2021年12月31日金曜日

村上春樹 「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(2021)

村上春樹「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(2021 文藝春秋)という本を手にとってしまった。自分、村上春樹をほんの数冊しか読んでない。エッセイとか読んだことない。

村上春樹の本を読めばこの作家がクラシック、ジャズ、ロックについて造詣が深いことは容易にわかる。この本では著者が60年代中頃から集めて貯まった膨大なライブラリー(気づいたら同じ曲のレコードが数枚ずつ溜まってしまっていたという)から486枚を選び出し、写真付きで簡単な解説を書いたもの。
そのほとんどが中古で安価で購入したもの。お気に入りの演奏家だから買ったというものもあれば、ジャケ買いしたものもある。数枚セットで1ドルとかで買ったものもある。

今では音楽はネットで聴くものとなってしまったが、昔はレコードのカタログを入念に見て、名盤ガイド的な本に目を通して、やっとデパートの陳列ケースにあるレコードを買うというものだった。とくにクラシックレコードは毎回真剣勝負のような目利きが必要。村上春樹も買って売っての繰り返し。それでも自宅に1万5千枚くらいレコードがたまる。

この本は名盤ガイドでなく、村上春樹所蔵のLPレコードを取り出して「こんなのあるよ」と紹介するだけ。褒めているものもあれば「面白くない」と貶してしるものもある。この本が何の役にたつのか?作者本人も「何の役にもたたないかもしれない」と言っている。レコード評としては読んでいてそれほど面白いものでもない。

ちなみに村上春樹はカラヤンやフルトヴェングラーといった王道はほとんど買ってない。そしてワーグナーとブルックナーにはまったくと言っていいほど興味を示さない。そのへんは自分と似ている。

50年代後半に一般化したステレオ録音という技術によって、各レーベルはお抱え演奏家に短期間の間にモノラル録音からステレオ録音への切り替えを要求した。なので今日ではほとんど忘れられた50年代モノラル録音LPも多数紹介。そのへん、自分はまったく無関心だった。アンセルメのドビュッシーをモノラル盤で聴こうとは思わなかった。ヨッフムのカルミナ・ブラーナにモノラル盤があったことも知らなかった。

どうやら村上春樹お気に入りの指揮者はトマス・ビーチャムイーゴリ・マルケヴィッチだったようだ。自分はビーチャムはほとんど関心持って聴いてこなかったがマルケヴィッチは関心高い。もうちょっと聴いてみたい。

自分も学生時代からクラシックを聴くまくったので、知らない演奏家とかないだろうな…ぐらいに考えてページをめくっていったのだが、LPレコードでしか聴けない忘れ去られた演奏家も村上春樹はピックアップ。ユージン・フォドア(vn)とかまったく名前も知らなかった。

若くして亡くなったジョン・オグドン(p)はCD時代を生きた自分にもそこそこ有名だと思う。あんまり聴いてないけど。
あと、グリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調」は自分はほとんど聴いたことがない。シューベルト「弦楽五重奏曲ハ長調」も聴こうと思ったことすらない。

ちなみに自分はクラシックLPを20枚ぐらい持っている。すべて2000年前後に中古で50円~1000円ぐらいで買ったもの。ネットで聴けたりするのでこの10年まったくターンテーブルで聴いてない。ターンテーブル自体たぶんもう死んでる。
そして今後数年以内に大量のLPレコードが誰かの遺品として中古で出回る…。

2021年12月30日木曜日

清原果耶「おかえりモネ」(2021)

今年の5月から10月に放送されていたNHK朝ドラ「おかえりモネ」は4週分ほど見た。「ドラゴン桜」を見終わったころ、朝ドラが気象予報士ドラゴン桜になってる…と知って。

今回は宮城県気仙沼市登米市が舞台。気仙沼出身のヒロインは高校卒業後に登米の森林組合に就職。そして気象予報士を目指し、東京の気象予報会社で働く…といった感じのストーリー。
第104作目のヒロインは清原果耶(19)。セブンティーンモデルだったし、これまで多くの日本映画で見て来たしで、それなりに知ってる若手アイドル女優。
自分の見た所、清原さんは笑顔が魅力というよりも、ムッツリ無表情、びっくり、困惑という演技が得意。顔が面白い。
ヒロインの妹は蒔田彩珠。ドラマでの蒔田はヒロインの2歳下の妹。清原も蒔田も2002年生まれだが、実際は清原が蒔田より学年がひとつ上。母(鈴木京香)が不倫をしてるのでは?という回のふたりは可愛かった。
登米に来ていたスター気象予報士西島秀俊を見て気象予報士に自分もなりたいと考える。そして受験を決意。
ヒロインの勤務する森林組合には診療所が併設されている。そこに菅波(坂口健太郎)という青年医師がいた。東京から高速バスで隔週で通ってくる。医学部を出た若い医師はある意味で受験の勝者でプロ。この医師がヒロインを「ドラゴン桜」並み熱血指導。
この菅波が変態。見ればわかる。かなり理屈っぽい。理屈にこだわる人でなければ医者に向かない。口癖は「納得いきませんね。」こいつが背後から忍び寄りそう言うたびにヒロインは体が強張り目を丸くする。
モネと菅波のやりとりの面白(コミュニケーション不全)さと緊迫感と異常さだけで序盤は持っていた。それを見たくて見てた感はあるよね。

そんなこんなで色々あって東京編。気象予報士会社でインターンのような日々。朝の情報番組内でのお天気コーナー仕事などを手伝う。このドラマを見て以降、お天気情報担当お姉さんの背後の様子をイメージするようになった。
先輩気象予報士お天気おねえさん神野マリアンナ莉子今田美桜。個性的な顔しててかわいい。ヒロインをイジメる役どころかな…と予想したのだが、裏表のないいい人。

今田美桜はもう24歳になっていた。この子は女優として活躍する前はグラビアアイドル。自分はグラビアアイドルは守備範囲外。それほどタイプでもないので追いかけてなかった。ちょっと検索して水着(ビキニ)画像を見るとカラダがスゴすぎて絶句…。
目もくちびるも丸くて面白い顔。これまでの役はだいたいヒロインの友だち。今後さらに主演女優としてのステップアップを期待したい。
西島らの気象予報士会社が出入りするテレビ局の情報番組のディレクターが高岡早紀。この人、48歳と知ってびっくり。今も十分に見た目と雰囲気がエロい。
この人が34歳の時に篠山紀信撮影で出した写真集がすごくて絶句。ちょっとほしいw

正直、この東京編になってから必ずしも見なくなった。パラリンピック応援企画に乗り出すあたりからしばらく見てない。
ただ、日々ネットで世間の反応は目にしていた。ほぼ「俺たちの菅波」w なんだそりゃ。東京のコインランドリーで偶然出会うとかそんなことってある?!
あと、ヒロインの友人役で恒松祐里も出るというので期待して見てた。東京編ではヒロインの下宿先銭湯に転がり込んでくるなどのシーンもあったのだが、それ以外はあまり記憶がない。

「あまちゃん」以来の東北が舞台の朝ドラとして期待は高かった。震災のあの日あの時、多くの人がほんの些細なすれ違い行き違いで永遠に会えなくなり別れるはめになった。
今もまだ忘れられない心の傷。今も残るスマホの留守電メッセージ。漁師浅野忠信が借金して船を買った直後に津波で船を失うとか、見てらんなかった。

2021年12月29日水曜日

バグダッド・スキャンダル(2018)

