2023年11月30日木曜日

赤川次郎「ト短調の子守歌」(1987)

赤川次郎「ト短調の子守歌」を読む。これも処分するというのでもらってきた大量の赤川次郎文庫本の1冊。
この本は1987年に新潮文庫から刊行された後、2002年に角川文庫化。

小松原麻子17歳はデビュー1年でトップアイドルに登りつめたスター。新宿でイベントをやれば数千人集まる。
だがその裏で麻子を狙撃しようとする男がいる。向かいにあるビルで邪魔だと土曜出勤の老会社員を射殺。

そして麻子の通う高校の教室にライフル銃を持って乱入し人質を取って立てこもり。犯人の要求は「麻子ちゃんに会わせろ!」

アイドル麻子はなんら悪くない。警察から同行を求められる筋合いもないし、17歳女子児童が保護者同伴なしに警察の質問に答える義理もない。

80年代はたぶんまだ「メディアスクラム」という言葉がなかった。とにかくマスゴミが80年代90年代にやらかしまくったから今日がある。現場に大量に押し寄せ、タバコの吸い殻を棄てていく。関係者宅に無断侵入。偉そうにヒステリックに質問を浴びせカメラを向ける。
もうさすがに現在はここまで酷くはない。当時は職倫理とか自制とか期待できるほど、人間としての質が足りてなかった。

とにかく読んでいて酷い気分になる。麻子の事務所社長は麻子のアイドル人生が終わるとしても、いかに儲けるか?しか考えない。同事務所同僚アイドルも「麻子が自〇すればよくね?」と嗤う。追悼盤で儲けようと画策。

時間を守らなかったからと人質の1人(ヒロインの親友)を逃して背後から狙撃。
人質の親たちもハチャメチャ。マネージャーを買収し麻子の居所を探り、罠にはめておびき寄せ散弾銃で脅して拘束し、人質を交換するように犯人と交渉。現場をさらに混乱させる。

犯人の母親を名乗る女性も登場。犯人に呼びかけるも、この女性が偽物?!
麻子ファンが校門前に集結し「麻子ちゃんを護る!」と場所を占拠しガソリンをかぶるなどハチャメチャカオス展開。読んでいてひたすら酷い話で気が滅入る。

登場人物キャラがみんな立っている。読んでいて唯一爽快なのが、最初に麻子を匿う近所の大学教授(人を見る目がある)、そして人質が狙撃されてからの現場刑事(熱血に正義)。

しかし、犯人が人質をとったとしても、犯人の要求は一切聞くべきではない。ノビチョクガスで犯人(人質も)動きを止めて閃光弾かましてSATが突入するしかない。スナイパーが犯人の頭を撃ち抜く意外に選択肢がない。
しかし、この時代はドローンカメラもロボットカメラも特殊部隊もいない。ひたすらダラダラしながら現場がカオス。

おそらく赤川次郎せんせいには、あさま山荘事件とか三菱銀行人質事件とかがイメージにあったものと思われる。さらにマスコミが殺到して混乱する様子は豊田商事会長刺殺事件、オウム真理教村井幹部刺殺事件なども連想。

もしかすると「またアイドル映画になったらいいな」という書きぶりだった気がする。多くの視点と切り出し方が映像的。まるでフジテレビ本広映画、君塚映画。
(もうさすがに立てこもり犯と80年代のようなクソマスコミ映画は現実的でない。中井貴一と濱田岳の2016年「グッドモーニングショー」もわりと酷い出来だった。)

しかし、このヒロインはどことなく「クリミィー・マミ」。リメイクするなら、脚本を書き換えれば1話分にできそうだ。アニメならリアリティが必要ない。

ちなみに、赤川せんせいによれば「ト短調」とはモーツァルト:ピアノ協奏曲第18番の第二楽章をイメージしてるらしい。マレイ・ペライアがピアノを弾き振りしたものを愛聴とのこと。

2023年11月29日水曜日

赤川次郎「ネガティヴ」(1994)

赤川次郎「ネガティヴ」(1994)を集英社文庫(1998)で読む。「小説すばる」1992年12月号から94年2月号まで「サイコ・ホラー・ノヴェル」と銘打って15回連載されたもの。
こいつも処分されるというのでたくさんもらってきた古い赤川次郎文庫本の中からランダムに取り出して読んだ1冊。

僚子は一般的専業主婦だったのだが夫の角田が人気流行作家になってしまい生活の質がグレードアップ。良い部屋に住めるようになり、高校生の娘エリも私立の女子高へ通う。
だが夫は外に愛人を作って浮気。ほとんど家に帰らない。「俺が稼いだ金をどう使おうが自由」

そんな僚子にハンサムで危険な雰囲気のジゴロ俳優が接近。スリに奪われた財布を取り戻してくれたり、雨の日にパーティーまで送り届けてくれたり。なぜかこちらの行動予定を把握している。
こいつは角田の雇った俳優。以前にドラマのオーディションで会ったのだが、暴力事件の前科があってドラマ出演は無理だった。この中原という俳優に黒木という役名を与えて妻を誘惑させ、それをネタに小説を書こうという寸法。

