2021年5月6日木曜日

相沢沙呼「ココロ・ファインダ」(2012)

相沢沙呼「ココロ・ファインダ」(2012 光文社)を読む。
自分は過去に相沢沙呼を2冊ほど読んでいるのだが、あんまり自分とは合わず、もう読まないつもりでいた。

ところが、2年ほど前に、友人の家で鍋などするためにスーパーに買い出しに行くと、近くに児童館併設の図書館があって、そこに「ご自由にお持ちください」という棚があった。
何か読みたい本はないか?と物色。結果、数冊持ち帰った。つまり、図書館リサイクル本。タダでゲット。面白くなければまたそこに戻しておけばいい。その一冊をついに読んだ。

帯を読むと、「覗いたファインダーが写し出すのは、少女たちのココロの揺らぎとミステリー」と書いてある。この作家は鮎川哲也賞も受賞したことがある旨書かれている。
そして、表紙装丁を見て、きっと女子高生が二眼レフカメラを使ってみる話じゃないかと期待した。

つい、日常系青春ミステリーのような作風を期待してしまうのだが、この本に収録されている4本の短編(2010年から2011年にかけてジャーロ誌に掲載)のどれもがミステリーとは言えない。女子高生たちの心の揺らぎと、ちょっとした疑問の解消…といった程度にすぎない。この本みたいな、あれは何だ?ああ、そういうことだったのか。ということは毎日数回起こってる。

高校の写真部に在籍する女子高生たちの、友人との些細なことでのケンカ、コンプレックス、未来、そしてちょっとした謎。
彼女が写真を見て不機嫌になった理由は何?SDカードにあった壁ばかり映った写真の入ったフォルダは何?
そしてデジタル一眼レフ、ホルガ、ピンホールカメラ、大人の科学付録二眼レフなどの小道具。
どれもアイドル女優で15分ほどのドラマにはできそうだ。実際、自分は乃木坂ちゃんで脳内再生。

第4話が受験とやりたいことの狭間で悩む高校生というよくあるテーマ。写真家になるための勉強をしたいという思いを親に一蹴され、心が乱れるだけの話。これが一番読みやすい。

この本で描かれてることはもう大人には思い出すこともできない些細なこと。少女たちの言葉遣いと平易な文体でつづられる。中学生ぐらいが対象年齢じゃないか?

その心の機微は純文学の主題。もう少しさらに日本語として美しく文体の精度が高く、芥川、太宰、谷崎、川端、三島のようなきらめきを感じさせてくれればもっと好きになっていた。またこの本を拾った同じ場所に置いてこようと思う。

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