「バグダッド・スキャンダル」という2018年にデンマーク、カナダ、アメリカ合作による映画があるので見る。

元国連職員マイケル・スーサンが自身の見聞と内部にいた体験から書いた小説Backstabbing for Beginnersの映画化。それだとどんな映画なのかよくわからないので、邦題はバグダッド・スキャンダル。
監督はペール・フライ、出演はテオ・ジェームズとベン・キングズレー。

国連史上最悪な政治スキャンダル事件「バグダッド・スキャンダル」について、日本では報道を目にすることはあまりなかった。無知であってはいけない。お勉強のために見る。

経済制裁に困窮するイラク国民を救うための人道支援プログラム「石油食料交換プログラム」の裏で行われていた不正により、200億ドルが闇に消えた。
巨大な金と利権が動くところには必ずハイエナが群がる。甘い汁を吸っていく。国連というものは何の役にもたっていないどころか、むしろ害悪であることを強く印象づけた事件。

湾岸戦争後のフセイン政権下、経済制裁によってイラク市民の生活が困窮。で、クリントン政権のアメリカの提案によって、国連がイラクの石油を管理し、販売金を食料・医薬品に変えて市民に届けよう…というプログラムの運営が実は腐りきってた…という絶望。
その全容は、国連側の調査拒否により、いまも不明。

東京五輪も「東北復興」とか「子どもたちに夢を」とかいうテーマがいつのまにか、金に群がる電通・パソナといった利権が骨抜きにし焼け太っていく様をなすすべなく魅せられた。
IOCという貴族政治組織に日本人はウンザリさせられたのだが、国連という組織はそれ以上に腐りきっていた。巨大な組織と言うものは必ず腐敗する。

国連事務次官の特別補佐官で同プログラムの担当者マイケル・サリバン(テオ・ジェームズ)は投資銀行のロビー仕事を辞め、外交官だった亡き父を追い国連での仕事に応募する…ところから映画は始まる。
偉い人コスタ・パサリス(ベン・キングズレー)の意向ですぐに採用が決まる。「彼の子か…」

すぐに事務次官特別補佐官として勤務開始。1995年安保理決議986によって始まった石油食料交換プログラム。「私たちがイラク国民2000万人を食べさせてる」と秘書から説明される。さらに前任者はイラクで事故死したという嫌な情報まで知らされる。
雑貨店にいるとCIAエージェントが接近してくる。「石油食料交換プログラムは誰かに悪用されている。内部に協力者がいる。」
なにせ100億ドルの予算と20億ドルの活動費。これらがきちんと正しく運用されるように監視しないといけない。

イラク市民の生活が改善したかどうか?のサマリーレポートを上司に提出。この上司コスタ・パサリスが長いレポートに文句を言いながらその場でシュレッダー。第一印象から最悪。国連の偉い人にも「ファック!」とか言う人がいるのか。こんな無礼で高圧的な人がいるのか。この男こそがバグダッドスキャンダルのすべてを知る男。その日の夜にはバグダッドへ行かされる。

日本人のイメージする公平と正義は国際政治の現場で通用してない。この主人公も同じように憤ってる。疑問点を質問したりせず粛々と仕事をこなすように言われる。
現地視察で医薬品が闇に流れているらしいと知る。プレスたちカメラを前に病気の少女に狸パシャは涙を流すパフォーマンス。

女通訳から前任者は殺されたと教えられるし、ホテルの部屋には侵入者(諜報機関?)がいるし嫌な感じ。
何より主人公マイケルには上司のパシャが尊敬できない感じがありあり。プログラムを続けるためには国連の邪魔なやつも取り除く。その手伝いをさせられる。これが政治と外交だ。

そしてマイケルはクルド人であることを隠してる女通訳からUSBを渡される。適切な場所で適切な人から発表してほしい。ファイルは暗号化されていて解読できない。そこに諜報機関工作員たちが現れて仲間が殺される。現地国連事務所のデュプレ所長も死んで発見される。やだ、怖い。
あの女通訳ナシームは大物ハニートラップ?!イラクで会ったロシア人フィクサーもニューヨークに来てる?

暗号を解読。サダム・フセインはイラクの原油を不正に安く販売し世界中からキックバックを得ていた。動画ファイルには金を受け取るパシャの姿が。
米英有志連合軍がイラクに侵攻。フセイン政権は倒れたが、イラクはさらに地獄。前政権中枢はみんな粛清。新イラクを担う人材がいない。イラクは金の亡者たちに分割される。

そしてマイケルは国連を崩壊させるかもしれないリストを大手メディア持ち込む。パサリスは身柄引き渡し協定のないキプロスへ逃亡。

世界は汚職にまみれている…という映画。硬派で地味な、映画としての面白要素をそぎ落としたサスペンス映画。
国連はこんなやつらがのさばってるクソ組織。はやくベノン・セバンを逮捕しろ。コフィ・アナン元事務総長も何か言え。

2021年12月28日火曜日

黒島結菜「ボクらの時代」に登場

黒島結菜「ボクらの時代」(12月19日放送)に31日より公開の映画「明け方の若者たち」のプロモーション活動の一環として出演した。共演は北村匠海マカロニえんぴつ・はっとり
この番組は日曜朝に放送されているにしては意外に多くの人が見ている。今は見逃し配信もある。

黒島は映画の宣伝でもないとトークバラエティ番組に出演することもない。何かについて発言する機会も貴重なのでここに書き留める。黒島の話を後に検索できるように要点のみ記録する。
  • 映画のテーマが「大人ってこんなはずじゃなかった」と感じる若者たち。黒島は逆の意味で「こうなるとは思わなかった」という驚きを体験している。
  • 日々を生きるので精いっぱいで夢も欲もなかった。今の自分がこういう仕事をしてるのが意外。
  • オーディションに落ちまくっても悔しいとか悲しいとか感じなかった。16とか17歳ぐらいのとき。大人になったら薄い人間になる気がする。
  • 北村とオーディションで一緒になったことをよく覚えてる。
  • 事がうまく行き過ぎたとき自分を苦しめたいと感じたこともあるが「ムダじゃない?」って思ってしまった。「今をもっとよくすればいいんじゃない?」ってw
  • 女優としてやっていくと腹をくくった瞬間…というのは今まで一度もない。目の前の仕事をひとつひとつやってきた。たぶん来年「朝ドラ」やって終わったときに変るかもしれない。
  • 中学生のときが最大のモテ期。何度も同じ場所で告白された。断ったw
  • 動物に囲まれて暮らしたいw 犬と猫に囲まれて過ごしたい。
  • 仕事とプライベートはしっかり分けたい。ごっちゃにするとわからなくなる。
  • エゴサーチはたまにする。番組出た日とかリアルタイム検索する。こういうふうに思ってるんだ…ぐらい。ショックを受けたり真に受けたりはしない。
  • 家族は感想を言ってきたりはしない。「映画見たよ」ぐらい。
  • でもお父さんは私以上にエゴサーチしてると思う。
  • お母さんは応援してる感じではない。「見られる立場にいるんだからちゃんとしなさい」とか言われる。
  • 私は人見知り。最初に言っておけばよかった。
というような内容。わりと北村が仕切って喋っていた。それほど驚きの内容はなかったのだが、黒島が中学時代に告白されまくってた話は初めて聴いた。
そして黒島結菜は昨年に引き続き今年もNHKの深夜帯ドラマ「悲熊 2」に出演。

