2024年1月31日水曜日

capsule「NEXUS-2060」(2005)

capsule「NEXUS-2060」(2005 contemode ヤマハミュージックコミュニケーションズ)を手に入れた。たぶん昨年の夏ごろ。BOで100円で売られてたので。こいつはまだ持ってなかったので連れ帰った。

下手したらもう最近の学生はcapsuleを知らないんじゃないか?自分もPerfumeにハマったから知ったのであって、CDを買わない層がcapsuleを知る機会はあまりないだろうと思う。

Perfumeあ~ちゃんによれば、このころの中田ヤスタカは「宇宙エレベーターって知ってる?」とか言ってたっていうから、こういった宇宙ステーションSF世界へ高い関心を持っていたらしい。
  1. 「NEXUS-2060」
  2. 「space station No.9」
  3. 「A.I. automatic infection」
  4. 「Q & A」
  5. 「Lucky Love」
  6. 「happy life generator」
  7. 「beautiful hour」
  8. 「urban complex」
  9. 「world fabrication」
  10. 「tokyo smiling」
というトラックが手に入った。
いきなりこしじまとしこ機内アナウンスで始まる。これが今聴くとちょっと可笑しい。

この時期のヤスタカはほぼ小西康陽。おしゃれでカワイイ路線。
これもあ~ちゃんによれば、この時期の中田ヤスタカは見た目が老けていたという。たしか、本人も駆け出しでナメられないようにしていたとどこかで語ってた気がする。
手に入れたことを忘れないためにここに記録する。

2024年1月30日火曜日

知念実希人「神のダイスを見上げて」(2018)

知念実希人「神のダイスを見上げて」(2018 光文社)を読む。書き下ろし作品。
オビには「絶望×青春 ノンストップ タイムリミット・ミステリー!!」とある。

巨大小惑星「ダイス」が地球に接近中。高校生の主人公漆原亮くんは最愛の姉を殺される。花壇の中で全裸刺殺体。

地球滅亡の危機?!という世界規模のパニック。日本も治安が悪化してて、警察も殺人事件の捜査に人を割くことができない。亮くんは、クラスで浮いてる四元美咲に接触し、父からせしめた大金を使って拳銃を入手。隕石衝突で全人類が死ぬ前に、こいつで犯人の胸に復讐の銃弾を撃ち込みたい。

主人公は高校生なのだがハードボイルド探偵の展開。関係者への聴きこみによって姉には恋人がいたらしいことを知る。
亮くんが「恋人だったのでは?」と疑う姉と同じ大学の同じ天文部サークルの魚住に会いに行って拳銃を突き付けて脅して話を聴くと、どうも恋人ではなかったようだ。

スマホにメッセージ。夜間、指定された大学へ忍び込んでみると、魚住の惨殺死体。慌てて逃げ戻る。後日、刑事がやってくるも亮くんはとぼける。四元が嘘のアリバイ証言をしてくれた。

この姉と妹が双方強度のブラコンとシスコン。魚住殺害現場に姉弟のキス写真?部屋にあった姉のぬいぐるみの中から盗撮カメラが…。

姉の恋人候補が大学の哲学科教授60代。姉と教授は特別な関係?ともに巨大隕石により世界が「裁きの刻」を迎えるという宗教に傾倒?教授には姉殺害時にロンドンにいたという絶対のアリバイ。

これ、舞台設定が荒唐無稽なこともあって、今まで読んた知念実希人でいちばんジュブナイル感がした。わりとベタな青春サスペンススリラー。十代の読者には刺さるかもしれない。

2024年1月29日月曜日

知念実希人「崩れる脳を抱きしめて」(2017)

知念実希人「崩れる脳を抱きしめて」(2017)を読む。オビに「知念実希人作家デビュー5周年、実業之日本社創業120周年記念作品、圧巻のラスト20ページ!驚愕し感動する!!」とある。そんな大げさな。では読んでみるか。自分にとってこの作家の本は2冊目。

幼少時に父に棄てられ母子家庭で育った碓氷は苦学の末に医学の路へ。広島の医局から遠く神奈川県葉山の金持ち向け終末医療ホスピスへ研修医として出向く。
そこで一番高い部屋に入院してるユカリと出会う。祖父母の莫大な遺産を相続してるらしい。金に苦労している碓氷は心の中で毒を吐く。部屋で絵を描いているこの若い女性は脳に悪性腫瘍という爆弾を抱えて余命宣告。

しかし、だんだんとユカリに魅せられ恋に落ちて行く。ユカリの部屋で長く過ごすようになる。
やがて碓氷は自身の置かれた状況を打ち明ける。莫大な借金を返済するために、アメリカに渡って医師としてバリバリ金を稼ぎたい。そして自分たちを棄てた父(すでに死亡)への恨み。

ユカリが異常に頭が良い。碓氷の話を聴いただけで「何かおかしい」と気づく。広島に戻ったついでに父から母への手紙と家族写真を持ち帰り、ユカリに見せただけで父の真意と真相を見抜く。碓氷の父への呪縛を解く。

碓氷は「好き♥」という気持ちを打ち明けられないまま広島へ戻る。
そこに弁護士がやってくる。ユカリは亡くなった。遺言で遺産の中から3068万円受け取るようになってるけど、受け取る意思はある?

そこから先は、ユカリの死に疑問を持った碓氷の単独調査。ユカリが路上で倒れて担ぎ込まれた病院の医師を訪ねたり、弁護士事務所を訪ねたり。そして自分を監視してるセダン。
ユカリはさらに遺言状を残していたのではないか?

最後の最後で碓氷が面会する相手が、自分は予想がつかなかったので驚いた。
青春恋愛ミステリーとして鮮やかなスマッシュヒットだった。医師作家というと北杜夫、渡辺淳一しか読んだことがなかったけど、知念実希人はすでにそれらを超えている。今後も知念実希人を読んでいく。

2024年1月28日日曜日

池田エライザ「真夜中乙女戦争」(2022)

池田エライザ出演作リストに2022年1月公開の「真夜中乙女戦争」という映画があるので見る。
同名の原作小説(2018 KADOKAWA)があるそうだ監督・脚本・編集は二宮健。音楽は堤裕介。角川大映スタジオの制作で配給はKADOKAWA。主演は永瀬廉。

平凡な日々を送る「私」が謎の男「黒服」との出会いの末、「真夜中乙女戦争」という犯罪計画に巻き込まれる姿を描く。というもの。

主人公の私(永瀬廉)は大学に入学して20日。死んだような目でつまらない講義を聴いている(スマホいじって聴いてない)。
この学生は変な学生に違いないが、おい、そこの中年女性講師。オマエに大学講師のポストがあるのは授業料払ってる学生あっての物種だろ。ぞんざいに虫でも追い払うような態度を見せるな。
この学生がすでに「奨学金」という名の借金に追い込まれてる。なのに電話一本で家庭教師バイトをクビ。親からはプレッシャー。

「苦役列車」で見たような日雇い作業バイトの現場へ。ここの監督がとてもじゃないが異常なテンションでパワハラ。いやパワハラなんてものじゃない。異常すぎるし狂ってる。
それに大学の他の学生も講師も警備員もすべてが不快でなんか嫌な感じ。こんな毎日地獄だな。だが、まだ人生を諦めるには早すぎる。
サークル紹介冊子を見て「かくれんぼ倶楽部」教室を訪れる。なんだこの拘置所と面会人みたいな窓口対話は。これが入会面接?!まるで噛み合わない。
ここで初めて池田エライザ先輩が登場。すっごいテンション低い。
そして新歓パーティーへ。

陰キャすぎる主人公、2時間壁際に立ってるだけ。そこにエライザ先輩。「大学生はとにかく遊んで恥をかくことが一番大切なんだよ」
大学にこういうキレイでかわいらしく積極的な女ともだちがいたら毎日楽しいはずなのに。主人公は他人に関心を持たない。

大学で黒服(柄本佑)が喫煙所の吸い殻入れに何か液体を入れ燃焼爆発させるテロ現場を目撃。
こいつはスマホでクルマのロックを解除した盗難車で逃走。何者なんだ。こいつを追いかけて同乗合流。

主人公のナレーションで説明。黒服はポルノサイト運営、アプリ開発などで十分すぎる不労所得を得ている。ある一定以上の金があると、そこからどんどん増えていく。もう働かなくてよい。だがいちど学生というやつをやってみたかった。「幸せになれないやつは自分で自分を呪い続けている」

池田エライザ先輩が意外に普通の女子大生。私と一緒にボーリング。そこに黒服。黒服はなぜか先輩のことを何でも知っている。

私は黒服のアジトのような住処へ。映画スクリーンもある広いスペース。「ノスフェラトゥ」というサイレント映画を一緒に見る。
ふたりが共通で好んだ映画はディザスター映画。

黒服はこの場所に多くの問題学生たちを集める。みんな行き詰まってる。常連たちの秘密結社。そして悪質な悪戯で大学当局や社会と闘う。サーバー乗っ取り、ビラ撒き、花火大会、ダンスパーティー。オウム真理教も初期はこんな感じだったのかもしれない。

黒服「腐った世の中のシステムに乗っかるのはシステムの再生産と同じだ」
先輩「日々一生懸命戦ってる人々は悪なの?」
黒服と先輩は陰と陽。
そしてクリスマスの夜に東京を破壊する計画「真夜中乙女戦争」。サイレント・トーキョー。
いや、東京中を爆破するってどんだけ爆薬が必要なんだよ。てか、これ核なの?

