2021年5月31日月曜日

三島由紀夫「青の時代」(昭和25年)

三島由紀夫「青の時代」(昭和25年)を新潮文庫で読む。初めて読む。

東大生山崎晃嗣による闇金「光クラブ」は戦後アプレゲール事件としていろんな本にも登場する。山崎をモデルにした小説「青の時代」では主人公を千葉県K市の川崎誠と名前を置き換えて描いてる。

三島は大正14年生まれ。昭和の年がそのまま年齢。山崎は三島の1学年上の同世代。浜口首相狙撃事件、5.15事件、2.26事件、少年時代に衝撃を受けた事件もそのまま同じ。

K市とは木更津市のこと。「K市は由来低能児の多い町である。」と書かれている。代々官吏の家系で学習院、東大法学部、大蔵省というキャリアから作家となった青年三島が言うのだから、当時の世間の常識なのかもしれない。東京の上流階級の人々の、東京湾対岸へ向ける眼差しはそんなものだったのかもしれない。(今でも袖ヶ浦ナンバーで助手席に女を乗せた車の運転はヤバい。)

基地と漁業の町で少年時代を過ごしたのが主人公。地元の名士(医者)の父に反発しつつ一高へ進む。東京は木更津の対岸に見える都。

25歳の天才が書く日本語がすごい。初めて知る単語が多い。初めて見るような表現ばかり。
4つ年上の憧れの看護婦を「きれいな目をしていた。笑うと目の中にきれいな漣(さざなみ)が立つようだった」とか、おおぉぉ?!って思ったw

一高の寮で愛宕(おたぎ)と出会う。予想に反して戦争中のことは殆ど書かれない。たった1行で戦後になっていた。
父から贈与された10万円を投資詐欺でアッサリ失う。金は惜しくないが、ダマされたことはすごく悔しい。

すると今度は川崎も愛宕といっしょに投資詐欺に挑戦。現代でも数年おきに見聞きする出資法違反の、配当だけは払い続ける自転車操業投資詐欺。川崎はべつに金に困ってたわけでも金が欲しくてたまらなかったわけでもない。目的も無くなんとなく。

やがて母親がやって来る。息子を高利貸しにしてしまったと嘆く。元華族の仕舞屋にも過酷な取り立てに出向く。
税務署の件で燿子と対決。自分が「破瓜」という日本語の意味を知ったのはつい最近。

偏屈で変わり者青年の心の独白論理と三島の美しい日本語。よく意味はわからない。会社は今後どうなる?という段階で突然バッサリ終了。

あれ?光クラブ事件って、物価統制令と銀行法違反で取り締まりの末に、山崎が挫折と自殺するんじゃなかったっけ?三島はそこまでは描かない。純文学作品っぽい放り投げるようなラスト。三島はひたすら山崎晃嗣に冷淡な筆致。

2021年5月30日日曜日

満島ひかりと高円寺

ケトル2012年4月号「中央線が大好き!」が出てきたのでパラパラめくってみた。

この雑誌、「〇〇が大好き!」というシンプルな特集と各界著名人の連載という、雑誌として正しい姿勢で好感を持っていた。だが、昨年12月にひっそりと休刊していた。雑誌はどこも苦しいのだが、「ケトル」が10年ほどで力尽きたのは惜しい限り。何冊か気に入った特集号は買った。買わなかった号は今後はバックナンバーの置いてある大型書店で買うか、古書店で探していくしかない。

表紙に登場してる満島ひかりはなんと中央線が大好きだという。一部引用すると
「私、中央線とても好きなんです。電車の窓から見える、特に日が暮れ始めたころの景色が美しくって。たまらないです。暮らしている人たちもマイペースで、こだわりも強く感じるし。古くて上品な場所や、新しくて刺激的なものがいっぱいある町ですよ」
中央線に乗ることは尾根歩きに似ている。電車の窓の両側に、低層の住宅とビルの海原が遥かまで続いている。そして、駅のひとつひとつが山系をつくる山。それぞれに魅力的な風情(街)がある。自分、中野か三鷹か立川ぐらししか駅で降りたことがないけど。

