2023年12月31日日曜日

鴨崎暖炉「密室狂乱時代の殺人」(2022)

鴨崎暖炉「密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック」(2022)を読む。昨年12月に宝島社より文庫書き下ろしとして出た1冊。
この著者を初めて読むのだが、前作の「密室黄金時代の殺人」も「このミステリーがすごい!」で文庫グランプリを取って評判らしいのでいずれ読みたい。

「完全な密室」であれば容疑者は必ず無罪判決が出るという判例が出て以来、密室殺人が頻発する近未来(?)、富豪ミステリーマニア大富ケ原蒼大依が絶海の孤島の屋敷で賞金10億円の「密室トリックゲーム」を開催。

招待された高校生主人公・葛白香澄と変人キャラの参加者たち。史上初の「密室殺人」で無罪となった女子高生、その反例を出した28歳の元裁判官たちが、本当に起こってしまった連続密室殺人事件の謎に挑むという、いかにもな絶海の孤島クローズドサークルもの。

読んでいて明らかに次の世代の書き手による、最新のミステリーという感じがする。やりとりとキャラが面白い。
しかし、次々と5人連続で殺される。「密室殺人」がどれも、理工系大学生が思いついたような「ぼくがかんがえたさいきょうのみっしつ」とでもいうような奇想天外物理トリックの数々。しかもエラリーのような本格ロジックも噛ませてくる。カードキーに関する問題は読んでいてわかるようなわからないような…。

ああ、これは自分には合わなかったかな…と思いきや、ラストでアレがさく裂して驚く。ミステリーを読み飽きたような読者がメタで楽しめるような新鮮な作風。
今の時代の若者にはこういったものがウケるのかもしれない。今まで読んだことのない叙述トリックもあって新鮮で楽しかった。アイデアと発明が詰め込まれてる。

2023年12月30日土曜日

Documentary of 乃木坂46 4期生編(2019)

2019年9月リリース、乃木坂46の24枚目シングル「夜明けまで強がらなくてもいい」Type-Dも手に入れた。こいつもHOジャンク箱の中からエイっと取り出した。55円でゲット。
実は結局、ブルーレイ特典盤つきの4枚を同じ店で同時に手に入れた。発売から4年以上経ってるし、乃木坂CDは販売枚数が多いし、そんなこともあるだろう。

この盤もCDは聴かずに即ブルーレイ。Track2に「〜Do my best〜じゃ意味はない Music Video」を収録。これは聴いてすぐにアンダー楽曲だとわかる。なぜかアンダー曲はすぐアンダー曲とわかる。
で、すぐにTrack3「Documentary of 乃木坂46 4期生編」へ。
乃木坂3期生が中興の祖なら、4期生はもう生まれながらの将軍。家光のような存在。

まだ加入して間もないので、ドキュメンタリーの素材となるような歴史も映像もない。となると、武道館お見立て会と先輩との初対面の記録映像で尺を持たせるしかない。
自分の見たところ、遠藤さくら、賀喜遥香、筒井あやめ、そして掛橋沙耶香の4人は登場した瞬間から別格オーラが出ている美少女に見えた。

ちょっと気になったのが、早川聖来が舞台に登場した瞬間から、若い男たちの大歓声にパニック気味になっていたこと。内面で何かと何かが激しく戦っているように感じた。(結局、早川さんは精神面の問題を最後まで解決できてなかったように思えた。)
しかし、自分には清宮レイさん15歳が衝撃だった。とんでもない輝き。とてつもない素材。ほぼ広瀬すずのオーラ。しかも英語が堪能の帰国子女。
もし運営がこの子をスターにできてないとしたら、それは完全に運営が無能としか言えない。

遠藤さくら賀喜遥香の先輩たちとの初対面の挨拶。後の2大センター。隣の掛橋と金川がすごくこどもに見える。
工事中最新シングルヒット祈願の石段登りとか見ても、遠藤さんは予測できない事態にすごく困惑してちょっとパニック気味な一方、賀喜さんはどこか天然というか何事にも鷹揚に構えていて安定感がある。頼りになりそう。
賀喜さんはメンバーから何をされても大概な事では怒ったりしないらしい。きっとたぶん年齢の割に人間が出来ている。それでいて面白い。

2023年12月29日金曜日

Documentary of 乃木坂46 3期生編(2019)

