2021年5月18日火曜日

新田次郎「雪の炎」(昭和48年)

新田次郎「雪の炎」を2016年光文社文庫版で読む。筆者解説によれば昭和44年8月から「女性自身」に全19回で連載されたもの。1973年に光文社カッパ・ノベルズから出たのが初出。1980年に文春文庫でも出てるらしい。

自分は数年前に友人Tとふたりで谷川岳山頂まで行ったことがある。なので土合駅の階段とか、稜線の感じとかなんとなくイメージできる。ある年代以上の日本人にとって谷川岳は魔の山らしい。母親に「谷川岳に登ってきた」と事後報告したらすごく驚いていた。
自分もTくんも立派な登山用具を持っていない。普通に市販されているズボンにシャツにリュック。スキー場のリフトを一部区間利用したハイキング程度の軽装登山。行けるところまで行ってみよっか?と慎重に登っていったら山頂に着いてしまい、また同じ道を引き返した登山。

この小説は、男女5人の電気機械系列会社の山岳会パーティーが登山中に天候急変。15mほどの強風が吹き始め、女性一人が稜線から滑落。男2人が救助に降り、男女ペアが目的地の山小屋へ救助を求めにいく。翌日救助隊が駆け付けると、女一人男二人のうち華村が疲労凍死していた。という夏山事故。

で、華村妹が兄の死の真相をさぐる行動を開始。この娘がすっごく気が強く、わりと失礼。
夏山での疲労凍死事故はそこに至るまでにいろいろな要因が複合的に絡み合って起こる。人間関係、虚栄心、ライバル心、嫌がらせ、疲労の蓄積。このヒロインは誰かのせいにしようとヒステリック。

連載小説はたいていダラダラしててテンポが悪い。この小説も例外でない。松本清張「遭難」と同じような雰囲気だが、悪い意味で井上靖「氷壁」みたいな展開。
企業特許と設計図紛失事件、企業情報屋、総会屋、なぞの外国人紳士、男女のかけひき。事故に至るまでの背後にあったものとは?

思わせぶりにダラダラ続いた末に、何か驚くべき真相が?!と期待しつつ読んだ。
だが、最後まで読んでもそれほど予想の範疇を超えない。ああ、生死をわけたポイントはそこだろうな…ってゆう。

この本があまり有名になってないのも理解できた。それほど面白くない。
1973年当時のトレンディドラマみたいなものか?現在70代80代の日本の若者には登山がとても流行ったことを示す山岳ミステリー小説。

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