2023年11月10日金曜日

殊能将之「ハサミ男」(1999)

殊能将之「ハサミ男」(1999)を講談社文庫版(2002)で読む。
この作家の本は「美濃牛」「黒い仏」とすでに2冊読んで、もう読まないでいいかと思ってた。だが、この「ハサミ男」が一番の名作ミステリーらしいので期待して手に取った。

なんとすでに2人の美少女を惨殺してきたサイコシリアルキラー「ハサミ男」が主人公。こいつの一人称語り。
教育系出版社バイトとして知りえた名簿から、目黒区鷹番在住の3人目のターゲット「樽宮由紀子」を選び出す。そして入念に事前調査と尾行。

だが、ハサミ男の模倣犯が先回りして樽宮由紀子を殺害。首を絞めて殺害し、首にハサミを刺すという手口を模倣して。
第一発見者になってしまったので、持っていたハサミは遺体発見現場公園の叢に棄てて置く。こいつが後に警察の注目する遺留品となる。

3人目の犠牲者の殺害犯は一体誰か?なんとサイコシリアルキラー「ハサミ男」が自ら捜査?!

「わたし」が多重人格者?医者と語り合っているのだが、こいつは脳内にいる別人格?
読んでいて要領を得ない。たぶん、ここぞという場面で叙述トリックがさく裂するタイプのミステリーだろうと想像しながら、違和感に拘泥せずさらさらとページをめくっていく。

終盤、そのページに到達したとき読者は大混乱。これまで脳内でイメージしてきた映像を大転換し整理し直さないといけない。非情に入り組んでいて全体像を理解するまでぐるぐるさ迷う。

ああ、これはかなり野心的な意欲作で力作。真犯人も意外だが、ハサミ男の正体も意外。完全に騙された。
警察は75点の活躍はするのだが、90点にも至っていない。さらなる真相にいつたどり着くんだ?と期待して読みすすめたのだが、真相は読者にしか見えていないという終わり方。

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