2016年12月7日水曜日

貫井徳郎 「乱反射」(2009)

貫井徳郎の「乱反射」(2011 朝日文庫)を読む。これ、ずっと探していた。状態は良くないけど適当な1冊が108円でようやく見つけられた。

この1冊、カンのいい乃木オタならすぐに「乃木坂って、どこ?」2014年10月19日放送回「POP女王決定戦」で「あしゅがオススメしてた本だ!」って気づくと思う。
自分、わりと本を読んでいるほうかと思うのだが、この作家の本をまだ一度も手に取ったことがなかった。

齋藤飛鳥、当時16歳。貫井徳郎を好んで読んでいたらしい。
よし、今回自分も初めて貫井を読んでみる。結婚をテーマにした「崩れる」よりも、幼児の事故死を扱った「乱反射」のほうが自分に合っていそうなのでこちらを選んだ。
内容は、聡明な飛鳥が説明していた通りだった。多くの人々のほんの小さな怠慢やモラル違反が、めぐりめぐって無辜の2歳児を街中の事故で死なせてしまう…というストーリー。

違った言い方をすれば、それは、絶望ダメ社会ニッポンの縮図。

最初の前書きのような箇所を読んで、あ、この作家は自分と合っているかも?って思ったのもつかのま、全体の10%ほど読み進めたところで後悔し始めた。

日々ワイドショーやネットニュースで見たくもないのに目に飛び込んでくる不愉快な出来事の連続!w なぜに読書の時間にもこんなイライラを感じなければいけないのか?w

それに、描写が細かすぎる。そのほうがリアリティを読者が感じやすいかもしれないけど、膨大な登場人物ひとりひとりの身勝手な心の声までイチイチ読むのに付き合う気になれない。

この登場人物たちがそれぞれ日々自分のことでイッパイイッパイで自己弁護。ま、読んでいて自分もこの状況ならそうするだろうなって思うことがひたすらだらだら書き連ねられる。くどい。
各章の番号が事故に向かってカウントダウンしていく。このおかげで、そこまで読めば何かあるんだろうなってページをめくる推進力になってくれた。登山道に号目を示す標識が立っているようなもんだな。

だが、今度はカウントアップ。下山はそれほど楽しいものでもなかった…。社会派ミステリー?推理小説?それは間違った情報だった。

事故の真相を知りたい!と異常な熱意を燃やす被害者の父(新聞記者)になんら共感できなかった。もしあの時、誰かがああしてくれていたらこの子は死なずにすんだ、なんてニュースは誰でも日々目にしている。それを全599ページの前3分の2以上を割いて状況説明。

膨大なピースが一人の人間を陥穽に落とす道を作っている状況、その一点に収束していく過程が読者に鮮やかに示されることを期待して読み進めたのだが、それほど爽快感がないことは、まえがきを読んだ段階でだいたい予想はできていた。
イライラ人物だらけ。とくにクレーマーが醜い。クレーマーはきっと日本中で人を殺している。唯一スカッとする人物は犬の糞を始末しないジジイの目撃者(ギャル)w

この作家、だいたい40代ぐらいかな?と予想していたら、その通りだった。あんまり上手くも感じない。松本清張だったらもっとドライに、ページ数を4分の1から5分の1ぐらいに、もっと面白くまとめてくれたかと思う。

あしゅ、ごめん。貫井徳郎、自分には合わなかったわ。
他の乃木坂メンバーがマンガばっかり読んでいる中で、飛鳥がミステリーを読んでいることはいいことだと思う。だが、飛鳥がステキな男性との出会いと理想と幸せをイメージしたり話したりしないのは、きっとこんな作品ばかり読んでいるからだろうなとはちょっと想った。

あしゅには横溝正史をオススメしたい。長女・衛藤、次女・北野、三女・飛鳥で獄門島三姉妹をやってほしいw

2 件のコメント:

  1. 貫井徳郎って作家は1+1=2の作家じゃないね。基本人間ドラマだから推理小説家の中では規格外かも。いい趣味してると思う。
    以前、マイブームだったことがあって(もう過ぎちゃったから)ここで取り上げてる作品はどっちも未読です。

    でも、貫井はなんといってもデビュー作の「慟哭」ですよ。
    日本犯罪史上有名な事件を連想させる2つの話が並行して語られて、どうなるのか全くつながらないまま・・・。
    最後は文字通り慟哭してしまいました。話の構造が分かったときは手が震えたね。1+1=5になっていた。
    創元文庫だからBOOKOFFで108円は厳しいな。410円ぐらいか。でもこれだったら定価で買っても後悔しないと思うけどなあ。

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  2. 1冊で判断するのもどうかと思うので、これから「慟哭」探してみます。松本清張もハズレがあるし。

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