、ブログを毎日更新するネタもないので、新垣結衣の懐かしいCMを回顧してみる。

新垣結衣が決定的ブレイクを果たしたのがこのポッキーのCMだった。新垣結衣が教室にいた時代がすでに懐かしい。ORANGE RANGEのこの曲も懐かしい。
YOUTUBEにはもうあまり画質の良いものは残ってないようだ。
ナレーションがオリラジ藤森。ということは藤森は12年もアイドルと関わり続けている。

新垣結衣はぜんぜんイメージが変わってない…って思ってたけど、「コードブルー」番宣なんかで30歳の新垣結衣を見ると、やっぱり大人の落ち着いた女性になってるなって感じた。

2018年8月24日金曜日

横溝正史「蔵の中・鬼火」(昭和10年)

横溝正史「蔵の中・鬼火」(昭和50年版角川文庫)を手に入れた。100円でゲット。

「蔵の中」は他の表紙イラストの判も存在するのだが、今回自分が手に入れたものは西井正気という人によるもの。
横溝正史オタは杉本イラスト角川文庫を好む人が多い。あれは表紙イラストが不気味すぎて嫌だったw できれば他のものが良いと思ってた。昭和56年第19刷だったのだが天も小口も茶色く酸化していて汚い。

鬼火(昭和10年)上諏訪で療養中の横溝が、体力の回復に自信を持ち始めた昭和9年に苦労してかき上げたもの。諏訪湖が舞台。

人間はここまで不幸に落ちていくものなのか!という、憎悪しあう従弟同士のおぞましく陰惨で不幸な人生と最期。これは発禁処分になっても仕方ないわ。
江戸川乱歩の影響を強く感じた。「犬神家の一族」の原型要素も垣間見えた。
ミステリーとかサスペンスではなく純文学ホラーと言えるかもしれない。

蔵の中(昭和10年)聾唖だった姉との想い出の蔵の中。そこにあった望遠鏡で犯罪現場を目撃した青年が、小説として雑誌編集者に読ませるという形式。ちょっと変わった構造。テーマ的に清張の社会派サスペンスっぽいけど、どちらかというとやはり乱歩の影響か。
この短編集の中ではこれが一番面白い。でもやっぱり陰惨。

かいやぐら物語(昭和11年)は露見しなかった完全犯罪の話。ポーのような怪奇幻想ホラー。

貝殻館奇譚(昭和11年)ポーにも仮死状態から生き返るテーマがあったけど、これも乱歩の「パノラマ島奇譚」の影響?殺人を重ねるサイコパス女をあばく緑川大二郎という人物は後の由利探偵や金田一さんの前身?

蠟人(昭和11年)これが「鬼火」以上に読んでいて鬱になる話。諏訪湖を舞台にした美しい芸妓とその旦那、美青年の競馬騎手によるドロドロの三角関係三面記事。最後のほうはわりと驚きの展開。

面影草紙(昭和8年)上方コトバの口語体で、日露戦争直後の大阪を舞台に売薬問屋の家族崩壊を描いてる。友人の話という形式。多少の日常ミステリーの要素もあるけど純文学作品?自伝的要素も含んでる?このへんは谷崎文学の影響?

どれもが鬱系イヤミスなので精神が充実してる人にしかオススメできない。「蔵の中」は広く読まれてもよいと思う。

2018年8月23日木曜日

土屋太鳳「トリガール!」(2017)

「トリガール!」という映画があるので見てみる。これ、予告編とか見て面白そうだと思っていた。
日本テレビで毎年やってる「鳥人間コンテスト」は子供の頃から見ているので、この世界観には馴染んでいるはず。

近年テレビドラマでよく見るような演出とカット割りと雰囲気。英勉カントクなのでそうなる。あまり映画を観ている感覚がない。
だが、もう僕たちは重たい映画とか見たくないw ついこういう軽そうなやつを選んでしまう。

主演は土屋太鳳。このヒロインの顔が面白くてぜんぜん可愛くないw 2浪して工業大学に入ってしまった20歳大学1年生という設定。気づくと大学行きバスが全員メガネ&チェックシャツで激しく困惑。
この大学の雰囲気がちょっとやりすぎ。まるで東アジアか東南アジアの工業技術系大学。もっさりしすぎ男子が99%。よくこんな劇団員ばかり集めたな。

