2021年12月6日月曜日

夏目漱石「草枕」(明治39年)

夏目漱石「草枕」(明治39年)を新潮文庫雄版で読む。初めて読む。

夏目漱石の作品の中でもっとも読みづらい一冊といっていい。高校生のとき1ページ読んだだけで投げ出した。今なら読んでよくわかるかもしれないと読み始めたのだが、やはり明治の人にしかわからない表現が多数。注釈なしにはとても読めない。
この作品を発表したとき漱石40歳。やはり偉い先生の書く小説は違う。

内容があるといえばあるし無いといえばない。絵描きの青年が山道を歩き考え事。茶屋の老婆と世間話したり、宿泊先にちょっと頭のおかしい出戻り女がいてオシャレ会話したりする点で村上春樹っぽくもある。近くの寺の和尚と話したりする。

そして、日露戦争の満洲へ出征する人を見送るという場面で小説は終わる。困惑。

漱石は英語の先生だったので英国詩に詳しいのはわかるのだが、漢語と俳諧、水墨画山水画、骨董、西洋絵画、などにも異常に詳しい。ずっと芸術論のようなものを喋ってる。
明治時代の知識人たちの常識のようなもの。内容を理解できないし、ましてや江戸時代以前の日本の絵画の歴史にあるていど詳しくなければ書いてある内容が何もイメージできない。

これは高校生大学生が読んでもたぶん意味不明。大人になってから俳句やら山水画やら中国古典やら色んな知識を詰め込んだ人だけがギリ理解。
当時の読者もこれを小説とは思わなかったに違いない。ジャンル的にエッセイ。
ただ、ときどき暗記したくなる一文に出会う。そういう本。

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