2019年9月発売、乃木坂46の24枚目シングル「夜明けまで強がらなくていい」Type-C盤も同じジャンク箱の中から55円救出。こいつも特典映像ブルーレイが目当て。
齋藤飛鳥はヘアメークと着ている衣装によってイメージが変わる。この飛鳥はもうかなり大人の顔になってる。

Disc2のTrack2は卒業までずっとキャプテンだった桜井玲香の卒業ソロソング「時々 思い出してください」 Music Video。
最後を飾る花道。乃木オタは卒業したOBのことはあまり話題にしなくなる。楽曲もライブコンサートで歌われなくなり忘れられていく。
桜井も加入当時は17歳高2だった。桜井はそんなに熱心な推しオタがいたようには感じられなかったのだが、ずっと選抜に入り続けた。乃木坂発足直後にキャプテンに指名されたことが一番の幸運だったように思える。卒業後は女優として主に舞台で活躍。
このディスクの目玉は「Documentary of 乃木坂46 3期生編」。あの武道館でのお見立て会、プリンシパル公演の様子、与田、山下らへのインタビューで構成。

三期生こそが乃木坂中興の祖と言ってよい。浄土真宗で言ったら蓮如に相当。乃木坂を世代交代させ人気をさらに高めた。
大園桃子があっという間にいなくなったのは惜しかった。桃子が今もいれば三期生は誰一人脱落しなかった世代になってた。桃子は卒業後のほうがあか抜けてて魅力的になってる気がする。
与田ちゃんは加入当時も今もあまり変わってないけど、山下美月は見た目も雰囲気もかなり変わった。加入当初は周囲にバリアを作ってた。それが今はヘラヘラしたコミュ力オバケとでも呼ぶべき存在。
加入当時は「なんだ、唯の美少女か」と思ってたけど、今では全乃木坂で最も女優として活躍してる。「乃木坂の内藤剛志」とでもいうべき民放連ドラへの連投につぐ連投女優。「乃木坂の権藤博」かもしれない。「山下、山下、雨、山下」

正直、現役メンバーでは一番尊敬してる。真面目だし頭が良い。演技力が最初から高かった。女優向きだったし、アイドル敵性も高かった。

2023年12月28日木曜日

乃木坂46「図書室の君へ」(2019)

2019年9月発売、乃木坂46の24枚目シングル「夜明けまで強がらなくていい」Type-Bもジャンク箱の中にあったので救出。55円。
これを見るとセンター遠藤さくらと同時に、賀喜遥香筒井あやめも強力に推されていたんだなとわかる。自分はこの曲のころはもう熱心に乃木坂を追いかけてなかった。
で、これも特典映像ブルーレイが目当て。表題曲はすべての初回特典盤に収録してる。このB盤には「図書室の君へ」という、4期生楽曲MVが収録されている。

これ、当時は1回ぐらい見たと思う。楽曲は覚えてなかったけど、アイドルグループのイメージ映像としては高いクオリティ。ソニー乃木坂スタッフは衣装と映像には破格の予算をかけた。そこ、すべてが成功してると思えないのだが、他のアイドルグループと差別化に成功してる。乃木坂46を高級なものに見せている。
このMVは金川紗耶田村真佑掛橋沙耶香の3人をフィーチャーしてた。この3人を均等に目立たせている。
そしてなんと、このMVが、最終的に全員メガネになるという、メガネ女子フィーチャーMVだった!江青女史リスペクト!そんなアイドルMV見たことない。(坂道Gアイドルには一人もメガネ女子キャラは存在しない)
全員視力検査というカットは覚えていた。遠藤さんは実は卓球が得意だと工事中で言ってたけど、この時点でそれはすでにアピールしてたのか。
あと、早く掛橋沙耶香を返してほしい。アイドルというものは短い間しか輝けないというのに、治療と休養が1年どころかこのままだと2年3年何もないということになるかもしれない。そんなことあっていいことじゃない。

そして2期生ドキュメンタリーを収録。堀未央奈や寺田蘭世のガチトーンの思いつめたような暗い表情のインタビュー。(もうこういうのいいだろ。)

加入当時の佐々木琴子が顔がパンパンで明るく元気で別人すぎる。なんでこの子を人気アイドルの育てられなかったのか。

2023年12月27日水曜日

乃木坂46「夜明けまで強がらなくていい」(2019)