これが読んでいてすごく厭。あまりページをめくりたくない。
海岸に顔と指紋を焼かれた男の死体。歯形から身元が中原と判明。ということは黒木は誰?
被害者について聴きこみをしてる刑事が角田に接触。中原と男女の関係になってたらしい元マネージャーに話を聞きにいこうとしたら、火災?!マネ死亡。

さらに僚子をラブホテルに呼び出して黒木に写真を取らせ、写真をネタに体を要求してきた元教師も死体となって発見。さらに刑事も殺害。次々と死体。

これ、読んでる最中はヒッチコックの難解なやつかと思ってた。「異色のサスペンス」と言われたら「はあ、そうですか」と言わざるを得ないような、まるでダメなクリスティのスパイスリラーみたいな、ハチャメチャでカオスな展開。

黒木は僚子を好きになったと言っておきながら、娘のエリに手を出そうとホテルへ。
さらに角田はまだ書き上げてもいない連載分の原稿が編集者の手に渡っていることに混乱。

これ、ページの残りから判断して、どうしたって現実的な着地をしそうもない。
と思ってたら、やっぱりSFホラーなジャンルだった。それを知らずに読んだ読者は「…。」という虚無の気持ちになったかもしれない。赤川次郎は自身がカフカにでもなったつもりでこれを書いたのかもしれない。

これまで予備知識なしにに赤川次郎を6冊読んだのだが、どれも他人にオススメできるほどには面白く感じてない。強いて挙げるならホラー小説「白い雨」は面白かったと言えるけど。

2023年11月28日火曜日

赤川次郎「恋愛届を忘れずに」(1986)

赤川次郎「恋愛届を忘れずに」を1989年角川文庫版でよむ。初出は1986年実業之日本社刊。
こいつも無償でたくさん頂いてきた古い赤川次郎文庫本の一冊。
「週刊小説」誌に昭和59年から60年にかけて掲載された4本の短編を収録した一冊。掲載順に読んでいく。

「私への招待状」
仲良しアラサーOL二人組に届いた結婚披露宴招待状は何者かの悪戯?ハンサム若手エース社員を巻き込んでズルズルと犯罪に手を染めていく悪女短編。松本清張を読んでるかのよう。

「恋愛届を忘れずに」
いつもより奮発して銀座でランチしてたら、事務員OL風の女の子に泥棒呼ばわりされた青年。話を聴くと会社の命運がかかった書類をちょっと目を離したすきに盗まれたらしい。こんな新入社員にそんな大事なものを運ばせるとかなにかおかしい…。
これは都会的でおしゃれな素人探偵カップルの話。クリスティや横溝の昔からあるような短編。

「町が眠る日」
団地の林で絞殺された少女の遺体を発見した老人とその後のドタバタ。

「私からの不等記号」
昭和60年って40歳会社員と16歳女子高生が援助交際してても何も問題なかった?!

どれも暇つぶしに各10~20分もあれば読めるライトな読物。たぶん、数日後には忘れてる。表紙イラストはまるで内容を表していない。

2023年11月27日月曜日

赤川次郎「静かな町の夕暮に」(1988)

赤川次郎「静かな町の夕暮に」(1988)を1991年講談社文庫版で読む。
これも無償でたくさんもらってきた90年代以前の赤川次郎文庫本のひとつ。タイトルからはどんなストーリーなのか?ミステリーなのかすら想像つかない。

高校2年生ヒロイン指田法子は田舎町で母と二人暮らし母子家庭。父は幼いころに死んだと聞かされている。
そんな田舎町に東京から、中年にさしかかった映画スター上原洋介の映画撮影隊がやってくる。町はその話で持ち切り。町をあげて歓迎。

撮影も終わってお別れパーティー。え?母がいつのまにか上原と親密な関係になっていて再婚?!
それから演劇部後輩(美少女)が殺される。お別れパーティーの日に何か目撃したことをほのめかしていた。
町の嫌われ者(金持ち)の息子が被害者と交際していたというだけで疑われる。だが、その父親が逮捕。さらに身を潜めていた息子が自殺。
(何も証拠がないのに情況から犯人を決めつけ逮捕する冤罪警察への、赤川次郎からの批判を感じ取る)

ヒロインは何かに気づく。犯人と対峙し危機一髪と言うその時に、刑事が登場しピンチを救う。愚鈍そうに見えた刑事だったのだが、だいたいの事件の背後は調べていて事後語り。

ああ、この本もどこかで読んだり見たりした映画ドラマのような、典型的な「ザ・赤川次郎」青春ミステリーだった。

それにしてもプロローグ(何がなんだかわからない)とクライマックスとエピローグの構成が謎に繋がりがわかりづらい。それに効果的でもない。ページをめくり返して切り貼りするポイントを探した。どうしてこんな構成にした?