満島がたまたま見つけてお気に入りの喫茶店があるという。それが高円寺の名曲喫茶ネルケン
「中央線沿いの一駅ごとにお気に入りの喫茶店を見つけるのが好きで。ここは、高円寺をぶらーっと歩いているときに、緑で覆われたただならぬ雰囲気の入り口と『名曲喫茶』って看板に惹かれて、なんとなく入ったお店。そしたら…見事に当たりでした」
この店は現在も営業中のようだ。ネットで誰かの上げた写真とか見てみると、とても男がひとりで、もしくは男二人で入るのにふさわしくなさそうだw おそらく女子たち向け。
おそらく、クラシックやジャズのレコードをプレーヤーで再生して聴かせる「名曲喫茶」って、現在のオーナーたちが現役を引退したらそのまま失われてしまうのではないか?
自分はまだ一度も名曲喫茶とやらに入ったことがない。
なんとかコロナを生き抜いて、昭和の生き証人的な店に一度行っておきたい。

2021年5月29日土曜日

Black Samurai 信長に仕えたアフリカン侍・弥助(2021)

織田信長(1534-1582)の一代記「信長公記」(太田牛一)に、イエズス会宣教師から信長に贈られた黒人従者のことが書かれている。この黒人は弥助という名前がつけられたらしいことは知ってはいた。2014年大河ドラマ「軍師官兵衛」にもそのシーンが登場する。

最近、ロックリー・トーマスという英国人研究者の書いた「AFRICAN SAMURAI」という本が世界的にバズっているらしい。この本にインスパイアされてアニメや映画の話にもなってるらしい。
この人が10年がかりで弥助について調べまくった。そのおかげで、あまりに情報の少なかった弥助のぼんやりしたイメージがかなり具体化してきた。

で、BSプレミアムさんがトーマス氏の研究に基づいて「Black Samurai 信長に仕えたアフリカン侍・弥助」という番組を制作し放送(5月15日)。チェックした。
信長公記は写本によって微妙に記述が異なるらしいのだが、かみ砕いて言うと、本能寺の変の1年前、天正9年2月23日、信長に謁見したヴァリニャーノが連れていた26,27歳ぐらいとみられる「牛のように黒い」「十人力」の大柄な黒人青年に信長は驚いて、墨を塗ってる?と疑ったらしい話が伝わってる。その後、弥助という名前で信長に仕えたらしい。

ローマのイエズス会に保管されている1574年8月7日付けヴァリニャーノ書簡によれば、司令官から黒人奴隷を譲られたヴァリニャーノ師は1人だけ黒人奴隷を手元に残したらしい。ひょっとして、その1人が弥助?モザンビーク島からやって来た?
イエズス会宣教師と日本に布教に向かったのならば、インドのゴアにあった聖パウロ学院で教育(砲術も?)を受けたはずだ。
ポルトガル船は長崎島原半島の口之津に上陸したはずだ。そして、へ上陸。
国際都市堺は外国人慣れしてた都市であっても黒人は珍しかったらしく、多くの日本人が好奇心で見物にやって来たことが書かれている。(1581年4月14日付ルイス・フロイス書簡)

偉い宣教師の身の回り品を持ちそばに仕えることのできた奴隷は、礼儀作法があって頭がよく、容姿が美しく、護衛もつとめることのできる強靭な体の持ち主であったはずだ。堺市に残る屏風絵に書かれたこの人物が弥助の可能性もある!?
さらに、堺市博物館に保管されている「相撲遊楽図屏風」で相撲を取る黒人男性?と思われる人物が!
もしかして弥助では?取り組みを待っている髷を結った日本人たちが10人なことも「十人力」弥助を示している。(それだと待ってる力士は9人でないといけない気もするが)
さらに、信長が武田勝頼を攻めるさいに従軍した家康家臣松平家忠(1555-1600)の日記(駒澤大学図書館蔵)にも信長が、身長六尺二分(180㎝以上)の黒人を連れている様子が書き残されている。この家忠日記には700名近い人名が登場するのだが、身体的特徴について書かれた箇所はこの1か所のみらしい。

安土で弥助は屋敷を持ち帯刀も許されていた。弥助は信長に大切に扱われていたらしい記述もイエズス会の記録に残されている。
そして本能寺の変。弥助は信長の最期を見届けた後、信忠を守るために援護に走った?
南蛮寺で事態の成り行きを見守っていたフロイスの残した書簡によれば、弥助は信忠のいた妙覚寺で終戦。明智光秀は「日本人ではない」という理由で弥助を殺さずに南蛮寺に身柄を引き渡したらしい。ここで弥助の記録は歴史の闇に消えた…。
トーマス氏は、2年後の島原合戦において有馬晴信の軍に「砲弾を装填できるカフル人(黒人)」の記録を発見。もしや、この黒人は弥助では?!弥助はイエズス会と共に行動し九州島原に戻った?