そんな中で輝く王子様が高杉真宙くんだ。人並外れた体力を持つヒロインは心ときめくままに「Team Birdman Trial」サークルにパイロットとして参加する。
このサークルがまるで企業のような組織とマネジメント。理系男が集まるとこうなってしまうのか? 画的にクイズ研究会でもおかしくない。
開始から土屋太鳳 テンションが高すぎ。
欧米の若手俳優たちは自然な演技が評価されるというのに、日本だけがまるで歌舞伎のような大げさインパクト勝負のような演技で独自の進化を歩む。乖離がどんどんでかくなる。

ヒロインがペアを組む相手が間宮祥太朗。今まで「ニーチェ先生」「お前はまだグンマを知らない」でしかこの役者を見たことがなかった。まったくイメージが違うイキったヤンキー大学生。
居酒屋で初対面する場面からケンカw ラブコメ青春映画の王道的な造り。このふたりのケンカ腰会話はずっと面白い。脚本は高橋泉という人。

最近の映画は開始数分でもう「早く終わってくれ」と願うものも少なくないのだが、この映画は開始から、役者たちの異常なテンションの高さとテンポの良さで笑わせてくれて飽きさせない。
土屋と池田エライザが紅二点。池田エライザはネット上でもその筋の男たちから大人気。この映画でも胸が異常にデカくて言葉を失う。食堂シーンでのニット服、胸が前に突出しすぎていてあ然。牛か?ってぐらいにデカい。
あと、またしても矢本悠馬が出てる。最初誰かわからなかった。高杉と一緒だと「賭ケグルイ」だ。

自分、土屋の女優としての人気があまり理解できないでいたのだが、さすが人気女優だと感じた。コメディエンヌとして振り切れた演技をしていた。とんでもない暴れ牛ヒロインだった。
自転車とダンスシーン(なんであるのかわからない)での身体能力の高さを感じた。さすが体育大学生だ。
琵琶湖の湖面上を滑るように進む美しい機体を見ると自分は毎回感動してしまう。この映画のクライマックスも同じ。どの瞬間も奇跡。なのにパイロットの二人はくだらないケンカw

ED主題歌はねごとがスピッツをカバーした「空も飛べるはず」。この曲も感動作。

2018年8月22日水曜日

井上寿一「戦争調査会 幻の政府文書を読み解く」(2017)

井上寿一「戦争調査会 幻の政府文書を読み解く」講談社現代新書2453(2017)という本が昨年来話題らしいので読む。友人が買っていたので借りて読む。

終戦直後、幣原内閣のときに東京裁判とは別に、戦争になった原因と敗戦の理由を検証して究明して後世に残そうという国家プロジェクトがあった。それ、昭和史の専門家にはよく知られたことらしい。

中国の歴代王朝は次の新王朝が歴史をまとめて正史となる。国が予算を組んで40回以上の会議と資料収集と聞き取り調査にとりくみ全15巻で刊行図書として残された本書はまさに正史。

この取り組みはワシントンの極東委員会、対日理事会でソ連英国などが「委員に軍人がいる」と問題視し、マッカーサーの意向で消滅へ。未完のプロジェクトとなる。

政治外交、軍事、財政経済、思想文化、科学技術の5部会から構成して「どうして戦争になったのか?」を探る。委員の中に斎藤隆夫、八木秀次といった名前もあった。

その中に馬場恒吾という自由主義者ジャーナリストがいる。この人の発言が自分には新鮮だった。「日露戦争をレーニンは感謝してた。なのにスターリンは帝政ロシアの仇を討つために日ソ戦を戦ったという。矛盾してる。怪しからん!」「張作霖にも蒋介石の国民党にも日本人居留民は生命財産を脅かされて酷い目に遭わされてる。国際連盟でいかに日本人が圧迫されてたか訴えたら満州事変は起こらなかった!」その論点、自分はどこでも学ばなかった。

この本の後半は戦争調査会資料を読み解いて、いつ戦争は始まったか?どこで回避できたか?どこで止められたか?をわかりやすく解説してくれる。死んだ子の年を数えるように、あそこで止められなかったかなあ…と嘆く。

日本が戦争へ向かった最初を明治維新とする人も多いのだが、意外にも「大正デモクラシー」を挙げる人がいて目からうろこ。

起点は大正8年だった。この年、北一輝は「国家改造案原理大綱」を執筆。
党利党略の政党政治、ワシントンとロンドンの海軍軍縮条約(1921年、国家歳出に占める日本の軍事費は49%に達していた!)、国民の軍人へ向ける目、それらが軍人たちの被害者意識と反発の原因を作っていた!それ、学校で習ってないw