乃木坂46の24枚目シングル「夜明けまで強がらなくていい」Type-Aを手に入れた。
いつものように友人とココイチに出かけたついでにHOジャンク箱の中から救出。55円。
これ、定価で買ったら1,884円もする。

乃木オタは生写真目当てで特典盤を買い増ししたりするので、そういう人がCD&ブルーレイ本体をリサイクルショップに二束三文で売ってしまう。なんで?
部屋に置き場がないのかもしれない。そんなCDを自分が安価で手に入れ、友人宅で酒飲みながら鑑賞。乃木坂特典映像が自分の目に届くのは常に数年後。

遠藤さくら初センター表題シングル「夜明けまで強がらなくていい」は2019年9月のリリース。もう4年以上経っていたことに驚いた。遠藤さんはこの4年間、それほど見た目は変わっていない。
では特典Discを鑑賞。あんまり楽曲として好きじゃなかった表題曲。このMVもほとんど見てなかった。なぜか4:3で製作されている。このシーンを初めて見たとき「兵馬俑かよ」とつっこんだ。今見ても「なんだこれ」って思う。

遠藤さんの次に当時加入したばかりの4期生から賀喜遥香さんもフィーチャー。賀喜さんがまだ表情が固い。てか、このMVはみんなあまり可愛く映ってない。
そして、筒井あやめが3番手。筒井さんは加入当初からかなり推されていたんだな。
この赤い傘を持ったカットはまるで松本清張か赤川次郎に出てくる悪女の雰囲気。
「水たまりの上に倒れ込んだ僕は、薄れゆく意識の中で彼女を見上げた…」というようなカット。
齋藤飛鳥ちゃんはなぜか乳白色の湯船に埋まってる。なんで?湯船につかりながら涙を流すという、体力を消耗させられる撮影。

このMVは特に白石と桜井の顔が怖い。狂気を孕んだかのように目が怖い。メンバー全員メンタルを病んだかのようなMVを見て、一体誰が得をするのか?
自分はもはや乃木坂楽曲をまったく把握してなくて、この24枚目シングルのタイトルすらも口に出して言うのもおぼつかない。
今回見て、遠藤さくら初センターのころは1期生2期生がこんなにいたんだ!と改めて驚いた。
そんな自分はもはや齋藤飛鳥しか感心ないw 今回、ほぼ初見で見てみて、あすかシーンもそれなりにあったことを知った。
そしてC/W曲「路面電車の街」のミュージックビデオも収録。飛鳥、堀、山下による3人楽曲らしい。
阿字ヶ浦駅が出てくるので「ひたちなか海浜鉄道」でロケしたらしい。ひたちなかはとある目的で毎年のように夏に行っていたのだが、鉄道には自分は一度も乗ったことがない。

このMVも何も好きじゃない。いきなり畑に少女が倒れてるとか「狭〇事件」とか連想して気分が悪い。楽曲としても暗い。
MV撮影であんまり飛鳥を泣かすな!って思う。それに、乃木メン以外の女優も出演。この人は幽霊役か何か?あんまりしっかり見てないので設定を知らない。

この女優が女子高生らしいのに日常使いカメラがなぜか「ローライ35」
うそだろ。たとえ父親から借りたにしても、女子高生にこのカメラが使いこなせるか?
それに、飛鳥、堀、山下を車両内スナップした写真が、フラッシュを使うかレフ版使うかしないと撮れないような絵作りになっている。
このCDを連れ帰った最大の理由、それはTrack3.「Documentary of 乃木坂46 1期生編」だった。

乃木坂にはドキュメンタリー映画が2本存在する。ほぼ映画と同じようなテイスト。映画後にバタバタと辞めて行ったメンバーたちをカバーした内容。このシングルで桜井が卒業。そのちょっと前には若槻も卒業。そういうのを駆け足で映像で紹介。なので湿っぽい内容。インタビューも真剣だし真面目。
この4年の間に辞めて行った乃木坂メンの多さに改めて驚いた。今になってこのドキュメンタリーを見て、4年前の1期生たちのことを回想。

乃木坂に残された最後の希望は齋藤飛鳥だった。だが、2022年いっぱいで乃木坂を卒業。
乃木坂は数年おきに若い美少女がたくさん入ってくる。入れ替わっていく。その都度、新規ファンを獲得。