2023年11月26日日曜日

赤川次郎「透明な檻」(1991)

赤川次郎「透明な檻」(1991)を1993年新潮文庫版で読む。これは1991年に桃園書房から刊行されたものが初出。
これも大量に無償でいただいた古い赤川次郎の文庫本のうちの一冊。それにしても表紙イラストが時代を感じるし、売ろうという気を感じさせない。どんな内容かも想像できない。

佐田は高校生の娘かなえがいるのだが、娘の高校の美術教師靖代(20代)と浮気している。遊んでいる。ふたりの関係は女子生徒のひとりに目撃もされた。
遊ばれた靖代は佐田を恨む。佐田みたいな男は許せないという、靖代の大学時代の友人ライター恭子は、かなえの親友貴子を暴行した犯人が佐田だという噂を流す。(恭子も佐田とワンナイトラブしてんのに。)

貴子の祖父湯田(会長)は投書1枚だけで佐田が犯人だと決めつけて佐田を破滅させようとする。
噂しかなく証拠もなにも佐田のことも知らずにそこまで暴走できる老人が企業をちゃんと経営できると思えない。

てか、平成の時代なんだから、相手の言うことは録音して証拠にしろ。警察も何ひとつ証拠がないのに3日間も拘留して取り調べるな。会社も社員が3日警察に取り調べを受けたというだけでクビにして、後で冤罪とわかったらどうなるんだ?
てか一方的に悪い噂流され讒言誣告されてるなら、こちらからも「真相」を怪文書で流すぐらいの気概をみせろ。

読んでいてひたすらイライラする。まるで表紙イラストと内容が合っていない大人の厭な世界。

浮気男が自身のしてきた行為の報いを受ける話。まるで松本清張の厭な転落ものを読んでる感覚。

2023年11月25日土曜日

石持浅海「月の扉」(2003)

石持浅海「月の扉」の2019年乃木坂文庫版(久保史緒里が表紙)も「疾風ガール」と同じ店で売られていたので同時に拾って連れ帰った。110円。

2003年に光文社カッパノベルズとして刊行、2006年に光文社文庫化。そしてこの2019年乃木坂文庫で22刷。たぶん多くの人々に読まれた名作なのかもしれない。タイトルの前に「長編推理小説」と銘打ってある。
ちなみに自分がこの作家の本を読むのは2冊目。

国際会議開催中で厳戒態勢の沖縄那覇。重大な決意をもって空港に集まった男女3人。那覇発東京行きの航空機に登場。そして乗客から乳幼児3人を奪って人質にしてハイジャック。このへんの手口は模倣されないのか心配になる斬新で新しい手法。

犯人の要求は警察に不当逮捕されたカルト集団「キャンプ」主催者石嶺の釈放。正確には空港に連れてくるだけで良いというもの。
石嶺は不登校児童と一緒にキャンプをして子どもを立ち直らせる手助けをする団体をやっていただけ。父親の同意は得てキャンプに参加させ家に戻したのに、母親が騒いで略取誘拐ということで逮捕。それは不当だと主張。
通常なら逮捕されるような案件でもないし警察幹部も反対。なのに上層部のどんな権力が働いたのか?

そんな騒動の最中、機内トイレ内部で、人質となった乳幼児の母親女性が血を流して死んでいる…。
この小説で探偵役となるのがたまたまカップルで搭乗していた青年。座間味島のTシャツを着ていたというだけで犯人グループから「座間味くん」と呼ばれる青年。
犯人はそこにいた「座間味くん」に意見を求める。この座間味くんが異常に頭が良い。

犯行グループのリーダー格・柿崎は、座間味くんの頭脳を見込んで、女性不審死事件の真相の調査を依頼w なぜなら自分たちはハイジャックで忙しい。県警本部と交渉もしないといけない。
ハイジャック犯に機内トイレという二重密室での不審死?の調査を無理矢理やらされる。いやあ、この設定は新しい。

犯人グループは当局が時間通りに要求を飲まないと、人質をひとりづつ殺していくと通告。警察が時間を引き延ばそうとしてると判断。よってひとりを殺害しようとするのだが、そこは座間味くんが説得。「すでに女性の遺体があるじゃないか」と。
トイレで発見された不審死遺体を機体の外に投げ落とす。警察はさらに緊張。人質の乗客が殺害されたのか?内部で一体何が起こってる?!

初めて読むジャンルのサスペンス。予測不能という点においては100点。だが、登場人物たちの言動すべてに納得はいかなかった。そんなトリックで?とも感じた。

座間味くんのキャラが良い。最後まで本名すらもわからない。何者なのかもわからない。
この作者はたまたまふらっとそこにいた青年が謎を解いて去っていく…というパターンが好きなようだ。

2023年11月24日金曜日

誉田哲也「疾風ガール」(2005)

誉田哲也「疾風ガール」の2019年乃木坂文庫版(光文社文庫)の新品同様品がそこに110円で売られていたのですかさず確保。表紙が齋藤飛鳥だったので。今年の8月のこと。

この若者向け音楽青春小説は2005年に新潮社から刊行され、2009年に光文社文庫化。この2019年乃木坂文庫キャンペーン版で13刷というから多くの人に読まれた本らしい。

自分、数年前にもこれを読もうとしたのだが、若者会話を書き起こしたようなシナリオ台本みたいな小説は受け付けない。こういう青春小説は苦手。この本を2時間ほどで読み通したが、やはり苦手だった。

バンドマンを諦め先輩の芸能プロに就職した祐司は、ライブハウスでスターの原石のようなギター少女夏美を見つけて「契約しないか?」とアタック。
そんなやりとりを読んで楽しむ…というような小説。たぶん「NANA」みたいな、かっこいいバンド少女映画になりそうな小説。

