2023年11月23日木曜日

齋藤飛鳥「ETV特集 個人的な大江健三郎」

11月11日放送のETV特集「個人的な大江健三郎」齋藤飛鳥(25)が個別インタビューコメントで登場。スガシカオ、中村文則、こうの史代、朝吹真理子といったミュージシャンや作家たちと並んで登場。それぞれが大江健三郎体験を語るという番組。たぶん飛鳥は若者代表。

この番組の企画を聞いたときビビった。「大江健三郎体験について語れ」と言われても、そんなのゼミであろうと教室であろうと恐怖でしかない。まして全国放送で流れるなんて。
齋藤飛鳥さんは私物の新潮文庫「死者の奢り・飼育」という短編集をスタジオに持ち込んだ。これ、自分も同じもので読んだ。新潮文庫は新旧によって微妙に表紙の活字レイアウトが違う。
齋藤飛鳥が初めて大江健三郎を読んだのは十代後半だったという。それはつまりアイドルグループ乃木坂46在籍中。こんなに可愛らしい子が、大江健三郎を読むとか信じられる?
ちなみに自分も大江健三郎を初めてめくったのが高校の図書室。たぶん「個人的体験」とか「性的人間」とか、分厚い全集の中からちょこっと読んだだけだった。これは自分の国語力と理解力と人生経験では太刀打ちできないと思ったw

飛鳥女史が今回語ったのは大江健三郎の初期代表作にして東大在学中に書かれ芥川賞を受賞した「飼育」のほう。
(自分としては「死者の奢り」のほうがインパクトあった。「飼育」は不快な感情が強かった。)
なんと飛鳥女史に言わせれば「飼育」は「アイドルとして活動していて、自分の環境が変わったりだとか、ピンチに直面した時期だったこともあって、救ってもらおうと読み始めたわけではないが、結果的に自分を救っていただいた作品」だったという。
どうやら、初センターに選出された時期らしいので、17歳から18歳にかけての時期だと推測。
「この世界はきれいごとだけでは生きていけないな…と生意気にも十代の時から思っていた」
「そういう気持ちを人前で言う事に恥ずかしく、悪いことのように思っていた」
「こういう感情を持っていていいんだとか、この感情は間違いじゃないんだとか、これを感じている人が世の中にたくさんいるんだろうなとか、わかったことが十代の私には嬉しいことだった」
「飼育」において、黒人兵の頭と「僕の腕」を父が鉈で打ち砕いたシーンに飛鳥女史は付箋を貼っていた。
(ちなみに、同じページに「兎口」という言葉がある。自分がこれを「みつくち」と読むと知ったのは谷崎潤一郎を読んだときだった。)

斬られた手を「臭うな」と言われ「あれは僕の臭いじゃない。黒人の臭いだ。」と言う箇所。ここが「少年期の残酷な形での終り」。
「ここで少年から大人になっている。」と指摘。「成長するに伴って失っていくものがたくさんある」「子どもが大人になるって残酷だなあ。」
「他人にも自分にも期待するから裏切られて嫌な気持ちになったりストレスになったりする。期待しないことが一番だって、ずっと思いながら生きていたので、それとも通じるものがあった」

「汚いものを先に知っておきたい」
「読むと元気はでないが、そんな自分も悪くないな、もっと酷いやつもいるなと。」

そんなトップアイドルだった齋藤飛鳥による読者レビュー。良い番組。
常日頃、大江健三郎や村上春樹を読んでいる齋藤飛鳥は、おそらく、男子たちの性欲の強さや変態性に対して寛容であろうことが推察される。たぶんそんな男を見たとしても「やれやれ」としか思わないはず。

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