しかし、人気メンバーの卒業を機にオタ卒していく人も多い。今のところ、その両者がトントンになってる。その状態が続く限りは人気面でやっていける。
5期生の人気が予想外にすさまじい。アンダーライブですら大人気。乃木坂人気はまだまだ続きそうだ。もちろん飛鳥や西野といった卒業メンも活躍中。

2023年12月26日火曜日

赤川次郎「殺し屋志願」(1990)

赤川次郎「殺し屋志願」(1990)を角川文庫1994年版で読む。こいつも無償でもらってきた赤川次郎。

17歳女子高生新谷みゆきは満員電車で通学中、何者かに刺された男を駅のベンチで看取る。この男は鳴海という殺し屋だった。
以後、刑事と田所佐知子という他校の同じ17歳の少女が接近してくる。

この本は鳴海の死後の捜査と、鳴海の生前の回想が交互に描かれるという構成。
この作品は簡潔に他人にストーリーを説明するのが難しい。とてもややこしい。

鳴海は殺しの現場をセーラー服の女子高生に目撃される。この女子高生が楽器ケースのようなものを持っていた。
音楽コンサートがあることを突き止め、口封じに殺すために女子高生に接近するのだが、逆に女子高生側から誘いをかけてくる。関係を持ってしまう。
そして、継母の殺害を鳴海に依頼。この女子高生が田所佐知子。17歳にして恐ろしい悪女。

新谷みゆきは保護観察中の元暴走族少年と恋仲だが、母親が異常に厳しくて外出もままならない。そんなみゆきに佐知子が接近してくる。厳しい母親のお眼鏡にかなう品の良さで。

しかし、この佐知子はみゆきに「母親を殺したら?」とアドバイス。ふたりは以後協力関係?

そして、鳴海は佐知子の継母予史子を尾行してるうちに、やっぱり逆に誘われて関係を持つ。鳴海の安アパートの中年女性が毒殺されたり、田所の父親も別荘で殺害されたりと殺人事件も起こってる。

鳴海が巻き込まれて行く佐知子・予史子とその夫の家庭の愛憎。あゆみと佐知子。あゆみと両親の家庭の事情。鳴海を殺した犯人を追う刑事。その展開が、まるで予想のつかない展開。
この本は今まで読んできた赤川次郎の中でもとくに感心した。オススメできる名作かもしれない。2時間ほどでサクッと読める。

2023年12月25日月曜日

かがみの孤城(2022)

2022年12月公開の劇場版長編アニメ「かがみの孤城」を見る。昨年のクリスマス映画。
原作は辻村深月の同名小説(2017)。
監督は原恵一。脚本は丸尾みほ。音楽は富貴晴美。制作は日本テレビ、A-1 Pictures。配給は松竹。

何も予備知識がない状態で見た。中1ヒロイン安西こころ(當真あみ)はたぶん心を病んだ不登校中学生。うつむきながらカウンセラー先生(宮崎あおい)のいるフリースクールへ。朝、爽やかに目を覚ましたはずだったのに。
お腹が痛いからと学校を休み、家でテレビを見たりしてゴロゴロ過ごし、同級生らしき女子生徒が手紙を投函。母親(麻生久美子)がなんだか喋り方がキツイ。

次の瞬間、鏡の中に取り込まれて気を失って異世界へ。狼の顔をしたドレス姿の少女が芦田愛菜。足首つかまれてお城の中へ連れ込まれる。これは拉致?なんかいろいろ唐突。

お城の中にはこころを待っていたという少年少女たちが6人。このお城の中には願いの部屋がある。鍵がどこかにある。入れるのはひとりだけ。
しかしみんな冷めている。願いなんてない。日本時間9時から5時まで城は開いてる。時間が来たら鏡を通って自宅に帰る。帰らないと狼に食われる。そこ、芦田愛菜の声で説明してくれる。学校に行ってないなら行き場があることはむしろ好都合。

ポニーテール短パン中三娘アキは吉柳咲良。ぜんぜん不登校に見えない。こころは戸惑いつつ自己紹介。
フウカ(オシャレおかっぱメガネ、横溝菜帆)、リオン(主人公イケメンボーイ感、北村匠海)、スバル(夏休みにいきなり金髪にしてくるのに落ち着いた紳士男子、板垣李光人)、マサムネ(メガネ男子、高山みなみ)、ウレシノ(マザコン小太りで無神経、梶裕貴)、みんな中学生。
ウレシノ以外はみんな美男美女だしカースト上位っぽく見える。

