2018年8月16日木曜日

ランドル・ギャレット「魔術師を探せ!」(1964, 1965)

ランドル・ギャレット「魔術師を探せ!」(新訳版)という文庫本を100円棚で見つけた。
とくに読みたいとリストアップしてた本でもなく、ただ1964、1965年の作品なのに「新訳版」ということは、よほど読み継がれる名作なんだろうと推測した。

自分が手に入れたものは公手成幸訳2015年版ハヤカワ・ミステリ文庫の第1刷。2015年に出たばかりなのに100円なら迷わず買っておく。
THE EYES HAVE IT AND OTHER STORIES by Randall Garrett 1964,1965
裏解説に「架空の欧州を舞台にした名作本格ミステリの新訳版」とあるから読んだのだが、これ、ミステリーじゃなかった。殺人事件が起こるファンタジーSFだった。

プランタジネット朝が8世紀に渡って現代まで続いている英仏が舞台。科学は発達せずに魔法が発達してしまったパラレルワールド。南北新大陸とヨーロッパの大半を支配するイングランド国王の弟、ノルマンディー公リチャード直属の捜査官ダーシー卿が魔術師マスター・ショーンと事件の捜査に乗り出す。
今日だと鑑識が科学的に証拠集めをするところが、魔法で証拠を得る。

「その眼は見た」「シェルブールの呪い」「青い死体」という短編3本を収録。

これ、どんな映像を思い浮かべて読んだらいいかわからなかった。中世がそのまま20世紀まで続いているという架空の世界を考えたこともなかった。
たぶん、「薔薇の名前」や「ハリー・ポッター」? 人々の服装や街並みは表紙イラストを参照にするべき?

困惑しながら慣れないままに1本目「その眼は見た」を読む。
魔法で捜査するとは言っても主人公ダーシー卿は魔法を使えない。そのタレントを持つ魔術師のみが使える。
その世界観に慣れたころに事件が解決。ふーん、とは思ったけど、それほど面白いとも思わなかった。

「シェルブールの呪い」はスパイ小説みたいな展開。ヨーロッパで英仏帝国と張り合える国はポーランドしかない。ダーシー卿はいちおう推理のようなことをして犯人を名指ししてるけど、ファンタジーなので、その推理過程がまったくどうでもいいw

残念ながらこの本は自分と合っていなかった。途中から耐える感じで読み進めた。
おそらく「ハリー・ポッター」とか読む大人なら楽しく読めるかもしれない。

だが、3本目の「青い死体」はわりと古典的短編ミステリーだったと言えるかもしれない。これが一番満足度が高い。あざやか名探偵だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