2023年11月1日水曜日

トルストイ「戦争と平和」(1869)

トルストイ「戦争と平和 Война и мир」(1869)工藤精一郎訳の1972年新潮文庫の平成17年新装版全4巻で読む。ついに人生初トルストイ。人生初「戦争と平和」。覚悟はしてたけど長かった。2週間かかった。

ナポレオン戦争の時代とロシア貴族たちを描いた大作。なにせ全登場人物が559人と聞いてビビッてた。
だが、最初から最後まで登場する主要な人物(トルストイによる創作)はそれほど多くない。それを把握してから読むのが楽になった。

まず一人目はフランス帰りの庶子ピエール(小太り)。遺言によりいきなりロシア屈指の資産家ベズウーホフ伯爵となる。この時代のロシアは農奴制荘園の時代。貴族は働く必要はないけど仕官したりしてる。戦争になれば従軍。
この人は奥さんが悪妻。その件でなぜか決闘。離婚するかと思いきや、冷めた夫婦関係を続ける。なぜかフリーメーソンに入会。(入会する過程と儀式がすごく詳しく描かれてる。)

そしてアンドレイ・ボルコンスキイ公爵。この人は第1巻の終りにアウステルリッツ三帝会戦で死にかける。ナポレオンにそこにある死体として扱われる。だがフランス軍の捕虜となった。その後ロシアに帰国する過程はあまり詳しく描かれず、急に故郷に戻ってて読んでて戸惑った。

そしてロストフ家の人々。第2巻冒頭で出征してたニコライが賭博に熱中。ロシア文学ではそういうギャンブラーが多い。顔面蒼白になるほど負ける。どうしてそこまで…。

そしてはねっ返り娘ナターシャ。年の離れたアンドレイ公爵からプロポーズされる。(この小説、多くが夜会とか舞踏会とか貴族の社交場での会話とシーンが続く。閉口するほど続く。)
このナターシャがアンドレイという婚約者がいながら(1年という長い婚約期間中に)、駆け落ち事件を起こして婚約破棄。それはアンドレイと友人のピエールも困惑。

モスクワの空には明るい彗星。第3巻ではついにナポレオン軍のモスクワ侵攻。
スモーレンスクが陥落するとドイツ人総司令官が解任。アウステルリッツで無能呼ばわりされた老クトゥーゾフ将軍が現場復帰。婚約者の浮気で思うところあったアンドレイ公爵も最前線へ復帰。そしてボロジノ会戦。

ロシア軍もフランス軍も多大な犠牲。アンドレイも腹が割ける重傷で瀕死。そこにロストフ家のナターシャが看病。

貴族はモスクワを放棄し退避。モスクワに残ったピエールはフランス軍士官と交流。炎上するモスクワ。ナポレオンを殺したい。
短剣持って燃える街をさ迷ってるうちに略奪フランス兵ともみ合う。そして捕らえられる。

第3巻は面白かったのだが、第4巻でふたたび退屈。
アンドレイ公爵の死、ロストフ家のペーチャの戦死と戦争の悲惨さ。
だが、やっぱり貴族たちの風景に終始。ピエールとナターシャ、ニコライと公爵令嬢マリヤの平和のホームドラマ会話。

エピローグでトルストイの「歴史学とは?」という考察と総括がながながと始まって、「え?終わった?」と気づく。
アンドレイ公爵の遺児と肖像画のラストは味わいがあるっちゃあるかもしれない。

読み通すのに3週間ほどかかった。長すぎた。いろんな場面があって、読後にもうあんまり覚えてない。ただ、19世紀初頭のロシア貴族たちの雰囲気を感じることはできたという感想。

トルストイ伯爵という人物が出てきて、トルストイ家の自慢。
バグラチオン公爵って、独ソ戦のバグラチオン作戦のバグラチオン?!
この本を読んだところであんまり世界史のお勉強にはならない。だが、この本に登場した人々を世界史の教科書で見かけたら親近感は感じるかもしれない。

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