2021年12月3日金曜日

ヒッチコック「バルカン超特急」(1938)

アルフレッド・ヒッチコック監督の「バルカン超特急」(MGM、20世紀フォックス)を見る。ヨーロッパで対戦が始まる直前の雰囲気を伝える映画。

原題は「The Lady Vanishes」。エセル・リナ・ホワイト「The Wheel Spins」という原作があるらしいのだが、その作家の名前をまったく知らない。
なんと日本での公開は1976年になってから。ということはそのとき初めて「バルカン超特急」というタイトルが?

これ、学生のころにテレビで見たことあって、すごく面白く楽しかった印象。今回、冒頭からしっかり集中して見通したのだが、やはり面白い。
これまでに見たヒッチコック作品の中でも一番に面白い。1938年の段階でこの手のジャンルとして完成形に到達してることに驚く。

スイスへ向かう国際列車の中で、ヒロインが眠っている間に老齢の英国婦人が急にいなくなる。乗客の誰もが「そんな婦人見なかったけど」と証言。
え?頭を打ったショックで幻覚を見てたの?それとも全員嘘を?

英国のスパイスリラー小説の伝統が正しく整えられて配置されてる。男女が最悪の出会いをして、国際的なスパイ陰謀に巻き込まれ、謎を解いて英国を救う冒険。そして恋愛も国益もハッピーエンド。

テンポがいいし配分と構成も良い。伏線の張り方も良い。敵も同乗者もキャラがよい。小道具も絶妙。窓に書いた名前。紅茶の紙包み。包帯でぐるぐる巻きの患者。謎の乗客たち。ユーモアのセンスも特上におしゃれ。
特に「我関せず」という態度をとるクリケット狂英国人2人組のとぼけたユーモアがとてもよい。
英国人からすると中央ヨーロッパの人々って3等車の中でダンス踊ってるイメージ?

そして乗客たちのキャラが明らかになっていく最後の銃撃戦。あの時間にお茶を飲むために食堂車にいたのが全員英国人w
1938年の英国民には「敵に屈する」などという考えは許されない。降伏しようとする弁護士が憐れな最期。死体をそのまま森の中に放置?ここは非情。

そして、ラストもとてもおしゃれ。映像は古いけど、ヒッチコック作品で一番にオススメしたい作品。何度でも見たい傑作。

こんな感じのオシャレな英国のユーモアが盛り込まれたラブコメスパイスリラーって、日本では作れないのか。
たぶんこの映画を目指したものが水野晴郎「シベリア超特急」(まだ見てない。)

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