だが、昨年よりも出番は少なくなっていた。これはあまり見る必要を感じない。ジャ〇ーズ俳優のファン向け企画?着ぐるみ衣装を着たドラマとか、一体どの層が見たいと思うのか?
そして黒島結菜はHighwayWalker誌2022年1月号において「19歳の時にクルマの免許をとった」ことを明かした。それ、なんで今まで黙ってた?
友だちの実家のある富山まで6時間かけてドライブしたりもしたそうだ。レンタカーで山梨や長野へキャンプに出かけたりもするそうだ。青春をアクティブに謳歌してていいなあ。

2021年12月27日月曜日

満洲国 交錯するナショナリズム(2021)

平凡社新書967「満洲国 交錯するナショナリズム」鈴木貞美(2021)を読む。

自分、以前から満洲国について関心を持ってるけど、満洲国については教科書であまり教えてくれない。台湾や朝鮮とおなじぐらい満洲国については日本史でしっかり教えるべきだと思う。もっと映画やドラマでとりあげるべき。

台湾や朝鮮は外地ではあったがそこの住民には日本国籍が与えられた。だが満洲国は違う。この本では「満洲国を日本の傀儡国家とみなすだけでは何も見えてこない」という危機感から、満洲国を満州族と漢民族、日本軍部と政治派閥、満洲国の経済基盤、出版、文化、などから読み解く一冊。

かなり文化面での記述と列挙ページが多い。そこはひたすら目で活字を追うだけになって正直退屈した。思ってた本と違った。読み難かった。
自分の関心のある歴史トピック、関東軍、日本政府、外交、に関して知りたい人は別の本を読まないと満洲国についての理解は進まない。この本は自分と合わなかった。歴史のお勉強教材として高校生にはオススメしない。

だが、それでも読んでよかった。建国大学という存在は自分には見えてなかった。
満洲国とそこに関係を持った膨大な人々。今後他の機会にそれらの名前を見ることがあったら、この本は役にたったと言えるかもしれない。

2021年12月26日日曜日

天空の蜂(2015)

東野圭吾の原作(1995)を堤幸彦監督で映画化した「天空の蜂」(2015 松竹)を見る。
迫本淳一の制作。脚本は楠野一郎。たぶんメインビジュアルから判断して江口洋介が主演。本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛という豪華なキャスト。

1995年、錦重工業小牧工場へやって来た技術者湯原(江口洋介)とその妻子。家族サービスで自分の開発した日本最大のヘリCH-5XJの自衛隊納入を見せる?この家族が関係が冷え切ってる。雰囲気が悪い。
子どもたちが勝手に格納庫に侵入。ヘリ内部にも侵入?!子供も大人も「大丈夫」とか言うけど何も根拠がない。規律ガバガバ。テロリストの遠隔操縦で子どもを乗せたまま飛び立つってしまう?!w

大量の爆薬を満載したまま(?)福井県の高速増殖炉上空でホバリング。燃料が切れたら落下。日本政府を脅すテロリストは「天空の蜂」を名乗る。荒唐無稽。
県警の刑事が手塚とおるなのだが、こんな気持ち悪い刑事っている?前髪いじるな。気持ち悪い人だから警察に入って出世を目指すのか。
警察がまず反原発活動家市民から洗うのが笑った。

高速増殖炉のいちばん偉い人が本木雅弘?そもそも江口洋介が技術者というのも合ってないキャスト。
竹中直人が警察庁長官とか、佐藤二朗が県警の偉い人とか、ぜんぜんそう見えない。

議論してる大人たちがバカ議論してて映画に入り込めない。子どもに手動でヘリを操作させるよう指示するとか、無茶だろ。
福島を経験した日本人にはこのストーリーが茶番にしかみえない。みんな何か言う事が可笑しいし言い方がおかしい。
この事態は、ジャンボジェット突入に耐える設計をした増殖炉が責められるのか?爆弾を輸送できるヘリを作った側が責められるのか?

江口のヒステリー妻が異常。他人を罵るなら子どもから目を離した自分を責めろ。まったく共感できない。夫婦間の会話がバカすぎて聴いてられない。
「アナタが血を流す番なのよ!」って、まず自分が喉を掻っ切って神への供物になれ。

仲間由紀恵がやっと登場したかと思ったら暗いOL。内部共犯者。

ヘリに取り残された子どもがめちゃくちゃ有能。この空中サーカスも荒唐無稽ではあるがハラハラしたw なんであの状況で地声で会話できる?ハーネスと命綱はぜったい必要だろ。あれは「こっちに歩いてこい」と言う隊員の判断ミス。
現場リポーターの実況とかいらない。余計に安っぽく見える。

脇役に思えた若手刑事とテロリストと戦いが予想以上に死闘。
後半は盛り返してた。黒幕が意外っちゃ意外。本木熱演。日本の無関心層を風刺。

2021年12月25日土曜日

容疑者Xの献身(2008)

まだ一度もちゃんと見てなかった「容疑者Xの献身」(2008 フジテレビ、東宝)を見る。ようやく見る。
ドラマがヒットして映画化されたフジテレビ映画。福山雅治にとって久々の主演映画。製作は亀山千広社長。監督は西谷弘。脚本は福田靖。

これは東野圭吾の原作本も売れまくったし映画も大ヒットしたのだが当時はぜんぜん見たいと思えなかった。人間ドラマ的なミステリーにあんまり興味ない。それでもゼロ年代の名作と呼ぶ人が多いので見てみる。

羽田沖でのクルーザー爆発事故を湯川先生(福山)は涼し気に「オレ天才~」という感じで科学実証実験してサクッと解決。驚く柴咲コウ刑事。という冒頭の掴み。
得意げに数式を述べるとか、この探偵先生、ホントに嫌だわ。
で、この映画版には湯川以上の天才数学者堤真一が登場。日本のドラマとか映画って天才数学者が好きすぎる。

この先生は寒そうに清洲橋を渡って通勤。途中で松雪泰子が切り盛りする弁当屋でおまかせ弁当を購入。店を出る時ドカッとぶつかる感じの悪い男が長塚圭史。こいつが松雪の元旦那。安アパート部屋に突然やってきてむりやり侵入し娘に暴力。
松雪母娘はヒモ暴力男長塚をコタツのコードで絞殺。普通につつましく暮らす庶民が犯してしまった望まない殺人。死んで当然の男。

で、隣の部屋が堤。隣がドタドタ騒々しい。この男はほぼ何が起こったか悟ってる。

そして河川敷の少年野球グラウンドの片隅で男の全裸死体。指紋は焼かれ顔面破壊。しかし速攻で身元判明。凶器がコタツコードであることもすぐに判明。元妻松雪もすぐに容疑者に浮上。北村一輝と柴咲コウ刑事がすぐに聴き込みに来る。

北村柴咲コンビがすぐ湯川を頼る。松雪にしっかりしたアリバイがあったから。だらしない。
湯川も認める天才石神(堤)は暗い高校教師。生徒たちはどう見ても底辺高校。まったくやりがいのない仕事。
なぜ石神は松雪を助けるのか?「お弁当を買えなくなったら困るから」

見ていて何も新鮮さを感じなくて退屈していたのだが、湯川が「自転車の指紋」の件に不審なものを感じてから面白くなってくれそうな予感がした。
湯川は石神に何かを感じてる。「必ず答えがあるのに解けない問題を作るのと、それを解くのとどちらが難しい?」という数学的問いかけをする。

何かに気づいた湯川を石神はふたりで冬山登山に誘う。それは不穏。青白くて覇気のない石神が真冬に登山?だが湯川のほうがバテバテ。
そしてホワイトアウト嵐。湯川滑落。これも石神のねらい?かと思いきや普通に山頂の風景を楽しんでるとか、どんな肩透かしだよ。このシーン必要?