有馬氏は戦功のあったものにイエズス会から手に入れた珍しい犬を贈ったらしい。有馬キリシタン遺産記念館に伝わる絵に描かれる犬を飼いならす人物は黒人では?と言われてるらしい。
誰も彼も黒人っぽければ「弥助では?」ということは、歴史学から見て飛躍しすぎかもしれない。だが、当時の日本に砲術の技術者、まして黒人の少なさを考えれば、それもあり得ない話ではない…。
本能寺の変の11年後、加藤清正が側近にあてた手紙(栗間家文書)に、清正の家臣の黒人が妻子を持っていたことが書かれている。これももしかして弥助?
だとすると、弥助は本能寺の変の後も生き延びて、日本で幸せに穏やかに人生を過ごしていたのかもしれない…。そんな余韻を残してこの番組は終わった。

面白かった。弥助の記録は信長と出会ったあの瞬間しかないものと思ってた。日本の歴史にはたった1行1エピソードしか記録に残っていない人物がいくらでもいる。
数少ない記録をたどってここまでイメージを膨らませたトーマス氏は、歴史学者から見れば作家のように見えるかもしれないが、10年の調査でこれだけ新たな発見をもたらした点で偉大。

2021年5月28日金曜日

高橋ひかる「春の呪い」(2021)

ついに高橋ひかるの初主演連ドラ「春の呪い」が5月22日から始まった。テレ東の土曜深夜サタドラ枠。
自分は今まで必ずしも高橋ひかるのドラマを見てこなかったのだが、今回は主演だし、何よりも「春の呪い」というタイトルがインパクトがあっていい。

今やオスカーは小芝風花と高橋ひかるが期待の星。もしかすると今後はこじんまりした事務所としてやっていくのかもしれない。
で、ヒロイン高橋の妹「春」が桜田ひより。「咲」「映像研」なんかにも出てた若手モデル女優。このふたりがなんか暗くて怖い。

本家と分家。病院や銀行を経営する相馬一族(戦前の財閥かよ)の三男(工藤阿須加)との縁談が持ち上がる。だが実は、一族を取り仕切る女帝高島礼子さんは幼少時から妹の春に目をつけていた。姉妹は母親が違う。この妹は一族の血を引いている。同族の血にこだわるとか時代錯誤。
「いつまでもいっしょだよ♥」という仲良し姉妹。縁談が最初から妹との出来レース。姉は妹がこの家を出ていってしまう…という寂しい気持ち。

妹桜田も怖いが、この高橋がなんか不気味で怖い。高橋はガリガリに痩せているので暗い役をやらせるとなんか怖い。明るく天然でバカでおっちょこちょいの役が向いている。乃木坂でいったら高山。
この姉妹の柊家も十分に資産家っぽい。家が一戸建てでデカい。縁談っていっても最初からこんなかしこまった見合いみたいな?まずパーティーとかでなく?

相手が妹とばっかり話を進める。だからと言って父親が「妬むな!」は無神経すぎ。
このヒロインが短大卒業後にパン屋でフルタイムアルバイト。このヒロインは明るい高橋のイメージにぴったり。そして高橋はちょっと顔が面白い。
ヒロインは自分の気持ちを整理する。妹には幸せになってもらいたい。でも寂しい。妹がだんだん自分から離れていく。

日比谷公園でデート?男がスマホにとった春の写真の背後遠くに高橋が映ってる!?というシーンはぞっとした。生霊?スマホに無駄に高解像度カメラを搭載するな。
さらに、棺桶で眠っている妹春。ああ、この妹は恋が成就する前に死んでしまったのね…と時系列を考えながら見ていると突然手を伸ばして高橋の腕をつかむシーンはビビったw
「お姉ちゃんに冬吾さんは渡さない!」死霊ホラーなの?どう見たらいいのかわからなくなってきた。

コロナ禍にある日本でこれが今見たいドラマなのか?ちょっと不安。こういったドロドロした男女三角関係と名家の争いドラマは昼ドラだけでいいだろとも思う。高橋にはもっとバカ明るいヒロインが似合う。こういうドラマがオスカーとしては国民的美少女イメージに合うと考えてるのかもしれないけど。
次回予告では姉と妹の婚約者だった男が接近していくらしい。やっぱり昼ドラ。もうそんなに見たいとも思えないのだが、高橋ひかるを応援するために見続けようと思う。

2021年5月27日木曜日

アガサ・クリスティー「スリーピング・マーダー」(1976)

アガサ・クリスティー「スリーピング・マーダー」(1976)を読む。早川書房クリスティー文庫(2004)の綾川梓訳で読む。私的クリスティマラソン78冊目。
SLEEPING MURDER by Agatha Christie 1976
ニュージーランドから英国へ移り住む新婚の若妻グエンダは、後からやって来る夫ジェイルズ・リードに代わって英国南部で新居を探し歩いている。ディルマスという田舎町にヒルサイド荘という家を見つけて移り住む。

マープルの甥レイモンドのパーティーで余興芝居を観劇中に昔の記憶がフラッシュバックしヒステリーとパニックを起こしたグエンダ。過去の記憶、女の絞殺死体。それは一体誰?