こころはたまにしか城に行かない。しかし行けばみんないる。これって部室のようなものでは?それで冒頭のシーンに繋がるのか。VR空間であっても隠れ家のようなものがあるって素敵やん。お城の中を探検して願いの鍵をのんびりマイペースで探してる。みんなといるときはゲーム。まるでドラえもん「アパートごっこの木」。

どんどん季節は過ぎていく。夏休みはみんな塾へ行ったりしてて城にやってこない。9月、10月、ぜんぜんストーリーが進展してないように見える。謎解きとか何もない。ハラハラドキドキするような刺激が何もない。
しかし、やっと「みんなで手分けしてさがそう」って相談。

こころの同級生女子たちが極悪イジメ女子。ファンタジーアニメを見てたのに、急にここだけリアル。
自宅に来るとか警察を呼べばいいこと。敷地に侵入してる段階で犯罪。全員補導。映像データを県内各高校に送りつければいい。

イケメン伊田先生(藤森慎吾)が典型無能バカ。女子生徒たちからも煽てられテキトーにあしらわれてる。イジメ主犯生徒真田にダマされてる。
養護先生が滝沢カレンって意外過ぎるキャスト。この人に声優をまかせるって相当な決断。

だが、生徒たちが同じ中学のはずなのに、中学へ行ってみてもみんなに会えない。なんで?それぞれがパラレルワールドから来てるってこと?!

脆すぎる中学生少女の内面心理ドラマ。何も派手なことが起こらない。劇的な進展がない。
しかし、東条さんの考え方に衝撃を受けるシーンは中学女子あるあるなのかなと感じた。

設定聴いてデスゲーム映画やスピルバーグ映画みたいなの想像してたらまるで違ったw
狼に食われるという段になってやっと謎解き冒険要素はあった。シャイニングみたいな?
中学生のリアルな現実のほうが暗鬱っていう。こんな暗い映画見るつもりなかった。

ツボを押してくれない映画。だらだら長く感じた。たぶん大人も子供も受け付けないのではないか。自分はつまらなかった。

主題歌は優里「メリーゴーランド」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

2023年12月24日日曜日

アガサ・クリスティー「謎のクィン氏」(1930)

アガサ・クリスティー「謎のクィン氏」(1930)を1978年ハヤカワ・ミステリ文庫クリスティー短篇集5(石田英士訳)で読む。
THE MYSTERIOUS MR. QUIN by Agatha Christie 1930
5年以上前にBOで見つけて確保しておいた一冊。108円の値札が貼ってある。前の所有者がメシ喰いながら読んだせいか油跳ねなんかで汚い。

神秘の探偵クィン氏の活躍を描く11篇を収録する短篇集。では順番に読んでいく。
  1. クィン氏登場
  2. 窓ガラスに映る影
  3. 道化荘奇聞
  4. 大空に現れた兆
  5. ルーレット係の魂
  6. 海から来た男
  7. 闇の声
  8. ヘレンの顔
  9. 死んだ道化役者
  10. 翼の折れた鳥
  11. 世界の果て
  12. 道化師の小径
それぞれ1本ずつ感想を書いていくつもりだったのだが、それは無理だった。読んだ先から内容を忘れていくw 
短編ミステリーというより、恋する男女を観察してる老人目線のおしゃれ短編文芸。チェーホフ戯曲のようにすら感じた。

60代の老人サタースウェイト氏は社交界にも顔を出す資産家英国紳士。たぶん特に仕事などしていない。パーティーなどに顔を出して話題の男女などを観察し、背後にある何かを感じ、時に事件が起こり、それを解決したり納得したり。

すべてサタ―スウェイト氏という小柄な老人による体験主観語り。すべての話で終盤にハーリ・クィン氏という正体不明紳士が登場。
毎回毎回、パーティー会場のお屋敷、事件現場、レストラン、田舎旅館、裁判所、劇場、列車の中などでサタ―スウェイト氏の視界に入ってきて偶然出会う。
このクィン氏と何か少し話をすると物語が展開し始める。ヒントを得て事件(殺人事件でもなければ事件というほどでもないものもある)が解決する。

てっきりクィン氏という名探偵が事件を解決するミステリー短篇集だと思っていた。まったく違っていた。
クィン氏の容姿や年齢や職業、地位、家族、友人関係などの情報がほとんどない。(最終話で意外な特技?が判明)

