呉勝浩「爆弾」(2022 講談社)を読む。これ、ずっと話題の一冊で佐藤二朗主演で映画化もされるらしい。もうすでに文庫化もされてるらしい。今読んでおく。
野方署の取調室。飲み屋で些細な暴力事件を起こした酔っ払い中年男49歳。記憶が曖昧で愚鈍そう。髪は短く刈ってあるがだらしなさそうで臭い…。
スズキタゴサクと自称するのだが身分証明できるものはなにもない。だがやがて都内各地で爆発があるらしいと仄めかす。タゴサクにいわせればそれは予知。警察官から見ればこいつはいわゆる「無敵の人」か?
実際に爆弾が各地で爆発。やがて死者も。タゴサクは重要参考人として警察の偉い人たちからかわるがわる尋問。その都度、タゴサクは質問会話のゲームで警察を翻弄していく。
ページをめくる推進力がある。一流のサスペンスだと感じた。
これ、読んでいて「踊る大捜査線」みたいな質感だなと感じた。警察組織で出世するには手柄が必要なのか。みんな自分に自信があるのか傲岸不遜だし高圧的。警察組織って不快だし嫌だねという。
いや、このスズキタゴサクというキャラ造形がとにかく魅力的。自らを卑下するのに知性もあって、その喋りはまるでドストエフスキーの書く独白のよう。
見下すような取り調べをする警察官たちよりも、このスズキタゴサクのほうをうっかり応援する気分になる。そうだ、もっともっと警察を翻弄しろ!というダークヒーロー。
そして意外な真相。これは十分に面白かった。
しかし、事件の背後にある長谷部という辞職し自死した刑事の件。あれってたまにネットニュースで見かけるけど、韓国とかでしか聞いたことない。たぶんなんら犯罪じゃない。一流の探偵が考えるときに逆立ちしたりトランプタワー組み立てたり折り鶴折るのと同じ。
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