知念実希人「崩れる脳を抱きしめて」(2017)を読む。オビに「知念実希人作家デビュー5周年、実業之日本社創業120周年記念作品、圧巻のラスト20ページ!驚愕し感動する!!」とある。そんな大げさな。では読んでみるか。自分にとってこの作家の本は2冊目。
幼少時に父に棄てられ母子家庭で育った碓氷は苦学の末に医学の路へ。広島の医局から遠く神奈川県葉山の金持ち向け終末医療ホスピスへ研修医として出向く。
そこで一番高い部屋に入院してるユカリと出会う。祖父母の莫大な遺産を相続してるらしい。金に苦労している碓氷は心の中で毒を吐く。部屋で絵を描いているこの若い女性は脳に悪性腫瘍という爆弾を抱えて余命宣告。
しかし、だんだんとユカリに魅せられ恋に落ちて行く。ユカリの部屋で長く過ごすようになる。
やがて碓氷は自身の置かれた状況を打ち明ける。莫大な借金を返済するために、アメリカに渡って医師としてバリバリ金を稼ぎたい。そして自分たちを棄てた父(すでに死亡)への恨み。
ユカリが異常に頭が良い。碓氷の話を聴いただけで「何かおかしい」と気づく。広島に戻ったついでに父から母への手紙と家族写真を持ち帰り、ユカリに見せただけで父の真意と真相を見抜く。碓氷の父への呪縛を解く。
碓氷は「好き♥」という気持ちを打ち明けられないまま広島へ戻る。
そこに弁護士がやってくる。ユカリは亡くなった。遺言で遺産の中から3068万円受け取るようになってるけど、受け取る意思はある?
そこから先は、ユカリの死に疑問を持った碓氷の単独調査。ユカリが路上で倒れて担ぎ込まれた病院の医師を訪ねたり、弁護士事務所を訪ねたり。そして自分を監視してるセダン。
ユカリはさらに遺言状を残していたのではないか?
最後の最後で碓氷が面会する相手が、自分は予想がつかなかったので驚いた。
青春恋愛ミステリーとして鮮やかなスマッシュヒットだった。医師作家というと北杜夫、渡辺淳一しか読んだことがなかったけど、知念実希人はすでにそれらを超えている。今後も知念実希人を読んでいく。
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