石神は自首。湯川は解き明かしたアリバイ工作を取調室で石神に語って聞かせる。
正直自分は世間の評判程に真相に驚けなかった。期待に及ばない。やっぱり役者の演技力に頼った湿っぽい人間ドラマ重視の社会派ミステリー。

ホームレス殺害を美談にしちゃいけない。警察の被害者身元調査ってそこまで雑なの?天才ならではの完璧な死体処理したのかと思ったら隅田川に棄てただけ?
またまた東野圭吾作品に期待して裏切られた感じ。世評ほどには感心しなかった。

2021年12月24日金曜日

広瀬すず X 山下達郎「クリスマス・イブ」(2013)

広瀬すず山下達郎「クリスマス・イブ」30周年を記念して新たに撮られたMVで主演してることをつい最近まで知らなかった。世の中にはまだまだ自分の知らないことが沢山ある。
このMVが撮影されたころのすずは15歳?だとすると中学生。圧倒的にかわいらしい。
「海街diary」の撮影に入った2014年の1年前だとすると、是枝監督がこの子を必ずオーディションに呼ぶように指示したのは、このころのすずを見て決めたことになる。
同じ高校の気になるアイツは小関裕太。小関はすずの3つ年上。子どものころから芸能の仕事をしてるが、MVの出演は今作が初めて。

あと、このMVには広瀬とぶつかる通行人役で牧瀬里穂さんも出演。この楽曲はJR東海がテレビCMに使ってから一気に世間に浸透した曲。牧瀬里穂を有名にしたCM。
何と夏祭り浴衣デートシーンまである。これはヤバい。
このころままだ広瀬すずにそんなに注目してなかった。これは天下を取るかわいさだわ。
たぶん広瀬すずオタにとっては常識かもしれないMV。このMVはもっともっと多くの人に見られるべき1本。
きっと君は来ない…。ひとりきりのクリスマス・イブになるかと思われたのだが…、アイツはやって来た!という余韻を持たせたラストでこのMVは終わる。

そしてこのMVは広瀬すずのその後の人気ぶりを予見できるものになっている。

2021年12月23日木曜日

シェイクスピア「ジュリアス・シーザー」

シェイクスピア「ジュリアス・シーザー」(1600年ごろ)を読む。福田恆存訳の新潮文庫(昭和43年)版で読む。

ジュリアス・シーザーはシェイクスピア劇の中でも硬派で真面目な内容なので、学生の間でも演じられる機会が多いらしい。英国では教科書にも載ってるらしくて英国人なら誰でも知ってる話らしい。
古代ローマ史の登場人物は日本の高校世界史だと登場人物たちを呪文のように暗記するだけだが、こういった文学作品で読むとよりいきいきとイメージしやすい。

タイトルから勝手にローマの英雄凱旋将軍シーザーを描く戯曲だと勘違いしてた。ブルータス他の暗殺グループとその後を描いてる。謀議、暗殺、その後の政治闘争、そして戦争。たぶん主役はブルータス。
ヘンデルのオペラ「エジプトのジュリオ・チェーザレ」とはまるで違う場面。

暴虐の独裁者を取り除いたブルータスとその一味。だが、その後のローマ市民の支持を得られなかった。そして、アントニーとオクタヴィアスの前に敗れる。

ハラキリで死ぬのは日本の武士だけだと思ってたけど、ローマ時代から戦争に負けた側は剣で自分を刺して自決してた。

面白かったか?たぶん史劇の古典としての価値。読んでる最中は日本の俳優で脳内再生。声に出して読みたい日本語。

2021年12月22日水曜日

紙の月(2014)

角田光代の原作小説を映画化した「紙の月」(2014 松竹)を今になってやっと見る。監督は吉田大八。脚本は早船歌江子。ROBOTの制作。
平凡なヒロイン梅澤梨花(宮沢りえ)による巨額横領事件とその顛末。宮沢りえにとってひさびさの主演映画として話題。この映画はかなり評価もされた。

バブル崩壊直後の1994年が舞台。銀行ほど醜態をさらした業界はない。自分に甘くカネカネカネでやってきた人間たち。周囲を巻き込んでの奈落。自民党と大蔵省の敗北。日本の敗戦。どこもかしこもみんな不幸。

映画の冒頭が女子中学生たちの讃美歌合唱。そして同じような形の一戸建て住宅が画一的に並ぶ街の風景。
ヒロイン宮沢りえは夫(田辺誠一)と一緒に朝出勤していく。銀行の契約社員?
国債のセールスに個人宅を訪問し、老人からセクハラ逆質問をされる。前の営業は客の言うままにお茶を入れたりしてた?
営業職がノルマとして何かを売ろうとすればそれはたいてい老人が相手。要らないものまで売りつける。ああ、銀行勤めとかセールスとか、そんな仕事は嫌だなあ。

銀行の直接の上司が近藤芳正。前任の営業今井(伊勢志摩)にはできなかった大口の国債を平林(石橋蓮司)に買わせることに成功したことで梅澤(宮沢)を褒める。
給料が上がって余裕ができたら夫に腕時計を買う。クレジットカードも申し込みたいのだが、夫はそのつどお金は降ろせばいいと言われる。

事務の現場を小林聡美がキビキビちゃっちゃと厳しく仕切る。勉強熱心な先輩。冷徹にこちらをまっすぐ見てる。相手の不自然なところはすべて見抜く。なんか苦手そうな人。
バブル崩壊後の銀行は女性営業(美人)がコツコツ10万20万を集める時代?

平林の孫(?)が池松壮亮。こいつは声に色気がある。駅改札で挨拶を交わしただけの梅澤にずっとついて来る。やだ、なんかちょっと怖い。
こいつの出現が真面目だったヒロインを変えてしまう。

デパートの化粧品対面販売って平気で4万円以上の商品を外回り女性営業職に売りつけてくる。怖い。隙あらば客の持ってる金を奪いにかかってくる。もう日本人は物欲を棄てるべき。いつまで金持ってることがすべての社会を続ける気だ。

このヒロインは手持ちの現金が足りずについ顧客から預かった金に手をつける。すぐに戻せばいいと考えたんだろうけど罠に落ちる。すごく嫌な気分になってみてらんない。
他人のお金を預かる仕事なんてやらないほうがいい。(櫻坂の松田は銀行で札束数えてたとかすごい)

夫の上海出張中に、駅のホームで出会った池松と見つめ合ってホテルへ。大胆にも不倫にまで踏み込む。

夫から免税店で買ったカルティエの腕時計を贈られる。そいういうの、銀行の人々は敏感。つねに他人の持ち物、金遣いを観察されてると同僚(大島優子)から警告。こいつも不倫彼氏からのロレックス持ってる。あー、やだやだ。バブルがはじけても人々の物欲と意識は変わってない。
大島「やりたいことは我慢せずやったほうがいい」ヒロインは若い男との愛慾の日々。このヒロインはとにかく押しに弱い。そうこうしてる間に夫は上海への転勤が決まる。

平林宅で孫池松には多額の借金があることを知らされる。どんどん嫌なフラグが立っていく。池松「借金は学費。父親はリストラ。じじいは他人に金なんて出さない。もう大学もやめる」
ヒロインが問い詰めると借金は150万ぐらい。「60万ぐらいなら払える…」ああ、バカ!