中盤でバンド仲間の薫が自殺。本名も経歴も何もわからず遺体の引き取り手も見つからないまま東京都監察医務院に保管されている…。
そういえば、薫が以前にとある日本酒の一升瓶を眺めていた…。ただそれだけの理由で祐司と夏美は新潟へ。なんだか赤川次郎ミステリーっぽくなってきた。

だが結局、ストーリーとしては薄味な青春小説。たぶん中高生なら楽しめる。
自分としてはこれはなくてもいい本だった。たぶん齋藤飛鳥も読んでないと思う。しかし表紙の飛鳥のポートレートはとても良い。

2023年11月23日木曜日

齋藤飛鳥「ETV特集 個人的な大江健三郎」

11月11日放送のETV特集「個人的な大江健三郎」齋藤飛鳥(25)が個別インタビューコメントで登場。スガシカオ、中村文則、こうの史代、朝吹真理子といったミュージシャンや作家たちと並んで登場。それぞれが大江健三郎体験を語るという番組。たぶん飛鳥は若者代表。

この番組の企画を聞いたときビビった。「大江健三郎体験について語れ」と言われても、そんなのゼミであろうと教室であろうと恐怖でしかない。まして全国放送で流れるなんて。
齋藤飛鳥さんは私物の新潮文庫「死者の奢り・飼育」という短編集をスタジオに持ち込んだ。これ、自分も同じもので読んだ。新潮文庫は新旧によって微妙に表紙の活字レイアウトが違う。
齋藤飛鳥が初めて大江健三郎を読んだのは十代後半だったという。それはつまりアイドルグループ乃木坂46在籍中。こんなに可愛らしい子が、大江健三郎を読むとか信じられる?
ちなみに自分も大江健三郎を初めてめくったのが高校の図書室。たぶん「個人的体験」とか「性的人間」とか、分厚い全集の中からちょこっと読んだだけだった。これは自分の国語力と理解力と人生経験では太刀打ちできないと思ったw

飛鳥女史が今回語ったのは大江健三郎の初期代表作にして東大在学中に書かれ芥川賞を受賞した「飼育」のほう。
(自分としては「死者の奢り」のほうがインパクトあった。「飼育」は不快な感情が強かった。)
なんと飛鳥女史に言わせれば「飼育」は「アイドルとして活動していて、自分の環境が変わったりだとか、ピンチに直面した時期だったこともあって、救ってもらおうと読み始めたわけではないが、結果的に自分を救っていただいた作品」だったという。
どうやら、初センターに選出された時期らしいので、17歳から18歳にかけての時期だと推測。
「この世界はきれいごとだけでは生きていけないな…と生意気にも十代の時から思っていた」
「そういう気持ちを人前で言う事に恥ずかしく、悪いことのように思っていた」
「こういう感情を持っていていいんだとか、この感情は間違いじゃないんだとか、これを感じている人が世の中にたくさんいるんだろうなとか、わかったことが十代の私には嬉しいことだった」
「飼育」において、黒人兵の頭と「僕の腕」を父が鉈で打ち砕いたシーンに飛鳥女史は付箋を貼っていた。
(ちなみに、同じページに「兎口」という言葉がある。自分がこれを「みつくち」と読むと知ったのは谷崎潤一郎を読んだときだった。)

斬られた手を「臭うな」と言われ「あれは僕の臭いじゃない。黒人の臭いだ。」と言う箇所。ここが「少年期の残酷な形での終り」。
「ここで少年から大人になっている。」と指摘。「成長するに伴って失っていくものがたくさんある」「子どもが大人になるって残酷だなあ。」
「他人にも自分にも期待するから裏切られて嫌な気持ちになったりストレスになったりする。期待しないことが一番だって、ずっと思いながら生きていたので、それとも通じるものがあった」

「汚いものを先に知っておきたい」
「読むと元気はでないが、そんな自分も悪くないな、もっと酷いやつもいるなと。」

そんなトップアイドルだった齋藤飛鳥による読者レビュー。良い番組。
常日頃、大江健三郎や村上春樹を読んでいる齋藤飛鳥は、おそらく、男子たちの性欲の強さや変態性に対して寛容であろうことが推察される。たぶんそんな男を見たとしても「やれやれ」としか思わないはず。

2023年11月22日水曜日

夏目漱石「三四郎」(明治42年)

夏目漱石「三四郎」をまだ1回も読んだことがなかった。今年の夏になってやっと読み通した。

新潮文庫版も岩波文庫版も、角川文庫版も表紙がしっくりこない。なのでしかたない。明治42年の春陽堂版(昭和51年ほるぷ社復刻版)がBOで300円で売られていたのでこいつで読む。発売時の価格は金壱圓参拾銭。
おそらく前の所有者が大事に保管していただけで、たぶんほとんど読んでないもの。自分が最終保持者となるつもりで方々に持ち運んで読む。

実は「三四郎」ははるか昔に一度最初の方だけ読んだことがあった。漱石の小説は出だしは面白かったりするのだが、だんだんと難渋になっていく。それは「吾輩は猫である」「草枕」も同じ。