池田エライザ「もう死ねばいいと思う。ホントにサイテーだよね、キミは」って箇所、録音して何度も聴きたい。

BGMがずーんと鳴る。怖い。ノワール映画だと思ってたけど、森見登美彦みたいなジャンルだったかもしれない。
みんなお金お金で苦しんでる日本社会は一度完全に破壊されるべきだと思う。あと、大学ってもう必要ないと思う。悪質な何かの搾取システムでしかない。
主題歌はビリー・アイリッシュ「Happier Than Ever」(ユニバーサル インターナショナル)。挿入歌は池田エライザが歌ってる「Misty」。池田エライザがイイ女すぎる。

2024年1月27日土曜日

中公新書1371「鄭和の南海大遠征」(1997)

中公新書1371「鄭和の南海大遠征 永楽帝の世界秩序再編」宮崎正勝(1997)という本がそこにあったので手に取った。
鄭和(1371-1433)って、明の時代に南海を遠征した人…という知識以外に何も持っていない。何か教えてもらおう。

元帝国から明帝国へ。前半はそのへんの世界情勢をおさらい。洪武帝(朱元璋)とか名前は高校世界史で憶えてたけど、かなりヤバい人。建国の功臣たちをつぎつぎに粛清していくとか、まるで頼朝だしスターリン。

燕王朱棣が「靖難の変」をへて第2代建文帝から皇位を簒奪。第三代皇帝永楽帝となる。宦官だった鄭和は皇帝から重用されていく。身長が180cmあって眉目秀麗で頭の回転も速く弁が立ったらしい。
この人は雲南で明の捕虜となったときに宦官にされたらしい。捕らえた捕虜を宦官にしてしまうとか人権侵害も甚だしいw 元時代の雲南は住民全員がイスラム教徒だったらしい。鄭和は元時代の色目人。

「宝船」は200~300人で操る大型艦船。推定では積載量2500トン?!排水量3100トンと推定。で、でかすぎる。(8000トンという説もあるらしい)
南シナ海、インド洋の荒海を航行するので、平底の沙船でなく竜骨を備えた尖底の構造船だった説が有力。
自分、1420年の明が技術でも量でも造船力で圧倒的に世界一だったことを知らなかった。コロンブス艦隊も3隻(サンタマリア号は200~250トン)、ヴァスコダガマ艦隊も4隻(サンガブリエル号は120トン)、マゼラン艦隊は5隻265人だったのに、鄭和艦隊は2万7000人の大艦隊。

第1回から第6回までの17年間、南京・劉家港からチャムパ、ジャワ、パレンバン、マラッカ、アルー、サムドラ・パセー、セイロンをへて、クーロン、コチン、そしてカリカットという航路を往復。さらにモルジブ、ホルムズ、アデン、東アフリカにも到達。
宋時代から積み上げた外洋航海の技術と海図を得ていく。それはカスコ・ダ・ガマがカリカットに到達する100年前。

この間、マジャパヒト王、密輸中国人、セイロン王らと交戦もしてる。鄭和はよく死ななかったと感心するのだが、第7回でカリカッタで死んだらしい。死因はわかってない。南京中華門郊外の牛首山山麓に埋葬されたらしいのだが墓所がどこかもわかってない。世界史に名を残した人物なのに。

こんな大艦隊を数年おきに派遣してたらお金がかかってしまう。やがて、明帝国は北方遊牧民からの圧迫に備えて外征の余裕はなくなる。

鄭和艦隊によってキリンが中国に渡ったことを初めて知った。瑞兆を告げる伝説の麒麟と、この動物がソマリ語で同じだったので、麒麟としてはるばる永楽帝の北京へ連れていかれたらしい。当時キリンを見た中国の人々はビビったに違いない。
あと、鄭和は足利義満時代の日本に来た説もあることを知った。

2024年1月26日金曜日

池田エライザ「チェリーボーイズ」(2018)

2018年公開の「チェリーボーイズ」を見る。原作は古泉智浩の同名漫画(2001 青林工藝舎刊)。
監督はこの企画をずっと温めてきたという西海謙一郎の初監督作品。脚本は松居大悟。製作は東映ビデオ、マイケルギオン、他。配給はアークエンタテインメント。映倫R15+。

とある地方都市、クンニ(東京でバンド活動、実家は酒屋の林遣都)、ビーチク(市役所勤務、栁俊太郎)、カウパー(パチンコ屋バイト、前野朋哉)の25歳童貞トリオによる、地元で浮名を流す美女・釈笛子(池田エライザ)をターゲットとする「脱童貞作戦」の顛末を描く。

なんでこれを見ようと思ったのか?最近になって池田エライザが実はすごく知的だと気づいたから。キネマ旬報2020年12月上旬号で初映画監督作についてインタビューを受けたとき、「池田エライザの魂を揺さぶった映画」としてこの「チェリーボーイズ」の名前を挙げていたから。

こいつらの暮らす町が治安悪い。コンビニ前でかなり粗暴なカツアゲ(ほぼ強盗)が発生してるというのに3人は見て見ぬふり。

クンニはとにかく悪態ついてる。独自の自己中論理で他者をバカにしてる。
ビーチクとカウパーはとにかく弱気。栁俊太郎と林遣都はダサそうにしていても普通にモテそうなのだが。
プーチン(ほぼヤクザ、石垣佑磨)と岡山天音の極悪チンピラが酷すぎる。居酒屋で絡んでくる声がデカすぎる。こんなやつ都会にはいない。SNSでいきなり煽り運転動画を見せられたときと同質の不快感。
クンニの前を池田エライザが通りかかる。もう最初からエロい。配達中のビールケースからビールを直接買って瓶で飲む。
3人のリーダー格クンニはこいつを3人で襲撃して童貞を卒業する計画を打ち明ける。こいつはとにかく口が悪いしほぼ狂気の犯罪者予備軍。わりとまともな一般人ビーチクとカウパ―は早くそいつと縁を切れ!

釈エライザ笛子と田舎ヤンキーたちのカラオケゲームって地上波で放送できないやつ。エライザ、なんでこんな役を受けた?

この映画、最初から最後まで池田エライザが可愛らしくいい女として描いてる。そこ、演出上で重要。
ビールを配達に行って部屋に上がってじゃがいもをふるまわれるシーンのホットパンツエライザは男子はみんな好きになっちゃうやつ。ザ美女。

プーチンに反抗するビーチク。この映画、エロとバイオレンスの田舎ロシア国民は見るべき。
プーチンの女パー子役の松本メイはセ○シー女優だそうだがすごく台詞演技が上手くて感心しかしなかった。

あと、栁俊太郎はもっと俳優として成長して30代後半になったら金田一耕助をやってほしい俳優。とにかくおしゃれでスタイルが良い色男。
仕事中の勤務先にプーチン(まずこいつを始末するべき)がやってくるの、田舎の役所と同○利権みたいだった。職場の同僚たちがみんな固まってる。

カウパ―(こいつは車を持っている)だけがイイ感じの女友達(山谷花純)がいるのだが、この子に小さな子どもがいると知るや逃げるっていう。そのシーンの山谷花純の表情が哀しい。

林遣都くんがTRICKの上田のようにセコくてキモい自意識過剰。笛子に告白するも「実家継いだら?」と言われ、再び襲撃計画。狂ってる。
コメディかと思ってのだが、日本の田舎って粗暴チンピラがカーストの頂点にいたりとか、ヤリ○ン女とかいて嫌だよね…っていう社会病理を描いた社会派青春映画。

クンニ林とヤリ○ン笛子の直接対決シーンでの池田エライザのアクションと、「やらせろ!」に対する表情の演技が絶妙。「キモい…」
男たちの台詞がひたすらバカなのだが、なんかいろいろ深いなと感じる映画。わりと強く印象に残った。もっと早く見るべきだったかもしれない。
主題歌はMANNISH BOYS「GO!GO!Cherry Boy!」
MANNISH BOYSってなつかしい。まだ活動してんのかな。
ちなみに斉藤和義さんのニックネーム「せっちゃん」は学生時代いつも「セッ○スしたい」と言ってたから。主人公たちに共感できたからこそ主題歌を引き受けたのかもしれない。

2024年1月25日木曜日

池田エライザ「夏、至るころ」(2020)

福岡県田川市を舞台にしたローカルムービー「夏、至るころ」(2020)を見る。
池田エライザの初監督作長編映画ということで見ておくことにした。

これ、キネマ旬報DD映画24区が手掛けてた「ぼくらのレシピ図鑑」というシリーズ企画第2弾企画が持ち上がったとき、以前から映画監督をやってみたいと公言していた池田エライザが自ら手を揚げた。

池田エライザによると、「地域、食、高校生、に密着した青春映画」というテーマだけ与えられていたという。
池田自身が田川の町を歩き、人々と出会い感じたことを書き留め、キャラクターを完成させ、原案を書き、「情報過多で『がんばっても報われない』と感じてる今の若者たちに、大人たちが何を伝えられるか」というテーマを込めて、監督として長編映画として完成させたもの。
制作は三谷一夫Pで脚本は下田悠子。主演は倉悠貴とオーディションで選ばれた新人・石内呂依。

地元の太鼓クラブで幼い頃からずっと一緒に祭りの太鼓をたたいてきた翔(倉悠貴)と泰我(石内呂依)。
高校最後の夏、泰我が突然、受験勉強に専念するからと太鼓をやめると言い出して…。という青春ドラマ。