あと、近衛首相の「国民党を対手とせず」発言が宇垣外相による対中和平の芽を摘んだこと。日独伊三国同盟と南部仏印進駐が決定的にアメリカの心証を悪くしたこと。独ソ戦の開始で戦争が長引いてドイツが苦戦する予想がアメリカ側に日本との交渉を続ける気をなくさせたことなどを改めて学んだ。

高校の教科書よりも、こういった本のほうが昭和の戦争のことがよくわかる。オススメ。

2018年8月21日火曜日

さよなら、欅坂の今泉佑唯

今泉佑唯(19)が欅坂46から「卒業」することが8月7日公式にアナウンスされた。
休養とイベントの相次ぐ欠席。欅坂のファンはこの1年ずっともやもやしながら覚悟はできていたかと思う。2015年秋ごろから欅坂は始まってるので、今泉は3年にも満たない在籍で10代のうちに欅坂を去る。

自分、どちらかというと可愛らしい子より渡邊理佐や守屋茜や土生瑞穂みたいな大人っぽくてキレイな子に目がいくw 今泉ひとりに注目していたわけでもない。
だが、欅坂のメンバーにとっても卒業者を出すということは初めての事態。CDデビューからウォッチしてきた自分にとっても初めて発足メンバーの卒業というものを体験することになる。
なので今回の卒業は自分にとって特別な事態。ダメージは小さくない。
グループアイドルが脱退することを「卒業」と呼ぶことに自分は以前から違和感を感じている。そして「卒業おめでとう」ということも同じ。何もおめでたくない。

たぶんこのままいくとまっとうな卒業までのプロセスを経ないでフェードアウトしていく。メンバーもファンも悲しいし寂しい別れになる。
「卒業」と呼んでいいケースは乃木坂の深川や橋本や生駒のように正しい手順を踏んでセレモニーを経て、双方納得の上、さらなる高みに向かって去って行った場合のみでいい。
自分はこの言葉をぜったいに使わないが、ここでは慣例に従う。
「けやかけ」メインの自分にとって、メンバーの卒業は見る機会の激減を意味する。それは寂しい。3人でPerfumeなのと同じで21人で欅坂だと思っていた。
今泉というと2nd Anniversary での「再生する細胞」が印象的。あそこで見ておけて幸運だった。
7thでもソロ曲を用意して慰留に努めたものの本人の決意は固かったようだ。
さいわいなことに芸能界を引退するわけではないらしい。むしろこれから自分の居場所を見つけて活き活きと輝きだすかもしれない。ファンには希望が残された。

だが、秋元グループでそうなった子はまれ。しかし、SMAPやももクロのように離脱者を出してから、去った者と残った者がさらにブレイクする目もある。欅も今泉もこれからの活躍を祈ってる。
欅オタにとっては志田愛佳という懸念も残されている。今回の今泉ケースを見ていると、志田も欅を去る公算が高いように思える。平手も今後どうなるかわからない。
この世はすべて無常だが、とくにアイドルグループは無常。その一瞬の輝きを目撃することしかできない。
BABYMETALのYUIMETALもファンをずっと不安にさせている。
PS. なんと今泉のソロ写真集が発売になることも発表された。海外ロケまでしてんの?
今泉は優遇されてたイメージなのになぜ脱退?!
お渡し会イベントが欅坂の今泉と最後の接触イベントか?

2018年8月20日月曜日

ベルナルド・ベルトルッチ「ラストエンペラー」(1987)

「ラストエンペラー」(1987)という映画を学生のとき以来見返した。19日(日)昼1時からBS朝日でやるって知ってすぐ予約して。
これ、自分はまだたぶん後半しか見ていなかった。当時はよく意味のわからないシーンがあった。近年いろいろと日本近現代史を勉強してようやく再視聴。
自分に清国と清国人のイメージを具体化してくれたのはこの映画。たぶん日本人が支那人イメージを形成していった初期にそこにあったのが清国。なので「キン肉マン」のラーメンマンはあんな風貌になった。
紫禁城内部の宮廷シーンはグロいまでに絢爛豪華な歴史絵巻。衣装の量だけでとんでもない。
宦官だとか多数の側室だとか、20世紀まで存在していたことが脅威。日本は明治時代で側室とか第2夫人とかなくなってよかった。