三四郎の熊本から東京大学へ入学するために上京するまでの汽車の旅シーンが、この本で一番面白い。
いきなり食い終わった弁当箱を汽車の窓から投げ捨てようとして風で押し戻されて女の顔に当たるとかw今ならSNS拡散され炎上して大激怒案件。

そして汽車で出会っただけの女と名古屋の安旅館での一夜。部屋も一緒、風呂も一緒、布団も一緒のあげく、別れ際「あなたは餘つ程度胸のない方ですね」と笑われる件。

さらに廣田先生(とても40がらみ紳士とは思えない好々爺)との出会い。「日本は滅びるね」の件もぞわぞわする。心の中での初対面紳士にたいする見方と分析が失礼。

理科大(理学部のことか?)で同郷の野々宮宗八との初対面。
そして三四郎池(当時はそんな名前じゃない)を眺めながら「現実世界は危なくて近寄れない気がする」
そして里見ストレイシープ美禰子との出会い。

佐々木與次郎という友人ができる。真面目すぎる三四郎は週に40時間も講義に出てて「バカなの?」「下宿屋のまづい飯を一日に十返食らって物足りる様になるか考へて見ろ」例えが面白い。
與次郎「女は怖ろしいものだよ」三四郎「恐ろしいものだ、僕もしってゐる」気が合う。

自分、この小説を日露戦争後の明治トレンディドラマだと思ってた。前半はほぼ男友だちだけとの交流シーンのみ。

運動会見物がつまらないw 
「砲丸投げ程腕の力の要るものはなからう。力の要る割に是程面白くないものも澤山ない。ただ文字通り砲丸を抛げるのである。藝でも何でもない。」
この時代の東大文科学生三四郎はわりとのんびりぼんやり野郎だが、そこは漱石先生。たまに性格のひねくれた江戸っ子イズムがにじみ出る。
漱石先生は本当に文章が上手いしおしゃれ。マネしたくなる。
「そのうち秋は高くなる。食慾は進む。二十三の青年が到底人生に疲れてゐる事が出事ない時節が来た。」
しかし、それ以外はスノッブ会話が多すぎる。

あと、この時代はいい若いもんが団子坂に菊人形見物に行くしかないのかw
東大生ですら毎日こうなら庶民はもっと退屈だったに違いない明治時代。

妹の看病に出かけた野々宮のために留守番してて近所で轢死体が発生。死体を見にでかけて、その話をしたらうらやましがられるって、いったいどんな料簡なんだ明治時代。

あと、借金で周囲に迷惑をかける不良学生と自分は出会わずにすんでよかったなと思った。

明治の知識人、大学生がどんな会話をしていたのか知れるという点以外の魅力に乏しい青春小説。面白さのわかりづらいドラマ。

2023年11月21日火曜日

西野七瀬「走馬灯のセトリは考えておいて」(2023)

西野七瀬(29)「世にも奇妙な物語 2023秋」「走馬灯のセトリは考えておいて」に主演。このシリーズに主演できるということは人気女優と言ってよい。利重剛朝加真由美との共演。

これ、柴田勝家「走馬灯のセトリは考えておいて」(ハヤカワ文庫)という原作があるようだ。この作家の本はまだ読んだことがない。脚本は嶋田うれ葉。演出は岩田和行。制作はフジテレビと共同テレビ。
流して見た感じだと、たぶん近未来の謎サービス業モノ。「ライフログ」を活用し「ライフキャスト」を生み出す技術者でクリエイターが西野。死にゆく老人のためのセットリストプランニング。
世の中には多くの読まれていない本が存在する。このドラマシリーズは、映画にも単発ドラマにもならない短編なんかを映像化してくれるので貴重とは言える。単発ドラマ企画として頑張ってたように思えた。
「あな番」のころのキレイで可愛らしいお姉さんとしての西野を最近見ていない気がする。今回も地味めな西野。
西野はまだまだ乃木坂時代から応援してるファンが多く付いてる。その可愛らしさをわかってるのは自分だけじゃない。

2023年11月20日月曜日

倉知淳「星降り山荘の殺人」(1996)

倉知淳「星降り山荘の殺人」(1996)を講談社文庫新装版(2017)で読む。
今年の8月にBOを物色してて110円で見つけて確保しておいたもの。この作家の本を読むのは初めて。

中堅広告代理店で短気を起こして課長代理を突き飛ばした杉下。社長の命によって星園というハンサム文化人タレントの付き人にさせられる。星園が「スターウォッチャー」と名乗ってる。この人がわりと頭が良くて紳士。
で、秩父の山奥のキャンプコテージをどうするか?という意見を聞く企画会議のようなものに参加させられる。

そこの社長が客人の付き人杉下を自身の下僕のように扱って不愉快。
なんか、やたら冗長な会話が続く。なかなか事件が起こらない。80年代90年代のユーモアのセンス。
埼玉県秩父がすっごい豪雪地帯のように描かれる。え、異常気象?何日も山奥のキャンプ場に足止めされ殺人事件が発生するクローズドサークルもの。

