2016年6月5日日曜日

横溝正史 「三つ首塔」を読む

山下敦弘監督の「苦役列車」を見ていると、森山未來演じる主人公の枕元に、横溝正史「三つ首塔」が置いてあるシーンがあった。この本は自分はまだ読んだことがなかった。

きっと横溝ファンにはマストな1冊なんだろうと探してたところ、いい感じの1冊と出あったので買って帰った。108円。

横溝正史が昭和30年1月から12月まで「小説倶楽部」に連載したもの。
自分が手に入れたものは「三つ首塔」の角川文庫版(昭和51年の第17刷)。もうジャケット絵からしてヤバい。

横溝正史は昭和30年代でもまるで講談のような怪奇ロマン小説を書いていた。
松本清張の「点と線」の連載開始が昭和32年という点を考えると、清張の社会派は画期的。

良家の子女ヒロイン音禰が100億円の遺産相続に巻き込まれ、警察に追われる身となって転落・流転していく…という怪奇冒険譚。

曽祖父の代(明治10年代)の因果と復讐という横溝らしいテーマなのだが、金田一さんが最初と最後のほうに少ししか出てこない。昭和30年の風俗を盛り込みながら、ヒロインと謎の男の遺産相続ゲームと冒険。あまり推理小説らしくない。推理小説とはいえない。

だが、意外に面白かった!w くだらないな…と思いつつ読み始めたらあっという間に読んでしまった。とにかく読みやすい。昔の大人が読んでいたミステリーってこんなレベル?!

こういうの、現代風にアレンジして映像化したら楽しいかも。実際自分は主人公2人をまさみと自分で妄想しながら読んでいた。

2 件のコメント:

  1. 「自分は主人公2人をまさみと自分で妄想しながら読んでいた」の行には笑ってしまいました。

    戦争が終わって翻訳が自由になって、乱歩がカー(本格)とウールリッチ=アイリッシュのサスペンス「幻の女」を激賞。
    横溝が金田一を登場させ、カーを日本に置き換えて実践。怪奇と伝記と推理が混じった作品を連発しました。
    本格推理小説では探偵の「恋愛」は禁じ手です。だから金田一はいつもああいう人だし。制約が多くて、けっこう窮屈なんですよ。
    でも「三つ首塔」は本格ではないし、女性目線で、これはウールリッチですね。あとアルセーヌ・ルパンも入ってる。
    しかも横溝は戦前は耽美的だったので、幻想的でなかなかエロい。中盤の悪い奴らが集うあたりが好きだなあ。横溝さんも当時の清純派女優かだれかをヒロインに想像しながら、楽しんで書いてたんじゃないかしら。

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  2. 自分はまだカーとかそのへんの海外ミステリはまったくの手付かずジャンル。中学時代にクリスティとクイーンだけ。

    「三つ首塔」はやっぱ自分の想像してたとおり人気作らしいw
    ツイッターでも多くの人がつぶやいていた。
    大正、昭和のころの話が自分としては一番面白い。

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