ホームズとワトソンのようですらない。クィン氏のような存在感と登場のしかたの名探偵は他で見たことがない。強いて言うならミス・マープルが終盤になって登場人物の視界に斜めから入ってくるパターン。

あまりに二人が偶然バッタリ出会う。そんなことってある?名士同士ならロンドンで、カンヌやモンテカルロで出会うこともあるかもしれない。しかし、コルシカ島の海に突き出た崖で視界に現れたときは「もっと驚けよ!」と想ったw 
不自然すぎて、このクィン氏と言う人は孤独な老人サタ―スウェイト氏の深層心理と内面から現れる幻覚のようなものか?とも思えてくるのだが、他の登場人物からちゃんと見えていて会話もしている。

そんな短編を楽しめる人のみが評価できる短篇集。「謎のクィン氏」はそれほど有名でもないのだが、わりと人気があるようだ。

これをもって2017年から開始した私的クリスティーマラソンのラスト86冊目。これで自分の持ってるクリスティ文庫はすべて読破。
たぶんまだ読んでないのはアンソロジー短編とか、児童向けとか、戯曲、恋愛小説、自伝、研究本のみ。

自分としては読みたいものはもうほぼすべて読んだことだし、これをもってクリスティ卒業。
しかし、1回読んだだけのものはもうあまり覚えていない。もしかすると2週目に突入するかもしれない。訳者が異なるものは買い集めてしまうかもしれない。

2023年12月23日土曜日

池田エライザ

池田エライザが表紙の「キネマ旬報」2020年12月上旬号No.1854を、処分するというので無償でもらってきた。

自分、知らなかった。池田エライザが2020年に映画監督デビューしてたことを。しかも企画・原案も池田エライザが担当?
「夏、至るところ」という、キネマ旬報が制作した映画らしい。そのうち見るかもしれない。

だが、自分を一番驚かせたのが、池田エライザが小学生のころから小説のようなものを書く、読書家だったという点。それ、まったく知らなかった。
池田エライザを単にグラマラスでクールでアンニュイな若手女優という程度の知識しか持ってなかった。

池田エライザは母親が外国人ということで、小学生のころはいじめられたという。色黒で、人よりも大きかったという。
なぜか少女エライザは読書にのめり込んだ。学校の図書室、公民館の図書室、そして図書館へ入り浸る。赤川次郎の本は200冊読んだという。
中学生になると、合併した先の中学で「あの子、かわいい」と評判になり、芸能の路へ。

芸能の仕事を始めると、そこには給料が発生。初めて自分で自由に使えるお金を得た少女エライザは、「これで好きなだけ本が読める」と思ったという。

このイシューには「池田エライザの魂を揺さぶった映画」も掲載されているのだが、自分が興味を持ったのは「池田エライザの魂を揺さぶった本」63冊のほう。

その中で気になったのが、聖書関連本。これは母親が外国人ということで興味を持って読んだらしい。
そして複数冊挙げた作家が、トルストイ、山崎豊子、伊坂幸太郎、ヘッセ、原田マハ、原田宗典、穂村弘、山田悠介、尾崎世界観、といった面々。

トルストイは「アンナ・カレーニナ」と「復活」も読んでいて感心。山崎豊子は「二つの祖国」「沈まぬ太陽」「不毛地帯」のような大長編も読んでいて感心。自分はまだ読んでない。
ジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」も読んでると知って親近感。

2023年12月22日金曜日

吉村昭「天狗争乱」(1994)

吉村昭「天狗争乱」(1994)を朝日文庫(1999)で読む。
平成4年10月から翌年10月まで朝日新聞夕刊に連載。この本の存在は知っていたのだが新潮文庫版の他に朝日文庫版があるとは現物を見るまで知らなかった。昨年末にBOで110円で見つけたので確保しておいたものをやっと読む。

今年の7月に群馬県の碓氷峠と下仁田に立ち寄った。暑くてあまり歩き回れなかったのだが、いくつか水戸天狗党に関する史跡の存在を示す立て札を見かけた。
天狗党って幕末に筑波山で挙兵した…という程度の知識しかもっておらず、「こんなところまで転戦したんだ」ぐらいに思ってた。