終盤、探偵役に相当する人物がエラリー・クイーンのようなロジカルな思考で犯人を指摘。
あまりに些細でどうでもいい、わかるようなわからないような推理。読んでてどんどん鼻白む。
この本、ハズレかな…。犯人の詰め方に何か新しい仕掛けでもあるのかな…と読み進めた。

ぐがぁぁ~!どんでん返しに驚いた。「探偵と助手」に関する驚くべきミスリードが仕掛けられていた。そう来たか~?!これは予想できなかった。ここは新機軸。かなり野心的。
でも、驚いたのはその一点のみ。

2023年11月19日日曜日

千姫・原菜乃華

原菜乃華(20)が大河ドラマ「どうする家康」に豊臣秀頼の正室千姫役で出演。
この大河ドラマ、自分はまったく見ていない。主役が徳川家康って新鮮さがない。正直、もう家康とかよくね?って思ってしまい初回から見てないw
で、菜乃華姫が「歴史探偵」どうする家康コラボSPに出演。秀頼ゆかりの地を訪問した。

あの有名な方広寺の「国家安康」という鐘銘。「初めて見た!」と目を輝かせる菜乃華。(ここ、自分もまだ行ったことない)
この日本一有名な言いがかり事件。この件で家康と本多正信を擁護できる人いんの?

そして役の上での夫・頼家への想い。大阪城を見て感じるものがあったのか、菜乃華「頼家は聡明で堂々として度胸がある」と人物評。

2023年11月18日土曜日

スティーヴン・スピルバーグ「未知との遭遇」(1977)

スティーヴン・スピルバーグ脚本監督の「未知との遭遇 Close Encounters of the Third Kind」(コロンビア・ピクチャーズ)をついに初めて見る。ファイナルカット版というやつを吹替え版で見る。
これ、日本でも1978年に公開された超有名作。音楽はジョン・ウィリアムズ

なんでこれを見ようとしてなかったのか?なんだか映画タイトルから内容をイメージしづらい。空飛ぶ円盤UFOがやってくるだけというだけで映画になるのか?

最近、ドラえもん「未知とのそうぐう機」を読んでいて、そういえば「未知との遭遇」ってまだ見たことなかったなと。
あと、第11回アメリカ横断ウルトラクイズ第6チェックポイントが「デビルスタワー」。そういうところが見るモチベーション。

メキシコの砂漠シーンから始まるのだが、何やら混乱してることはわかるのだが、何が起こってるのかよくわからない。1945年に行方不明になった航空機が出現したらしい。夜中に太陽が出たとは?
さらにインディアナポリス航空管制レーダーに謎の飛行物体。

異常を察知する子ども。動き出すおもちゃ。街中が停電。次々と異常な現象。UFOの目撃。なんだかホラー映画の雰囲気。「宇宙戦争」のような混乱。モンゴル、インド、世界各国で混乱。視聴者も劇中の人々のように混乱。人知を超えた何かとの出会い。

この映画、外国人学者としてフランソワ・トリュフォーが出演してるって、今回初めて知った。
ゾルタン・コダーイって音をハンドサインで表すとかやってたのか。ずっと謎の音階。

夫(リチャード・ドレイファス)がおかしくなって家族崩壊。自宅をゴミ屋敷化するとか、まるで認知老人のいる風景。
神の啓示を聴いたとか言う人はみんなこんな感じかもしれない。モーゼやノアもこんな人だったかもしれない。しかし現代のアメリカで「そうするしかない」とか迷惑な逆ギレでしかない。
不穏さとカオス。奥さんがヒステリックになるのも納得。70年代アメリカの田舎風景を感じられる。
ずっと「メッセージ(Arival)」という映画のことも想ってた。終盤が「レイダース 失われたアーク」みたいだった。何が起こるのか?とずっと待ち続けるSF映画。

前半の不穏さ表現は感心。だが正直、これが日本でもヒットした理由がわからない。自分は一度もUFOを見たことがない。こんなでっかいシャンデリア型UFOとコンタクトしたら、バイブスぶち上がるに違いない。

2023年11月17日金曜日

齋藤飛鳥「いちばんすきな花」(2023)

齋藤飛鳥はフジテレビ系木曜10時ドラマ「いちばんすきな花」(2023)にも出演している。今年の秋は齋藤飛鳥出演ドラマが「マイホームヒーロー」と2本ある。

塾の先生多部未華子姉と同居妹。いつも普段着で居間にいる。
恋に消極的な姉に「いい人」がいないのか?と進展を気遣ってる。ある意味、母親のような妹。
これが、予想に反して出番が少ない。たぶん毎回平均1分。
このドラマは齋藤飛鳥めあてで見るというオタにとっても、見逃したところでそれほどのダメージはないドラマ。
自分、今も齋藤飛鳥ちゃんを17歳ぐらいのように見ている。ナイーブで華奢で何もできない少女だと思ってた。そう思いたい自分がいた。
しかし、最近になってようやく飛鳥が25歳なんだということを受け入れられるようになってきた。もういろいろと大人。

2023年11月16日木曜日

谷崎潤一郎「痴人の愛」(大正14年)

谷崎潤一郎「痴人の愛」(大正14年)を新潮文庫版で読む。初めて読む。
タニザキの中でもこいつはヤバいやつなんじゃないか?と感じてた。手に取るのに慎重になっていた。
だが、この小説はとてもPOPで読みやすい。文豪による日本文学の名作なのに、印象はほぼラノベ。

