長澤まさみ主演映画「MOTHER マザー」をやっと見る。監督脚本は大森立嗣。スターサンズの制作で配給はKADOKAWA。この映画もコロナによって公開が遅れた。
実際にあった事件に着想を得て、あまりに残酷な現実を描いた映画。コロナという他人を思いやる余裕すらない時期に公開され、見るのには相当な気合が必要だった。
13歳で映画デビューして以来ずっと東宝のお姫様女優だった長澤まさみにとって実質初のヨゴレ役。まさみ本人もこの主人公母には何ら共感できるところはなかったという。ほぼ怪物。
だがこの映画は長澤まさみにとって初となる日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をもたらした。
その点でまさみオタの自分は監督には感謝してるけど、こんな映画にまさみを呼んだことをちょっと怨んでる。
映画の冒頭からこの母と息子は仲がいいように見える。母は仕事を休んで一緒に遊ぶ。だが、子どもはつねに母の顔をうかがってる。
子ども連れて実家にお金の無心に行くシーンからして粗暴。家族たちがみんな暗い。長澤まさみの声がでかい。家族間の罵り合いを見せたくないと祖父が子どもを外に連れ出す。婆さんはちょっと問題ありそうだが爺さんはわりと常識人っぽい。
金は出さないと断られた母は息子といっしょにトホホな感じでゲームセンター。この母親がゲーセンにいるホスト男(阿部サダヲ)に声をかけて、だらしなく散らかった家に連れて行く。この子どもの表情がなんともいえない。
長澤まさみがずっとショートパンツで生足。役作りのためにむくみやすい食事をとりだらしなく過ごしたという。にもかかわらずキレイ。
子どもは落ち着いた声でガスも止まりカップ麺すらもないと訴える。哀しい。
市職員皆川猿時にも甘い声でささやいて子どもを預ける。「おねがい♥」
母は男とどっかへ行ったまま戻らない。典型的なネグレクト。子は学校へも行かずにひたすらゲーム。皆川もお湯がないのを知ったうえでカップ麺を渡して逃げかえる。一方そのころ母はホストたちと楽しそうに飲んでる。子がひとりで留守番してるのに電気が止まる。
金にこまった母とホスト男は藤田(皆川)が子どもに悪戯をしたと脅迫して金を得ようとする。この中年ホストもクズ。
遼(サダヲ)は藤田ともみ合ったあげくに腹を包丁で刺してしまい逃避行。
男も母も金がない。3人は旅館で客の残した刺身などを食べる。藤田が死んでないし訴える気もないと知って遼は帳場の金を盗んで夜逃げw もうどん底のさらに底。
子どもいるのにラブホテル泊まれるの?ホテルのフロント男(仲野太賀)にも甘えた声。
え、子どもの父親がちゃんと養育費5万を送ってる?それをぜんぶパチンコ?この母親はほんとに酷い。けど、別れた父も子どもの異常を感じろよ…と思って見てたら父はちゃんと「お父さんのとこ来るか?」と声をかけてる。なのに「お母さんのほうがいい」と断る。
妹の家に子どもに「お金かして」とひとりで行かせるなど、母親の酷さをこれでもかとたたみかける。
妹(土村芳)は姉をビンタし「もう来ないで!」と金を投げつける。
うずくまる母。どうやらまた妊娠したらしい。その金を持ってとりあえずパチンコ。(パチンコは日本人を不幸にしてる)
帰る場所はあのラブホテル。サダヲととっくみあいのけんか。「こどもおろせよ!」この男のクズっぷりも異常。母子に暴力ふるったあげくに出ていく。ホテル代は?母はさっそく太賀を誘惑。周平(こども)に「何か買ってきて」と追い出す。
妊娠して困った母は祖母(木野花)を頼るしかないのだが、孫である周平にヒステリックに怒鳴る。「顔も見たくない!」それは言っちゃダメだ。母からも「なんでだよ!」と怒鳴る。もう子どもの顔を見てらんない。もう子どもはどこかに預けるしかないだろ。
それから5年。周平(奥平大兼)には幼い妹ができた。やっぱり学校へも行ってない。働いてもいない。母と子の路上ホームレス。ケースワーカー夏帆が声をかける。母はますます顔が荒んでる。子どもを荒々しく怒鳴る。さらにヒステリック。なにか精神の病か?
周平に学校へ行くことをすすめる夏帆に対して母「はあ?」とすごむ。母「学校なんて行ったらぜったいイジメられる」この母に過去何があった?
周平を学校にその汚い衣服のまま連れて行くのか?不潔なままにさせておいて臭いとか言うな。
子どもたちはなんとか事態の好転が期待できたのだが、母のやさぐれぶりはどうしようもない。
しかもサダヲが帰ってくる。こいつは何でこんなにも軽薄に笑ってられるんだ。その部屋は子どもたちの為の部屋でお前がいていい場所じゃないんだぞ。この4畳一間がまるで独居房のよう。
しかも見るからにヤクザ闇金から金借りてる。その金で4人で焼き肉食ってる。
でもってサダヲはやっぱり母に暴力。それを目撃してる夏帆は何もできず。
「学校行きたい」と言う子に「なに言ってんだバカ」とかいうバカ親。サダヲは借金取りに追われてまた逃亡。
遼からの伝言を告げる周平。ここで白髪とシミを気にしてた母の光速ビンタ。母は周平だけが頼りだとおいおいと泣く。
周平は作業員として住み込みで働く。母と妹の部屋が会社にある。なのに母はやっぱり働かない。母は周平に給料の前借を強要してパチンコ。前借を断られる周平に事務室から物品を盗難もさせる。現行犯で押さえられて社長(荒巻全紀)から怒鳴られる。
だが、次のカットではもうこの社長の部屋にあがりこんで一緒に食事。どうやら母も働くことになったらしい。また甘えた声で篭絡?
この母ははてしない。ただ事務所にいてぼんやりしてるだけでなんら働いている様子がない。で、社長と着衣セッ〇ス。
また遼から「たすけてくれ。50万ないと死ぬ」のメッセージ。金庫から金を盗んで逃亡。またまた流浪。
ついに祖母を殺して家の金を盗むことを周平に示唆。「できるの?やらないとふゆか(妹)死んじゃうよ?」完全にマインドコントロール。そして最悪の結果。
自分が生んだ子はどう育てようが勝手。この母はそれしか言わない。少年を助けてあげたい夏帆も弁護士も無力。
誰もが見るのがしんどい映画。少年にとってあまりに残酷な現実。いくら主演が長澤まさみでも見るのが苦行。まさみ史上最悪の地獄映画。まさみはこの映画で女優としての幅を広げたわけだが、もっと人を幸せな気分にさせる映画を選んでくれ。
周平少年を演じた奥平大兼くんはデビュー作からすばらしい映画に巡り合えた。いくら才能があって努力してよい演技をしたとしても、箸にも棒にもかからない作品では世間から注目してもらえない。第1作からちゃんとした話題作を引き当てて幸運。
この少年には同情する余地が余りある。実際に人が死んでる凄惨な事件なわけだが、社会に出た時、ぜひとも優しく迎えてあげる必要がある。
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