冒頭から高校生会話がすっごく訛ってる。それは的確に地元方言を濃厚に盛り込んだという感じ。
え、原日出子さんてもうおばあさん役なの?!リリー・フランキーさんもおじいさん役なの?!この家はサザエさん一家と同じ構成?!姉(杉野希妃)夫婦が同居?
かと思ってたら、母が若いのでお姉さんかと思ってたら主人公翔の母親なのか。

やりたいことが何もなく将来が何も見えず、不安と焦りを感じる翔は毎日ぼんやり。
ある日、祖父リリーからの頼みで鳥の爪を切ってもらうために行ったペットショップで、東京から遊びに来てる店主の親戚娘・都(さいとうなり)と出会う。

この女がわりとエキセントリック。こいつが高校生2人の前に突然ぬっと現れる。
働いてない女はギターを売ろうとリサイクルショップへ行くと閉まってる。
商店街のほとんどがシャッター閉まってて人通りもほとんどない。時間が止まってる。
高校へ通ってなかったという女を、翔と泰我は夜の高校へ忍び込んで案内。このギタ女の独白が聴いててつらい。もういろんなことがわかってしまって、歌う気にならない。

翔は無理を言って都に歌ってもらう。なんか、翔はすごく感銘を受けた様子。夏の夜、高校のプール。忘れられない出来事。ああ、青春だなという。

そこに物分かりのイイ高良健吾先生登場。読書のススメ。こういう何事も受け止めてくれる優しいお兄さんのような先生ってどこかにいてほしい。

こういうローカル青春映画って、たいていおじさん監督による退屈なものが多いのだが、そこは池田エライザ。幼少からたくさんの本を読み、たくさんの映画を見て、中学時代以降は評判の美少女として過ごしたサブカル女優ならではのセンスが出ていた。十分に見れる映画になっていた。

静かで間合いをたっぷりとった、いい意味で退屈な、十代の退屈な夏を描いた正しい青春日本映画。
ただ、真面目で硬派すぎる文芸作品のような映画になってしまった。コミカル要素がまったくない。意外かつ笑えるのが都が公園遊具に出現するシーン。
主人公を演じてた俳優がすごく少年時代の山田孝之感がした。とにかく暗い。

キネマ旬報2020年12月下旬号に池田エライザとリリー・フランキーの対談が掲載されている。
リリー「脚本読んだとき意外なものを撮るんだなと驚いたけど、本編を見たらもっとびっくりした。23歳の若い女の子が初めて撮った映画という匂いが微塵もしなかった。何本も映画を撮ってるジジイの作品みたいな質実さを感じた」
池田「私も若いので、もっとアートっぽいことをやりたいとかそういう欲もあった。でも、やる必要がなかった」
池田「夏休みの夜にプールに忍び込むなんて、描写としては王道中の王道じゃないですか。でも、青春時代ってみんな無自覚に全力で王道をやっていたと思う。私自身はそれを少し離れたところから親指の爪をくわえて見ていたタイプでしたけど」
ちなみに、リリーさんは今作が初めての「お祖父ちゃん役」。
劇中でリリーじいさんが飼ってたインコは、池田エライザが実際に自宅で飼ってる「ホクサイ」ちゃん。
劇中の泰我というキャラは仲野太賀から許可を得て借用。

劇中で都が言ってた音楽活動への不満は、池田がリリーに普段言ってる愚痴そのもの。過去の古傷、絶望、嫌な事。都を演じたさいとうなりが「100%共感しエキセントリックに言ってくれた」

主題歌は崎山蒼志の書き下ろし「ただいまと言えば」。池田が崎山のファンで、崎山が高校生だったということもあって、池田がオファー。

2024年1月24日水曜日

小倉貞男「ドキュメント ヴェトナム戦争全史」(1992)

小倉貞男「ドキュメント ヴェトナム戦争全史」(1992)岩波書店を読む。著者は読売新聞サイゴン特派員を経て同紙編集委員、インドシナの専門家。この本は主にベトナム政府幹部たちにインタビュー聴き取り調査して得た「ベトナム側」視点のベトナム戦争通史。

ベトナム戦争が世界に与えた影響は大きい。日本にもベトナム難民が流れ着いたし、白豪主義だったオーストラリアが建国以来初めてアジア系外国人としてベトナム難民を受け入れた。多くのベトナム人が外国へ散らばった。ベトナムの被害も甚大だがアメリカも深い傷を負った。

日本もインドシナの戦火に噛んでいる。日本のインドシナ侵攻がホー・チ・ミンとヴェトミンを生み出し勢力を広げた。
なのに日本人一般のベトナム戦争への知識は、自分を含めて、とても乏しいように思える。こういった本で学ぶしかない。

もう第1次インドシナ戦争とか、バオ・ダイ帝とか、ディエンビエンフーの戦いとか、多くの日本人にとって遠い記憶の彼方。
ゴ・ディン・ジエム政権下の南ベトナム政府についてリアルタイムで知っているという人はもう70年配の人々に限られる。

自分は知らなかったのだが、ジエム政権下で農地改革に取り組んだのが、日本の戦後にGHQマッカーサーの下で農地改革を断行したウォルフ・ラデジンスキーだった。
だが、対フランス戦争時にヴェトミンによって小作農に分け与えられた土地を取り戻そうとする地主階級と小作農双方からの不満によって失敗。

この本を読むと、アメリカがこれほどの戦力と物量を投入しても、ジャングルに枯葉剤を撒いても、北ベトナムに勝てなかったことが異常なことのように思えてくる。

1968年1月31日の「テト攻勢」は南ベトナムとアメリカの勝利が絶望になっていく有名な転換点だけど、今読むと、ハマスのイスラエルへの同時多発大規模奇襲攻撃に似てるなと思えた。何か作戦上の成果を得るというより、国際社会へのアピールが目的。

サイゴン・チョロン地区アンクァン寺付近の衝突でサイゴン政府軍海兵隊に捕らえられた解放戦線青年が、後ろでに縛られた状態で路上で拳銃で頭部を撃たれて処刑される写真(映像)が撮られた(AP通信エディ・アダムズ記者)ことはアメリカ社会を震撼させた。
この映像は子どものころから何度か見たことあった。てっきりアメリカ軍の将軍か誰かだと思ってた。南ベトナムの悪名高い国家警察本部長官グエン・ゴック・ロアンによるリンチ処刑。

テト攻勢は共産側で45000人の死者、米軍は1100人、政府軍同盟軍は2082人が死亡。だがウェストモアランド南ベトナム援助軍司令官はジョンソン大統領によって解任。厭戦の米国民も諦めの気分。

ニクソン大統領のカンボジア侵攻とラオス作戦で戦況は好転するかに思えたのだが、アメリカ軍は白人と黒人がいがみ合うなど士気が低下。結果、1973年1月のキッシンジャーとレ・ドクトによるパリ和平協定。3月29日にはアメリカ軍はサイゴンに軍事顧問団を残して全軍撤退。

パリ協定によって南にはサイゴン政府と南臨時革命政府と二つの政府が並立。こんなの絶対に関係が崩壊する。
そして1975年のサイゴン陥落。タンソンニュット空港は国外脱出しようとする人々で混乱の極致。国が崩壊するとどうなるのかを教えてくれる。
北がサイゴン政府を総攻撃したらアメリカ軍が戻ってくるのでは?と不安があった。だが党政治局は「それはない」と判断。その理由はウォーターゲート事件だった!?

自分、以前から1979年のベトナム軍のカンボジア侵攻と中越戦争(第3次インドシナ戦争)に関する書籍を以前から探していたのだが、見つけられなかった。しかし、この本で十分に知識を得られた。
社会主義国同士の戦争で、当時は戦況がよくわからなかったに違いない。

「クメール・ルージュ」と言う言葉は、厳しい国家財政の中から国費でフランスに留学させたのに共産主義者になって帰国したポルポトやキュー・サムファンらを侮蔑してシハヌークが呼んだ呼称!?
カンボジア共産党はベトナムの指導で誕生したのに、ポルポトらはベトナムを極度に嫌う。

1978年12月25日、ベトナム正規軍19個師団、約10万人が1千キロにおよぶ国境全域にわたってカンボジアに侵攻。メコン川をネアクルンで渡河したベトナム軍は79年1月7日にプノンペンを占領。ポルポト派をタイ国境山岳地帯に追い出して、カンプチア人民共和国(ヘン・サムリン政権)が成立。狂ったポルポト統治から多くのカンボジア人を救ったのだから、「侵攻」と呼ぶのは正しくないと思う。

これにより中国とベトナムの関係が緊張。ベトナムを「懲罰」する目的で、1979年2月に許世友広州軍区司令官をベトナム侵攻作戦最高司令官に任命。ベトナム国境に集結した広州、成都、昆明、武漢、新疆、北京の各軍区から軍団が集結。2月17日午前6時、3個師団13万人が1600キロ国境全域から殺到。20日にラオカイ、27日にカオバンを占領。両都市を瓦礫にする。3月にランソンを占領したところで、対ベトナム戦の勝利を宣言し、「懲罰」の目的は達したとして5日に撤退開始。