ざっくり説明すると、真面目なサラリーマン技師が、15歳のカフエエ女給を「自分が立派な女に育てたい!」ともらい受け、英語や音楽やダンスを習わせ、給料のすべてを注ぎ込み、夫婦ごっこをした末路。

たぶん、真面目にお金を貯めた社会人が、お金をどう使っていいかわからなくなり、高尚なことをしてるつもりで推しに貢ぎ続けた話。たぶんAKBや坂道アイドルにのめり込む男性の心理。いやあ、読んでいてヤバい。

この小説のヒロインナオミが千束町に生れて育った江戸っ子娘。見た目がまるで西洋ハーフ美少女。勝気でわがままで贅沢放蕩三昧で、何ひとつ家事をやらない。しかも嘘つき。美少女が男を完全に掌の上で転がす。

鎌倉でひと夏を過ごしたい!というナオミはダンスで知り合った若い男たちと遊びたいがために河合をだます。まるでパパ活。

男はナメられつづけ、たまに顔面蒼白。そして激怒。だが、可愛らしい美少女ナオミちゃんには結局甘い対応。それはまるで落語。
十代の女の子と30代男。美少女の体を洗ったり、手ぬぐいの手綱を加えさせられ「馬さんごっこ」とか、完全にヤバすぎる。
だが、それはすべてのドルオタ男の夢かもしれない。やはりタニザキはヤバい。

熊谷と関係を切れず、外国人とも遊び歩くナオミにブチギレて「出て行け!」となるのだが、結局またプロ女の手練手管。
あれだけ貢がせておいて、「お友だちの関係」だからと手を触れさせない。焦らして焦らして何もさせない。悪魔のような美少女。ムダ毛を剃ることまで求めてくる。
気が狂いそうな男は「また馬になるから乗ってくれ!」失笑しながらツッコまざるをえない。正直、めちゃめちゃ面白かったw

30代男性が年の離れた美少女に夢中になってはいけない。すべてのドルオタ男子はこの小説を読んで戒めとするべき。
読んでる最中、自分はずっとナオミを齋藤飛鳥で脳内イメージ。しなを作ったり甘えたり、反抗的で気が強かったり、男をバカにしてきたり。

ちなみに、NAOMIは旧訳聖書ルツ記に出てくる女性の名前でクリスチャンネーム。古代ヘブライ語で「楽しみ」を意味する…とか、自分は初めて知った。

2023年11月15日水曜日

齋藤飛鳥「マイホームヒーロー」(2023)

齋藤飛鳥(25)が現在、MBS制作の深夜ドラマ「マイホームヒーロー」に出演してる。人気漫画のドラマ化作。
主演は佐々木蔵之介。齋藤飛鳥はその「天使のような娘」役。

一般的なサラリーマン佐々木蔵之介は妻木村多江がいて、大学生娘齋藤飛鳥がいる。
そんな「普通の幸せ」にとっての脅威が娘のDV彼氏。初めての彼氏なのに粗暴で反社。ファミレスで久しぶりに会ってみて顔に痣があるとか、父は衝撃。

で、娘の部屋でこの反社彼氏をなりゆきで殺害。なにやら松本清張っぽい。
この段階で正当防衛を主張すればよかったのに、死体を消去遺棄するために妻といっしょに奔走。以下、ドキドキハラハラなドタバタとサスペンス。反社仲間が追及してくる。
そんな両親の秘密と、反社組織の暗闘を天使齋藤飛鳥は知らないまま。ちょっとは疑問に感じることはあっても追及しない。でもそれは平穏を保つのには適切な振舞。
佐々木と反社組織の戦いがメインなので、齋藤飛鳥の出演シーンの割合が持っていたほど多くない。
だが女子大生齋藤飛鳥がかわいい。この子はオールウェイズ高い得点を出してくる。
現在25歳なのだが、まだまだ女子高生のように見える。今、齋藤飛鳥ほど「人間離れして完璧にかわいいな」と思える若手女優は他にいない。
乃木オタたちからもこのドラマは面白いと評判らしい。今後もウォッチしていく。

2023年11月14日火曜日

江戸川乱歩「三角館の恐怖」(昭和27年)

江戸川乱歩「三角館の恐怖」を読むべく、光文社文庫「江戸川乱歩全集」第15巻を手に取った。

長らく才気を感じさせる短編を書けないでいた乱歩。昭和25年に報知新聞に「断崖」(原稿用紙37枚)連載を機に注文が舞い込む。
長編を依頼されたのだが、戦争中に読んで感銘を受けたロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」(1932)を日本を舞台に書き換えた「三角館の恐怖」を昭和26年に「面白倶楽部」(光文社)に1年連載。
(このロジャー・スカーレットという作家は2人の女性作家の合作ペンネームらしい。数冊の本を出したがもう忘れられている。この当時、乱歩はこの作品をベスト級に賞賛していた)

これ、小学生のころにポプラ社シリーズで読んだことあったはずだが、まるで内容を覚えていない。なので今読む。

その前に、他の収録作も順番に読んでいく。

「青銅の魔人」(昭和24年)
これも小学生のころポプラ社版少年探偵団シリーズで読んでるはずだが、やはりまるで内容は覚えていない。
青銅でできた歯車の音をさせた怪人が高級時計を盗んでいく。そして明智探偵と小林少年の活躍。
まあ、時代を感じさせる。「きたない浮浪児」という言葉は今の若者たちはわかるだろうか?