下仁田駅の近くに「野村丑之助の墓」というやつがあった。地元の名士か何かかなと思ってた。野村丑之助は天狗党側の戦死者。なんと12歳。天狗党には十代の若者も多かった。
天狗党は那珂湊から京都の一橋慶喜を目指して移動中に、追撃してきた高崎藩兵と下仁田で激戦を繰り広げていた。

尊王攘夷思想というものは幕末にはおよそほとんどの日本人が持っていた常識的な考え。「神州日本に外国人が居るなどもってほか!」
これがあったおかげで外国人に対して「日本をナメるな!」という気概を持てたし、日本の植民地化を防ぐ一因になったかもしれない。
だが、何でもそうだが、過激に走りすぎるのはダメだ。建白書を提出するぐらいならいいけど、「武装して横浜を襲え!」とか迷惑でしかない。

徳川斉昭や藤田東湖はとんでもないモンスターテロリストを量産した。(吉田松陰もだが)
自分、今まで知らなかった。水戸と関東北部が幕末にこれほど治安崩壊していたとは。ほぼ茨城内戦だし、ほぼアフガニスタン。
天狗党は「軍用金を貸せ」と各地の商家を脅迫し回って金を集めていた。気に入らなければ殺し、火をつける。

とくに粗暴だったのが田中愿蔵隊。若者が多かったせいかもしれないが、栃木の町に火をつけて略奪。各地で暴れ回って恐れられた。
そのせいで反天狗勢力が結集。水戸は門閥派、攘夷派と別れて争っていたのだが、攘夷派の穏健派からも嫌われたし(だから天狗と蔑まれた)、江戸藩邸から藩主徳川慶篤の名代として水戸へ入ろうとして主流派に止められた松平頼徳からも「こいつらと同類と見られたら困る」とみなされた。

栃木の町を焼いたせいで周辺農民からも嫌われる。竹やり持った農民たちも反天狗で殺気立つ。
田中愿蔵隊が追い詰められて解散した後の隊員たちは全員捕縛され、ほぼ全員斬首。火付け盗賊たちの末路。

平和を謳歌した江戸時代の末期、武士たちはもう戦士じゃなかった。天狗党の通り道に有った藩は、幕府から天狗追討令があったとしても「ウチは小藩だから」とお金を渡して間道を案内して他所に行ってもらう。ある意味、日本という国のお役人たちは今もそうかもしれない。
(自民党は天狗党より質わるい。国民のためというのはお為ごかし。支持業界団体の利益のための権力でしかない。だから庶民から福祉のためと称して軍用金を徴収する。)

そして冬の美濃から大野へ。そして降伏。その後の天狗党隊員たちの過酷な運命。
なんと352人が敦賀で斬首。こんなことなら全員死ぬまで戦うべきだった。甘い認識と期待は身を亡ぼす。

首魁・武田耕雲斎は息子の妻子までも斬首。10才~3才なのに?!幕末が信長の時代から人権と言う概念がまったく進歩してなかったことに衝撃。

吉村昭は調べ上げたことを淡々と記述。劇的な面白みはないのだが、知らなかった歴史を教えてくれる偉大な作家。この本でも多くを学んだ。

2023年12月21日木曜日

ラグビー志田音々

グラビアアイドルタレント女優の志田音々さん(25)がメインレポーターを務めるラグビー情報番組がなんとテレビ神奈川で始まった。すかさず録画予約してチェックした。月2回の隔週番組?!

昨年から今年にかけて「仮面ライダーギーツ」で有名になった志田音々さんは、グラビアの世界では有名で、めざましテレビ、Abema、BS1でもレギュラー番組を持っているのだが、なんとこんどはテレビ神奈川。
神奈川県にあるラグビーチームを応援する番組らしい。これ、関東民以外って見る方法あんの?
てか、日本にラグビーのプロチームってあったの?自分、高校時代に体育の授業で2週間ぐらいラグビーやったことある。あの楕円形のボールを前に投げちゃいけないってことだけ知ってる球技。それ以外はとくに知らない。たまにテレビ中継とかやってるけど、ラグビーって審判次第じゃね?って思わなくもない。
志田音々さんがとにかくかわいい。話してるときの抑揚と緩急と表情の作り方がとても個性的。
甘ったるいようでいてしっかりしてる印象。美人で細くてスタイルがとても良い。
なぜか初回は黒いベンチコート姿のみ。あまり刺激的な服装で練習グラウンドをうろうろされると選手たちが落ち着かないのかもしれない。
志田音々さんの元気さと天真爛漫さと明るさは見る者の胸を撃つ。
来年はさらなる飛躍を期待したい。ローカル番組では役不足だしもったいない。もっと人目に付く仕事をゲットしていってほしい。
もっともっと輝いてほしい。いやたぶんこれは恋だと思う。
そして志田音々さんはNHKBSにも自転車番組レギュラーを持ってるのだが、こちらも不定期。
5月に佐渡をロングランしてたかと思ったら、今度は青森一週650㎞の一部を走るチャレンジ。
これが限界ギリギリになる過酷な長距離ライド。いやもう、尊敬しかない。
そういえば「めざましテレビ」のイマドキガールでもあるのだが、こちらもたまにしか出演のない不定期仕事。