そして、ヒルサイド荘はかつて幼少時代に、軍人だった父ケルヴィン・ハリディ(インドでグエンダを生んだ後に妻病死。幼い娘はニュージーランドの姉の元へ。)と継母ヘレンと3人で短期間一緒に住んだことのあった家であることが判明。

ジェイルズ&グエンダ夫妻は、18年前にハリディ一家と関わりのあった家政婦、女中、医者、弁護士とその事務員、近くのホテルに滞在していた軍人夫妻に話を聴きに行く。18年前の埋もれた事件を掘り返す。ミス・マープルが「よしたほうがいい」と制止するのも聞かずに。

継母はインドで茶を栽培してたウォルター(現ディルマスの弁護士事務所経営者、独身中年)の元へ向かう船の中で別の恋?ウォルターとの婚約を破棄し、さらに帰りの船でまたさらに別の恋?それが父ケルヴィン?
父ケルヴィンを残して恋人と出奔した継母は今どこに?医者の兄も行方を知らない。ひょっとして、殺されてどこかに埋められてる?傷心の父は精神病院で自殺していた?!

マープル老嬢はリード夫妻とは別行動で、関係者たちの懐にしれっとインして世間話しながら事件の真相を探っていく。
18年間忘れられていて明るみに出なかった事件の真相がだんだんと判明していく「回想の殺人」もの。英国の田舎を舞台にした社会派ドラマ。

マープルはリード夫妻を適切にアドバイスして真相に導いてる。だが夫妻はあまりマープルの言うことを好意的に扱ってない。結局、グエンダがひとり真相に気づいて、あわやの危機一髪。
クリスティはマープルの姿を借りて、たったひとりの誰かが話すことの他ソースがないことを信じる危険を説く。間違った情報を信じると、正しい真相から遠ざかる。

これは読んでるときから面白かった。犯人も十分に適切に意外。
調べてみたらポアロ「カーテン」と同じく、1943年という早い段階で準備されていてクリスティ女史の死後に出版。

2021年5月26日水曜日

長澤まさみ「コンフィデンスマンJP プリンセス編」(2020)

劇場公開映画「コンフィデンスマンJP プリンセス編」(2020 フジテレビ、東宝)を見る。
脚本はもちろん古沢良太。監督は全作「ロマンス編」と同じく田中亮。制作は石原隆と市川南というフジテレビ東宝映画。

3月の日本アカデミー賞授賞式で長澤まさみが涙を流していたように、この映画以降、海外ロケとかいっさいできなくなった。公開も延期になったし第3作の制作も厳しいスケジュール。

さらに東出昌大夫妻は離婚。公開直前に主要キャストの三浦春馬が亡くなり、公開後に竹内結子が亡くなった。
このシリーズが始まって3年。この1年の間に起こったことが濃密すぎた。
それでもみんな前を向いて映画を撮り続ける。テレビに出演し何事もなかったかのように笑顔を振りまく。みんなプロだよ。
いきなり北大路欣也さん演じるシンガポール中華系大富豪が亡くなる。ビビアン・スー、白濱亜嵐、古川雄大の3人の子が登場。

当主の残した奇妙な遺言。遺産は末娘ミシェルに継がせる。台湾の小さな町工場がフウ一族によって燃やされ追い出されるというシーン。古沢良太はアガサ・クリスティーか「犬神家の一族」がイメージにあったに違いない。

スピードテンポでダー子&スタア(竹内結子)の詐欺話失敗シーン。このコンビは冒頭で双方がののしり合ってアッサリコンビ解消。(と見せかけて竹内は重要な役回りも演じてた)

そして今回初登場ヒロイン・コックリ(関水渚)登場。母娘の巾着切り。

いつものようにウッドベースのイントロから3人の前口上。そして「コンフィデンスマンの世界へようこそ!」キタキターー!ダー子チーム始動。
ダー子とリチャードによるボクちゃんへの状況説明。これがコンフィデンスマンのスタイル。
ミシェル17歳は行方不明。まずまさみダー子がミシェルに成りすまそうとするも却下。このやりとりは軽妙な笑い。まてまてまて。
で、不幸な暗いメガネ娘コックリ。この子をミシェル役にスカウト。狙いは手切れ金。