平林老人の出した定期預金200万を勝手に解約。定期預金証書を懐に入れる。ついに犯罪へ踏み出す。だがそれも小林聡美がしっかり見てる。とにかく不自然なことには敏感。ここで踏みとどまるべきだった。

ヒロインにとってその罪は「施し」のつもり。中学のときの讃美歌歌唱シーンが流れる。中学時代回想シーンのヒロインは平祐奈。中学のときの宗教教育が人格形成の一員になってる。
どんどん池松に他人の金で施しを与えていく。資産家老人たちを平然と騙すようになる。証書も偽造。悪質。
男との逢瀬のためにホテルのスウィートに泊まる。自分が金持ちだと装う。もう同情の余地はない。早く逮捕されろ!もう見ていられない。小林聡美がんばれ!

池松を失ったヒロインはもうとめどなく金に困る。カードも使えないし昼食代もない。金融商品のチラシを勝手に作って自転車でばらまくようにポストに投函していく…。
こいつを雇った銀行は人を見る目がなかった。

独自の倫理観による「施し」。罪の意識のないヒロインは詰問される部屋から全速力で逃亡w なにげにこの箇所数分間は映画として名場面だった。美しかった。やっぱ、地の果てまで逃げろ!と思った。

これほどまでにカネカネカネの時代に生れた人々は不幸。高額な商品サービスがあふれ物欲を刺激する世界は異常。金の使い道がたいしてない世界、格差のない世界ならヒロインは横領などという罪も犯さなかった。金の世界は全て虚構。金のことを考えないですむ世界に行きたい。

2021年12月21日火曜日

七つの会議(2019)

「七つの会議」(2019 TBS 東宝)を見る。全然見たい映画でもないのだが見る。中堅電機メーカーで起こった不祥事に巻き込まれ立ち向かっていく社員たちを描く。脚本は丑尾健太郎と李正美。

池井戸潤の小説を福澤克雄監督演出でドラマ化したものがなぜもここまで人気があるのかよくわからない。「ドラゴン桜」がこのテイストで作られたときは拒否感が強かった。大人たちがギスギスしながら会議シーンとかどうしてそんなものを見たい?
ちなみに、この映画が公開されたとき浜辺美波が「面白かった」と言っていた。いちおうちょっとは期待して見る。

東京建電の営業一課と二課、部長と取締役の緊迫の定例会議。営業成績の振るわない及川光博課長が香川照之営業部長にビビりまくり。まずまずなんとかやっていけてる片岡愛之助課長もビビりまくり。
そのなかで堂々と居眠りしてるグータラロートル営業社員が野村萬斎。鼾かいてこっくりしてる萬斎を見て香川激怒、片岡冷や汗。

野村萬斎社員がすごい。「これ、明日までやっておいて」という仕事を一切やらないw みんなが残業してる中で定時で帰る。労働法と組合を盾に怠けるザ正社員。1対全社員という戦いw それはすごい社員だ。
グータラ社員なのに有給休暇を申請し、片岡はさらに激怒。「辞めれば?」「生きてる価値もない」これは録音されたらパワハラでアウト案件。
そしてまさかのパワハラ訴訟。そして片岡は飛ばされる。そして及川光博が営業一課課長。野村は及川にイヒヒヒと下卑た笑いを浮かべながら有給休暇申請w 全営業社員ドン引き。香川に怒鳴られて及川は嘔吐。これもパワハラなんじゃないのか?

ダメ社員のはずの野村が接待経費に10万円の領収書。経理社員藤森慎吾が問い詰めるも、ここは全営業社員が何も分かってない藤森を笑う。意外に野村社員は人望がある?
接待先の会社「ねじ六」はかつて野村が新規取引を始めた会社だった。

だが、片岡がギリギリ低価格で締め付け、あげくに取引を切った町工場。音尾琢真社長は東京建電を怨んでいた。そこに野村がやってきて取引再開を求める。
音尾の娘土屋太鳳はなんとワンシーンのみの出演。

ここまで見てきて、この映画のテーマが見えて来た。野村萬斎演じる八角という社員は営業社員としてあるべき姿。会社と人のつながりと未来が見える有能社員か?
藤森慎吾が嫌~な社員、勝村政信がせこ~い社員を演じてて感心。
取締役会議の雰囲気とか福澤克雄そのものなドラマ。

じつはこの映画をみた理由は朝倉あき。仕事が忙しすぎて3年目についふらっと癒しを求めて不倫w なかなか結婚できずに仕事を辞めることになったところ、片岡に理由をしつこく聞かれて寿退社という嘘。みんなトホホな会社。しかも社内がギスギスしすぎ雰囲気悪すぎ。
辞める前に社内ドーナツ販売をするのだが、野村萬斎社員はドーナツの代金すらも払わない?実は払ってなかったのはアイツで…。

朝倉あきは相変わらず声質が良い。適度にかわいい。観る前に予想していた以上に目立ってた。及川と朝倉のコンビで準主役。イキイキしてた。
池井戸潤が示すサラリーマンヒーロー社員、お気楽サラリーマンドラマのな勧善懲悪時代劇……と見せかけて、実は後半は違った展開。前半は視聴者をダマすためのパート。

北大路欣也と香川照之とかそのまま半沢w 巨大なリコール隠し。真面目な社員は自責の念と贖罪。かつて超優秀営業社員の悲しい過去。深い闇にせまる謎解き要素もある。不祥事を起こした会社は偉い人全員に責任があるって事例。

偉そうなやつって大嫌い。日本から軍隊みたいな体育会系営業社員のいる会社が早くなくなりますように。ノルマ至上主義営業の戦場に駆り出される一兵卒みたいな可哀想な若者がなくなりますように。

2021年12月20日月曜日

湯浅政明「きみと、波にのれたら」(2019)

湯浅政明監督の「きみと、波にのれたら」(2019 東宝)を見る。脚本は吉田玲子。
片寄涼太と川栄李奈、松本穂香、伊藤健太郎を声優として起用し、たぶんそれなりに話題だったアニメ映画だったはず。自分、湯浅政明監督作を過去2作見てるけど、正直それほど気に入ってもいない。

この映画のヒロイン向水ひな子(川栄李奈)はサーファー女子大生。窓から波の具合を見てサーフボードを備え付けて自転車で海に出かける。引っ越してきたばかりのひな子は帰り道に迷子。消防隊員に道を聴く。

この子の部屋が段ボールだらけ。部屋を整理する気はないらしい。ビル工事現場で花火をしてた若者たちの失火でヒロインのマンションが火事。
このマンション火災がアニメ表現にしてもあんまりリアリティがない。
逃げ遅れてしまったヒロインはサーフボードだけ持って屋上に逃げる。はしご車のおかげで無事救出。
この消防隊員たちがまったく見分けがつかない同じ顔なので声で区別するしかない。雛罌粟港(ひなげしみなと)片寄涼太の声の演技はかなり棒読み。
え、マンションがほぼ全焼してるのに花火してたやつらは口頭で叱られてるだけ?!

ひなげし隊員とひな子は親密化。男はすぐボードを買って車の屋根に乗せてひな子とサーフィンデート。ひな子のサーフィン指導開始。夏なので女はビキニだ。
コーヒーを轢きガスコンロでささっとたまごサンドをつくる。
この女の子は引っ越し先でさっそく見栄えも良く定職についた趣味の合う若い男をゲット。愛をはぐくむ。デート場所がよく見ると千葉各地だ。

よくみるアイドル出演スウィーツ映画展開。なぜこれをアニメでつくった?