皇帝溥儀の少年時代と青年時代を演じた俳優がスーパーハンサム。今日、日本人の我々の知っている溥儀の写真イメージと大違い。
自分、あんまり中国映画とか見ないけど、ジョン・ローンって今何を?
調べてみたら現在65歳になっているはず。もう引退したのかな。

この映画がいきなり人生最悪なシーンから始まる。戦犯として護送され収容所に入れられて自殺未遂。そして幼少時からの回想シーンが続く。
この皇帝は、辛亥革命、クーデター、内戦、満洲国建国、逮捕投獄、労働改造、文革…、庭師として生涯を終える。人生ハードモードすぎる。
溥儀の皇后婉容が一番不幸で見ていてつらい。紫禁城を追い出され早々に夫婦の関係は冷め切る。花食ってるシーンは哀れ。運転手との子どもは関東軍の甘粕に殺害。アヘン中毒を悪化させ気が狂って置き去り…。
第2夫人文繍は雨のなかふらっといなくなる。この人もかなり悲惨な末路をたどった…。この二人の心情的なつらさは大人にならないとわからない。

溥儀はダマされ流されどんどん顔面蒼白になっていく。最悪な生き地獄を味わう。清国皇帝一族の悲惨すぎる末路。
王朝の最期と言うのは記録に残ってないものも含めて毎回こんな感じだったかもしれない。

ベルトルッチ監督の演出があざやか。黄色いカーテン、白いカーテン、目の前で閉ざされる門、どのカットも色鮮やかですばらしい。すべてハッとさせられる。
元皇帝陛下を何の敬意もなくあそこまで粗雑に扱えるのは中国人ならでは。取り調べする検察官(?)が毛沢東のような髪型。三ツ矢雄二に似てる。今回さらに「未来少年コナン」のレプカ局長にも似てると感じた。

坂本教授の甘粕が活舌が悪すぎるw 「ぜんぶ日本のものだ!」と叫ぶのは日本人の感性からするとやりすぎな気がする。心の中ではそう言っていても日本人にはタテマエがある。教授は甘粕より近衛首相に見えた。
川島芳子はもっと美人女優にやってもらいたかった。嵯峨浩ももっと可憐な感じにしてほしかった。

飼っていたネズミを門にたたきつけて殺すシーンは目をそむけたくなる。あれは幼年期の終わりを示すために必要なシーン? ハムスター飼ってる人は見る時注意。
書庫に放火される夜、心細いとベッドにやってきた正室、そしてまた側室がやってくるのだが、皇帝「キミも来なよ」ってなるシーンは、初めて見た当時「?!」ってなった。

オリジナルだと219分あるそうだ。今回の放送がどのシーンがとか確認してないけど、印象に残っていたものがいくつかなかったことはわかった。
今回放送された吹き替え版が地上波初のときのものかどうかも自分にはわからない。

2018年8月19日日曜日

長澤まさみ「古沢さんのセリフは覚えやすい」

プラスアクト2018年6月号を手に入れた。長澤まさみの「コンフィデンスマンJP」に関するインタビュー&グラビア記事があったから。250円でゲット。

グラビア4ページ、インタビュー2ページという内容。肝心のグラビアがこんな衣装にこんなヘアスタイルという、男ウケのまったくない新鮮さの何も感じられないグラビア。
顔のアップになってるか立ってるかしゃがんでるかの違いしかないというもの。これは買わないでもよかったかもしれない。

この雑誌はバックナンバーも販売されているようなので詳しくは紹介しないが、まさみが古沢良太脚本について語っているのが新鮮かと思う。
「歩きながらセリフを考えるっておっしゃっていました。だから、セリフが生きているんだなって。古沢さんの台詞は覚えやすいんですよ。」 
「それはたぶん、喋りやすい口語として、ちゃんと書かれているから。説明ゼリフだとしても、口語で考えないと、喋りにくい台詞ってあるんですね。でも、古沢さんの台詞はスッと入ってくる。難しい内容を話していたとしても喋りやすくなるんです。」
古沢脚本が俳優たちにっとっても人気がある秘密はそこにあった。

だが自分は、まさみが中堅女優として立派に対等に論理的にセリフというものへの考えを述べていることにも感心した。

あと、ダー子のキャラづくりのために現場ではテンションを高いままに保っていたのに、取材のとき小日向さんから「時々うるさいなって思う」と言われてた。
「誰よりもテンションが高いのは小日向さんだった」「英国紳士って設定はどこにいっちゃったんだよ」とまさみは反論。