中国側からは何の発表もなかったが、ベトナム側によれば、国境地帯320の村が焼かれ、904の学校、430の病院が破壊。以後、ベトナムは中国国境に大部隊を配置しなければならず、国家財政を圧迫。
ベトナム国防省発表によると、60万人を動員した中国軍は62500人が死傷。550両の戦闘車(戦車280両をふくむ)を破壊。大量の武器、弾薬、捕虜多数を捕獲。
ベトナムは地方軍が戦ったのみ。ハノイ正規軍とカンボジアで作戦中の正規軍は動かず、中国の目的は達成できなかった。

国境山岳地帯を侵入した中国軍戦車は対戦車ロケットで狙い撃ち。中国軍兵士の士気は低く、タイグエン捕虜収容所で中国軍兵士に聞いたところでは、出身地は瀋陽、河北、河南、山東、貴州、広東、四川、広西チワン自治区各省から徴用され、簡単な訓練の後に戦線へ。
ベトナム兵によれば「中国兵の携行武器は少なく、10人に小銃が2丁、手ぶらで戦場に来て、背後から指揮者が前進を命令。そのまま地雷原に入って犠牲者が出てびっくり。前進を拒否した兵士は指揮官に射殺された」

ベトナムには華人がたくさんいた。明が清に滅ぼされたときに多くの亡命者がベトナムに渡った。彼らはクメールが支配していたメコン一帯を占領、中国人が移住しサイゴンとチョロンが建設された。カンボジア人は今もこの地はもともとはカンボジア領だと主張。

南北統一後、レ・ズアン体制は華人たちにベトナム国籍を強要。これを迫害とみなした中国人がベトナムを脱出。1978年に26万3千人が中国へ脱出。(UNHCR、1990)
ベトナムと中国の関係正常化は1991年。

2024年1月23日火曜日

夏帆「天然コケッコー」(2007)

映画「天然コケッコー」を見る。原作はくらもちふさこ。監督は山下敦弘。脚本は渡辺あや。音楽はレイ・ハラカミ。配給はアスミック・エース。主演は公開時16歳だった夏帆
DVD化された直後に見て以来なので15年ぶりぐらいで見返した。

夏の島根の田舎風景にレイ・ハラカミの音楽。そして夏帆のナレーション。全校生徒6人の分校風景。登場人物紹介。みんなこどもたち。おもらししてしまう小1児童の面倒をみるのは中学生。

ヒロイン右田そよ(夏帆)のほぼ主観語り。ヒロインと同学年の転校生大沢広海くん(岡田将生)がやってくる。初めての同級生のイケメンぶりにポーっとなる。岡田将生は夏帆より2歳年上なので当時18歳だ。担任の先生が黒田大輔だったと今回気づいた。

転校生大沢くんが都会っ子で田舎にも子どもたちにも慣れていない。手渡された給食の果物がおしっこ臭くないか疑う。ヒロインの大沢くんへの気持ちは急速に冷める。「そよちゃん、どがんしたん?」

お父ちゃんが佐藤浩市でお母ちゃんが夏川結衣だ。家が大きな農家だ。移動販売の野菜屋トラックからスイカを買って縁側でだらだら過ごす。田舎の人々は近所の人々の噂話。
なんでそよちゃんはスクール水着着てるのか?近所の子たちと一緒に海へいくのか。このとき大沢くんが田浦の出戻り娘の息子だと知る。
大沢くんは田舎の子どもたちにとって異分子。なにげに避けていた怖い通り道とかずんずん行ってしまい、田舎の子たちを戸惑わせる。
飛び降り自殺者の出た橋の上で、小1のさっちゃんが「人がおる」とか言い出してパニック。そよは線路上で転倒しパニック。しかし大沢くんが冷静にそよを線路わきへ。大沢、頼もしいじゃん。
そよと大沢くんは初めてふたりきり。お互いにいいとこあるじゃんと気づく。

そよは大沢くんに町へ買い物につきあってくれと頼まれるのだが、そよはさっちゃんが膀胱炎になったと聞いて、自分がきつく言ったせいだと自分を責める。後ろめたい気持ちでさっちゃんに会いに行く。ここが最初の感涙ポイント。

そよの弟の浩太朗はすっかり大沢くんに懐く。だが父は田浦の家の孫と親しくするのは気に食わない。たしかに大沢くんは中学生男子なので危険な感じになりつつある。

とにかく中学生たちは田舎の暮らしに退屈そう。そよちゃんはそこにあった通販カタログ冊子を見て楽しむだけのものと思ってる。それは注文するためのものだと大沢は教える。なんか、そよちゃんの反応が新鮮。そんなにも世間を知らない?

通販ははがきで申し込む。郵便局へいくと郵便局員(シゲちゃん)も顔見知り。だが、無遠慮に家庭の事情を周囲に聴こえる声で尋ねてくる。
はがきを送ろうと思ったら締め切りを過ぎていてしょんぼり。大沢くんの着てる上着がほしくなる。対価は「チューしてもええよ」なんなんだこの女子中学生。

神社の夏祭りの夜。そよちゃんは篤子の前で「ダサい散髪屋しかない」と言ってしまい激しく後悔。そんな失敗ばかり。
この田舎町で唯一東京の風を吹かせるイケメン大沢くんを中学女子たちは意識。
祭の夜の帰りに軽トラの荷台で大沢くんの母親(大内まり)と初対面。明らかに田舎にはふさわしくない余裕のある大人のイイ女の雰囲気。タバコふかしながら「彼女?アンタのジャケット着てるじゃないの」

無神経でおっさんなシゲちゃん(衣服もダサイし興味のない神楽を解説してくる)はそりゃあ失恋するだろうけど、そのへんの描写をスサノヲの大蛇退治をバックになぜかながながと見せるヘンテコシーン。
興味のないことには興味ないとハッキリ表す大沢くんはやはり田舎にとって異分子。幼なじみ女子たちも意外にイジワルだと思ってたら、単に鈍感だっただけ?

そよの弟浩太郎は大沢くんの母に散髪してもらう。だがそこに散髪にやってきた父。なにやらもめだす。大沢母と父はかつて三角関係の痴情のもつれ?!田舎の人間関係はとても狭い。
大沢母が喘息持ち。ちょっとしたストレスで発作。このシーンを見て「超能力研究部の3人」でマネージャーとの修羅場で山下監督が過呼吸になるシーンを想い出した。

大沢くんと初めてのバレンタインデー。田舎者で世間知らずなそよちゃんは、幼なじみ女子たちも大沢くんへチョコをあげることにウエルカム。大沢「…」

小学校と中学校がいっしょの分校。中学生になった弟は制服になってとなりの教室。心配なのはさっちゃんより年下の子がこの村にはいない。小学生は2人だけ。どうなってしまうのか?まさか廃校?! 
修学旅行はそよの希望が通って東京へ。大沢にとっては1年前まで住んでいた故郷。生徒はそよと大沢くんの2人だけ。引率の先生が3人。これは効率悪いし、教育的目的を達成できるの?

そよちゃんは東京の人の多さに疲れ切ってホテルですぐ寝てしまう。田舎の方が好きだとわかっただけでもそれは勉強になったといえる。
大沢くんが東京の友だち(バカ男子)とホテルの前で会っている。いそいで部屋にもどって身支度を開始するカットがいかにも山下監督ぽくて笑った。

東京修学旅行編をぜんぜん覚えてなかった。東京土産がルーズソックスとか時代だな。
修学旅行から戻ると今度は父と母、大沢母の三角関係を疑るそよは悩む。
 
そしてそろそろ高校進学の準備。といってもこの地域には高校が2校しかない。え、男子が全員坊主頭なんて高校あんの?
大沢くんが東京へ行ってしまう…と考えるそよちゃんは毎日ぼんやり。

中学生女子あるある。田舎あるある映画なのかもしれない。みんなで学校に通い、そのまま大人になってそこにいるのが田舎。生徒全員で受験の結果を待ち、合格を喜ぶ風景が尊い。
忘れられた映画になりつつあるのはもったいないと感じた。夏帆も岡田くんも声質がとても良いと感じた。こういう映画をいきなりゴールデンで地上波放送してもいいのに。
主題歌はくるり「言葉はさんかく こころは四角」。この曲もすごく懐かしい。

2024年1月22日月曜日

ジェフリー・アーチャー「大統領に知らせますか?」(1978)

ジェフリー・アーチャー「大統領に知らせますか? SHALL WE TELL THE PRESIDENT」(1978)を1987年の「新版」新潮文庫で読む。永井淳訳で読む。

アーチャーがこの本を書いたときは近未来を想定していた。小説で想定してた年代を越えた1987年になって、実在のケネディを大統領の名前に使用してしまったのを改めたかったので大統領名を変更。ストーリーはそのままに一部手直し。

ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Archer 1940-)を読むのは15歳のとき以来。この作家は元陸上短距離の選手にして英国議会保守党下院議員。1974年にカナダのエネルギー企業への投資に失敗してしまい、電話料金と子どものミルク代のために書いた「百万ドルを取り返せ!」がベストセラーになって作家に転身。なんと今も精力的に作家活動を続けてた。最新のものもいずれ読もうと思う。

アメリカ合衆国大統領を暗殺しようともくろむ犯行グループとFBI捜査官との戦いを描いてる。
正大統領の急死により、初の女性アメリカ大統領に就任したフロレンティナ・ケインを暗殺しようという謀議をたまたま耳にしてしまったギリシャ不法移民の男から、FBI捜査官で首都ワシントン支局長ニック・ステームズの元へ「FBI長官と話がしたい」と必死の訴え。

