2023年11月16日木曜日

谷崎潤一郎「痴人の愛」(大正14年)

谷崎潤一郎「痴人の愛」(大正14年)を新潮文庫版で読む。初めて読む。
タニザキの中でもこいつはヤバいやつなんじゃないか?と感じてた。手に取るのに慎重になっていた。
だが、この小説はとてもPOPで読みやすい。文豪による日本文学の名作なのに、印象はほぼラノベ。

ざっくり説明すると、真面目なサラリーマン技師が、15歳のカフエエ女給を「自分が立派な女に育てたい!」ともらい受け、英語や音楽やダンスを習わせ、給料のすべてを注ぎ込み、夫婦ごっこをした末路。

たぶん、真面目にお金を貯めた社会人が、お金をどう使っていいかわからなくなり、高尚なことをしてるつもりで推しに貢ぎ続けた話。たぶんAKBや坂道アイドルにのめり込む男性の心理。いやあ、読んでいてヤバい。

この小説のヒロインナオミが千束町に生れて育った江戸っ子娘。見た目がまるで西洋ハーフ美少女。勝気でわがままで贅沢放蕩三昧で、何ひとつ家事をやらない。しかも嘘つき。美少女が男を完全に掌の上で転がす。

鎌倉でひと夏を過ごしたい!というナオミはダンスで知り合った若い男たちと遊びたいがために河合をだます。まるでパパ活。

男はナメられつづけ、たまに顔面蒼白。そして激怒。だが、可愛らしい美少女ナオミちゃんには結局甘い対応。それはまるで落語。
十代の女の子と30代男。美少女の体を洗ったり、手ぬぐいの手綱を加えさせられ「馬さんごっこ」とか、完全にヤバすぎる。
だが、それはすべてのドルオタ男の夢かもしれない。やはりタニザキはヤバい。

熊谷と関係を切れず、外国人とも遊び歩くナオミにブチギレて「出て行け!」となるのだが、結局またプロ女の手練手管。
あれだけ貢がせておいて、「お友だちの関係」だからと手を触れさせない。焦らして焦らして何もさせない。悪魔のような美少女。ムダ毛を剃ることまで求めてくる。
気が狂いそうな男は「また馬になるから乗ってくれ!」失笑しながらツッコまざるをえない。正直、めちゃめちゃ面白かったw

30代男性が年の離れた美少女に夢中になってはいけない。すべてのドルオタ男子はこの小説を読んで戒めとするべき。
読んでる最中、自分はずっとナオミを齋藤飛鳥で脳内イメージ。しなを作ったり甘えたり、反抗的で気が強かったり、男をバカにしてきたり。

ちなみに、NAOMIは旧訳聖書ルツ記に出てくる女性の名前でクリスチャンネーム。古代ヘブライ語で「楽しみ」を意味する…とか、自分は初めて知った。

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