「虎の牙」(昭和25年)
予告されていた段階でのタイトルは「巨人と怪人」だった。連載開始時より本タイトルに改題。(ルブランのルパンシリーズと同じタイトルだが関係ない)
神出鬼没の人さらい魔法博士と明智探偵、小林少年の対決。これもトリックを使い回した子ども向け娯楽作。とくに言うべき感想もない。

「断崖」(昭和25年)
これは大人向け。自分は読むのが2回目。男女の会話から見えてくる犯罪。悪女の告白。現代の読者にはどうってことない内容かもしれない。

「三角館の恐怖」(昭和27年)
話の筋書きは原作そのままに、文章は私流に自由に書いたもの。連載第3回で犯人当て懸賞が予告され、第9回で末尾に「読者への挑戦」を掲載。犯人当てを挑んだ。

築地の外国人居留地の「三角館」は震災も戦災も耐えそこに建っている。双子の老兄弟が正方形の土地に建つ屋敷を対角線上にふたつに等分して暮らしている。弁護士の森川は兄・蛭峰健作(70)に呼び出されてやってきた。

先代の残した遺言では2人の双子兄弟(拾われた捨て子)のどちらか長生きしたほうに全財産が譲られる。兄には二人の息子がいる。弟の蛭峰康造には実子がおらず養子と養女がいる。養女の桂子には証券業を営む夫の鳩野芳夫がいて三角館で同居している。この鳩野以外の蛭峰家の子供たちはそろいもそろってみな生活無能力。父に遺産が渡らないと、みんな路頭に迷う。

病気で先のない兄健作は弟康造に遺産を均等に割ることを提案。だが長生き競争に勝利しそうな弟は提案に応じる理由はない。
康造の家では手提げ金庫から現金が少しずつ抜き取られているという事件が発生している。康造が鳩野にその件で相談している最中、何者かによって射殺。犯人が来ていたコート、帽子、ピストルは雪の積もった庭に棄ててある。

篠刑事と森川弁護士がホームズとワトソンのごとく事件を調査。するとこんどはエレベーター密室で、弟が先に死んだけど遺産は均等に分ける…という署名をしようとした兄健作老人までもが刺殺。
さらに猿のような顔をした不気味な老執事にも殺害予告。篠刑事は真犯人の目星がついている様子。犯人を罠にかける。

資産家のお屋敷で、遺産相続をめぐる殺人事件。とても古典的なシチュエーション。
海外作品を日本に置き換えた作品だと聞いていたが、登場人物たちの名前を日本人に置き換えたという程度で、ほぼ日本要素ゼロ。
読んでいるときは「こういうのでいいんだよ」感。たぶん、推理小説を初めて読むという中高生には刺さるかもしれない。

真犯人の殺害動機は意外っちゃ意外だが、それほど納得もいかない。
とても30年代の英米ミステリーの王道らしい。しかし、いつまでもこんな内容では飽きられるのも致し方ない。今ではもうこの作品もあまり話題にならない。

今作をもって、江戸川乱歩で気になっていた作品はほぼ読んでしまった。

2023年11月13日月曜日

遠藤さくら「トラックガール」(2023)

気づいたら遠藤さくら主演「トラックガール」が10月から地上波とBSフジで放送されている。これはFODで配信されるためにつくられたやつ。

原案はトラックめいめい®、脚本はたかせしゅうほう、企画・演出は林希。博報堂、ROBOT、共同テレビなどなど。
ヒロインは運送会社勤務トラックドライバー。乃木坂の可憐な花で細くてnon-noモデルでガーリーな遠藤さくらが男職場のトラック運転と荷下ろしして、仕事終わりに酒を飲む。ただそれだけのドラマ。よくこんな企画のドラマが通った。
運送会社の日々と常識が描かれている。トラックドライバーって船頭みたいなものかと思っていたのだが、その大量の荷物を降ろして積むのも仕事なのか。それは女性がめずらしいに違いない。
若い女が屈強な男たちからナメられることも多いが、紅一点として優しく姫として扱われる。
そして酒。トラックドライバーはキツイ仕事なのでそれなりに給料は高いはずなのだが、このヒロインは高い酒は飲んでいない。それに、酒のつまみが半額シールの貼られたスーパーの総菜。
遠藤さくら、かわいい。齋藤飛鳥ちゃんが特に可愛がっただけはある。調べてみたら、もう22歳なのかよ。もう制服JKはできないのか。
こんな表情でもかわいい。ジャージ姿も可愛くしようとしてなくてむしろかわいい。
毎回ある酒飲んで「あ”-~っ」ですらカワイイ。

録画したものをCMカットすると21分少々しかない。たぶんFODオリジナルよりも各話5分ほどカットされてるかもしれない。でもまあ自分にはこの地上波版で十分。