2021年5月1日土曜日

吉村昭「幕府軍艦回天始末」(1990)

吉村昭「幕府軍艦回天始末」(文春文庫 1993)を読む。1990年に文芸春秋社から出た単行本の文庫化。別冊文芸春秋no.191(1990)が初出。

将軍慶喜が江戸城を明け渡し水戸に謹慎し、彰義隊も制圧され関東は新政府に押さえられ、いよいよ東北が戦乱へ…という時期をささっとおさらいした後に、宮古湾での榎本武揚艦隊の「回天」他が、新政府軍の「甲鉄」を奪取する作戦の一部始終、そして函館戦争をまとめた一冊。

この宮古湾海戦は司馬遼太郎「燃えよ剣」でも読んだしなんとなく覚えてる。
かつて「あまちゃん」巡礼で訪れた宮古、久慈、譜代、田野畑、田老といった地名が出てくるので、あのリアス式海岸と崖の間にある漁村にサムライたちが上陸する光景を思い浮かべながら読んだ。

幕末の軍艦はすべて外国から購入したもの。蒸気機関で動くのだが、とても故障しやすい。それに、日本は低気圧が北西に進むと発達する。天気予報の無い時代、軍艦という高価な買い物がすぐに座礁して沈没するとか、榎本の困惑と悲しみが伝わってくる。

そして「牛」という短編も収録。こちらは中央公論1976年7月号に初出。

文政7年7月の薩摩領吐噶喇列島宝島に上陸してきたイギリス人が、島の貴重な労働力である牛を3頭、銃で脅して強奪していった事件。まったく食い意地の汚い卑しい泥棒でしかない最低ブリカス野郎。こういうときのために竹やりを敷き詰めた落とし穴とか用意しておけばよかった。毒入りの水とかしれっと置いておけばよかった。

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