ニックは半信半疑のまま、銃創を負った男が入院してる病院へ。話に信ぴょう性がありそうだが、もうちょっと調査してみないと。
という矢先に、この憐れな証人は同室の耳の不自由な黒人郵便配達夫といっしょに喉を掻っ切られて殺されてる…。
そしてニックと同僚もポトマック川に沈んだ車の中から発見。サスペンススリラー映画のような展開へ。

そしてほどなく、この本の主人公はマーク・アンドリューズくん28歳(FBI最年少の下っ端)に交代。そこ、意外な展開。
この青年だけが証人とニックが殺された理由を知っている。どうしていいかわからずあたふたするぺーぺー新人。FBI長官と面会するアポを取らなきゃ…

容疑者は100人いる上院議員?動機は銃砲所持規制法案を廃案に追い込むため?!
FBIは犯行グループに察知してることを悟られないように追跡。

この若手捜査官マーク・アンドリューズくんが有能。ときにイェール大学学生を装って議会へ潜入捜査したりしながら容疑者を絞り込んでいく。
だが、暗殺実行グループに元FBI捜査官がいて、マークの単独行動に不審なものを感じ取る。「マークも殺してしまおう」謀略を計画する黒幕と殺し屋たちは非情。

証人が担ぎ込まれて殺害された病院の当直医エリザベスが美人だからと本気になってしまうマーク。(この女医の父親はデクスター上院議員。)
100ドルもかけたディナーとワイン。その夜、女医のジッパーに手を掛けたときに上司から電話…というコメディ展開。FBI捜査官はつらいよ。

大統領暗殺をもくろむ正体不明の上院議員と殺し屋。それを追うFBI。まだ、大統領にもシークレットサービスにも報告してない。「大統領に知らせますか?」

陰謀発覚から現行犯逮捕まで、わずか7日間の息詰まる戦い。英国作家らしいおしゃれなクライムサスペンス長編。ドラマ映画を1本見たような満足。
英国国会議員だった著者ならではの政治描写。フォーサイス「ジャッカルの日」を思わせる。てか影響を受けている。

2024年1月21日日曜日

さよなら、結菜

以前から黒島結菜が性格ドライすぎて怖いなと思ってた。過去をぜんぜん振り返らないし覚えてないし、要らないと感じたものはすぐ棄てるし。大学もあと1年で辞めるし。

周防監督が言っていた。この子はいずれ女優業もスパッと辞めるかもしれないと。

自分も過去に何人も見てきたのだが、不評主演ドラマは若手女優の寿命を縮めるなと改めて感じた。
一生懸命に取り組んだ大きな仕事が世間から評価されない。それだけで人は「もういいかな」と諦め切り捨てる。NHK朝ドラスタッフの罪は重い。
約10年間応援してきた黒島だったのだが、おそらく今後はもうこちらから積極的には情報を追わないと思う。ぜんぜん情報も私生活も発信してなかったけど。

それに、黒島のファンって、男も女もあんまりSNS上で見当たらなかった。美人なのにあまり人気がでなかった女優になってしまったかもしれない。ドラマも映画もヒット作にめぐまれなかった。
不評朝ドラ直後にヒロインとして出演したジャ○ーズ主演ドラマもあまり話題になってなかった。
実は自分も一番熱心に黒島ウォッチャーだったのは「時をかける少女」のころまでだったかもしれない。

たぶん、今後1年は映画やドラマの仕事はない。下手すると女優としての復帰すらないかもしれない。
今回が最後の黒島記事だったかもしれない。もう生きていて面白いことなんてほとんどない。

2024年1月20日土曜日

京極夏彦「姑獲鳥の夏」(1994)

京極夏彦「姑獲鳥の夏」(1994)を読む。講談社NOVELS(2006年34刷)で読む。

じつは人生初の京極夏彦。あまりに分厚い本ばかりで、なかなか手に取ることがなかった。

今回はまずシリーズ最初の「姑獲鳥の夏」を選んだ。2005年公開の実相寺監督の堤真一主演の映画はすでに見ている。だいたいの内容を知った上で読む。
映画でだいたい内容を知った状態で読むので、登場人物たちをそのまま映画キャストで脳内再生してしまう。

久遠寺病院の娘が身ごもって20か月。そんなことって現実にある?と相談にやってきた関口。
京極堂と関口くんの会話がとてつもなく長い。旧制高校を卒業したインテリたちはこんな会話をしていたのか!?という驚き。視覚と脳と認知に関する科学と哲学の論争。自分も昔は30代になったらこんな会話ができるようになるのかと思ってた。

この本の内容を他人に説明するのは難しい。もう30年前の作品だが、一周二周回って新鮮だった。活字で読むとさらにおぞましい。
病院炎上シーンは映画オリジナルのイメージ要素だったんだなと知った。

京極夏彦の書く本はとにかく分厚いのだが、「姑獲鳥」はたぶんいちばん薄い。とはいっても2段組み活字で429ページだが。
面白かったので、今後このシリーズを読んでいこうかと思う。

2024年1月19日金曜日

齋藤飛鳥「潮騒」(2017)

齋藤飛鳥が17歳の時に撮影され2017年1月に幻冬舎より発売された写真集「潮騒」を今になって手に入れた。
昨年の秋ごろ、いつものようにブックオフを物色してて、220円の値札が貼られてそこにあるのを発見した。

これ、発売から7年経つし、齋藤飛鳥が人気アイドル過ぎて今も増刷を重ね、なおかつ中古本もたくさん出回ってる。
その店にあった他の在庫だと750円~1300円など値段にばらつきがある。この個体だけが220円なので、レジに持っていくとき多少緊張した。

家に連れ帰ってそのまましばらく放置してたw やっと見た。
オビもポストカードもついていた。ほとんど読まれてなかったのでは?という個体だった。
ポストカードの種類すべてを把握してないのだが、このシュノーケルつけてポーズをとって海辺に立ってるやつが一番魅力的ではないかと思う。

自分、乃木坂にハマったのが2016年1月から、その年末の橋本卒業のころまで。
「乃木坂ってどこ?」「乃木坂工事中」動画を漁るように見ることに特化したオタだった。
なので、この齋藤飛鳥初写真集に関するニュースはそれほど追いかけてなかった。それでも、北海道、沖縄で撮影したカットが小出しにされていたのは覚えてる。

人気アイドルの水着写真というものは貴重で、その多くがSNSに流れてきたのを眺めていた。なので水着ページの写真はどれもだいたいどこかで見覚えのあるものだった。
だが、それ以外はほぼ初めて見るカットだらけだった。新鮮だった。

やはり齋藤飛鳥はレベチなアイドルだった。小柄で華奢で細い。しかし、ガリガリに痩せているというのでなく、ほっそりしてるのにふっくらという、清純派アイドル大天使とでもいうべき容姿をしてる。丸顔で上唇のカール具合とか神秘的に美しい。これは人気No.1になるのも当然。良い買い物。

齋藤飛鳥はグループ卒業後の2023年5月に出したニューヨークロケ写真集もある。こちらは下着姿などもあって大人気。まだまだ中古相場も1700円以上するので、自分は当分手に入れることはできない。

齋藤飛鳥は映画「マイホームヒーロー」に刑事役?!で出演してる。今年26歳になるので女優としては勝負の年。13歳から今日までノースキャンダルなのもすごい。

2024年1月18日木曜日

樋口一葉「大つごもり・十三夜」

樋口一葉「大つごもり・十三夜」他五篇を1979年岩波文庫版(1986年9刷)で読む。これも処分するというのでもらってきたもの。樋口一葉を読むのは久しぶり。

その昔、本上まなみさんが樋口一葉が好きだというので何作か読んだりした。下谷竜泉町や本郷菊坂へ出かけたりした。もう一葉の時代の風景はほとんど残ってないけど。

樋口一葉(1872-1896)享年24には短編しかない。そのどれもが頭にぜんぜんすっと入ってこない文体。
なにせ明治20年代。ある意味、西鶴や近松よりも読みにくい。明治のこの時代の東京の庶民が使っていた表現が多数。何度も同じ箇所を読んでみてやっと意味がわかる。なのでページは薄いが読むのに時間がかかった。

しかし、昔読んだよりは今の方が意味が解る。声に出して読むと調子がいい。落語のよう。
一葉は父親が士族ではあったが死没し生活が極度に困窮。教育というものを受けていない。師は三流文士。
なのに美文だし格調高い。上野の帝国図書館(当時は有料)にせっせと通って古典を読みふけったせい。若いのに感心だし尊敬。文壇で注目されたら不治の肺の病とかほんと気の毒。
そんな一葉の短編はどれも明治の庶民の悲哀を描いてる。

この文庫本に収録されている7作はどれも自分は初めて読んだ。

大つごもり(明治27年)
貧乏で年が越せない伯父のために、奉公先で2円の給金前借しようとするもアテが外れ、ついに横領?!という鬱小説か…と思いきや、意外なラスト。東京は今も昔も貧富のコントラストが強い。
「子は三界(さんがい)の首械(くびかせ)」という言葉を知らなくて知れベてみたら、この「大つごもり」から引用してることが多い。少子化対策と逆を行くことわざに聴こえる。