フー家の家宰トニーが柴田恭兵さん。自分の知ってる柴田さんもだいぶ老人になった。ダー子は立て板に水のようにレイモンド・フウ氏との嘘のワンナイト逢瀬を真実のように語る。

で、DNA鑑定をチートで切り抜け上流階級英才教育。「この年でドラゴン桜やるとは思わなかったわ」完全に監禁されてる。
ビビアン・スー古川雄大の嫌な金持ちボンボン演技が素晴らしすぎる。このふたりは俳優として相当な実力者だと感じた。存在感からして適切。

毒入りクッキーの演出が適切に正しくチープなのがとてもよい。
ダー子とコックリは逃げ出すしかなくなる。今回は失敗か…。そして逃亡劇。GACKTが行きずりのワンシーン登場。

フウの娘と息子の陰湿さにファイトを燃やすダー子。いよいよ本気で戦う気になる。フウ家の当主の座をいただく!
今回のまさみはコックリの母親を演じた。まさみは「MOTHER」という映画でも母親。まさみの母性表現の演技が秀逸。表情がとても適切。それにまさみは色が白い。細い。いつも以上に胸が大きい。眉毛が濃い。
この映画、公開当時から関水渚を広瀬すずだと思ったまま見てた人がいた。どうしてそうなる?

玉璽が登場。自分、レイモンド・フウという名前を聞いたとき、「馮」という姓をイメージしたのだが、この映画冒頭で「胡」という文字がアテられていた。なのにこの玉璽には「馮」という文字があった。これはどういうわけ?(これは本筋と何も関係なかったw)

そして舞台はマレーシア・ランカウイ。ミシェル・フウのお披露目パーティー。
ここでジェシー(三浦春馬)、アカボシ(江口洋介)、ラーメン未亡人(広末涼子)ら詐欺師大集合。コメディ色が強くなる。五十嵐(小手伸也)にもちゃんと出番がある。

そして玉璽を盗むチャンスは1回きり。その一方で、柴田さんはミシェルが偽物なことに気づいてる?アカボシはダー子たちを狙う?ダー子とコックリ、大ピンチ!?

だが、コンフィデンスマンのパターンを知ってると、この修羅場もどうせアレなんでしょ?と思ってしまうw
「くそっ、バカどもがぁ!」アカボシ、なんで泣いてるん?
正直、今回の巻き戻しはあまり驚けなかった。今回の仕込みはさすがに無理がないか?広末涼子もだが、あの殺し屋も韓流スターっぽければ誰でもいいのか。もし、アカボシ自身が拳銃なりナイフで直接手を下したら?

トニー柴田さんもレイモンドの意志に正しく従ってしまうという驚き。信じればそれが真実。あのラスト付け足しは結果味わい深い。
結果、みんな収まるほっこりラスト。感動作。シンガポール版「海街diary」。どこか「カリオストロの城」も感じさせる。

この映画を見た人はみんな長澤まさみの女優としてのすごみのようなものを感じたのではないか?もう完全に日本を代表する国民的女優。
長澤まさみが演じることでこの物語が成立してる。まさみがいい女すぎる。この夏、日本中が彼女に恋をする…という映画。
スタッフロールの後の芝居シーンは次回第3作への伏線?海外ロケができなくなっても企画続行してるらしい。

2021年5月25日火曜日

田山花袋「蒲団」(明治40年)

田山花袋「蒲団」を読む。学生の時以来で読み返す。前回は新潮文庫版だったのだが、今回は岩波文庫版で。
学生時代に読んだ時も衝撃だったのだが、今読み返してもこの主人公先生の心の声には失笑だし笑撃。

主人公竹中時雄は小石川で地誌編纂の仕事に従事する傍ら、4時には牛込矢来町の自宅に帰宅する、妻と3人の子を持つ37歳の中途半端作家。
作品は酷評されたりもするのだがファンレターも届く。その中に熱心に弟子入りを希望する19歳女学生横山芳子がいる。手紙のやりとりをしてるうちに将来性を感じ師弟関係を結ぶ。

