三島由紀夫「盗賊」(昭和23年)を新潮文庫版で読む。昭和23年9月に大蔵省を退職し職業作家に転身して11月に出版された処女長編作。
1930年代が舞台。子爵家の一人息子藤村明秀は国文科卒で鷹揚な性格。たいして苦労も無く育って苦労も無く就職。いわゆる上流階級のボンボン。
S高原のホテルで出会った原田美子に初めての恋。だがこれは相手が上手でどうにもならなかった。美子に結婚する気はない。これがもとで藤村家と原田家は絶縁。
京都での法事に父に代わって出席。そこで山内男爵が明秀に接近してくる。その令嬢清子が現れる。べつにそんなに夢中になるほど美人でもない。だが、清子も失恋の傷を負っている点で明秀に近い。
結婚するのしないので見せる子爵とその妻(母)の言動がいろいろおかしい。理解不能。
清子と明秀は周囲に一切気づかせず、結婚式の当夜に情死。なんだこの展開。
話の筋を他人に説明しようとするならこうなるけど、たぶんイメージは人それぞれ。なぜタイトルが「盗賊」なのか?それはラストの一文にこの言葉が出てくるから。テーマは生と死、若さと老い?滅びていく高貴なもの?
23歳の秀才優等生作家が憧れの作家を模して、思いっきり背伸びをしたような、老作家が書くような作風と文体。「花ざかりの森」を読んだときのような困惑。
この本が「あー、わかる」という感じで読める子はよほどの優等生。あまりオススメしない。
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