2023年12月19日火曜日

飛鳥部勝則「ヴェロニカの鍵」(2001)

飛鳥部勝則「ヴェロニカの鍵」(2001 文藝春秋)を読む。飛鳥部勝則を読むのもこれで5冊目。

創作に悩むスランプ無名画家が同じくメンタルを病む友人画家が自室アトリエで死んでいるのを発見するという話。
これも何の予備知識もなく読んだ。読んでいてあまり推理小説という感じがしない。画家の内面を描いた文芸作品という印象。

密室の謎をめぐって終盤に仮説を建てては打ち壊す。二転三転というより、いろいろな可能性の提示。読んでいてぜんぜんすっきりしないし爽快感もない。とにかく展開が地味で内省的で暗い。そもそも主人公画家が暗くてニヒルすぎて面白みもない。

それに文体が硬派で生真面目。格調高いけどあまり読者へのサービス精神とか娯楽の要素がない。
今作はその他の作品に比べてそれほど衒学的でもないのだが、やはりルオー、岸田劉生、フロイト、ゴッホ、ボッス、ココシュカ、アルマ・マーラーなど、画家、芸術家、学者たちのエピソード知識をふんだんに盛り込んでくる。

結果、読んでてそれほど面白いものでもないし、楽しくもない。幻想的な夢の話が多く、ページをめくるたびに眠たくなってしまった。
この作家のファンは読むべきだが、楽しい推理小説と読書体験を期待する人にはオススメできない。読む人を選ぶ一冊。

0 件のコメント:

コメントを投稿