2019年5月23日木曜日

島田荘司「異邦の騎士」(1988)

島田荘司「異邦の騎士」を読む。1988年発表だから相当古いのだが、今も読み継がれる島田荘司の代表作らしいので読んでみる。今回手に入れたものは1990年講談社NOVELS版。後に何度も改訂版が出ている。

自分はこれで島田荘司4冊目。この作家は80年代から人気作家でファンも多い。だが、自分はまだそれほど気に入る作品に出会えていない。ほどほどに期待して読む。

ビルの谷間の小さな公園ベンチで目を覚ました男。いつの間にか眠ってしまったらしい。車をレッカー移動される前に取りに行かなきゃ。止めたのどこだっけ?
それどころか自分が誰なのかもわからない。名前も住所も職業も。記憶喪失?
だが、中央線の駅とかは覚えている。そこに高円寺駅がある。

そして男はたまたま出会った女と同棲開始。こんな話は東京のどこかで今も実際にありそうだ。
男は仮名で工場アルバイトで働き始める。ボーナスをもらうのにハンコが必要だというので、女の部屋を探していたら、あれ?これって自分の免許証?!

男は東横線から見える占星術の看板に興味を惹かれ御手洗さんの事務所を訪問。友だちになる。御手洗さんって、いわゆる高等遊民ってやつだよね?

ジャズのレコードとか聴いたり、まずいコーヒーを飲んだり。御手洗のひねくれた社会批判演説を聴く。このへんがなんだか村上春樹でも読んでいるかのよう。
やがて同性相手・良子の様子がおかしくなる。男の唯一の手がかり、免許証に書いてある前の住所のアパートを訪ねる。

ここから先がガラッと転換。ハードボイルド小説展開へ。
男が記憶喪失になった理由。それは悪徳サラ金社長とヤクザに罠に嵌められた妻が、体を凌辱され貯金を奪われた揚げ句、自殺に見せかけて殺された過去があった。男は仕事を辞め復讐の鬼へ。

ヤクザ男は物取りに見せかけて殺したのだが、サラ金社長は隙を見せない。
だが、ついに決行の時が来た!しかし、その行く手には御手洗潔が!

「異邦の騎士」というタイトルからまったく内容が想像できなかった。半分以上読んだ段階でもまだどんな展開なのか読めない。これを読む前に「占星術殺人事件」という本を読んでいたので、てっきりまた猟奇連続殺人が起こる本格かと思ってた。なのになにこれ…。

自分の想像をはるかに超えていた。なんだ、この展開!?やられたあ~~!
まるでコンフィデンスマンJPの世界だった。

現代ならこんなことが実際に可能とは思えない。きっとファンタジーに近いと言われてしまう。だがそれでもこの本は衝撃的で魅力的。

今まで読んだ島田荘司で一番面白い。青春ミステリー小説だった。
ただ、ちょっと感動ロマン巨編に寄せたかったのか、ちょっと終盤がだらだら長い。

石岡君と御手洗さんのファーストコンタクトだったの?!
この本は表紙を人気イラストレーターに萌えキャラで書いてもらったらもっと売れると思う。

2 件のコメント:

  1. 「異邦の騎士」ちょっと切なくていまでも好きですね。

    御手洗潔シリーズの第10作目「龍臥亭事件」。
    横溝「八つ墓村」のモチーフになったり映画「丑三つの村」で有名な実話「津山三十人殺し」を核にした2000枚の大長編です。
    秘境の村にとぐろをまいた龍のような異様な構造の館。不可解な連続殺人事件。頼みの御手洗は外国にいて登場せず、石岡くんが一人で苦闘しながら謎を解き、美少女に歳に似合わぬ恋もする。実録部分がやたら長いので推理小説としてのバランスは悪いのですが、個人的には好きな作品です。どこかでお目に留まったらぜひ。

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    1. あ、その本もわりとよく見かけます。読むべき本リストに入れておきます。
      「異邦の騎士」は実写ドラマで見てみたい。

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