ゆく雲(明治28年)
志を立てて東京に学ぶ青年が故郷の山梨に帰って結婚する。そのために淡い恋心を抱いていた娘との切ない別れ。

十三夜(明治28年)
身分の違う嫁ぎ先から子どもを置いて実家に逃げ帰ったお関。夫が散々自分をバカにするので我慢ならない!と両親に愚痴。しかし父はお関を諭して返す。
え、気づいたら車夫が没落した幼なじみ?!
これが今回読んだ7作品のなかで一番好きだった。明治の人々の一場面を描いた戯曲のようだし短編映画を見るよう。

うつせみ(明治28年)
東大植物園の近くの家に引っ越してきた家族が十代後半の娘(幻覚を見るような精神病)の看病介護をしてる…という風景。悲哀しかない。

われから(明治29年)
母と娘、2代の夫婦関係の破綻。代議士の夫を持つお町は夜になると家で独りぼっち。寂しさのあまり書生に親切にしてしまうのだが…。
え、お町は離縁されるようなことした?ページをめくってもそんなことは書いてない。噂だけで家を出される?いやこいつ入り婿なのに?明治時代を知るのに重要な小説。

この子(明治29年)
一葉が残した唯一の文言一致体小説。女の夫への告白形式による訴え。子が可愛すぎていろんなことが無理!一気呵成。まるで太宰の「駆け込み訴え」。

わかれ道(明治29年)
傘屋の小僧の吉(16)は夜になると近所のお京(20)が針仕事してる傍らで餅を焼いて食べる間柄。吉に出世するように言うのだが、吉はそんなのムリだしその気もない。
年末になって急にお京から引っ越して行くことを告げられる。妾となる?!それは切ない。

2024年1月17日水曜日

阪本順治「KT」(2002)

金大中事件(1973)を題材にした2002年公開の日韓合作映画「KT」を見る。原作は中薗英助「拉致-知られざる金大中事件」(新潮文庫)。
監督は阪本順治で脚本は荒井晴彦。音楽は布袋寅泰。日本での配給はシネカノン。

昨年は金大中事件から50年だった。お勉強のために見ようと思ってた。
金大中という名前は、たぶん50代以上の人は、かつて毎日のように海外ニュースで耳にしていた名前。朴正熙、全斗煥といった軍人大統領独裁政権時代の韓国の野党リーダーで民主活動家の大統領候補。

そんな人物が韓国中央情報部(KCIA)によって東京千代田区のホテルグランドパレスから拉致され殺されそうになるのだが、アメリカが介入し、5日後にソウルの自宅で発見されたという事件。

完全に日本の国家主権を侵害する事件。韓国は昔から日本をナメていた。自民党の政治家たちも外務省も、声と態度がデカい韓国には及び腰だった。
そんな日本と韓国の関係悪化要因になった事件を描いた映画が2002年日韓ワールドカップ前に公開された。
話題になりそうな映画だったのに、硬派すぎてあまり見られてない。今日に至って忘れられた映画になりつつある。

三島由紀夫が市谷で自決した日、自衛官の富田(佐藤浩市)はその部屋に鼻を手向ける。こいつが記者原田芳雄をいきなり殴りつけるなど粗暴。
その一方で韓国は軍事独裁政権への民衆の反発。大統領選挙での不正を糾弾する金大中(あまり似てない)の記録映像を見る朴正熙

牛乳配達してる韓国女がいきなり坂道で自転車で転ぶ。佐藤が助けるのだが、この男は韓国語が話せるのか。
部屋にもどると同僚佐竹(香川照之)が向かいのアパートの一室を監視。さっきの牛乳女が韓国語の家庭教師をしている。そこに黒いスーツ姿の怖い顔した男たちが急襲。こいつらがKCIA?!

日本で韓国人が韓国人に対して暴力と脅迫、拉致がまかり通ってた。その場に現れて牽制する富田。女(かつてデモに参加しKCIAから拷問を受けた過去)だけは戻してやるというギリギリ交渉。佐渡では北の密航船と工作員をKCIAが取り締まる。日本を舞台に北と韓国の戦争。

この映画を見ると、駐日韓国大使館はスパイ組織であることがわかる。亡命した野党指導者を拉致し海岸から密航船で連れ出すとか、日本はKCIAも好き勝手できるスパイ天国。
KCIAたちが工作資金持って日本のヤクザを訪問し暗殺を依頼する。こういうときは白竜さん登場だ。「日本の警察をナメるな」「でも、目をつぶすぐらいなら若いもんにやらせることはできる」日本と韓国の闇。

筒井道隆が在日韓国人青年役。映画館でヤクザ映画を見た後、日本人カノジョを連れていることで日本のチンピラともめる。
たぶんこいつも日韓の闇に巻き込まれて行く役回り。背が高くケンカが強いので金大中側からボディガードにスカウト。えっ、弾除けの壁?

柄本明が登場。この人は別班。ここで富田が防衛大学1期生で別班であったことが明かされる。富田は「日陰者であることが嫌になった」と退官を決意。この映画、自衛官の中途半端さも問題にしてる。

平田満木下ほうかが金大中側近として登場。木下はゼロ年代の初めから映画俳優だったのか。
金大中をKCIAから守るにはどうすればいいか?「ジャッカルの日」について金くん筒井に教える場面がある。金大中は東京都内のホテルを転々としてる。KCIA金車雲(キム・ガプス)と富田たちは協力して金大中(チェ・イルファ)の居場所を捜す。

富田は金大中単独会見スクープ記事を書いた原田芳雄記者に接触。金大中の居場所の探りを入れるのだが「知らない」ととぼけられる。しかし尾行して潜伏ホテルを突き止め金車雲に報告。
しかし、金大中暗殺計画は原田記者によって週刊誌に書かれてしまう。一度は断念。

金車雲もKCIA工作員たちも失敗すると自分たちの命が危ない。なので粗暴になる。
記者と接触していた裏切り者は粛清。遺体はバラバラに。それが独裁国家。そのシーンの中に利重剛さんがいる。光石研さんもいる。KCIAも追い詰められている。

ああ、これが金大中事件に至るまでの前段か。長い長い暗い地味なシーンの連続だった。
富田のリサーチ会社は粗暴なKCIAに利用された。日本の公安も外事課も最低。利用されただけの駒になった者たちが憐れ。
金大中事件当時は田中内閣。内閣官房長官は二階堂進か。

この映画はすごくリアルな70年代の風景であふれてる。
70年代初めの日本の安アパートとかとてもリアル。金くんの実家の散髪屋がすごく70年代ぽい。マンションも貧乏家屋も、ホテルも車も、テレビも炊飯器も、人々の服装も髪型も顔つきも、じめっとした湿度感も。フィルムで撮ってるからかもしれない。

十分に見る価値はあった。
K-POPアイドルに夢中なキッズたちもたまにはこういう映画で韓国ついて知るべき。

2024年1月16日火曜日

徳田秋声「あらくれ」(大正4年)

徳田秋声「あらくれ」(大正4年)を新潮文庫で読む。これも無償でいただいてきた本。
昭和24年に文庫初版が出て、今回自分の読んだのは昭和51年32刷。(定価が180円)

実は自分がこの本を読むのは2回目。もうかれこれ前回から20年は経つのではないか。
本郷に徳田秋声旧居跡があることをたまたま散歩してて通りかかったときに知った。
たしか本上まなみさんがエッセイでこの本を読んだ感想などを書いていた。

初めて読んだ当時は本の内容がぜんぜんイメージできなかった。学生に文豪の名作を読ませたところで、当時の風俗がわからなければ、活字で描かれていることが映像としてイメージすることが難しい。昔の映画、昔の写真、昔の本などを何度も何冊も見て、ようやくイメージできてくる。今なら「長火鉢」がどんなものかわからなくても、ささっとスマホが画像を出してくれる。

東京近郊が舞台になっている。初めて読んだ当時は、「お稲荷さま」「大師さま」に出かけるという箇所を何も考えずに読み飛ばしてたけど、今になって読むと、もしかして王子稲荷と西新井大使?!
この小説を読むと、明治の東京北豊嶋郡のあたりでは養蚕や紙漉きをやってたんだなとわかる。繭を買い付ける鳥打帽の男とか歩いてたんだなと。

養父母から、品のない笑いを浮かべる作男と結婚させられそうになるのが嫌で家を飛び出したヒロインお島。姉の家に逃げ込むのだが、姉の家が王子にある。植木畑?田んぼ道?たしか大正時代まで飛鳥山から見る荒川隅田川の方面は一面田んぼだったと聞いていた。

女の子が「厭なものは厭!」というだけで気が強いとされていた時代。自分の想う事をハッキリ言うだけで周囲と軋轢。児童虐待とブラックな労働。今もそうだけど、昔の日本を小説などで知ると、もっと酷い辛い環境の家庭があるなとわかる。

お上さんを肺病で亡くした神田の商人の旦那に嫁ぐのだが、子どもが出来たみたいと告げると、「早くないか?」とか言われるとか、明治大正男は酷くないか?と思う。戸籍上では作と結婚したことにされていた?!

