2024年1月16日火曜日

徳田秋声「あらくれ」(大正4年)

徳田秋声「あらくれ」(大正4年)を新潮文庫で読む。これも無償でいただいてきた本。
昭和24年に文庫初版が出て、今回自分の読んだのは昭和51年32刷。(定価が180円)

実は自分がこの本を読むのは2回目。もうかれこれ前回から20年は経つのではないか。
本郷に徳田秋声旧居跡があることをたまたま散歩してて通りかかったときに知った。
たしか本上まなみさんがエッセイでこの本を読んだ感想などを書いていた。

初めて読んだ当時は本の内容がぜんぜんイメージできなかった。学生に文豪の名作を読ませたところで、当時の風俗がわからなければ、活字で描かれていることが映像としてイメージすることが難しい。昔の映画、昔の写真、昔の本などを何度も何冊も見て、ようやくイメージできてくる。今なら「長火鉢」がどんなものかわからなくても、ささっとスマホが画像を出してくれる。

東京近郊が舞台になっている。初めて読んだ当時は、「お稲荷さま」「大師さま」に出かけるという箇所を何も考えずに読み飛ばしてたけど、今になって読むと、もしかして王子稲荷と西新井大使?!
この小説を読むと、明治の東京北豊嶋郡のあたりでは養蚕や紙漉きをやってたんだなとわかる。繭を買い付ける鳥打帽の男とか歩いてたんだなと。

養父母から、品のない笑いを浮かべる作男と結婚させられそうになるのが嫌で家を飛び出したヒロインお島。姉の家に逃げ込むのだが、姉の家が王子にある。植木畑?田んぼ道?たしか大正時代まで飛鳥山から見る荒川隅田川の方面は一面田んぼだったと聞いていた。

女の子が「厭なものは厭!」というだけで気が強いとされていた時代。自分の想う事をハッキリ言うだけで周囲と軋轢。児童虐待とブラックな労働。今もそうだけど、昔の日本を小説などで知ると、もっと酷い辛い環境の家庭があるなとわかる。

お上さんを肺病で亡くした神田の商人の旦那に嫁ぐのだが、子どもが出来たみたいと告げると、「早くないか?」とか言われるとか、明治大正男は酷くないか?と思う。戸籍上では作と結婚したことにされていた?!

まあ読んでいて昔の女はつらいよ…という内容。だって、この時代の男は外に女をつくる。女は男に乗っかってずっと流転してる。働きに出たいな…と考えても、明治社会にそうそう勤め先はない。

お島はつねに仕事して動いていたい質。洋服を製造販売。ビジネスに貪欲チャレンジャー。そしてヒステリック。向上心のない出世欲のない愚鈍そうな男が嫌い。ときに取っ組み合いのけんか。
そういう女は現代にもいる。たぶん幸せを見つけるのに苦労しがち。

しかも、やっと見つけた「まだマシ」レベルの小野田とは性交渉に苦痛。お島は身体的に苦しみ、小野田は満たされないストレスをため込む。これ、前回読んだときは読み飛ばしていた。明治の昔からこの手の問題があったのか。

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