仮面ライダーギーツは1回もしっかり見ていない。アマプラでそのうち見ようと思ってたら、アマプラから外されてしまった。

2023年12月20日水曜日

飛鳥部勝則「鏡陥穽」(2005)

飛鳥部勝則「鏡陥穽」(2005 文藝春秋)を読む。これで自分が私的に開始した秋の飛鳥部勝則読書まつりもこれをもって一段落。

事前にたぶんホラーらしいという情報のみを知らされた状態で読書開始。
事務系OLの麻田葉子は飲んだ帰りに暗い夜道で脱獄したレイプ魔に襲われる。捨て身の必死の抵抗により、そこにあった石をつかんで相手の側頭部を殴りつけたら相手死亡。この女がなぜか相手の死を確認するのに目玉に指を突っ込む。

家に帰って警察に電話しようとしたら、疑り深い彼氏からの電話。帰りが遅くなった理由を言い訳してるうちに、なんであんな通り魔を正当防衛で殺した自分がわざわざ警察に教えないといけない?とバカらしく感じる。
で、現場に戻って死体を車のトランクに入れて海へ行って崖から棄てる。

すると殺したはずの男にそっくりな自称刑事という男につきまとわれ恐喝。ここまでは読んでいてヒッチコックや清張みたいなジャンルかな?と思えた。

この男がそれほど真剣に恐喝する気はない。女にぐいぐい迫ってくる。部屋に上がり込んで、自身の父(富山の薬売りで変態性欲者)と、ロシア皇帝の娘アナスタシアがボルシェヴィキに輪姦されて生まれた女盗賊「ウクライナの白貂」ことアンナ、人間を複製する魔鏡についての話を延々と聴かされる。

またしても自分は一体何を読まされているんだ?というような、講談のような噺。幻想怪奇グロホラー展開。
「鏡陥穽」とは乱歩の「鏡地獄」を意識したのかな。「パノラマ島奇談」と「孤島の鬼」を現代的にPOPにホラー化した感じかも。中島哲也監督作品のようなハチャメチャ自由展開な流浪するヒロインと大量殺戮。

2023年12月19日火曜日

飛鳥部勝則「ヴェロニカの鍵」(2001)

飛鳥部勝則「ヴェロニカの鍵」(2001 文藝春秋)を読む。飛鳥部勝則を読むのもこれで5冊目。

創作に悩むスランプ無名画家が同じくメンタルを病む友人画家が自室アトリエで死んでいるのを発見するという話。
これも何の予備知識もなく読んだ。読んでいてあまり推理小説という感じがしない。画家の内面を描いた文芸作品という印象。

密室の謎をめぐって終盤に仮説を建てては打ち壊す。二転三転というより、いろいろな可能性の提示。読んでいてぜんぜんすっきりしないし爽快感もない。とにかく展開が地味で内省的で暗い。そもそも主人公画家が暗くてニヒルすぎて面白みもない。

それに文体が硬派で生真面目。格調高いけどあまり読者へのサービス精神とか娯楽の要素がない。
今作はその他の作品に比べてそれほど衒学的でもないのだが、やはりルオー、岸田劉生、フロイト、ゴッホ、ボッス、ココシュカ、アルマ・マーラーなど、画家、芸術家、学者たちのエピソード知識をふんだんに盛り込んでくる。

結果、読んでてそれほど面白いものでもないし、楽しくもない。幻想的な夢の話が多く、ページをめくるたびに眠たくなってしまった。
この作家のファンは読むべきだが、楽しい推理小説と読書体験を期待する人にはオススメできない。読む人を選ぶ一冊。