まあ読んでいて昔の女はつらいよ…という内容。だって、この時代の男は外に女をつくる。女は男に乗っかってずっと流転してる。働きに出たいな…と考えても、明治社会にそうそう勤め先はない。

お島はつねに仕事して動いていたい質。洋服を製造販売。ビジネスに貪欲チャレンジャー。そしてヒステリック。向上心のない出世欲のない愚鈍そうな男が嫌い。ときに取っ組み合いのけんか。
そういう女は現代にもいる。たぶん幸せを見つけるのに苦労しがち。

しかも、やっと見つけた「まだマシ」レベルの小野田とは性交渉に苦痛。お島は身体的に苦しみ、小野田は満たされないストレスをため込む。これ、前回読んだときは読み飛ばしていた。明治の昔からこの手の問題があったのか。

2024年1月15日月曜日

カヒミ・カリィ「Montage」(2004)

カヒミ・カリィ「Montage」(2004)ビクターエンタテインメント VICL-61374 というCDがあるので聴いている。
実はこれ、数年前にTSUTAYAで55円で手に入れたレンタル落ち。つい最近までずっとそこにあることを忘れていた。やっとPCに取り込んだ。(もうどんな音源であろうともネット上に転がってるものだが)

最近の若者はたぶんカヒミ・カリィさんを知らない。いや、自分も知らないのだがw
たぶん、「ちびまる子ちゃん」を見てた人はかろうじて「聴いたことある!」と思うはず。
ちなみに自分は「LE ROI SOLEIL」というCDを持っていたはず。実家の押し入れにあるはず。十数年存在を確認していない。
  1. When will you be back?
  2. Making our world
  3. Free line
  4. Pancartes<蟻の行列>
  5. 柔らかい月
  6. Send me your sun
  7. Divers
  8. Gila Gila
  9. I call you call me
  10. NANA
という音源が手に入った。
これらの楽曲のジャンルが何なのか説明できない。囁きボーカル。たぶんエレクトロニカ。テーマは「トロピカル&ポップ」だと?

最近気づいた。ああ、カヒミ・カリィのジャンルが何かと問われれば、「小山田圭吾だ」としか答えられないと。

2024年1月14日日曜日

知念実希人「硝子の塔の殺人」(2021)

知念実希人「硝子の塔の殺人」実業之日本社(2021)を読む。かなり評判良さそうなので。
この作家の本を読むのは初めて。「神酒クリニックで乾杯を」というドラマを見ていたので名前は知っていた。コロナ禍でよく名前を見かけた沖縄出身の医師作家。

北アルプスにあるという蝶ヶ岳山麓に、生命科学の分野でノーベル賞級の成果を出し難病治療の製薬技術に革命を起こし巨万の富を築いたミステリーマニア富豪が、ガラス張りの塔「硝子館」に、医師、作家、霊能力者、編集者、刑事、名探偵、といった人々を集める。これが富豪の仕掛けたミステリーゲームの罠。という一見ベタなジャンル。

読書前は正直ナメてた。ライトなものを読もうと手に取った。
だがこれ、普通の読者も、古今東西のミステリー小説を読み漁ってる読者も、驚天動地しひれ伏すレベルの一冊。

ミステリー150年と日本における「新本格」の30数年をメタな視点から俯瞰し、綾辻行人や島田荘司といった神々をも踏み越え上書きするほどのレベルと完成度の大傑作!おそらく今後数十年語り継がれる空前絶後の名作!

本の初めの方で、殺す者と殺される者が読者にハッキリ提示される。そして20代中ごろで長身美人の自称「名探偵」が登場する。
てっきり、刑事コロンボみたいなスタイルのミステリーだと思った。だが、その後にクローズドサークル館ならではの密室連続殺人!

しかもこの場所では十数年前に猟奇的な「蝶ヶ岳神隠し」という事件が!
さらに、近年に多くの登山者の遭難事故と行方不明者。すごくワクワクできる雰囲気。

そして名探偵と助手スタイルの捜査。この本はずっと楽しくわくわくしながらページをめくれる。
医師作家が仕掛けた完璧な論理とエンタテインメントとしての構成。読んでて感心しかしない。

主人公と名探偵のキャラもベタなようで新鮮で魅力的だし、こんなの見たことない!
もう何を言ってもネタバレになるので多くを語れない。読め!としかいえない。強くオススメする。

これから何も知らずにこの本を手に取る人は幸せだと思う。すばらしい読書体験を約束してくれること請け合い。新鮮な驚きと面白さ。燦然と輝いてる。ほぼ天才の所業。

2024年1月13日土曜日

CAPSULE「CAPS LOCK」(2013)

2013年10月23日発売の「CAPS LOCK」(ワーナーミュージック・ジャパン)を昨年夏ごろ手に入れた。「持っている」ということを忘れないためにここに記録する。

ハードオフのジャンクCD青箱の中から救出。110円。初回盤2枚組なのに?

調べてみたらCAPSULEの14枚目のオリジナルアルバムらしい。実は自分はもう長いことCAPSULEの存在を忘れてた。
たしか以前はYAMAHAというレーベルだったはずだが、いつのまにか移籍してたのか。
ユニット名がこの盤から大文字CAPSULEになったのか。
1.HOME
2.CONTROL
3.DELETE
4.12345678
5.SHIFT
6.ESC
7.SPACE
8.RETURN
もうすでに歌ですらない。ほぼ記号。実験的。こしじまとしこはどこ行った?(いや、唄ってるトラックもあるけど)

これ、発売当時からあまり話題になってなかったように記憶してる。Perfumeに興味を持った人は必ずCAPSULEにも行きつくけど、CAPSULEとPerfumeの売り上げ格差が大きすぎる。

2024年1月12日金曜日

13歳からの地政学(2022)

13歳からの地政学(2022)田中孝幸著 東洋経済新報社 を読む。2022年に話題になった本。

県内トップの進学校に通う高校1年生大樹くんは、商店街のアンティークショップのウィンドウに飾られている古い地球儀を見ていたら、海賊のような黒い革製の眼帯をつけた老店主(筋骨隆々)から一週間毎日、この世界についての講義を受けることになる。お茶を飲みながら。中1の妹・杏と一緒に。

「地政学」って何?という疑問には答えてくれない。ただ、アメリカがこの世界トップの超大国である理由を、小学生中学生にもわかるように教えてくれる本。

日々、世界のニュースを追っているような人にはそれほど刺さらない本かもしれない。自分もそれほど何か新しい知識を得たわけでもない。
ただ、1日1回のお話が終わった後で、要点をまとめてくれているのがありがたい。

とくに、中国がアメリカと対等になることを目指している国だ…という件は、中学高校の地理の初日の授業で教えるべき内容だと思った。あとは、
  1. 日本がアメリカと親しくして中国の脅威に対抗するのは「遠交近攻」という地政学の王道。
  2. 核兵器は原子力潜水艦を深度の深い海中から撃てるようにして初めて最強になる。
  3. 長い陸続きの国境は管理と守るのが困難。
  4. 少数民族を多く抱える大国は反政府の動きを押さえるのに必死。
  5. 小国のほうが語学力が強い。大国の間でバランスとるのに必死。
  6. 国が分裂するとたいてい一般市民の生活は苦しくなる。
  7. アフリカが貧しいのはタックスヘイブン経由で国民のお金が流出してるから。
  8. アメリカが超大国になれたのは地理的条件が恵まれていたから。
  9. 日本は戦後、敗戦の責任者を探すよりも、戦争を天災としてとらえて復興した。
  10. 両国間のネガティブな問題が残るかぎり、韓国は歴史問題を蒸し返す。
といったことをこの本で改めて学んだ。
老人「中国人は世界中でトラブルを起こしている。その原因のひとつが、どんな中国人も世界のどこにいても中国政府に協力しないといけない。スパイのように。」
中1女子「えっ、私のクラスにも中国の子いるけど、その子もスパイになるかもしれないってこと?」
老人「中国政府から求められれば、我々の情報を盗むスパイになるしかない。」
高1男子「断ったら逮捕される?」
老人「中国政府の命令を断ること自体が難しい。日本にいても、中国にいる親類が無事で済まないかもしれない。」
いや、子どもでもわかりやすい。

2024年1月11日木曜日

イザベラ・バード「ロッキー山脈踏破行」(1879)

イザベラ・バード「ロッキー山脈踏破行」(1879)を小野崎晶裕訳1997平凡社ライブラリー版で読む。
A Lady's Life in the Rocky Mountains by Isabella L. Bird
1873年9月から12月、イザベラ・バードさん(42歳)の90日間800マイルにおよぶアメリカ西部ひとり旅。(日本奥地紀行の5年前)
1973年というとゴールドラッシュも南北戦争も終わってる。ユリシーズ・グラント大統領の時代。日本では岩倉使節団が帰国し征韓論が始まり明治六年政変があった年。

西部って荒くれ無法者だらけで治安悪いんじゃ?って思うけど英国婦人がひとり旅して大丈夫な状況。(リボルバーは持ってる)
西部の男たちはむしろ見慣れない英国婦人に遠慮して声をかけないけど、わりと親切な紳士も多い。

バードさんはヴィクトリア朝全盛時代の人物。グラッドストン自由党内閣の時代。大英帝国の全盛期。アガサ・クリスティーが少女時代に見た老婆の質感。

日本奥地紀行のように妹にあてた手紙という体裁。
タホ湖から始まってる。バードさんはニュージーランドを旅してからカリフォルニアにやってきたらしい。
まずサンフランシスコからパシフィック鉄道でワイオミング・シャイアンへ向かってる。
そこからコロラド準州を馬を借りて旅する。なんという女傑。

そういえば映画「八十日間世界一周」にもシャイアンが出てくる。この小説が書かれたのも1873年だ。
ちなみにビリー・ザ・キッドが21歳でニューメキシコで射殺されたのは1881年。やっぱりまだまだ西部は荒くれ無法者のいる場所。

バードさんのぶっちゃけた心の声が出ちゃってる。「中国人労働者が汚い!」「モルモン教徒の女たちがみんな醜い!」(この当時はまだブリガム・ヤングが存命中)
「シャイアンが神に見捨てられた土地で鉄道以外なにもない!」「暑い!」「噛み煙草をくちゃくちゃやってるヤンキーたちがいっぱいいてほとほと嫌!」

アメリカ西部は蠅の大群、ブヨ、ガラガラヘビ、など害虫害獣だらけ。南京虫も多くて、シーツを清潔にしてても防げなかったという。
そして意外な動物。スカンクってアメリカの動物だったのか。スカンクにやられるとしばらく臭気から逃れられなかったらしい。犬は鼻を血が出るまで地面にこすりつづけて死ぬ?!

