2021年12月11日土曜日

上野樹里「チルソクの夏」(2004)

「チルソクの夏」(2004)を見る。1977年の下関と釜山の高校生陸上選手の交流を回想した青春映画。
監督脚本は故佐々部清(1958-2020)。昨年3月に心疾患で急死していたことを最近まで知らなかった。
2000年前後には日本と韓国をテーマにした映画がたくさん作られた。これもそのひとつ。自分はこれをDVDが出た当時に見た。たぶん2回ぐらい見た。それ以来、十数年ぶりに鑑賞。
主演は当時人気アイドルモデル女優だった水谷妃里。今ではこの人の消息も聞かない。ちょいスーメタルに似ている。
だが、今ではこの映画は上野樹里の出演作として有名。ヒロインの友人4人組グループのひとり。初登場シーンから今の上野とまるで変わらない。
三村恭代という人は「リンダリンダリンダ」にも出てた。乃木坂で言ったら桜井系の顔。2010年ごろまで女優として活躍していたらしい。おそらくその後に結婚引退。
桂亜沙美という人も2000年代に脇役で名前を見る人だったがもう引退したのかもしれない。

この4人はみんなすらっとスタイルが良い。陸上女子ということでそういう選考がされたのかもしれない。

おばさんになったかつての陸上仲良し女子高生たちが、1977年の下関釜山市民交流の陸上大会を振り返る青春ムービー。市民イベントにしては盛大だ。県レベルか政令指定都市レベルじゃないと高校生で有力選手はそろえることができないんじゃないか。下関と釜山では市としての規模が違う。釜山は福岡や京都、札幌よりもはるかに人口が多い。
フェリーで下関を出発。他校の男子たちも乗っている。少女たちは恋の予感を抱きながら男子たちを品定め。このときなぜかジュース瓶を握っている。おそらく演出した監督はフロイト的な暗示シーンを意図してるのではないか?と想ってしまった。自分がそういう思考に慣れ過ぎてるからかもしれないが。
昔も今も少女たちはカッコイイ男子がすべて。だがヒロインだけは男に興味がないというそぶり。キャッキャ騒ぐ友人たちを怪訝なものを見るような表情。

フェリーを降りる時にぶつかってきた行商おばさんに文句を言うとものすごい勢いで言い返される。品がない。日本人の認識だと韓国人はこう。

到着早々にトレーニングがしたいと引率先生の許可を得る。だがそれは目をつけておいた男子との接触のため。部屋で化粧に余念がない。
このシーンがなぜか下着姿。ちょっと不自然に盛られたエロシーン。自分が初めてこの映画を見た時も同じことを思った。上野樹里のブラ姿が見れる作品としてよく話題に上るのがこの映画。「てるてる家族」の撮影に入るちょっと前。

先生の言う事も聞かずに私服で敷地の外へ出る。薄着でオシャレして出かける。少女たちに緊張感がない。
繁華街へ出てみると男女のカップルがいない。女子は女子とべたべたくっつきながら歩いてる。なんで?それが韓国。儒教老人の目が監視する社会。

で、大会本番。この時代の陸上ウエアは今とは違う。女子たちがブルマだ。800m走選手の上野がトラックを走ってるとカーブで釜山選手と接触。この韓国女のほうが後方から足を引っかけてるのにものすごい剣幕で泣き叫ぶように怒ってる。ヒロインたちも視聴者もドン引きの大乱闘w あー、やだやだ。

見るからに気分が沈んでる水谷妃里選手に韓国高校生の安くんが「ダイジョウブ?」と声をかける。この男子からのアドバイスでハイジャンプでいい記録。
背面跳びって憧れる。一度かっこよくきめてみたい。

そしてこのふたりの交流が始まる。時代はまだ朴正煕大統領の軍事独裁政権下。戒厳令で夜間外出禁止なのに夜窓の下にやってきて「イクコ、オハナシ シヨウ」。みんなが見てるのに。
男は木に登り、女は身を乗り出して会話。「あのふたり、ロミオとジュリエットみたいや」他生徒たちは気を利かせて退散。それが7月7日七夕(チルソク)の夜。1年後の再会を約束。ふたりの会話がカタコトすぎるのに通じてる。淡い恋。

日本に戻ったヒロイン。安くんからカナ日本語と英語交じりの手紙。。この韓国少年がなぜカタコト日本語を?と思っていた。父親が外交官?!だから日本にいたことがあったのか。
少女たちも韓国語の勉強を開始…て、そろそろ受験の準備を始める時期じゃろが。

ヒロインは毎朝走って新聞配達。家は裕福じゃないようだ。父親が山本譲二なのだが見た目がヤクザ。ギター持って飲み屋を流して歩く歌手?この時代はまだカラオケがようやく出始めたころ。

両親は韓国人との文通をよく思っていない。「朝鮮人だけは許さんぞ!」70年代はまだそんな時代。軍事独裁韓国のイメージはかなり悪い。今現在だってもしも娘がタリバン政権幹部の息子とつき合ってたら誰だって止める。
ヒロインが淡い恋の段階で、上野樹里は「この夏中に彼氏と最後まで行こうと思っとる」とか、初体験報告をして「アレが来んのよ」とか言って3人を驚かすような女子。10代の青春を描こうとすれば「性」も描くという製作者の立ち位置が潔い。
彼氏が福士誠治(ボウズ頭)。デートで見てる映画が「幸せの黄色いハンカチ」。ちなみに、日本アカデミー賞が始まったのが1977年。この映画が第1回日本アカデミー賞最優秀作品賞。

陸上女子の顧問が中年男性教諭。更衣室兼部室のドアをいきなりガラッと開けるとか大問題。この時代はまだそのへんでおおらか。

韓国少年はソウル大学を目指している。韓国の大学受験はほぼ科挙で虎の穴。ほぼ地獄。勉強とスポーツの両立はほぼ無理。文通を続けることですら無理。
韓国母の言うことを聴いてると、日本と韓国はただ休戦してるだけの関係に思える。

みんな日韓の間に立たされて浮かない顔。そんな映画。退屈で長く感じてしまったが、70年代の地方の雰囲気がよく出てるように感じた。

一年後、下関側の選手団歓迎セレモニーでのピンクレディー「カルメン」は名シーンだと感じた。大衆歌謡POPミュージックというものがまだ存在しない韓国の度肝を抜いたはずだ。このシーンがPOPで唯一笑えた。

その一方で韓国男がイルカ「なごり雪」を歌い始めたときの寒さと上野樹里の表情に笑った。日本語歌謡曲を歌い始めた生徒を憲兵のごとく怒鳴りながら制止する韓国教師に呆れた。文化を否定しておいて交流とか最初から無理。
そもそも子ども同士の文通に反対するなら最初からこどもを異文化交流さすな。
関門海峡トンネルでのヒロインと韓国男の会話シーン。朝鮮半島の現実を聴くイクコのテンションだだ下がり表情が絶妙。
キスシーン、そして男女の別れ。その場所に友人3人が自ら「なごり雪」を唄いながら出現。これ、何なん?

PS. ちなみに上野樹里は今年の秋に、長年噂されていた「長澤まさみと仲が悪い」説を本人公式ツイッターで怒りをこめて完全否定した。(戸田恵梨香と水川あさみの一部マスコミ報道への抗議に加勢する形で)
上野と長澤が共演したのが2008年「ラスト・フレンズ」。それ以来上野が長澤を避けているような書かれ方した記事をちょくちょく目にしていたのだが、テレビ局で会ったりすると話をする間がらだそうだ。これはうれしいニュースだった。

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