この先生が妻子ある立派な中年なのだが、上京してきた芳子が思いのほか美人なので密かに恋心。性的な目で見てる…。

芳子には田中という年の近い神戸の男がいた。こいつが芳子を追いかけて、学業も投げ出し家出同然の徒手空拳のまま上京。時雄は呆れる。この田中の上目遣いや演説口調を激しく嫌悪。だが、あくまで表面上は紳士として大人の対応。

芳子は何度も田中と逢っている。なのに時雄先生に純粋で正しい恋だと強弁。だが時雄は「心も体もすでにヤツに奪われ純潔じゃないんだろ…」と疑いの目。そしていら立ち、妻に当たる。

学生時代はこの時代の文物や様子がたぶんぜんぜんイメージできてなかった。この小説がぜんぜん頭に描けていなかった。新宿区に昔は牛込区があったこととか、小石川の共同印刷の工場とか、甲武鉄道とか、新橋停車場とか。
切支丹坂ってどこかわからなくて調べた。これはたぶん地元の人しか知らないわ。

東京中を歩いてみたり、いろんな映画や本や古写真を見たりして、今やっとイメージできてる。やはり明治大正の小説を子どもたちに読ませて、何か出題して答えさせるのは無理がある。
当時は、車ででかけていくシーンとか、てっきり自動車をイメージして読んでいたかもしれない。そうか、人力車のことか!

芳子の田舎から忙しいのに上京してきた父親。時雄といっしょに芳子と田中を説得するも、若い2人が頑なで度し難い。
時雄はただ単に芳子を田中に渡したくないために、芳子の父を呼び出してる。そして、芳子は田舎に帰ることに決定。自分のエゴを通した。大人として当然のことをした風を装って。

芳子が出て行った後に、押し入れに残された芳子の夜着の匂いを嗅ぐとか、蒲団に夜着をかけ顔をうずめて泣くとか、なんなの?困惑w 

坂道グループに推しメンのいる男性の心理に近い。アイドルとして応援してるけど、ぜったいに男の影を感じたくない。男とデキて卒業していったメンバーは許さない。
坂道グループのファンには握手を待ってる間にこの本を読ませたい。読むのに1時間もかからない。
これを初めて読んだとき、中年男性になって若いアイドルとか追いかけるのはぜったいやめようと思ったw 

そしてもう1編「一兵卒」(明治40年)も読む。日露戦争に従軍した一兵士が、脚気なのに病院を抜け出し隊に合流しようと追いかけ、野垂れ死にする話。
お国の為に、もう戻らない覚悟で戦地に行くも、あまりに悲惨な光景に恐怖し故郷へ帰りたいと願う。家族の顔を想う。

この時代の日本人青年はもれなく徴兵され、初めて見る泥と土埃の満洲に送られた。日本中の各地の神社に、その村から出征して戦死した若者の名前が書かれた日露戦争の碑がある。その存在に大人になるまで気づかなかった。戦争が人々の身近にあった時代がすぐ最近まであったことをしっかり教えるべき。

2021年5月24日月曜日

黒島結菜「LIFE!」に初登場

黒島結菜が内村光良のコント番組「LIFE!」に初登場。4本のコントに出演した。最近の黒島はほぼNHKにしか出演していない。

内村コントの着眼点に関心しかない。昔はとんねるずもナイナイもコントをやっていたのだが、芸能人とメシを喰うだけのバラエティに成り下がっていった。良質なコントを創作し続ける内村には敬意しかない。どれもが「大笑い」というよりは「フッ…」という笑い。
一番秀逸だと感じたのは世論調査をテーマにした1アイデアのみのシュールなコント。世論調査アンケートにおいて「わからない」「無回答」はこんなふうに見られてますよという風刺。
「マジシャンとテーブルマジックを初めて見る客」もなんだこれ?と思った。「そこ?」という箇所に拘泥しぜんぜん先に進めない…という、SNSで見るような「世間の反応」を風刺しているようにも感じた。共通理解が共通でない世界でのコミュニケーション不全の可笑しさ。
喫茶店員黒島が美しい「懸案マルチタスク女」とでも言うべきコントも純文学作品風1アイデアコント。これをだらだら長くしたものが日本映画。黒島はずーっと心の声を朗読しパントマイム一人芝居。こういうの、かなりの力量を問われる。黒島はいつも髪が真っ黒で眉毛が墨で書いたかのようで美しさに関心しかない。恋だと思う。
あと、合間トークで「最近やってしまった」こととして、沖縄の生番組で、スパムを沖縄ではポークというのだが、ついスパムと呼んでしまったことについて語った。

沖縄人はスパムをポークと呼ぶのが通常らしい。東京では通じないので、スパムと呼ぶようになってしまった自分は東京に染まってしまった…という、自分にガッカリエピソードを披露。黒島、生真面目で面白い。

