2021年12月14日火曜日

祈りの幕が下りる時(2018)

東野圭吾の小説の映画化「祈りの幕が下りる時」(2018 TBS 東宝)を見る。
監督演出は福澤克雄。脚本は李正美。TBSによるヒューマンドラマ刑事モノ。
自分、このシリーズに何も関心がないのだが前作がガッキーが出てるので見た。その続編にあたるこれは特に見たい女優が出てるわけでもないので放置してた。

冒頭から不幸な女田島百合子(伊藤蘭)の流転が描かれていて気が滅入る。1983年から始まって2001年。仙台のスナックでホステスとして働いていたこの女性の孤独死。女一人で生きていくのは大変だ。身寄りもないので遺骨の引き取り手として加賀恭一郎(阿部寛)がやって来る。え、加賀の母親だったの?そんな悲しい過去が?
唯一つきあいのあったワタベという男を探す。今回も事件の鍵は日本橋?

そして16年の月日。東京葛飾、荒川沿いアパートで損傷の激しい激グロ死体が発見される。松宮刑事(溝端淳平)が捜査開始。身元は滋賀県彦根市の押谷道子(中島ひろ子)と判明。アパートの借主の男が行方不明で容疑者に浮上。荒川河川敷でのホームレスが殺害され焼却された事件と何か関連が?営業社員の押谷はなぜ東京に行った?

やがて浅居博美(松嶋菜々子)という舞台演出家が浮上。老人ホームの身元不明キチガイババアの娘?溝端刑事の質問にも冷酷で感情ゼロの回答。そんな人間が舞台芝居関係者?溝端は嘘とかぎりなく黒いものを感じる。
なんか、「砂の器」みたいな臭いがぷんぷんする。押谷は犯人の不幸な過去を知っていたから殺された?

溝端刑事は忙しいという加賀と昼食。そこが日本橋砂場。自分、昔ちょっと蕎麦好きを装ってたのだがこの店は一度も行ったことない。溝端刑事は「高い」とぼやく。
加賀恭一郎が事件とどう係って来るのか考えながら見ていた。過去に浅居博美と関係が?どうやら劇団のこどもたちに剣道を教えたことがあったらしい。会って数日なのにほんの少し自身の過去と内面について自分から話したことが。

加賀のアドバイスから溝端刑事は一度は否定されたアパート借主越川とホームレスの焼死体が同一人物であるDNA再鑑定結果を得る。

遺品のカレンダーには日本橋付近の橋の名前が。それらはすべてかつて加賀が田島百合子の遺品を引き取ったカレンダーは同じ?ということは越川と綿部は同一人物?
男は何かから逃げていた?橋で田島百合子と密会していた?この越川(綿部)という老人は女川原発で働いていた?
加賀は日本橋清掃イベントの写真を1枚1枚目をしょぼつかせながら調査。浅居博美の姿を見つける。

浅居と不倫関係にあった元中学教師苗村(及川光博)が浮上。年齢も合う。苗村が押谷を絞殺し、その苗村を浅居が殺した?
だが、苗村の写真を、綿部を知る元スナックママに見せた所「まったくの別人」。振出しに戻る。
この松嶋の不幸な少女時代を演じてるのが桜田ひより(中学時代)と飯豊まりえ(20歳ごろ)。父親と流転する桜田はかなり目立ってる。メンタルをやられるほどヘビーな役。
飯豊もちゃんと見せ場があって目立ってる。ファンは必ず見るべき。

中学生女子に性的な目的で声をかけ、お金を見せて誘い込む原発作業員(音尾琢真)にすっごい嫌悪感w こいつは死んでいいと思ってた。(ヒロインと父親を破滅させた母親も)

加賀父(山崎努)の最期を看取った看護婦役で田中麗奈も出演。田中をひさびさに見た。

刑事たちがコツコツ調べてブレイクスルーを手繰り寄せる新発見の連続。社会派推理小説。こういう刑事ドラマが好きな人にはとても気持ちいい展開らしい。
東野圭吾作品の中では最も重厚で人間関係のピースがぴたっとはまる納得のいく物語だった。「容疑者X」よりも好き。やっぱり過去の回想シーンは「砂の器」のようだった。
壮絶ハードモード人生を送った松嶋菜々子が夜叉のようだった。
まったく存在が見えていなかった容疑者が浮上したときは鳥肌たった。加賀恭一郎はスーパー名探偵だった。事件の中心に自分がいる?よくそこからその結論に達することができた。
できることなら予備知識のない状態で見ることをオススメする。なのでとある出演俳優の名は伏せておく。その俳優もMVP。

ぶっちゃけ大名作。福澤克雄演出もさすがだと感じた。終わり方も良い。(ただしポスターのビジュアルデザインは悪い)
東野圭吾作は最近ハズレばかりだったけどさすが巨匠だと思った。父と娘の愛と絆、そして悲劇の本質を描いてる。

警察組織で追ってるとそうはいかないが、ホームズやポアロだったらこの犯人は見なかったことにして放免するだろう。

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