その一方で「小日向さんは劇団で培ってきた、あらゆる技術を持っている方。盗むところがたくさんあるので、勉強になることが多かったですね。」ともフォロー。
まさみはベテラン俳優との共演を毎回こんな感じで自分のものにしていた。感心。
「(3人は)性格的に似ているなって思いました。つかず離れず、人のことは全然気にしない(笑)。それぞれがマイペースだったので、現場には、とても居やすかったです。」
そして、まさみが仕事を引き受けるオファーの基準は「脚本が面白いかどうか」だとも語る。そうすることで「自分がいいと思ったり、信じてやったと言える作品が出来るようになりました。」

まさみに仕事を選ぶ権利のなかった時期のドラマが不評なのは仕方がないことだった。キャストが先に決まってダラダラとアテ書きするようなドラマが面白いはずがなかった。
「意欲は増したかもしれません。とはいえ、お芝居に対しては仕事という感覚のほうが私は強いので、楽しいというよりは、疲れたなとか大変だなっていうほうが大きいです(笑)。」
女優としてのまさみは常に真面目。ここ数年、多くの若手からも慕われるようになってるし、なにより若い女性ファンが増えた。
とくに「コンフィデンスマンJP」(6月度ギャラクシー賞を受賞)が評価され、長澤まさみを再発見した人が多かったのは、まさみオタとして、自分にとっても喜び。
自分から言わせるとまさみは10代のころから信条は変わっていないわけだが。

PS. どうやら映画版「コンフィデンスマンJP」の撮影が始まっているようだ。

2018年8月18日土曜日

綾辻行人「迷路館の殺人」(1988)

綾辻行人「迷路館の殺人」(1988)の1992年講談社文庫(1998年第20刷)を手に入れた。100円。
こいつが自分にとって3冊目の綾辻行人。これまでに「時計館」「水車館」と読んできてそのどれもが面白かったので期待して読む。

引退した偏屈老推理作家が建てた迷路館。そこで誕生パーティーをするというので弟子の作家4人と編集者夫妻と評論家、そして島田が呼び寄せられる。
約束の時間にみんな集まると、執事から「主人は自殺しました」「莫大な遺産をかけて、今から迷路館を舞台にした推理小説を書いてもらいます」「被害者は自分という設定でワープロで書いてください」という遺言テープが公開される…。

これがまたしても「そんなバカな!」というリアリティ無視のクローズドサークル連続殺人。やっぱこれだなという雰囲気重視の本格推理もの!
邸内がややこしい迷路になってる。こんな建物って法令上建てていいの?知らんけど。

NEC文豪と富士通オアシスのワープロのキー入力の違いとか時代を感じるな。綾辻作品3作目だったけど、なんだかもうすでにマンネリでどれも同じかも…。こいつは江戸川乱歩や横溝正史っぽさのある古典的なサイコパス犯罪者ものか…、と思いきや、だがしかし!?

いやあ、こいつも参りました!w 大どんでん返し!最後の最後まで3回驚かされた。まさかの叙述トリックかよ!なんか、あの人物だけ描写が曖昧なのは序盤でちょっと疑問に思ったけど、流してそのままにして読んでいて、まんまと作者の術中に嵌った。

自分、初めて読んだ綾辻作品が「時計館」だったので、「鹿谷門実」という名前にはなんとなく記憶があったのだが、幸運なことにそいつの正体を忘れていたw なので、エピローグとプロローグでも叙述トリックに嵌められたw 

びっくり驚いて、それでいてサスペンスホラーとしてストーリーも面白いっていう。

綾辻行人ってすごい!w 大エンターテイナー。これからも読んでいく。改訂新版が出るたびに、分かりやすく一部を書き換えていたりするらしいので、これから読む人は最新のものを読むべきだろうと思う。
「十角館」もすでに旧版を100円で手に入れてしまっている…。いずれ読んで感想を書く。

2018年8月17日金曜日

橋本愛「美しい星」(2017)

昨年公開された「美しい星」(2017 GAGA)という映画があるので見てみる。橋本愛が出ているので見てみる。何も予備知識がない。

「美しい星」は三島由紀夫原作のSF小説。三島は格調高い美しい日本語の名人で文豪。だが、通俗的小説も書く。この本は以前から読みたいと思っているのだが未だに見つけられず読めないままでいた。映像で見れるなら先に映画で見ようか。

