2019年1月20日日曜日

エラリー・クイーン「九尾の猫」(1949)

エラリー・クイーン「九尾の猫」を読む。今回手に入れたのは大庭忠男訳1979年版ハヤカワ・ミステリ文庫(2002年第26刷)。昨年の1月に100円で購入したもの。

これはエラリー愛好家の間でわりと話題に昇るらしいので期待して読む。2015年に越前新訳版が出たので多くの人はそちらを読んでるのかもしれない。
CAT OF MANY TAILS by Ellery Queen 1949
冒頭部で今後9つの殺人が起こることが予告される。やっぱりなかなか頭に入ってこないわかりにくい文体だ。いつのまにかペダンチックなたとえ話になってて毎回ウンザリする。

酷く暑いニューヨークの夏の夜、マンハッタンで起こる連続無差別殺人をエラリー親子が捜査する。

これ、今まで読んできたエラリー作品と雰囲気が違う。ニューヨークを舞台にしたパニックホラームービーのよう。心理を圧迫する恐怖のあまり市民は恐慌と暴動まで起こしてしまう。SF作品のようでもある。

ほとんど共通点も見いだせない被害者たち。誰もがそれほど幸福でもないその日その日をつつましく精一杯生きていた。突然絞殺され人生を終わらせられる。
連続絞殺魔「猫」は現場に首を絞めた紐しか残さない。性別から何から一切正体不明。

エラリーは前の事件「十日間の不思議」で何か手痛い心の傷を負ったらしい。まだ読んでないのでわからない。
父クイーン警視の説得で犯罪捜査の現場に復帰。NY市長直々に指名された特別捜査官。

44歳から21歳までの男女の被害者の共通点は何か?各犯行は深夜のマンハッタンで起こっている。犯行のインターバル、被害者の年齢がだんだん下がっていく傾向、独身者が多いなどの点に着目するも何も突破口が見いだせない。ひょっとするとクリスティの「ABC殺人事件」みたいな感じ?

何も手がかりがなく話に変化がなく読んでいて退屈。だが、本の真ん中をちょっと過ぎたあたりで被害者の共通点が突然判明。犯行動機を推測するエラリーのとあるひと言に「おおぉ!」と興奮!急に面白そうになる。「セブン」や「羊たちの沈黙」みたいになってきた。
ここから先はサスペンスムービーの展開。犯人の次のターゲットを予測し罠をかけるクイーン親子。

犯人逮捕からさらにまだページが残っている。これは何かまだあるな…と思ってたら、やっぱりか!

犯行動機がまったくの新機軸。クリスティの「鏡は横にひび割れて」の犯行動機みたいに新鮮。こんなサイコパスを他に知らない。
これは今まで読んだエラリーで「Yの悲劇」と同じぐらいに好きかも。

2 件のコメント:

  1. 「9尾の猫」。自分もクイーンのなかではかなり好き。
    「10日間の不思議」はブロガーさんと相性の悪いライツヴィルもの。登場人物が異様に少ないのに分厚くて。でも自分的にはクイーンの上位。
    「9尾の猫」が済んだなら、次は「中途の家(途中の家)」でしょうかね。「靴に棲む老婆」も素晴らしいですよ。これはマザーグースが使われている。

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  2. エラリーやカーはBOにぜんぜん置いてなくて困ってます。こうなったらAmazonか図書館に頼るしかないかもしれない。
    「中途の家」も「靴老婆」も読みたい。

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