バードさんって普通の旅行好き英国婦人を超越してる。5年前に初登攀されたばかりだというロングズ・ピーク(4410m)にヒーヒー言いながらスカート姿で登山?!

冬季コロラドと言えば「シャイニング」。雪に閉ざされる厳寒の世界。何を好んでそんな過酷なマネを。
感動的な美しい自然。そして出会った人々の描写。19世紀アメリカ西部の男たちを知る本でもある。それは「嵐が丘」を読んでいるようでもあった。

2024年1月10日水曜日

家入レオ「20」(2015)

2015年2月発売の家入レオ3rdアルバム「20」(ビクターエンタテインメント)を手に入れた。昨年の春ごろ。年末になってやっと聴いた。

全12曲、そのすべてがヴォイスの西尾芳彦せんせいの作曲によるもの。

リリースからもう9年経とうとしていることが信じられない。
これは家入レオが20歳になった記念で節目のアルバム。ということは家入はもう29歳?!調べてみたらマジだった。そりゃあ自分も年を取る。

2024年1月9日火曜日

ミッシェル・ガン・エレファント“THEE MOVIE” LAST HEAVEN 031011(2009)

2009年12月19日公開の「ミッシェル・ガン・エレファント“THEE MOVIE” LAST HEAVEN 031011」(2009)を見る。
2009年7月にアベフトシが急逝し世間をザワザワさせていたタイミングで製作された映画。監督は番場秀一。配給は日活。

ドキュメンタリー&2003年10月11日幕張メッセでの解散ラストライブをほぼフルで見せる音楽ライブ映画。
年末に最大級の訃報を聞いてしまった。チバユウスケの突然の死。追悼のためにも今になって見ておく。昨年末に駆け込むように見た。

それにしても幕張の聴衆が多すぎて驚く。ライブ開始冒頭の01.「ドロップ」02.「ゲット・アップ・ルーシー」からもう聴衆がトランス状態にある。

ドキュメンタリーパートはライブの間にところどころ挟まれる。一番古いもので1996年のインタビュー映像。そして渋谷クラブクアトロでのメジャーデビュー告知MC映像なんかが挟まれる。4人とも「ああ、20代なんだな」という感じ。

よく意味がわからないのが、冒頭のフェス映像?でスタッフが収録カメラに「電源切るぞ」とキレぎみなこと。なんでそんな態度?映像が断片的すぎて考える余地が与えられない。
あと、仙台のツアーが照明器具トラブルで中止になる事故映像とか生々しい。

でも一番の衝撃は、ラストライブ終演後にフロア上で放心状態のライブキッズたち。風呂上がりのように汗でテカテカツルツルした端正な顔と顔。
この子たちは見たところ20歳が中央値という感じだが、もれなくみんな20歳年を取ってるというあたりまえの事実について想うと愕然とする。ゼロ年代前半はもう思い出せないぐらい遠い昔。

自分もライブは卒業した。このオーディエンスを見てると、ああ、もうあそこには戻れないなと強く感じた。誰もがみんなその年代でしか経験できないことをやってるんだなと。

アベフトシ、そしてチバ。とにかく最初から最後までみんなテンション高いのだが、今見てる側からすると、もうみんな死ぬの?という寒さと寂しい感情が勝る。

2024年1月8日月曜日

川喜田二郎「鳥葬の国」(1960)

川喜田二郎「鳥葬の国 秘境ヒマラヤ探検記」を1992年講談社学術文庫版で読む。

この本は京都大学生物誌研究会と日本民俗学協会の後援によって1958年の春から秋に渡って、ヒマラヤ・ダウラギリ峰北方の高原、ネパール北西部にあるトルボ地方のチベット人たちのツァルカ村に日本人隊員8名が長期滞在して村の民俗風習社会をフィールド調査した紀行記。

今回読んだ版は1981年に同タイトルで出版されたものを底本としている。1960年に光文社から最初の本が出ている。1974年に講談社から再販のときの川喜田隊長の序文が付いている。そのときに隊員たちの同窓会と対談も収録。

川喜田隊長が1958年当時38歳。他7名は全員二十代。おそらく昭和ヒトケタと言われる世代。この当時は日本も貧しく持ち出せる外貨はわずかしかない。中国側からチベットに入ることは許可を得る以前に交渉すらも不可能。(1950年に人民解放軍が侵攻。ダライラマ14世が亡命するに至ったチベット蜂起は1959年。)
よってインド・ネパール側から人夫を雇ってキャラバンで現地を目指す。現地に行くまでの準備やら苦労話パートが長い。

カンジロバヒマールへの登山と現地の民族と風習の調査が目的。だが当時はまだ「調査=スパイ活動」と考えられていた。なのでネパール政府から連絡将校がついて、撮影するときはいちいち許可が必要。
なお、このときの探検と取材は読売新聞社によって「秘境ヒマラヤ」(1960 松竹)として公開。

探検記とは言っても、リビングストンとスタンレーのアフリカ探検や、ヘディンやスタインらによる中央アジア探検とは雰囲気が異なる。探検と呼ぶのはふさわしくないかもしれない。1950年代はネパールのへき地といっても人々は外国人というものを知っている。カメラも知っている。

日本人隊員たちがツァルカ村で第一村人とファーストコンタクトしたときの最初の心の声が「きたないチベット人の中でも一段ときたない!」なのは笑った。もうちょっとオブラートに包め。
あとはひたすら村人たちとの交流と観察。外国人が長期滞在するとか、村人たちにとってはたぶん緊張状態。

隊員たちが顔を洗ったり髭を剃ったりするのを見て、村人たちも顔を洗い始めたというのはちょっと面白かった。
チベット人はヤクを解体することに慣れている。その辺に脚が転がってるとか、現代日本人からすると怖い。

日本隊は村滞在中に4回も葬式に遭遇。村からすると外国人がいるから不吉なことが起こるのでは?と思わないのか?それは心配。
村長の息子が原因不明で死亡。母が、ちょっと尋常じゃないレベルで泣きじゃくり続けている。介添えのなぐさめ役も形式的誇張が過ぎてる感じ。女たちがとくに声をあげて泣き続ける。
ここ読んで、金日成、金正日が死んだときの北朝鮮国民を想い出した。当時の日本のメディアはそこ興味深そうに放送してたけど、それがアジアでは普通なのかもしれない。昭和天皇が崩御したときの日本人の静かな哀しみと対照的。

食材や物資は現地で調達するのだが、携帯できる金が貴重なのはわかるのだが、あんまり値切るなよって思った。
あと、写真を撮らせてもらうときに金を渡すのも考え物。あっという間に村中に広まると、以後撮影のたびに金を要求。

そしてこの本のクライマックスが「鳥葬」。死人が出ると「鳥葬が撮れる!」といきり立つ取材班。
しかし、現地の人からすると「撮影とか絶対ダメ!」ま、それはそうだ。
だが、強引に「遠くからなら」と許可を得て観察と撮影。それってどうなの?

子どものころから「鳥葬」って怖いなと思ってた。この本を読んでさらに怖くなった。
死んだ70代の老婆のカラダを、ボン教の医僧がまるでヤクを解体するかのように手際よく解剖。ハゲワシが食べやすいように内部を切り開き露出。内臓を引きずり出す。
そして、頭蓋骨を岩で叩き割る(!?)。ここ読んでホルガ村かよ!と思った。見ていた隊員はその後食事ができなくなったという。

翌日にそのあたりに行ってみると、死体はキレイに背骨だけになっていたという。ちょっと離れた場所に肩甲骨が2つ落ちていたという。怖い。怖すぎる。

2024年1月7日日曜日

西野七瀬ポケつめ巡礼②

伊東市内の某寺。
ここの寺の墓地でまどかはみどりの母と出会い、みかんというアイテムを渡される。
だが自分は墓地に入る気はなかった。足早に次の目的地へ。
伊東市の小室山に登山開始。麓に駐車場があるのだが、クリスマスで少年サッカーもありほぼ満車。
小室山山頂は伊豆大島や初島、富士山、そしてエリツィン大統領と橋本首相の川奈会談があった川奈ホテルを見下ろせる。
すごく外国人が多かった。とくに中国人が多かった。

山頂から再び中腹にある恐竜公園へ戻る。
このベンチへ重大な決意を持ってやってきた。我々も西野のようにみかんを持参した。「ポケットに蜜柑をつめこんで」。
西野がみかんを食べたベンチでみかんを食べる。LVを回復させる。これで自分も西野になれる。
最後に伊東市のこの米店に立ち寄る。米一俵買って帰ったろか…と意気込んで向かったのだが、
日曜なのでやってなかった。