文学作品の映画化って近年あまりない。難しい挑戦だから?
今回、「桐島部活やめるってよ」「紙の月」などで巨匠の道を歩み始めている吉田大八監督脚本による映画化。それなりに期待していいはずだ。
主演はリリー・フランキー。そして橋本愛、亀梨和也、中嶋朋子、佐々木蔵之介というキャスト。話題にならないほうがおかしい。
だが、あんまり話題を聞かなかった。映画賞レースにも絡んでいない。なぜだ?

主人公は気象予報士リリーさん。微妙に嫌な大人。この映画、表向きは爽やかでも微妙に不快な人々が沢山出てくる。いやらしい大人、傲慢な大人、無礼な大人、今の日本社会そのものだ。そして微妙に嫌な映像の連続で嫌~な気分になっていく…。
自転車便フリーターの長男(亀梨)は路上でトラブった代議士の秘書を手伝うようになり、妻(中嶋)はマルチに引っ掛かる。
女子大生の娘(橋本)も周囲の人々とのストレスだらけ。「パークス」とはまるで真逆な暗さ。
ミスコン出場を強引に迫られたりとか、いきなりCD渡してお金を要求するストリートミュージシャンとかw
で、そのCD聴いて感動しちゃったりして金沢でのライブまで追っかけ。どんどんはまり込んでいく。

このミュージシャンがヤバイ目つきでUFO体験を語る。なんか、90年代に若者たちがオウムにはまり込んでいった過程を見せられてるかのよう。ヨガやったって「解脱」なんてできなかっただろ。呼びかけたってUFOが来るわけないだろ。ダメだこりゃ。
この幸薄い感じの橋本愛がやたら美しくて困る…。
この映画の中盤にある亀梨がエレベーターの中で悪夢を繰り返し見るシーンと、橋本愛がUFOを見るシーンが「なんじゃこりゃあ!」と叫びたくなるぐらいに凄まじい映像作品になっていてぶったまげた。
たぶんドラッグやったときの感覚ってこうだろうな…と思わせるテンション。この数分間が大興奮!凄すぎた。

撮影カメラマンが近藤龍人なのか!どうりでビシッと決まってる。なんか、映像が美しくて、BGMがコンテンポラリーっぽくてかっこよくて引き込まれる。音楽は渡邊琢磨という人だ。

やがてリリー一家それぞれが妄想に突き動かされて行く。リリーは生放送で天気予報そっちのけに迫りくる地球温暖化の脅威を説く。予測不能なトリッキーな発言に周囲がどんびき困惑。この人、狂ったの? こんなん1回でクビだろ。テレビのニュースショーの現場もリアルに描く。

内容が意味不明社会派議論系シュールSF。誇大妄想癖のある人同士の巻き起こす大放送事故。実はミステリー?
吉田脚本は「不都合な真実」的な地球温暖化議論をしていると見せかけて家族がテーマか? 戦後日本社会への批判か? 着地点が見えず、ずっと落ち着かない。意味が分からないw
橋本愛がとてつもなく美人。橋本が好きな人は必ず見るべき。
佐々木蔵之介の正体が何だったのか?最後までよくわからなかった。亀梨のIDが無効になってたの、どうゆうこと?秘書はどこ行った?

この映画、自分にはめちゃめちゃ面白かった!壮大でシュールなコメディとしてクオリティが高い。何が何だかわからないがスゴイと感じる映画。
映像と音楽と編集がハイセンス。自分の吉田大八の評価がさらに増した。もっと話題になっていい。もっと見られるべき作品だ。広くオススメ。
PS.佐々木蔵之介と亀梨の食事シーンに、2か月ほど前にたまたま行ったラーメン屋がロケ地に使われいてびっくりした。立川市の五日市街道沿いにある八王子ラーメン三番亭という店。

普通に美味しいラーメンで、ラーメン自体の写真を撮り忘れた。
八王子ラーメンって、しょうゆラーメンに刻んだタマネギが載ってるもの?自分、あんまりラーメンに詳しくないけど、今後は八王子ラーメンという謎ジャンルを専攻して行きたいと思った。
店内に「美しい星」ロケの状況を伝えるものは何もなかった。だが、私立恵比寿中の子のサインはあった。