だが、みなとは1人でサーフィンに出かけて海の事故で死亡。このカップルは出会いも別れもDQN若者の迷惑行為が原因。心を病んだひな子は海の見えない場所へ引っ越し。もう波にも乗れない。
みなと妹洋子(松本穂香)後輩消防士わさび(伊藤健太郎)が訪れみなとの遺品を渡す。
妹洋子はぶっきらぼうドライ。かなり正確悪い印象。
ひな子はみなとのスマホを受け取る。だが、パスワードがわからない。

以前みなとと歌った歌を口ずさむと、コップの水の中にみなとを見た気がした。以後、水の傍で歌うたびにみなとと会えることに気づく。
それは幻覚?!ヒロインの行動が突拍子もない。周囲から見ればそれは完全に心の病。それは奇跡というよりホラー。ほぼ「ゴースト ニューヨークの幻」のような展開。江戸川乱歩かもしれん。

タワマン廃墟火災、そして一世一代のビッグウェーブ。正直、そんなに面白くもない。
人を助ける仕事に就きたいとライフセーバーを目指す。そこは殊勝。
実写でやるには褐色でスタイルが良くビキニでサーフィンができる若手女優が必要だけど、まあいない。

2021年12月19日日曜日

加藤小夏「再雇用警察官3」(2021)

加藤小夏が12月13日放送の月曜プレミア8ドラマ「再雇用警察官3」(テレビ東京)に出演するというのでチェック。
主演は高橋英樹本仮屋ユイカというふたりの警察官。年齢差のあるふたりが組んで事件にいどむ。
加藤小夏は準ヒロイン沢木杏里役。6年前に少年課にいた本仮屋ユイカ警察官が補導した少女。施設で育ち、寮完備をうたいながら入居費を請求されガールズバーで働かされていたところを保護された間柄。
暗い過去を背負いながら、とある写真家のもとでアシスタントとして働いてる。だが、この写真家先生の奥さんが死体となって発見され、事件に巻き込まれる。
今回の役どころはこれまでにない技量を求められた重要な役。たぶん実年齢よりも上の女性の役をがんばった。
カメラの前で泣いてみせることのできる女優ってすごい。まじ尊敬。自分にはとてもそんなことはできない。
加藤小夏は現在22歳。かれこれ女優業を初めて5年ぐらいたつ。映画やCM、配信ドラマ、地上波ドラマの1話単発出演などが続いている。2021年も地上波ドラマに出演する機会はあまりなかった。
自分の数少ない推し女優。もっともっと話題作で活躍してもらいたいのだが。
加藤小夏を初めて見た瞬間に「あ、この子のために死にたい」と思ったw 透明感のある美少女ぶりに圧倒された。たぶん学生時代に同じ教室で出会っていたら、自分はこの子のために命を落としていた。

とくにインスタグラムにUPしてる写真がどれもスーパーおしゃれハイセンス。ああ、美しい!とため息のでるようなものばかり。二十歳そこそこで出せない雰囲気をまとってる。
読書とフィルムカメラと散歩とおしゃれが趣味らしい。女の子は高校を卒業するとあっという間にあか抜ける。大人になる。自分がこの年代のころ(今もかもだが)はとてもこんなじゃなかった。こどもだった。

鼻梁のぐあいが美しい。色白で華奢。目が独特。男を見下して蔑むような流し目をさせたら20歳前後の女優の中で当代随一。たぶん90年代の本上まなみさんの雰囲気。

2022年は映画が1本決まっているようだ。だが、これもあまり話題になりそうな映画じゃない気がする。もっと人目につく話題作に出演してほしい。まだまだ応援してる。

2021年12月18日土曜日

吉村昭「漂流」(昭和51年)

吉村昭「漂流」(昭和51年)を新潮文庫で読む。これは吉村昭の本の中でもわりと上位の人気作。

天明年間に土佐国赤岡村から田野・奈半利村へ御蔵米を運んだ帰りに天候が急変し鳥島に遭難漂流した長平という青年が主人公。
航海技術がほとんど進歩しなかった江戸時代。米や木材を運ぶための江戸時代の和船は底が浅くて楫(かじ)が壊れやすく難破遭難しやすい。
天気が急変。土佐沖から北西の季節風に流されてしまうと黒潮に乗って太平洋の真ん中まで持っていかれるという恐怖。それが吉村昭らしく淡々と描かれてる。壮絶。

水もないし食料も米だけがわずかにある。たまに雨が降ったら上を向いて口を開ける。航行不能に陥り太平洋を漂い絶望する4人。もう自殺してしまおうか…。

だがやがて陸を発見。なんとか上陸するも絶海の孤島。湧き水も沢水もない。岩に張り付いた貝や海藻を生で食べ、アホウドリも羽根をむしり取ったら海水で揉んで生で食う。
火種がない。江戸時代の人って火種がないと火を起こせないの?

やがて島の洞窟で、かつてそこで人が暮らした痕跡を発見。そして白骨死体を発見。さらに別の岩屋でも死後20年は経っていそうな仏も次々と発見。自分たちもいつかそうなる…という絶望。

もしかしてアホウドリは渡り鳥では?と気づいた4人は鳥を干物にして保存食にすることを思いつく。そのことを思いつかなければ餓死してた。

ずっとお腹が痛いとうったえていた水主頭の源右衛門がどんどんやせ細って最初に死んでしまう。胃潰瘍?胆石?土佐に再婚した若い妻と子を残してきた無念。
食料が尽きかけていたころアホウドリが再び島に戻ってきたときは救われたと思った。卵を生ですする。卵の殻に雨水を溜められる。

これで一安心と思いきや偏った食生活により栄養不足で間接が痛い。アホウドリの生肉か干し肉、生貝しか食べてない。
若い音吉も長平も体が痛くて這うようになる。食欲も失う。長平よりも若い音吉も寝てる間に冷たくなって死んでいた。最年長の甚兵衛も同じような過程をたどって死んだ。漂着して2年で主人公以外全員死亡。絶望に次ぐ絶望。

そこから1年半ひとりぼっち。死者を弔い祈り、たまに嗚咽。3年間まったく船影を目撃すらしていない。
だがある日、山の上に人がいるのを目撃!?ここ急展開すぎて怖かったw
最初は幻覚か心霊現象かと思ったのだが、新たに大坂船11名の遭難者が加わった。

鳥島は黒潮の流れ上にあるらしい。その歴史上、何度も漂流者が到達してる。だが、そのほとんどが島で死に絶えた。
こんな悲惨な事態にならないように定期的に無人島を周回して見まわるべきだと思った。でも江戸時代なら仕方がないか。

無人島サバイバルの先輩として新参者に知識を伝授。だがやっぱりメンタルをやられて無気力になり寝そべったまま動かなくなる者が続出。長平は経験から動かないとやがて死んでしまうと諭すのだが聞き入れてもらえない。うるさそうな顔をされる。でも、他人の事だし、言うべきことは言ったし。そしてまた死者。
自殺者の発生がいちばん怖い。さらに三味線を弾く遊び人男が崖から身投げ。みんな何も喋る気力を失う。

そしてまた薩摩からの漂流者。島にいる生存者たちを見てビビッて逃げ戻ろうとするが必死の呼びかけが日本語らしいから島に上陸。仲間が増えるとやっぱ嬉しいのだが、5年もそこで暮らしてるという話をするとみんな絶望して落ち込む。
今度の新たな仲間は髪結い道具を持っていた。なので長平は5年ぶりに髪を整え月代と髭を剃る。