2021年5月23日日曜日

横溝正史「空蝉処女」(昭和58年)

横溝正史ミステリ短編コレクション第6巻「空蝉処女」(2018 柏書房 日下三蔵編)を読む。

「空蝉処女」は角川文庫版が出てるけど、探しててもぜんぜん見つからないし、昨年から古本屋を探し歩くようなこともしていない。もうたいていの読みたい横溝正史は読んだ。未読の落穂ひろいは柏書房のこのシリーズで十分。

「空蝉処女(うつせみおとめ)」は終戦直後に横溝一家が疎開していた岡山県吉備郡岡田村で書かれたもので、昭和21年に雄鶏社の「紺青」という雑誌に掲載される予定だったらしいことがわかっていた。
原稿を持っていた人が現れ、結果、埋もれていたこの作品は「月刊カドカワ」昭和58年8月号に掲載された。そのへんは昭和50年代に横溝作品のすべてを角川文庫化しようとがんばっていた中島河太郎氏の努力のおかげ。

読んでみて驚いた。普通に純文学作品っぽかった。神戸空襲で起こった一家の離散と再会の奇跡のちょっと感動的な話。横溝作品に期待するような恐ろしいミステリー作品ではなかったが、美しい短編小説だった。

この短編集には角川文庫「青い外套の女」に収録されている8編と、「血蝙蝠」に収録されている7編と、「空蝉処女」収録の7編、「死仮面」に収録されている「上海氏の蒐集品」を合わせた23作品。そして、付録として横溝正史の評論、「空蝉処女」初掲載のカドカワに孝子夫人が寄せた文などを掲載。

「上海氏」と「青い外套の女」収録ぶんは読んだことがあるので今回は読まない。読んでいなかったものを読んだ。どれも短い短編でミステリーというよりも、ちょっとした娯楽読物。
どれもがシティーボーイ横溝による洒脱な語り口。大衆的で読みやすくて、それでいて格調も高い作品。

「花火から出た話」週刊朝日 昭和13年4月特別号
「物言わぬ鸚鵡の話」新青年 昭和13年10月号
「マスコット奇譚」オール読物 昭和13年11月号
「恋慕猿」現代 昭和14年5月
「X夫人の肖像」サンデー毎日 昭和15年1月特別号
「八百八十番目の護謨の木」キング 昭和16年3月号

どれもが「事件と真相」の短い読物。それほど意外な展開もなく30分ドラマにするのも難しい。だが、野心的な脚本家と演出家ならなんとか面白くはできそう。

「二千六百万年後」新青年 昭和16年5月号 は読んで驚いた。SF作品?これは芥川龍之介の「河童」を意識した作品に違いない。紀元2600年を生きる主人公が眠ってしまうと2600万年後に!?タイムスリップもの?
数年後に、この小説に書かれたように日本は空襲で子どもたちもたくさん死ぬことになるので予言の書?!

「玩具店の殺人」トップライト 昭和22年1月号
「頸飾り奇譚」朝日 昭和4年8月号
「劉夫人の腕環」サンデー毎日 昭和3年3月特別号
「路傍の人」聚英閣「広告人形」大正15年6月書き下ろし
「帰れるお類」探偵趣味 大正15年11月号
「いたずらな恋」苦楽 大正15年9月号

「頸飾り奇譚」は首飾りを質入れする夫とその妻の、どっちがやりて?という落語みたいな話。
「いたずらな恋」はシャーロック・ホームズ「ボヘミア醜聞」みたいな話かと思わせておいて意外な真相。
個人的に太宰の短編みたいな「帰れるお類」が楽しくて好き。映像化希望。

2021年5月22日土曜日

新垣結衣「やればできる子って言われるのがイヤ」

数年前に100円で購入した「ピクトアップ 2007年12月号」が部屋の隅から出てきたのでパラパラめくってみた。目当ては「恋空」宣伝期の新垣結衣(当時19歳)のグラビア&インタビュー4P。

「恋空」は公開時から賛否で「否」が目立つケータイ小説映画。この映画が新垣結衣のブレイクポイント映画ではあるのだが、ガッキーブレイクはポッキーCMや「パパムス」「マイボスマイヒーロー」との複合技。

