2018年8月11日土曜日

アガサ・クリスティー「死との約束」(1938)

アガサ・クリスティー「死との約束」(1938)を読んだ。高橋豊訳の昭和53年ハヤカワ・ミステリ文庫(昭和56年第8刷)で。こいつも100円で購入。
APPOINTMENT WITH DEATH by Agatha Christie 1938
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ…。」エルサレムの夜のしじまに漂い消えて行った男女の会話を立ち聞きしたポアロ。この出だしは「オリエント急行」と似たパターンだ。

この本は前半4割が英国人女医サラーと、奇妙な緊張感を持ったアメリカ人旅行客一家を中心とした旅行記と心理分析がひたすら続く。殺されるであろう人物は想像がつくのになかなか事件が発生しない。ポアロも登場しない。

この物語の主人公はアメリカ人旅行客ボイントン一家。家長である醜い老婆が精神的サディストで、子どもたち全員を支配していることを、サラー医師と高名なフランスの精神科医ジェラール博士は見抜く。そしてサラーはこの一家の次男レイモンドと恋をしている…。

そして舞台はヨルダンのペトラ遺跡へ。そこで心臓の弱い家長の老婆があたかも自然死したかのように死んでいるのが発見される。
クリスティ女史お得意のラブロマンス中東トラベルミステリー。クリスティを代表するような作風。

あいかわらずクリスティの資産家登場人物たちは誰一人働いていないw 酷い抑圧を受けてもその家から逃げ出そうとすらしない。

家族全員が登場人物たちのキャラクターと心理、紛失した強壮剤と注射器、相互に矛盾する供述。
動機を持っている家族同士が相互をかばい合い、疑惑の目はぐるぐると移動するのだが、読者にぜったいに犯人を予想させないのがクリスティ女史のミスリードと力業。ええ~っ、またこのパターンかよ!

「オリエント急行」と同じく被害者が死んでみんなハッピーなはずなのに、なぜか今回は犯人を見逃さないポアロ…。

誰が犯人か?こいつの言ってることが本当ならこいつが嘘でと考えつつ、一瞬のアリバイの穴をついて犯人を指摘できる読者がいるとすれば、そいつはポアロ並みの名探偵。自分は最後の最後まで、まるでわからなかったわw まるで予想外。

この1冊もとても面白く読めた。クリスティ初心者にもオススメ。古典的名作!
真犯人には「そんなバカな?」というツッコミも感じなくはなかったけど、こういうのは古典ミステリーではよくあるパターン。戦前の英国ならそういうこともありえるなと寛大な心で読みたいw エピローグではめでたくみんなハッピーでほっこり。

調べてみたらピーター・ユスティノフのポアロで1988年に「死海殺人事件」として映画化されていた。死海はぜんぜん舞台になっていないw 2008年のスーシェ版もあるようなので見たい。

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