この薩摩人たちが有能で結果的に長平たちの運命を好転させる。火山岩質で雨水を溜めることのできなかったのだが、漆喰のようなもので底を固めた貯水池をつくることで飲み水の心配がなくなった。
こういうの映画とかだと派閥をつくって仲間割れの殺し合いとかなりそうだけど、昔の日本人はみんな仲良く協力してくれてよかった。
薩摩船は全員40代で島に居続けることに危機感。残してきた妻も心配。狼煙をあげてみたり、渡り鳥にメッセージを書いた木札をつけてみたり、新しいことを試す。

そして、大工道具を持っていることで、島を脱出する船を作る決意。
だが、船を作る材料がない。島に漂着した難破船由来の木材などを数年かけて少しずつ集める。帆は衣服を大切に保存して出航の日に備える。だが、漂着した木材から引き抜いた釘では足りない。それに錆びている。

だが、岩場にイカリが沈んでることを発見。それを何とか引き上げ、鍛冶知識のあった者が釘を製造。やがて生き残った14名と水食糧を乗せ、一か八かの決死の航海へ。この時点で長平は遭難から13年。

ラッキーなことに出航してから嵐に出会わなかった。シケに出会えば手作り船はひとたまりもない。島を出て8日目の朝、島が見えた!
これが青ヶ島。青ヶ島も流人の島。惨めな暮らし。だが八丈島はすぐそこ。

そしてついに八丈島へ。ここまで長かった。読んでいて涙。
お役人の厳しい取り調べの連続。この時代、漂流民の帰国は切支丹禁制下なので、まるで犯罪者のように扱われる。
やがて疑いも晴れ、長平たちの悲惨な体験にお役人たちも同情。その都度、様々なものを下賜してくれる。江戸では大名屋敷など方々に呼ばれて体験記を語って聞かせ金品を贈られる。そしてついに故郷の土佐赤岡へ。24歳の青年は37歳になっていた…。

吉村昭の本は何を読んでも読後にぼーっとしてしまうような感動と満足感。中でも「漂流」は人気作だが、評判通りの壮絶で壮大な感動作。まるでアポロ13号。
すべての世代の人に強くオススメする。

2021年12月17日金曜日

南沙良「太陽は動かない」(2021)

WOWOWドラマの劇場版「太陽は動かない」(2021 ワーナー)を見る。主演は藤原竜也竹内涼真。制作はROBOT。監督は羽住英一郎。脚本は林民夫。原作は吉田修一の「太陽は動かない」「森は知っている」による。

諜報員、工作員はミッションに失敗すると裏切り者として心臓に埋め込まれた爆弾が爆発して抹殺されるとか、その設定自体が嫌悪感。どんな近未来ファシスト国家だよ。
こういうことを実際にイメージできる人はヒトラーやスターリン、毛沢東、金親子ぐらいに限られてる。こんな小説を書くような奴自体が危険。自分も他人にそうしたいという願望があるに違いない。藤原竜也はいまだにバトルロワイヤルみたいな映画撮ってる。

藤原が市原隼人を救出し韓国人俳優が絡んでくる。冒頭から海外ロケのカーチェイスアクションが画的に豪華。街中でよくあんなシーンが撮影できる。ブルガリアの街の風景が新鮮。正直この冒頭アクションがこの映画のクライマックス。

裏社会とつながる中国の巨大企業が悪の組織という設定はこれから世界中で増えるだろうと思う。イメージしやすい巨悪。ショッカーなんかよりもよっぽど悪質。

これを見た理由は南沙良が出てるから。東京からの転校生で主人公の高校時代の初恋の人?最初の出会いが更衣室のぞき?
田舎高校生たちがバイクで旅客運送なんかをやって小銭を稼いでる。たぶんそんな闇営業は世界中で行われている。真面目に法規を守る高校生なんて日本ぐらいにしかいない?

南沙良、か細い声で華奢。想い出シーンのみの出演だが、出番はわりとあった。
友人加藤清史郎は知的障害のある弟がいる。俺はデータを抜いて逃げるよ。は、何言ってんの?どうゆう設定?工作員予備員の虎の穴?なんか「あずみ」っぽい。「タイガーマスク」っぽい。マンガっぽい。

死んだヤマシタ(市原隼人)から情報を得ていた鶴見辰吾が出てくるんだけど、霞ケ浦の太陽光発電?エネルギー革命への一歩?何いってんの?そんな情報を盗むために命を張ってるんの?
スパイらしいそれっぽいことをやっててカッコよく撮ってるけど、盗もうとしてるものが今一つ納得できない。

高校の修学旅行が東京なんだが本郷の鳳明館?!(ここ、何回か前を通ったことあるけど泊まる機会は一度もなかった)
高校生をスパイ訓練して情報を盗んでこさせるとか、佐藤浩市の組織も悪質。人の命をなんだと思ってるんだ。
現在のミッションと高校時代の試験ミッションのシーンが交互にやってくる。映画ってこういう構成が多い。見てて疲れる。韓国人俳優の日本語がカタコトすぎる。
竹内涼真はクルマを運転してヘリを操縦するだけの役なの?なにも魅力的じゃないバディ。

中国の砂漠で機密を目撃してヘリ撃墜。藤原と竹内は捕らえられて大ピンチなのだが、この映画の設定では所属組織に一定期間連絡がないと心臓が爆破される。敵も上司も敵。酷い。佐藤浩市は部屋でくつろいでるだけか?後方支援組織もなしか?

スマホで情報が瞬時に世界を駆け巡る時代のスパイアクション映画。体内にGPSを埋め込むとか「やりすぎ都市伝説」の世界が現実になりつつあるのか。
美脚をからめてくる女スパイとか、今も戦時中の韓国にはいるかもしれない。
爆破タイマーの解除の仕方、ネット銀行か。定期的に自動で接続する仕組みを作っておけ。

長編映画にする必要はなかったのでは?ストーリーに納得いかない。
藤原と竹内がメタメタに拷問される姿が見たいという女性向けだったかもしれない。

主題歌King Gnu「泡」。

2021年12月16日木曜日

南沙良「無限ファンデーション」(2019)

南沙良が2017年に出演した「無限ファンデーション」という映画があるので見る。監督は大崎章。いちおう劇場公開作のようだ。

ヒロイン南沙良はたったひとりで夏休みの補講を受けてるような落ちこぼれ生徒。だいぶぼんやりした生徒。
この映画、南沙良が出ていなければ見ていない。またしても人づきあいが苦手で喋れない少女役。「ドラゴン桜」よりもちょっと顔がふっくらしてる。

帰り道、リサイクル工場から歌声が聴こえるので覗いてみると、女子高生がウクレレ弾き語りしてる。そんなことでよく工場内にずんずん侵入していける。
家に帰るとゴロゴロして母親にうどんをつくってもらう。どうやらこの映画での芝居はすべて大まかな設定だけある即興エチュード芝居のようだ。こういうの、見ていて居心地悪いしどうしたって内容が薄い。

教室で勉強サボって書いていたイラストを、上手い上手いスゴイスゴイと褒める女子たち。それは褒めすぎじゃないか?
原菜乃華がナノカという役で出演してる。やはりこの子がいちばんカワイイ。この子が演劇部の衣装をつくってもらえないか?と未来(南)を熱心に勧誘スカウト。
そんな展開になるか?ちょっと疑問。隣の女、ちょっと引いてるし。

補修先生が若いのに女子生徒とふたりきりっておかしい。「俺さあ」って自分語りしてるのも、何やってんだコイツ…って思わないではいられない。
それにリサイクル工場でウクレレ弾いて歌ってる少女の正体って…、これって幽霊ファンタジーなの?
演劇部は大会のために練習中。だが、ナノカが映画オーディションのために離脱。部員たちに知らせたときの「えっ?」って探り探りの修羅場演技が即興だとまるでフェイクドキュメンタリーみたい。リアルにみんなテンション下がる。
でもそんなの、局面ごとに最重要項目が変わっていくってこと。それが青春というもの。そういうの、高校生でもわかるだろ。

女優オーディションの風景をよく映画のシーンで見ることがあるのだが身の毛がよだつ。即興で両親離婚で母親が出ていく演技とかさすな!同じ境遇の子を傷つけるな。まず自分たちがやってみせろ。退路を断って来てる子を落とすな!

