2023年12月5日火曜日

司馬遼太郎「項羽と劉邦」(昭和55年)

司馬遼太郎「項羽と劉邦」(昭和55年)を新潮文庫上中下巻で読む。

司馬作品の有名なものはすべて読んでおきたいということでついにこれを手に取った。司馬遼太郎というと、その著作のほとんどが日本の戦国時代か幕末明治。「項羽と劉邦」はちらちら目に入ってはいたのだが後回しにしていた。
自分、高校世界史の中国史がさっぱりわからなかったし、漢文と中国古典の知識が人並み以下。
「項羽と劉邦」に自分はぜんぜん詳しくない。劉邦は漢帝国を創始した人物…ということは知っている。ほぼ農民から一代で成り上がった人物。「キングダム」の後の時代。

秦の始皇帝が死に、宦官の趙高が皇帝の末子胡亥を帝位につけて操る。法家によって巨大な官僚組織を整備した秦帝国。臣下の者はちょっとしたミスで殺される。1回の敗戦で将軍といえど殺される。たまったもんじゃない苛烈さ。そして陳勝・呉広の乱

そんな時代に、亡国楚の名家出身の項梁、その甥の項羽が楚復興のため旗を揚げ台頭。その一方で沛の侠客みたいな劉兄貴こと劉邦も人間的魅力で勢力を拡大。秦に反旗。

鉅鹿の戦いを経て、秦の主力部隊である章邯将軍を降伏させた項羽。秦の捕虜となった兵卒20万以上を坑(穴埋め)にするとか恐ろしい。てか、紀元前3世紀に人権という概念はまったく存在しない。実に多くの人が殺される。これが中国。

中巻では張良の登場、そして鴻門の会。関中に入って鴻門を閉じたことを項羽に平謝り。ここ、中国人や中国史に詳しい人には常識の名場面。小田原を攻めた秀吉と伊達政宗みたい。
劉邦の漢中入り。そして漢王となる。

項羽は論功行賞を正しく行えず苛烈で残虐。なので周囲はみんな敵。反項羽同盟結んで安心してたら彭城で大壊乱。劉邦らは遁走。

あとは司馬遼太郎らしく、項羽関係者、劉邦関係者たち枝葉末節エピソードのきまぐれ羅列。夥しい数の登場人物。
滎陽での籠城と脱出、流浪。劉邦は何度も何度も項羽に敗れる。
ほぼ唯一の有能部下が韓信なのだが、こいつが功績がありすぎて主君よりも有能で逆に窮地というパターン。

項羽が暴虐。こいつもべつに応援したくならない。虞美人、そして四面楚歌。

劉邦が最終的に勝利するということは、たぶん中学生以上なら誰でも知っている。しかし、なぜにこの体がデカいというだけの親分が天下を取ることができたのか?がわからない。秀吉のような軍略と才気があったように感じられない。項羽の自滅?

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