新垣結衣は十代から今日に至るまでノースキャンダル真面目優等生女優。(いきなり結婚発表には絶望するほど驚かされたが)
インタビューでも真面目でそれほど面白いことは語らない。インタビューを読んでみても人に知らせたいような内容はない。なんとか要約すると、
  • もう役作りとかしてない。そんなの意味ないと思うようになって(笑)
  • 演技は楽しいことじゃない。
  • 重い気持ちにならないと涙も出ない。しんどい。
  • 私の演技を見て!という気持ちはぜんぜんない。
  • モデルの仕事は楽しい。洋服も好き。
  • やればできる子って言われるのがすごくイヤ。期待に応えられなかったらどうしようって思うから。ハードルを高くしたくない。「意外とできるじゃん」と思われるほうがいい。
  • 期待しないで待っててください(笑)!
新垣結衣は現在に至っても謙虚。誰もが知ってる女優なのに難しい役にはチャレンジしないし、32歳現在まで一度も舞台に立ったこともない。立とうという気もない。テレビドラマを飛び出そうという気もない。ま、それが新垣結衣というひとの個性。

2021年5月21日金曜日

新垣結衣「越路吹雪」(2005)

新垣結衣が女優としてテレビドラマに出演し始めたのは2005年。1月期にSh15uya(シブヤフィフティーン)、7月期に「ドラゴン桜」があり、11月25日にフジテレビ系で放送された天海祐希主演SPドラマ「越路吹雪・愛の生涯〜この命燃えつきるまで私は歌う〜」では越路吹雪の少女時代役で5分ほど出演シーンがある。

これ、本放送時にも録画したのだが2014年に再放送してくれたおかげでデジタルで録画できた。ガッキー出演シーンしかしっかり見ていない。
宝塚音楽学校へ、橋を渡るのが遠回りだと、袴の裾をまくって川を徒歩横断してくる女生徒がガッキー越路吹雪。
温水事務員との最初のシーンでガッキーがお土産として手渡したものはもしやクレソンか?
越路吹雪(15歳)は本が好き…という縁で、歌手人生を二人三脚で共にする後のマネージャー(松下由樹)と出会う。
音楽学校で唱歌などを歌うシーンがある。ガッキーはこんな昔に歌をドラマで披露していたということを忘れていた。なんだ、この朝ドラ感。
今年2021年に「ドラゴン桜」が再放送された。17歳の新垣結衣と現在の新垣結衣の顔がかなり違う!と世間をざわつかせたのだが、16年も経てば誰だって顔が変わって当然だろう。今のガッキーは顔がシュッとして鼻が細く高くなった感じはする。

だが、この時期のガッキーは「ドラゴン桜」はガングロギャル役だったので目立たないのだが、顔がかなり肌荒れしていた。翌年の「トゥルーラブ」でもよく分かるのだが、この「越路吹雪」ではさらにハッキリわかってしまう。あと、歯の治療した跡も。そのへんは見ないでおいてあげたい。
後のマネージャー岩谷時子は宝塚ファンで宝塚で働いていたのだが、越路の歌唱にはさらに特別な才能と魅力を見出す。
三つ編みに着物と袴姿のガッキーがかわいい。このとき昭和16年。
いろいろあって越路の死後のラストシーン、岩谷はふたりの思い出のコスモスの咲く場所で、越路の唄を愛する次の世代の生徒と出会う。ここでガッキー2回目の登場。一人二役。
やっぱりかわいい。でも、この子が30歳を越えても国民的人気女優でいるとは、この放送当時は思えなかった。

ガッキーは2022年の大河ドラマへの出演が決定しているのだが、2021年は映画もドラマもお休み?今のところ何も仕事が決まっていないようだ。

せっかくガッキー初大河を楽しみにしていたのに、結婚というガッキーロスによってそんな気持ちは吹き飛んだ。
でも、序盤の2,3話にしか登場しない役っぽい。レプロも退社するようだし、ひょっとすると出演キャンセルもありえる?

2021年5月20日木曜日

さよならガッキー

いつか来るかもしれないとは思ってたけれど、ガッキーはインドア派だからと安心してた。なんなら、ガッキーはたぶん男性が嫌いだろうと思ってた。愚かだった。
なんとなく生理的に嫌な感じがして「逃げ恥」って1回も見たことなかった。やはり自分の感覚は間違ってなかった。
ガッキー主演ドラマに星野をアテたTBSドラマプロデューサーを呪おうと思う。星野がテレビに出てたらチャンネルを変える。1枚CD持ってるけど棄てる。
この世界は控え目に行っても地獄のようなものだった。いったいどれだけのもの奪われ続けていくのか。
奥歯に仕込んでおく自決用のカプセルとか、どこで手に入るんだろう。