演劇本番直前にさらなる修羅場。女の子同士の起こす問題って、ほんと見ていて嫌な気分。正直見ていて退屈だったし爽快感もなかった。
ちょっとでも不快を感じた場所には無理していなくてもいいんだよって若い人達に言いたい。

南沙良の過去作をチェックしておきたいという人にしかオススメしない。あとこの映画、西山小雨というシンガーソングライターのミュージックビデオ映画としての側面も強く出てる。夏の田んぼの緑がとても濃い。

2021年12月15日水曜日

三島由紀夫「盗賊」(昭和23年)

三島由紀夫「盗賊」(昭和23年)を新潮文庫版で読む。昭和23年9月に大蔵省を退職し職業作家に転身して11月に出版された処女長編作。

1930年代が舞台。子爵家の一人息子藤村明秀は国文科卒で鷹揚な性格。たいして苦労も無く育って苦労も無く就職。いわゆる上流階級のボンボン。

S高原のホテルで出会った原田美子に初めての恋。だがこれは相手が上手でどうにもならなかった。美子に結婚する気はない。これがもとで藤村家と原田家は絶縁。

京都での法事に父に代わって出席。そこで山内男爵が明秀に接近してくる。その令嬢清子が現れる。べつにそんなに夢中になるほど美人でもない。だが、清子も失恋の傷を負っている点で明秀に近い。

結婚するのしないので見せる子爵とその妻(母)の言動がいろいろおかしい。理解不能。
清子と明秀は周囲に一切気づかせず、結婚式の当夜に情死。なんだこの展開。

話の筋を他人に説明しようとするならこうなるけど、たぶんイメージは人それぞれ。なぜタイトルが「盗賊」なのか?それはラストの一文にこの言葉が出てくるから。テーマは生と死、若さと老い?滅びていく高貴なもの?

23歳の秀才優等生作家が憧れの作家を模して、思いっきり背伸びをしたような、老作家が書くような作風と文体。「花ざかりの森」を読んだときのような困惑。
この本が「あー、わかる」という感じで読める子はよほどの優等生。あまりオススメしない。

2021年12月14日火曜日

祈りの幕が下りる時(2018)

東野圭吾の小説の映画化「祈りの幕が下りる時」(2018 TBS 東宝)を見る。
監督演出は福澤克雄。脚本は李正美。TBSによるヒューマンドラマ刑事モノ。
自分、このシリーズに何も関心がないのだが前作がガッキーが出てるので見た。その続編にあたるこれは特に見たい女優が出てるわけでもないので放置してた。

冒頭から不幸な女田島百合子(伊藤蘭)の流転が描かれていて気が滅入る。1983年から始まって2001年。仙台のスナックでホステスとして働いていたこの女性の孤独死。女一人で生きていくのは大変だ。身寄りもないので遺骨の引き取り手として加賀恭一郎(阿部寛)がやって来る。え、加賀の母親だったの?そんな悲しい過去が?
唯一つきあいのあったワタベという男を探す。今回も事件の鍵は日本橋?

そして16年の月日。東京葛飾、荒川沿いアパートで損傷の激しい激グロ死体が発見される。松宮刑事(溝端淳平)が捜査開始。身元は滋賀県彦根市の押谷道子(中島ひろ子)と判明。アパートの借主の男が行方不明で容疑者に浮上。荒川河川敷でのホームレスが殺害され焼却された事件と何か関連が?営業社員の押谷はなぜ東京に行った?

やがて浅居博美(松嶋菜々子)という舞台演出家が浮上。老人ホームの身元不明キチガイババアの娘?溝端刑事の質問にも冷酷で感情ゼロの回答。そんな人間が舞台芝居関係者?溝端は嘘とかぎりなく黒いものを感じる。
なんか、「砂の器」みたいな臭いがぷんぷんする。押谷は犯人の不幸な過去を知っていたから殺された?

溝端刑事は忙しいという加賀と昼食。そこが日本橋砂場。自分、昔ちょっと蕎麦好きを装ってたのだがこの店は一度も行ったことない。溝端刑事は「高い」とぼやく。
加賀恭一郎が事件とどう係って来るのか考えながら見ていた。過去に浅居博美と関係が?どうやら劇団のこどもたちに剣道を教えたことがあったらしい。会って数日なのにほんの少し自身の過去と内面について自分から話したことが。

加賀のアドバイスから溝端刑事は一度は否定されたアパート借主越川とホームレスの焼死体が同一人物であるDNA再鑑定結果を得る。

遺品のカレンダーには日本橋付近の橋の名前が。それらはすべてかつて加賀が田島百合子の遺品を引き取ったカレンダーは同じ?ということは越川と綿部は同一人物?
男は何かから逃げていた?橋で田島百合子と密会していた?この越川(綿部)という老人は女川原発で働いていた?
加賀は日本橋清掃イベントの写真を1枚1枚目をしょぼつかせながら調査。浅居博美の姿を見つける。

浅居と不倫関係にあった元中学教師苗村(及川光博)が浮上。年齢も合う。苗村が押谷を絞殺し、その苗村を浅居が殺した?
だが、苗村の写真を、綿部を知る元スナックママに見せた所「まったくの別人」。振出しに戻る。
この松嶋の不幸な少女時代を演じてるのが桜田ひより(中学時代)と飯豊まりえ(20歳ごろ)。父親と流転する桜田はかなり目立ってる。メンタルをやられるほどヘビーな役。
飯豊もちゃんと見せ場があって目立ってる。ファンは必ず見るべき。

中学生女子に性的な目的で声をかけ、お金を見せて誘い込む原発作業員(音尾琢真)にすっごい嫌悪感w こいつは死んでいいと思ってた。(ヒロインと父親を破滅させた母親も)

加賀父(山崎努)の最期を看取った看護婦役で田中麗奈も出演。田中をひさびさに見た。

刑事たちがコツコツ調べてブレイクスルーを手繰り寄せる新発見の連続。社会派推理小説。こういう刑事ドラマが好きな人にはとても気持ちいい展開らしい。
東野圭吾作品の中では最も重厚で人間関係のピースがぴたっとはまる納得のいく物語だった。「容疑者X」よりも好き。やっぱり過去の回想シーンは「砂の器」のようだった。
壮絶ハードモード人生を送った松嶋菜々子が夜叉のようだった。
まったく存在が見えていなかった容疑者が浮上したときは鳥肌たった。加賀恭一郎はスーパー名探偵だった。事件の中心に自分がいる?よくそこからその結論に達することができた。
できることなら予備知識のない状態で見ることをオススメする。なのでとある出演俳優の名は伏せておく。その俳優もMVP。

ぶっちゃけ大名作。福澤克雄演出もさすがだと感じた。終わり方も良い。(ただしポスターのビジュアルデザインは悪い)
東野圭吾作は最近ハズレばかりだったけどさすが巨匠だと思った。父と娘の愛と絆、そして悲劇の本質を描いてる。

警察組織で追ってるとそうはいかないが、ホームズやポアロだったらこの犯人は見なかったことにして放免するだろう。